第234話 これって読書会?
炎の竜巻の灼熱の風が地面近くを這うように、真っ直ぐ俺へ向かって押し寄せてきた。俺は避けなかった。
これまでなら、この熱は装甲の表面で跳ね返るだけで、警告一つ出ることすらなかった。
今回は違った。
熱が叩きつけられた瞬間、すでに装甲を剥がされていた隙間がまずその衝撃を受け止め、灼熱の空気がその剥き出しの継ぎ目へ真っ直ぐ流れ込み、各節の関節の接続部に沿ってさらに深く這い込んでいった。
【内部温度上昇中】
【外部風圧負荷、想定値を超過】
【関節の隙間に砂塵の侵入を検知】
警告が読み切れないほどの速さで次々と表示された。
この体は核爆発にすら耐えた。それは全身の装甲が熱と圧力を遮っていたからだ。今、その防護層はすでに、あの見えない線によって一枚ずつ剝がされてしまっている。
強風は考える余地さえ与えてくれなかった。正面から押し寄せ、体の前半分を後ろへ押し込み、機械の脚を地面に食い込ませて、押し流されないように溝を次々と刻み続けるしかなかった。
ここに留まってはいられない。
このまま止まっていれば、熱と圧力はこのフレームへ流れ込み続け、警告はただ増え続けるだけだ。
唯一の選択肢は、風の柱との距離を詰めること――あいつが次の一手を打つ前に、そこまで辿り着くことだった。
俺は粒子の網の知覚を前方へ広げた。
以前見つけた死角の経路がある。他のどこよりも圧力が軽い、岩肌の凹んだ隙間だ。その記憶をたどり、その道がまだ残っているかどうかを確かめようとした。
その一帯の空気は、新たに噴き上がった気流によってすでに書き換えられていた。粒子は完全に混乱していて、どれもそれぞれ違う方向に引っ張られていて、はっきりとした道筋はもう残っていなかった。
一節ずつ試しながら進むしかなかった。
前方二節を左へ傾け、圧力が側面を擦っていくようにわずかな進入角度を作り、それからもう一押しして短い距離を前へ進んだ。砂埃が文様の板に鋭い音を立てて当たり、何度も吹き倒されそうになりながら、その都度、機械の脚全部を一斉に地面へ食い込ませて、ようやく体勢を保った。
風の柱まではまだ距離が残っていた。
こんな時に、観の門で休んでいる仲間たちのことに気を回す余裕があるはずはないと思うのだが、この機体の感覚機能は本当に大したもので、意識して耳を傾けなくても、向こうで何が起きているのかが伝わってきた。
受話口からまず、ページをめくる速い音の連続が届き、すぐに何人もが同時に同じ本に手を伸ばして衝突する音が続いた。
「ちょっと! 一冊しかないんだからみんなで取り合わないでよ!」
ワカナの声が他の全員を押さえ込んだ。
「手分けして探せないじゃん!」
「じゃあどうすればいいの?」
サチの声が切迫しすぎて、ほとんど悲鳴に近かった。
「鏡を使おう!」
ワカナが叫んだ。
「真理の鏡は物を複製できる――一冊の本くらい、鏡の表面に収まるはず!」
受話口から、鏡の表面がかすかに波打つ気配と、続いて本が地面に落ちる重い音が一つ、二つ、三つと次々に聞こえ、あっという間に小さな山のように積み上がっていった。
「こ、こんなに何冊も!」
アラユの巨大な鋏が何度も素早く開閉した。
「子どもたち、一人一冊ずつ、今すぐ!」
フェアリーの羽ばたきが密に震えた。
小さなピクシーたちが互いに押し合いながら、その操作手引書を体重で歪ませ、曲げながら、何本もの手足を使って表紙をめくり開けようとしていた。
一瞬、ページをめくる音、羽ばたきの音、そして何人もの押し殺した切迫した声が一斉に受話口から溢れ出し、まるで誰かが本を扇のように使っているかのようだった。
「目次から始めて!」
ユウキの声が速く短く切れて届いた。
「一ページずつめくらないで、まず耐熱とか修復とか防護に関係ある見出しを探して!」
「この本の目次、誰が組んだんだ!」
ワカナの怒りの声が紙の音を呑み込んだ。
「第一章が外装の筐体、第二章が頭部の文様の板のメンテナンスで、第三章がまた外装に戻ってる! ここの誰か、順番って概念理解してる人いる!」
「ワカナ様、目次の構成はこうなってるだけで、内容自体はそんなに散らばってないはずです」
エンヴェルの声が横から速く割り込んできた。
「数えたら、全部で三十七章あります。俺は後半をやります」
「俺も手伝う」
セバスティアンの触角がページを一行ずつなぞった。
「第十二章、関節潤滑剤の交換周期――今の状況には関係ない。第十三章、同じく」
「見――見つけた気がする!」
ラットンがつかえながら割り込んだ。
「これ……潤滑についてです! またまた潤滑!なんでこんなに潤滑の章が多いんだ!」
「俺は後ろの付録を見てみる!」
アラユの巨大な鋏がページをつまみ、鋭く破れる音がした。角が一つ、ちぎれたような音だった。
「……あ、すまん、もっと気をつける」
「鋏でページをめくらないでください」
プルトンシャがゆっくりと言った。
「私がやります。読み上げます。あなたたちのために」
『この手引書、俺の爺さんがレイアウト組んだんじゃないのか』
『潤滑の章がこんなに要るのかよ! 作者何考えてたんだ! ハハハ!』
『早く見つけて、マスミの警告どんどん上がってる!』
答える余裕はなかった。
側面から熱風の一撃が来て、全身が数メートル右へ押し流され、機械の脚が鋭く擦れる音を立てながら地面に長い溝を刻んだ。
【内部温度、上昇継続】
【警告閾値、突破間近】
俺はその数字を無理やり無視し、粒子の網を体の周りに引き締めて、次に通れる隙間を探した。
炎が風の柱から輪のように何度も噴き出し、頭部の文様の板を撫で、橙赤色の光をちらちらと走らせた。装甲を剥がされた部分は熱でかすかに赤く光っていて、並んだ鉄棒を熱したかのようだった。
「主様」
フェアリーの声が受話口越しに届いた。羽ばたきが速く震えている。
「子どもたちを分担させて探させています。一人一章ずつ、できるだけ速く進めています」
「分かった」
俺は短く答えた。
「冷却に関係するもの、今の俺の状態に使えそうなものがあれば、すぐに教えてくれ」
「承知しました」
フェアリーはすぐに答え、向きを変えて小さな子たちに静かに指示を出した。
その後数分間、受話口からは断片的な音だけが届いた――誰かが章の見出しを呼び、誰かがページ番号を叫び、誰かが舌打ちをし、誰かが半分めくってから戻る音。
俺はそれを聞きながら、風の中を一節ずつ進んでいった。
熱は流れ込み続け、熱風が一波来るたびに新たな警告の列が加わった。
【内部温度、安全上限に接近中】
風の柱まで、まだ半分の距離が残っていた。
俺は前方二節の脚を地面に平らに押しつけ、全身を低くして、砂の上を這うように進んだ。頭上で風が唸り、背面に残った装甲の縁を何度も鋭く叩き上げ、今にも引き裂かれて飛んでいきそうな音を立てていた。
【命令実行完了率、低下中】
粒子の網が体の周りで何層にも渦巻いていた。俺はそれを前方へ送り出し、空気の流れを一寸ずつ探らせた。流れが最も速いところでは粒子が混乱して散らばり、最も遅いところでは小さな群れにまとまる――その小さな群れを選んで、一節ずつそこへ向かって進んでいった。
その頃、信号越しに視察官の声が届いた。相変わらず台本を読むような口調だった。
「映像から見る限り、新田様は現在も前進を続けておられ、それ以外の皆様は後方で必死に本をめくっておられます。これは事前に決められた戦略の一部でしょうか」
「その質問は後にしてください」
ユウキはその一言だけを返し、すぐにまた本へ視線を戻した。
「失礼ながら申し上げますと」
視察官の声は引かず、わずかに声を上げた。
「現在、完全な技術資料をお持ちですよね。我々のほうにも一部提供していただけますか」
「何のために?」
ワカナの怒りが一気に爆発した。
「今あなたの相手してる時間ないんだけど!」
「いいから、一冊渡してあげて。探す手が一人増えるのは悪くない」
ユウキがワカナを抑えた。
「それに、あの人はいかにも役人って感じだし。私たちより資料を整理するのは速いかもしれない」
受話口が一瞬静まり、それからフェアリーの澄んだ声が届いた。
「お前、一冊持っていって。あの方の手に届けて。他の人には見られないように」
ピクシーの羽ばたきが二度速く震え、それから静かになった。
信号の向こうは一瞬何の音もしなくなり、それから本が机に落ちる重い音と、視察官がかすかに鋭く息を呑む音が聞こえた。
「……これはどう届けられたのですか?」
彼の口調がようやく崩れた。台本を読む調子ではなくなっていた。
「ノーコメントです」
ユウキの返事は、扉をぴしゃりと閉めるくらい短かった。
視察官はそれ以上食い下がらなかった。
次の瞬間、信号越しに極めて速いページをめくる音が届いた。あまりの速さに、本当に内容を読んでいるのか、それとも単にページの縁を目で追っているだけなのか分からないほどだった。一枚また一枚、一定のリズムで、機械のように規則的に流れていった。
「第十二章と第十三章は定期保守の分類に入っています。第二十章以降は、どうやら例外事態への対処分類のようですね」
彼の口調はまだ台本を読むような調子だったが、速度は一度も緩まなかった。
「見つけました。第三十一章、『自動修復システム』」
受話口が半秒ほど静まった。
「皆様、その章をご覧ください」
視察官が言った。
「このような題名の章なら、起動条件と適用範囲が詳しく書かれているはずです」
「俺たちさっきどこまで進んでたんだ!」
アラユの巨大な鋏が地面に力強く打ちつけられ、その衝撃が受話口を震わせた。
「第三十一章、見つけた」
サチが鋭く息を吸い込み、ページをめくる音が大きく響いた。
「見つけた! マスミ、この章、筐体が損傷したときに装甲と内部部品を自動的に修復できるって書いてある……」
俺の思考が一瞬凍りついた。
自動修復システム?
この体に、そんなものがあったのか?
そうだ、あった――ただ今まで、ほとんど気にかけたことがなかっただけだ。
「それだ、それこそ探してたものだよ!」
ワカナの声がセンサー配列を震わせるほど大きく届いた。
「読んで、続けて読んで!」
「静かに」
セバスティアンが声を落とした。
「彼女に最後まで読ませてやれ」
「この先に、システムの起動条件が書かれてます」
サチが言った。
「頭から順番に、どこまで読んだか伝えていくね」
「マスミ」
ユウキの声がはっきりと届いた。
「もう少し持ちこたえて。まず起動条件を全部読み終えてから、どうすればいいか伝える」
「……ありがとう」
俺は視察官に向けて言った。
「これは単に私の職務です」
彼の口調には何の揺らぎもなかった。それでも俺は、その一言を、警告よりも高い優先度で記憶に刻み込んだ。
答える余裕はなかった。また一波、灼熱の風が押しかかってきたからだ。
警告がまた更新され、内部温度が一段跳ね上がった。
だが、もうただ正面から受け続けるだけではなかった。
受話口の向こうで、サチが一文ずつ読み始めていた。声は軽く、速い。俺はその言葉を知覚に取り込み、聞きながら機械の脚を前へ押し進めていった。
風の柱はもう目の前だった。
強風は四方からなおも吹き込み続け、この身のあらゆる隙間が、鋭く刺すような音を立て続けていた。




