第231話 一本の直線
強風は吹き続けていた。
俺は止まらず、機械の脚で地面に溝を次々と刻みながら、ぼろぼろになった装甲を前後に引き回していた。砂埃が剥き出しのフレームに何度も叩きつけられ、隙間のどこもかしこもが細く弱々しい音で鳴いていた。
知覚の中の存在感が、また少し増していた。
先ほど生み出した一握りの粒子は、俺自身の乱れによって次々とその弦へ送り込まれていた。一回くぐるたびに、新たな存在感の群れが一つ加わる。かつて数えられたはずのその数は、もう一つ一つを区別できないほど密になっていて、まるで誰かが周囲一帯の空気に、ひとつかみの細かい砂を撒いたかのようだった。
『マスミまだ走ってる』
『何やろうとしてるんだ?』
『また装甲が一枚……』
外のカメラ越しに見ている視聴者たちには、俺が何をしているのか分かるはずもなかった。
もし実際にここに立っていたとしても、きっと同じだっただろう――説明なしでは、理解できなかったはずだ。
これはすべて分子レベルで起きていることだった。
配信のコメントが知覚の端をかすめていったが、読む余裕はなく、全神経はその砂のように広がっていく存在感だけに向いていた。
「マスミ、そっちどう? 進展あった?」
ワカナの声が携帯越しに届いた。今にも手を伸ばして俺を引っ張り出しそうな切迫した響きだった。
「少しだけ」
俺は言葉を途切れさせながら絞り出した。
「今は気を散らさないでくれ、ずっと見続けなきゃいけないんだ」
「気を散らしてなんかない!」
ワカナが思わず声を上げたが、すぐに誰かに引き止められたらしく、声を無理やり落ち着けた。
「……分かった。集中して」
ユウキは何も言わず、ただ静かな、落ち着いた呼吸音だけが聞こえていた。サチは両手で携帯をしっかり握っているらしく、袖の布がこすれる音さえ立てないようにしていた。
信号越しに視察官の声も届いた。相変わらず業務的な口調だった。
「映像から見る限り、そちらの装甲は損傷を受け続けています。緊急の技術支援を提供したほうがよろしいですか」
「ありがとうございます、今のところは必要ありません」
ユウキが短く答えた。声は張られた糸のように張り詰めていた。
視察官はそれ以上何も言わず、回線にはかすかな雑音と紙の擦れる音だけが残った。
意識を粒子に戻した次の瞬間、俺は問題を見つけた。
先ほど生み出した大きな粒子の群れを、強風が一気に蹴散らして、あっという間に数十メートル先まで吹き飛ばし、一部はすでに感知できる範囲の外へ流れ出していた。
俺はすぐに機械の脚の先端で鋭く一打を与え、短い気流の輪を作って一番近い群れを無理やり引き止め、さらに逆方向の乱れを加えて引き戻した。
だが風は俺を待ってくれない。
左側を抑え込んだ瞬間に、右側がまた散らばった。関節がざりざりと軋み、砂がその隙間に入り込み、動くたびに金属にサンドペーパーをこすりつけるような感触が返ってきた。
だが両側の乱れを慌てて塞ぎながら、俺はおかしなことに気づいた。
吹き飛ばされた粒子の数――それが実際に減っている感覚がまったくなかった。
知覚の中の存在感は、むしろ次々と外へ向かって湧き出し続けていた。
俺は一瞬動きを止め、乱れを加える手を止めて、その砂のような広がりの動きを丁寧に追い直した。
そこでようやく気づいた――もうしばらく、俺は意図的に粒子をその弦へ送り込んでいない。
知らないうちに、粒子の数がある一線を越えて積み重なっていた。その空気中での混沌とした軌道はすでに密に重なり合っていて、俺が何をしようとしなかろうと、順序も法則もなく、何かが常にその弦をくぐり抜けている状態になっていた。一回くぐるたびに新たな粒子の群れが生まれ、その新しい粒子がさらに多くの空気分子と衝突し、さらに多くがその弦をくぐっていく。
増える速度は、とうの昔に俺自身の乱れでは追いつけないほどになっていた。
弦をそのまま解かない限り、超微小浮遊粒子はこのまま自分だけで増え続ける。
風に飛ばされた分は、あっという間に新しく生まれた粒子に取って代わられる。もう引き戻すために張り合う必要さえなかった。
そして風が粒子を広く散らすということは、むしろそれだけ広い範囲に広がってくれるということでもあった。
この強風は相手自身の武器なのに、今はそれが俺のこの網をさらに大きく広げる手助けをしてくれている。
俺は機械の脚に込めていた、胸の奥が痛むほどの緊張をようやく解き、新たな乱れを加えるのをやめ、全神経を「行う」ことから「見守る」ことへ切り替え、この網の形を頭の中で丁寧にたどることに注ぎ込んだ。
存在感は一回くぐるたびに密になり、一回くぐるたびに広がっていった。俺はひたすら前へ走り、後ろへ切り返し、体を動かし続けることだけを続け、あとは風とあの見えない弦に任せた。
ちょうどその時、左側にかすかな震えが走った。
また一枚、装甲が外れた。
それが体から離れたのとまったく同じ瞬間、知覚の中のいくつかの存在感が一気に消えた。
それは風に飛ばされて消えるような消え方ではなかった。その場で激しく押しのけられ、位置が一斉にずれたのだ。
俺は固まった。
その場所は互いに密集していたわけではなく、数メートルずつ離れていた。それがどうして、まったく同じ瞬間に一斉に押しのけられたんだ?
気のせいかもしれないと思いながらも、俺は歯を食いしばってそのまま走り続け、その網を見守り続けた。
十数秒も経たないうちに、また一枚、装甲が落ちた。
俺は知覚の中で動き続ける存在感に全神経を注ぎ込み、息をすることすら忘れていた。
今だ。
複数の、異なる位置にある存在感が、再び、まったく同じ瞬間に一斉に押しのけられた。
俺はすぐにその位置を頭の中に記録し、それらをつなぐ線を引いた。
それは一本の直線に並んでいた。
極めて細い線だった。ほとんど幅と呼べるものがないほどに細く、風の柱の方向からこの一帯の空気を貫いて、ちょうど今装甲が落ちたこの身の場所まで伸びていた。
全身が張り詰め、機械の脚が空中で止まりそうになり、胸の中の核が何かに握られたかのように、激しく速く脈打った。
『マスミ急に遅くなった!』
『何があったの??』
『何か気づいたのか』
「どうした?」
ユウキが俺の呼吸の変化をすぐに察知した。
「線がある」
俺は声を低く抑え、ゆっくりと話した。注意はまだ知覚の中のその位置に固定されたままだった。
「すごく真っ直ぐで、すごく細い。装甲が落ちるたびに、その線に沿った粒子が同じ瞬間に押しのけられる」
「線?」
ワカナの声がすぐに跳ね上がった。
「どんな線? それ、撃ってきてるってこと?」
「分からない」
俺は正直に言った。
「本当に直線があるってことだけは分かってる。それ以上は、俺にも見当がつかない」
「だったら気をつけて!」
ワカナの声が切迫したまま震えていた。足を踏みしめている音さえ聞こえてきそうだった。
「見えないものが一番厄介なんだから――絶対に核心を真っ直ぐ貫かれたりしないでよ!」
「気をつける」
俺は声に出して言ったが、自分の脈拍もそれ以上に速くなっていた。
俺はその線をさらに丁寧にたどりながら、すべてのセンサーを最大まで引き上げ、その線が何かを残しているかどうかを探ろうとした。
熱はなかった。
震動の痕跡もなかった。
何かがその線に沿って通過した証拠を、どのセンサーも一つも返してこなかった。
粒子が一斉に押しのけられるその瞬間だけ、ようやくその線の輪郭がかろうじて見える程度だった。
なぜ熱が一切ないんだ? こんなに真っ直ぐで、こんなに細い線が、何らかのエネルギーで切り裂いているものだとしたら、どうして熱の痕跡が完全にゼロになるんだ?
理解が追いつかなかった。
また一枚、装甲が落ちた。右側からかすかな震えを感じ、視界の端で金属の板が一枚、砂埃の中へ回転しながら飛んでいった。
知覚の中で、複数の存在感が再び同じ瞬間に押しのけられ、今度はその直線の輪郭が、これまでの二回よりもはっきりと見えた。
俺は走りながら、その線の形を頭の中で何度も捉え直した。
この線は何度も繰り返し俺に命中していた。あらかじめどこに現れるか分かれば、避けられるかもしれない。
だが本当に避けられるだろうか。
魔像の直線加速は強いが、旋回は笑ってしまうほど不器用だ。あの線はほとんど幅がないほど細く、しかも粒子が押しのけられる瞬間にしか位置が見えない――見えた時点で、すでに装甲は失われている。
強風は四方からなおも吹き込み続け、この身のあらゆる隙間がそれに合わせて鳴り続けていた。
俺は動きを止め、機械の脚を地面に強く食い込ませ、風の柱の中で黙り続けるその輪郭を見上げた。
彼はずっとそこに立ち、俺が前後に走り回るのを見ていた。これだけの時間見ていながら、炎にはまったく揺らぎがなかった。
だがまさにこの瞬間、その橙赤色の炎の層が不意に激しく震えた。
何かに驚いたかのように、風の柱の中の輪郭がゆっくりと頭を動かした。
その視線は俺には向いていなかった。代わりに、俺の周囲に広がる、何も見えないはずのその一帯の空気に据えられていた。
彼は何も言わず、ただそれをじっと見つめ続け、微塵も動かなかった。




