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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔ー風水渙

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第23話 水砲の雨を潜り抜け


水底から突き上がる、

重火器のような激しい水柱。


俺は平然と呼吸を整え、右手を一振りした。「知恵の書」のページが猛烈な勢いでめくられていく。


そして、指をパチンと鳴らした。

「出でよ――ピクシー軍団!」


「フェアリー、全ユニットに号令を。

 全面交戦状態に入れ!」


俺の命令が下ると同時、空っぽだった河の上空で空間が激しく歪み始めた。


一つ、また一つと細かな転移ゲートが開き、透明な羽を羽ばたかせる小さな影が無数の蜂の群れのように溢れ出す。


俺の主力部隊――それぞれ役割を持つピクシーたちが一斉に出撃し、

瞬く間に上空を埋め尽くした。


槍持ちピクシーは水面を低空飛行しながら索敵を開始し、

砂袋ピクシーは彼らに随伴して、いつでも場をコントロールできる構えを取る。


投石ピクシーと風術師も遠距離攻撃の準備を整え、俺の号令を待つ。


同時に、風霊鳥ふうれいちょうも準備完了だ。


鋭く清らかな鳴き聲と共に、

数十羽の風霊鳥が俺の背後から舞い上がる。


彼らは直接攻撃に入らず、

俺たち三人の頭上を旋回しながら、

くちばしを開いて、澄んで伸びやかで気力の漲る旋律を紡ぎ出した。


【群落の詠唱:風の加護 Lv 67】


「この旋律……」


祐希が「勇気の剣」を握りしめ、

驚いたように顔を上げる。


深紅の剣身が旋律に共鳴し、

かすかに震えていた。


「真澄、体が軽くなったわ。

視界も驚くほどクリアよ。

水滴の一粒一粒が描く軌跡まで見えるわ!」


「すごいでしょ!

体が風船みたいにフワフワして、

これなら一跳びで河を越えられそう!」

サチも空中で楽しげにステップをふむ。


風霊鳥がもたらす多重バフ――反応、筋力、霊感。


それらが幾重にも積み重なり、俺たち三人のステータス欄が狂ったように跳ね上がる。


「知恵の書、現在のバフを表示しろ」


俺が低く命じると、

書物は驚異的な数字を提示した。

多重バフの影響で、俺たち三人の反応と攻撃の数値は、今や二百を優に超えている。


「今の俺たちは、まるで爆撃編隊だ」

雷光を纏った雷霊鳥の姿となり、

俺は冷酷に笑った。


「一気に、この『渙の泉庭』をスピードクリアしてやる!」


一方、安全な画面の向こう側では、若菜が目を丸くしてモニターを凝視していた。


「視聴者の皆さん……

これ、絶対にAI生成じゃないですよ!

今、真澄くんが差し向けたピクシーカメラマンによる最前線の映像です!」


若菜はマイクに向かって興奮を爆発させる。


「見えますか? 真澄くんはこの河の生物たちに、本物の戦争を仕掛けようとしているんです!」


配信画面のコメント欄は、もはや画面が見えないほどの勢いで流れていく。


『この召喚量、ガチかよ? RTSゲーでも見てる気分だわ!』

『カメラ持ってる奴工ピクシーが尊いw 水砲でボロボロになりながらも必死にレンズを守ってる!』

『槍持ち、投石、砂袋……甲羅持ちピクシーまで? 主人公、テックツリー解放しすぎだろw』

『反応値二百オーバーってマジ? 弾丸を素手で掴むつもりかよ』

『若菜! ピクシーにもっと寄って! 風霊鳥が見たい!』


若菜はコメントに応えながら、

手に汗を握る。


「みんな落ち着いて!

カメラワーク担当のピクシーが風圧で飛ばされそうなの!

でも真澄くん、本当にかっこいい……

あの余裕、最高ね」


「ドォン! ドォン! ドォン!」


水底に潜む正体不明の敵が、

死角から殺傷力の高い水砲を放ち続ける。


岩をも砕く一撃だが、反応数値が極限まで高まった俺たちの目には、それらはまるで一枚の動かない絵のように遅く映る。


「全ユニット、同調上昇」


俺は淡々と指示を出した。俺とサチ、祐希は空中で残像を描くように舞う。


巨大な水柱は俺たちの靴底をかすめることすらできず、虚しく空を切り裂いた。


「こちらの番だ!

 投石部隊、用意――放て!」


俺が下の影を指し示すと、特製の石弾が豪雨のように水面へ降り注ぐ。


しかし、もどかしい光景が広がった。


敵が深く潜っているため、

大量の水が天然の緩衝材となり、

風術師の風刃も投石の石弾も、着水した瞬間に威力を大幅に削がれてしまうのだ。


槍持ちピクシーたちも上空を苛立たしげに旋回するが、

数メートル下の獲物には槍が届かない。


「ちっ、引きこもりめ。

 随分と深く潜っていやがる」

俺は眉をひそめた。


実にもどかしい膠着状態だ。


敵の攻撃は当たらないが、

こちらからも有効打を与えられない。


水面下の巨大な影は、俺たちが水に入れない弱点を知っているかのように、

執拗に嫌がらせを続けてくる。


「真澄、消耗は少ないけれど、ここで長居するのは得策じゃないわ」


祐希が水柱を優雅に回避しながら、

警戒を強める。


「あいつら、私たちが疲れ果てるまで河の中央に釘付けにするつもりよ」


「連中の戦術に付き合う必要はないな」

俺は少し考え、対岸の陸地を見据えた。


「出てこないなら、ここで時間を浪費するのは止めだ。

フェアリー、命令だ。


全軍撤退陣形に移行!


風霊鳥は高度を上げろ。

甲羅持ちピクシーは俺たちの真下に展開。

他のピクシーは

全員『観の門』へテレポートしろ!」


「このまま一気に突き抜けるぞ!」


風霊鳥の歌声による加速を受け、

俺たちは青い流星となって、

密集する水砲の網を縫うように駆け抜けた。


三十秒もかからず、

俺たちは険阻な河を完全に越え、

腐植土の匂いが漂う対岸へと平穏に降り立った。


着地した瞬間、サチが胸をなでおろした。

「ふぅ、やっと着いたぁ。あの魚が吹く水、なんだか変な匂い。

服が汚れちゃうところだったよ」


「まだ終わっていないわ」


祐希に油断はなかった。

彼女は「勇気の剣」を抜き放つ。

深紅の剣身は光を飲み込み、昏い迷宮の中で餓えた獣のように輝いていた。


彼女は剣先を河の方へ向けた。

「あいつら……追ってくるわ」

上陸すれば諦めるかと思ったが、

河岸の水面が激しく波打ち始めた。


一つ、二つ……不気味で原始的な魚の頭が次々と水面に現れる。


奴らが完全に這い上がってきた瞬間、

奴工ピクシーがカメラを最前線へと向けた。


コメント欄が再び悲鳴に包まれる。

『助けて! 顔が放送事故レベルでキモい!』

『足の生えた魚……?』

『古生代の無顎類の装甲魚か? でもあの四本の足、デザイン適当すぎだろ!』


それは全長二メートルほどの奇妙な生物だった。

重厚な装甲に覆われた頭部と、

吸管のような長い口。


本来ヒレがあるべき場所には、水かきと鋭い鉤爪のついた太い四肢が生えている。

陸上での動きは極めて鈍重で、一步進むたびにベチャベチャと不快な音を立てていた。


若菜は画面越しに眉をひそめる。

「あんなにノロマなのに、

よく追ってきたわね。

真澄くん、やっちゃって!」


俺はゆっくりと歩み出し、

迫りくる古生代の魚もどきを見据えた。


「水の中なら君たちの独壇場だっただろうが……」


俺が手を掲げると、

雷霊鳥の力が電光となって咆哮した。


風霊鳥の歌聲は最高潮に達し、

バフの恩恵は今、極限にまで高まっている。


「だが陸の上で、その鈍重な体を引きずってまで追ってくるとは……いい肥料になりたいようだな?」


俺は戦意に燃える祐希と、手ぐすね引いて待つピクシー軍団を見渡した。


「祐希、新しい敵だ。

 君が選んだ『勇気』は何だった?」

「『万全の準備を期す勇気』よ」


祐希は不敵に笑い、深紅の剣から周囲の熱を奪うほどの冷気が溢れ出す。


「いいだろう」


確信に満ちた俺は、モンスターたちに向けて力強く手を振り下ろした。


「全軍、狩りの時間だ。

 こいつらを残らず経験値に変えてやれ!」


俺の傍らで、転移の裂縫からピクシー軍団が次々と姿を現した。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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