第229話 剥がれ落ちていく
炎の竜巻の渦は次第に収まっていったが、風そのものは一度も止まらなかった。
先ほどまで激しく噴き上がっていた圧力は、波が引くように少しずつ後退していき、代わりに荒野を切り裂くように吹き続ける、絶え間ない強風へと取って代わられた。砂埃を四方へ運びながら、最初から最後まで一度も本当に静まることはなかった。
俺は警戒を解かなかった。
強風は俺の装甲の表面を擦り続け、唸り続ける音が絶えることなく、砂が金属にざらざらと当たり続けていた。ただ、先ほどまでのあの激しく噴き上がる力は、もうそこにはなかった。風の柱の中心にある橙赤色の光はまだそこにあり、目の前のこの相手がまだ諦めていないことを物語っていた。
彼は退く気配を見せず、炎も消える気配を見せなかった。周囲の強風も休むことなく吹き続けていたが、彼自身の動きだけが静かになっていた――その静かさが、むしろ俺をより不安にさせた。
先ほどまでの正面からの攻勢には、一波一波に焦りと苛立ちが滲んでいたが、今はもう何かを割り出したかのように、力任せに何かを証明する必要がなくなったように見えた。
「何を企んでる?」
俺は多少の警戒を込めて尋ねた。
彼は答えなかった。炎の層がわずかに内側へ収まっただけだった。まるで呼吸を整えているかのように。
同時に、ワカナの声が携帯越しに届いた。誰かが話す声も混じっている。
「マスミ、そっち大丈夫?」
ワカナの声は張り詰めていた。
「画面であいつが急に攻撃やめたから、みんな心配でたまらない」
「まだここにいる」
俺は言った。
「ただ姿勢を変えて立ってるだけだ。何か別の手を考えてるんだと思う」
「外務省から連絡が入った」
ユウキが割り込んできた。声にはいくらか迷いが滲んでいる。
「常駐の視察官を派遣したって。この回線を通じて現場の状況を把握したいらしくて、配信の音声を聞かせてもらえないかって言ってる」
「視察官?」
俺はわずかに眉をひそめた。
「核の件の影響が広がっていないか確認したいだけだって言ってる、それ以上は何もない」
ユウキが付け加えた。
「ワカナに別の信号チャンネルを開けてもらったから、こっちに干渉はしないはず」
「好きにさせておいてくれ」
俺は言った。
「今はそっちに割く注意がない」
しばらくして、その信号越しに視察官の声が届いた。口調は役所らしい堅さで、あらかじめ用意した冒頭の文言を読み上げているのが明らかだった。
「ご協力ありがとうございます。こちらは現場の観察記録を取るのみで、いかなる決定にも干渉いたしません」
「どうも」
俺は儀礼的に返しただけで、それ以上の余裕はなかった。
相手も気にする様子はなく、それ以上何も言わず回線に留まり続けた。本当に記録を取るだけのつもりらしかった。
その頃、配信のコメントが次々と流れ込んできていた。
『なんで急に攻撃やめたの』
『何か対策考えてるのか』
『マスミ気をつけて』
目を凝らして読む余裕はなく、全神経はあの静まり返った風の柱だけに向いていた。
彼が不意に口を開いた。
「お前は今日、ここに来たことを後悔するぞ」
その声は落ち着いていて、脅しの気配は一切なく、むしろすでに決まった事実を述べているような響きだった。
強風が全身を擦り続け、砂が装甲にざらざらと当たり続けた。
答える間もなく、側面からかすかな奇妙な感覚がセンサー配列を走った。何かが装甲の表面を滑っていったような感触だった。
視線を落とした。装甲の一枚が、いつの間にか地面に落ちていた。いつ外れたのか、まったく気づかなかった。
俺は固まった。
衝突音も、切断音も、何の音もしなかった。その装甲板がいつ体から離れたのか、はっきり分からない――視線を走らせて初めて、そこに隙間が空いているのに気づいた。
地面に落ちたその装甲板を見つめ、しばらく理解が追いつかなかった。
この体は核爆発にすら耐え、それ以前のあらゆる圧力と灼熱にも耐え、傷一つ残さなかった。それが今、何の前触れもなく、ただぽろりと一枚外れてしまった。
俺はしゃがみ込んでその板を拾い上げた。切断面は異様に滑らかで、まるで極めて精密な道具で削り出したかのように、どこにも粗い箇所が一つもなかった。
その切断面に全センサーをかけて診断をかけた。
残留熱の痕跡はなかった。目立つ化学反応の残留物もなかった。何もなかった。
もしこれが何らかの方法で切断されたのなら、何かが残っているはずだ――高熱による焦げ跡、震動による微細なひび、溶剤の残り……何かが。だがこの切断面はあまりに清潔で、まるで最初からこの形に作られていたかのようで、何かが触れた痕跡そのものが存在しなかった。
「どういうことだ……」
俺はその装甲板を見つめたまま、しばらく説明の付け所が見つからなかった。
炎の竜巻の中の輪郭は、依然として黙って立っていた。動く気配は一切なく、炎の流れにも異常な揺らぎは見られなかった。
「感じたか?」
彼の声が届いた。わずかに、ほとんど気づかないほどの満足が滲んでいる。
俺は答えなかった。
強風は吹き続け、渦巻く砂埃が地面近くを低く回転し続け、一度も止まらなかった。
次の瞬間、反対側から同じ奇妙な感覚が走った。先ほどよりも速く、軽く。
二枚目の装甲が地面に落ちた。
俺はすぐに体に搭載されたすべてのセンサーを確認していった。
温度……この体が感知できるのは、俺自身と空気との摩擦による熱だけで、それ以外に警告を出しているものは何もない。だから温度とはおそらく関係ない。
風圧……かすかな揺らぎがあり、時系列を照らし合わせると、装甲が落ちた瞬間にちょうど震動の脈動があった――だが、そういう脈動はこの空間全体に広く存在している。
異常な気体分子……警告を出すほどのものは何もなかった。
周囲の放射線……極めて高いが、それは俺自身のせいだ。
その直後、三枚目。圧力センサーがかすかに反応し、温度モニターが周囲のわずかな熱の上昇を捉えた。
どの背景データも、あいつが実際に何をしているのかを教えてくれなかった。
その速度はどんどん速くなっていき、反応できる速さを超えて、体中の装甲が次々と地面に落ち、落ちるたびにかすかな金属の音を立てた。
落ちた板の切断面はすべて同じだった――清潔で、整然としていて、溶けた痕跡は一つもなく、まるで見えない何かが俺の装甲を一枚ずつ精密に剥がしているかのようで、その「剥がす」という行為そのものが、何の痕跡も残していなかった。
俺は体を捻ってみて、出どころの分からないこの侵食を振り払おうとしたが、次の装甲もやはり前触れなく外れ、かすかな音を立てて地面に落ちた。
どう動いても、これを止める方法はなかった。
視線を落として、残っている装甲を確かめ、何か法則がないか探ろうとした――どこが先に落ちて、どこがまだ残っているか。だが落ちていく順番にはまったく理屈が通っておらず、前面も側面も背面も、どこもかしこも落ちていく。まるで相手がそもそも順番など気にしていないかのようだった。
この感覚は、先ほどまでの正面からの攻撃よりもはるかに不気味だった――少なくとも先ほどの圧力と熱なら、何かが起きているのをはっきりと感じ取れた。今は、攻撃を受けているという実感そのものすら掴めなかった。
配信の視聴者たちも、俺の緊張と恐怖を感じ取ったらしかった。
『なんだこれ』
『装甲どうやって落ちてるの???』
『誰か今何が起きてるのか教えて』
「マスミ! あなたの装甲――」
ワカナの声が携帯越しに鋭く跳ね上がった。
「分かってる、落ち着いて」
俺は彼女を安心させようとしたが、本当に安心させようとしているのは自分自身だということも分かっていた。
「落ち着けるわけないでしょ!」
ワカナの声には珍しく動揺が滲んでいた。
「核弾頭でも傷つかなかった体が、今は一枚ずつ剥がれ落ちてるなんて!」
「俺にも分からない!」
俺の口調には、もう苛立ちを隠す余裕もなかった。
まさに一番役に立たない質問をしてきたものだ。
そこで視察官がまた口を開いた。口調は先ほどよりも明らかに速くなっていた。
「この非接触での材質剥離現象、こちらとしては完全な映像記録が必要です。もっと見やすい角度を提供いただけますか」
「今そんなことをやってる時じゃない」
ユウキの声が怒りをかろうじて抑えながら、きっぱりと相手を遮った。
「安全が確保できてからにしましょう」
視察官はそれ以上食い下がらず、回線はまた静かになった。
配信のコメントは途切れることなく流れ続け、センサー配列が追いつけないほどの速さだった。
『まさか本当に負けそうなのか……』
『頑張って、マスミ!』
『第六の頭目、一体何やってるんだ』
サチの声も割り込んできた。いつもより声が低い。
「マスミ、本当に大丈夫なの?」
「今のところは平気だ」
俺は言った。
「装甲はかなり失ったけど、体そのものはダメージを受けてない。そんなに心配しなくていい」
「こんな時に、よくそんな慰め言ってられるね……」
サチの声は泣き出しそうだった。
「本当だ」
俺は言った。
「今一番気になってるのは、あいつが実際にどうやってこれをやってるのかってことだ」
みんなを安心させたかったが、自分が今まずい状況にいることも、この身にすでに何かが行われていて、相手がどうやってそれをやり遂げているのか、まったく見当もつかないということも、自分自身よく分かっていた。
風の柱の中の輪郭は、依然としてそこに立ったまま、それ以上何も言わなかった。炎にも揺らぎは見られず、ただ俺がどう反応するかを見ているかのようだった。
その強風はなおも吹き続け、一瞬たりとも止まらなかった。まるで最初から、この睨み合い全体の、何の変哲もない、しかし決して逃れられない背景だったかのように。




