第228話 風はどうやって石を動かすのか
彼と俺は互いに睨み合ったまま、どちらも一歩も前に出なかった。
渦巻いていた炎の層が、不意に止まった。
「これは妙だな」
彼はほとんど独り言のように呟いた。先ほどまでの警戒が一瞬薄れ、代わりにどうにも整理のつかない困惑が滲んでいた。
風の柱の中の輪郭が、わずかに頭を傾けた。頭部の文様の板から先端の機械の脚まで、まるで俺の全身を一節ずつ見定めようとしているかのようだった。炎の流れが緩やかになり、何かを一つずつ確認しているような動きだった。
その輪郭がさらに近づいてきて、炎が俺の装甲の輪郭をなぞるように這い、機械の脚を一本ずつ確かめ、それが何かの変装でないかを確認しているようだった。
「外側だけは似ている」
彼が呟いた。
「だが内部のやり方、動作の論理そのものが、まったく一致しない……それでも、これは確かに第五号守護者の筐体だ」
風の柱の外縁の砂埃がさらに高く巻き上がり、空中で輪を描くように積み重なっていった。まるで柱全体が、彼自身の心情と同じくらい不安定になったかのようだった。
「外側は同じに見えるが、中身は別のものに変わっている」
彼の口調が沈み、疑念と警戒の両方が滲んだ。
「お前――」
彼は俺を見据えた。
「どうやって第五号守護者を乗り換えたんだ」
彼は本当に理解ができていないようだった。多節の体、装甲、頭部の文様の板、全部が第五号守護者の筐体そのままの形で、ただそれを操る者だけが別の誰かに変わっている。
「第五号守護者はもういない」
俺はその炎の層に視線を固定したまま、一語一語はっきりと伝えた。
「俺が倒した。知恵の書の力で、あの機体が俺の化身になった」
「知恵の書? 伏羲が定めたものの中に、そんなものは一切記録されていない……どうやら、濁世と清世両方の現状を、俺もあらためて把握し直す必要があるようだな」
風の柱が不意に激しく渦巻き、圧力が跳ね上がって、渦巻く砂埃が地面を這うように四方へ散った。
「それで、お前は第五号守護者を倒したというのか」
彼の声からは何の感情も読み取れなかった。
「あの防御機構は、これまで一度も突破されたことがない。それすらも――」
彼は言葉を続けなかったが、その声に滲んでいた驚きは、すぐにさらに強い警戒へと取って代わられ、周囲の炎が引き締まり、もっと鋭く尖った形へと変わっていった。
「となると、『別西卜はすでに上にいる』という話も、ますます信じがたくなってくるな――先に話を作って俺の信用を得て、それから動くつもりだったんだろう?」
「そうじゃない」
俺は言った。
「お前に嘘をついてるわけじゃない」
「お前が言っただけのことを、俺がどうして信じられると思うんだ」
彼の口調がさらに沈んだ。
「これまで一度の不備もなく稼働してきた防御機構を、お前は打ち破っただけじゃなく、その体そのものを奪い取った……」
彼は、俺をどう扱うべきかを見定めようとしているようだった。
俺は口を開いたが、それ以上彼を納得させる言葉が見つからなかった。
「伏羲はここにいない。この防御機構は、本来想定されていなかった事態に陥っている。この状況は、もう古の取り決めに従って処理できるものではないかもしれない」
彼の口調が不意に硬くなった。
風の柱が激しく震え、灼熱の空気の波が真正面から俺に叩きつけてきた。
避ける間もなかったので、俺はその場に立ったまま、正面からその一撃を受けた。
魔像は直線での加速こそ速くなれるが、俊敏さとはほぼ無縁で、回避能力は信じられないほど低い。
灼熱の圧力が装甲に重く低い音を立てて叩きつけ、砂埃が金属の表面にぱちぱちと音を立てた。
センサーは熱の警告を一切報告しなかった。
圧力は半歩たりとも俺を後ろへ押し戻せず、機械の脚は地面にしっかりと食い込んだまま、わずかな揺らぎさえ見せなかった。
核爆発にすら耐えた体には、このレベルの攻撃はもはや何の反応も引き起こさない。
「やはりな――第五号守護者の耐熱性が、こうも厄介な壁になるとは」
彼の声には動揺が滲んでいた。
それだけでは終わらず、続けてもう一波、先ほどよりさらに激しい一撃が来た。噴き出す風にはさらに濃密な砂埃が混じり、装甲に当たる音が途切れることなく連なって、一つの轟音へと溶け合っていった。
俺はそれでも微動だにしなかった。どれだけ強い風でも、巌を動かすことはできない。
地下の巨大な陥没穴の方向から立ち上る白い煙が、この突然の圧力の高まりに巻き込まれ、薄い霞となって散り、空中を漂いながら風の柱の縁に呑み込まれて消えていった。
センサーはこの一帯の放射線量を絶えず警告し続けていたが、数値は先ほどからほとんど変わっていなかった――彼が噴き出すこの烈風が、あの放射性の塵を全部一緒に吹き飛ばしてくれればよかったのだが。
「びくともしない――伏羲様は本当に、第五号守護者をよくできすぎた形で作られたものだ……」
その言葉の奥には、何千年も昔から溜め込まれていたらしい愚痴の響きがかすかに混じっていた。
炎が一瞬激しく震え、風の柱全体の輪郭が一瞬歪み、それから無理やり元の形に戻された。
受け入れたくないかのように、彼は風の柱をさらに引き締め、もっと集中させて、圧力全体を鋭い風の刃へと圧縮し、俺の頭部の文様の板へまっすぐ振り下ろした。
その風の刃は文様の板に当たった瞬間に砕け散り、渦巻く熱風の雲へと散らばって、何も残さなかった。
視界にダメージ警告は一つも点灯しなかった。センサーはいつもと変わらず正常に動作し続けていた。
彼はさらに距離を詰め、風の柱全体を俺のほうへ傾け、灼熱の気流がほとんど俺の全身を包み込むほどに迫り、橙赤色の光が装甲の表面を流れるように渦巻いた。
俺はそれでも一歩も引かず、機械の脚のどの一節も微塵も動かなかった。
彼は別の手を試した――風の柱の根元から何本もの細い炎の舌を分かち、蔓のように四方から俺に巻きつけ、側面と下方から同時に挟み撃ちにしようとした。
その炎の舌は俺の機械の脚に巻きつき、二重に絡みついてから、消え散った。
俺には何の感覚もなかった。
彼はまた別の戦術に切り替えた――風の柱の根元を不意に縮め、それを一気に鋭く解放し、その爆発的な力で俺の全身を転倒させようとした。
地面がその衝撃でかすかに震え、足元の緩んだ土が巻き上がってまた落ち着いたが、俺の重心はその間ずっと微塵も揺らがなかった。
炎の竜巻の渦は次第に不規則になっていき、橙赤色の光が明るくなったり暗くなったりを繰り返し、彼自身もその出力を一定に保てなくなっているかのようだった。
「こんなに手強いものを、よくも奪われたものだな……」
その口調には誇らしさが滲んでいたが、最後のあたりにはかすかな震えも混じっていた。
俺はそれにどう答えればいいのか分からず、ただその揺らぎ続ける炎の壁の向こうから彼を見つめていた。
彼の攻撃は続いていた。波のように何度も俺に向かって押し寄せてきたが、どの一波も前よりはっきりと弱まっていて、まるで無理やり何かを絞り出そうとしているのに、以前と同じ力をもう呼び出せなくなっているかのようだった。
風の柱の根元のひび割れがまた橙色の光の輪を帯び、それからまた暗くなっていったが、その消え方は今までのどの時よりも速かった。
「やはり……」
彼が呟いた。声はほとんど風の音に呑み込まれてしまうほど低かった。
「全力でぶつかり合うのは、やはり正しいやり方じゃなかったようだな」
風の柱の外縁が一箇所、わずかに内側へ沈み込んだ。まるで柱としての形そのものを保つことにも、本当の意味で力がかかり始めているかのようだった。
俺はまさにその場に立ち続けていた。機械の脚は一本も動かず、装甲にも焦げ跡は一つもなかった。
この衝突は、最初から俺にとって一度も本当の脅威になったことがなかった。
だが、俺はこの機に乗じて距離を詰めようとはしなかった――今のこの状態のほうが、先ほどまでの彼の警戒よりも、よほど気を引かれた。
彼はまだ、十分に恐れを見せていなかった。
ようやく配信のコメントが俺のセンサー配列に流れ込んできて、次々と積み重なっていった。
『この風圧やばすぎる』
『なんでマスミ全然反応してないの、わざと?』
『もうマスミに触れることすらできてない感じ』
それに割く注意はなく、視線はまだあの不安定に渦巻く炎の層に固定されたままだった。
どちらも、それ以上は一歩も前に出なかった。だが、この睨み合いは、もう先ほどまでと同じ膠着状態ではなくなっていた。




