第216話 たった一つ
俺はその極めて微細な知覚を引き戻した。その衝撃からまだ完全には立ち直れていなかった。
「大丈夫?」
サチの声が俺を現実に引き戻した。
「大丈夫だ」
俺は考えをまとめ直し、みんなが本当に探している対象へと意識を集中し直した――埃でも、空気中でランダムに衝突する分子でもなく、あの絶えず吹き続けているのに一度も発生源を特定できなかった上昇気流だ。
「あの風を追ってみる」
俺は言った。
みんなは静かになり、少し下がって俺に場所を空けてくれた。その隙にワカナは真理の鏡から道具をいくつか取り出し、アラユ、プルートゥンシャ、セバスティアンを呼んだ。
「どうせ待ってるんだから、その甲羅、手当てしとこうよ」
アラユの古いひびの縁に移植した組織の粗い部分には、まだいびつな質感が残っていた。ワカナはヤスリを手に取り、丁寧にその縁を滑らかにしながら、作業しながらぶつぶつ呟いた。
「これ、くっつき方が斜めすぎ。どうりで引っかかるわけだ」
「あの時見た目気にしてる余裕なんてなかったんだよ」
アラユが不平を言いながらも、それでも素直に鋏をまっすぐ伸ばして作業しやすくしてやっていた。
プルートゥンシャも歩み寄り、甲羅に走ったいくつかの見苦しいひびを見せた。ワカナは何かの分厚いペースト状のものを少しずつ塗り込んで埋めていった。その動きは慣れたもので、何度もやったことがあるかのようだった。セバスティアンも静かにそばに立ち、ワカナに甲羅のいくつかの傷んだ箇所を確認させ、その触角が時折彼女の動きに合わせてかすかに揺れていた。
イヤピース越しに――いや、今やコメントは自然と俺の意識に届くようになっていた――チャットがまた盛り上がっていた。
『ワカナ、修理屋でも開業したのか』
『甲羅メンテナンス配信、なんか癒される』
『寄生虫取るシーンはまだ?』
『上の人、どんな野生動物救助番組思い出してるんだよ』
『それ知ってる! 5分でウミガメ救出!』
このかなりのんびりした雰囲気の真っ只中で、あの馴染み深い引力が前触れもなく襲ってきた――上昇気流がまた発動し、何人かの体を一気に空へと巻き上げた。
「またこれか!」
ユウキの体はほぼ反射的に動き、一番近くにいたプルートゥンシャを掴んだ。
ワカナとサチもピクシーのタトゥーを発動させ、着実に浮き上がって気流に巻き上げられたアラユとセバスティアンを迎えにいった。今回は真空ではなかったので、空気は普通に流れていて、ピクシーのタトゥーの力も問題なく機能し、みんなあっさりと仲間たちを地面へと押し戻すことができた。以前の悲惨な光景とはまるで違っていた。
「今回はずっと楽だった」
サチが息をつき、しっかりとした足取りで着地した。
「あんなに慌てる必要なかったな」
アラユも下ろされてから言った。まだ張り詰めた神経のせいか、声にどこか強張りが残っていた。
俺はその場に留まったまま、仲間たちが上がったり下がったりするのを見守っていた。今の俺のゴーレムの体は、上昇気流でもびくともしないほど重かった。
この騒ぎの最中も、俺はずっとあの気流を追い続けていた。その乱れに意識を長く引っ張られることなく、少しずつはっきりしていくその風の幹の方向へと再び焦点を合わせていった。
俺は仲間たちや地面、近くの小石から知覚を引き上げ、まだ上向きに吹き続けているその気流へと向けた。先ほどの仲間の位置をマッピングしたり埃の軌跡を分析したりするのとは違い、この風にはまったく決まった形がなく、ただ絶え間なく流れ続ける空気の塊が続いているだけだった。こんなものから手がかりを見つけるなど、現実的とは思えない考えだった。
俺は最もはっきりしている主流をロックオンし、その方向を少しずつたどりながら、集約していくように見える先へと追いかけていった。
風の強さは変動していた。追跡している最中に何度もその気流が不意に途切れ、そのたびに再び現れるのを待ってから続ける必要があった。何度もこれを試すうちに、俺の追跡している方向は徐々にはっきりとしてきて、着実に特定の区域へと収束していった。
同時に、この空間を流れる気流をマッピングする過程で、俺は周囲のあらゆる空気分子――酸素、窒素、それに名前すら分からない様々な気体まで――も一つ一つ記していた。形成されつつある像の中に、密に詰め込まれていく。
その追跡の過程で、俺は気体の粒子数がどれほど大きくばらついているかに気づいた。
あるものは非常に数が多く、ほぼ空間全体を埋め尽くしていて、どんな片隅でも何億、何兆という単位になっていた。あるものは比較的少ないが、それでも一つ一つ数える気にはなれないほど多かった。あるものは極めて希薄だが、それでも無視できないほどあちこちに薄く散らばっていた。空間全体でわずか百か二百程度の粒子しかない気体すら存在していて、俺はそれらも同じように、着実に形になりつつあるこの像の中へと折り込んでいった。
そしてなんと、粒子一つだけまで記録されているものすらあった。
俺は気体分子がどう振る舞うべきかについてほとんど知識がなく、この数量の違いが実際に何を意味するのか見当もつかなかったが、このゴーレムの馬鹿げた記録能力は、それでもかまわずすべてを捉えていた。
追跡は続いた。俺は方向を修正しながら、この像の範囲を外へと広げ続けた。上昇気流の主流は少しずつはっきりとしていき、まだ確定していないある区域へと着実に伸びていった。
「方向、見つかった?」
ワカナが我慢できずに小声で尋ねた。
「まだ追跡中だ」
俺は短く答え、その気流に意識を集中させ続けた。
しばらくして、俺はこの空間のあらゆる基本粒子の動きが形作る像を観察し続けていた。
あれは希ガスだったか? 少なければ少ないほど、俺の意識を惹きつけていくようだった。数百兆はただの背景ノイズにすぎない。同じ気体分子が数万個になった時点で、すでに俺の目に留まった。数千、数百……数十個の分子……もしそんなものが本当に捕捉できるなら、科学的な観点から言えば、それは間違いなく驚異的な偉業だろう。
俺は今、この極めて希少な気体粒子を追跡することが、本来の任務からの脱線に等しいと分かっていた。俺がすべきなのは、この超希少な気体をどう抽出するか考えることではなく、あの上昇気流の発生源を探すことだ。
俺はこの希少気体の追跡を副次的なものとして脇に置き、ゴーレムの内部処理にバックグラウンドタスクとして走らせておくことにした。もし実際にこの気体を手に入れられたら、たとえ実用的な使い道がなかったとしても、ワカナは絶対にネットオークションに出すだろう。この精製された超希少気体を高値で競り落とそうとする一流大学の研究室が、山ほど群がってくるに違いない。
俺は精神的なリソースの大半を、あの上昇気流の発生源探しへと戻した。
ついに、風の主流がある大まかな区域へと着実に収束していく中で、俺はこの空間全体のほぼすべての気体分子を、その巨大な像へとマッピングし終えていた。
俺は頭の中でその全体像を広げてみて、その気流が実際にどこで収束しているのかを確認しようとした。そのとき、不意に何かがおかしいと感じた。
酸素、窒素、その他の一般的な気体成分は、ほぼ空間全体を埋め尽くすほど密な数で存在していた。
だがあの「数十個」の超希少気体は、その軌跡をマッピングしてみると、最初から最後まで、一本の途切れることのないジグザグの線を描いていることが分かった。
つまりこの気体の分子は、始めからずっと、たった一粒しか存在していなかったということだ。
たった一つ!
統計的に見て、これはあり得ないことだった。
どれほど希少な気体であっても、この空間内に存在している以上、その数がたった一つにまで落ち込むことはあり得ない。どれだけ希薄であろうと、少なくとも数十万個規模の無数の分子として散らばっているはずだ。
それなのに、ここにあるのは、たった一つ、唯一無二の存在として、これだけ?
俺はその結果を見つめたまま、しばらく言葉を失った。
「どうしたの?」
ユウキが俺の様子がおかしいことに気づいた。声に警戒が滲んでいる。
俺は口を開き、頭の中の混乱した衝撃を何とか言葉としてまとめようとした。
「何か見つけた」
俺はゆっくりと言った。自分の声にすらはっきりと分かるほどの困惑があった。
「たった一つしか存在するはずのない何かを」




