第211話 石碑
もしそもそも見つけられないままだったらどうなっていたんだろう。
その問いは相変わらず宙に浮いたままだった。試験で一番自信のない一問のように、誰もそれに答えようとしなかった。
「見つけられない」と「倒せない」は、同じ種類の敗北だ。
もし見つけられなければ、俺たちはこれより先に進めなくなり、ベルゼブブの真の姿の覚醒も止められなくなる。撤退することはできる、確かに。だがそれは自分の手で最終目標を諦めることを意味する。
そしてベルゼブブが完全な力を取り戻せば、結局誰もが同じ運命を辿ることになる。
「顔色悪いよ」
ワカナの声が俺を現実に引き戻した。眉をひそめながら俺を観察している。
「見つけられないことと倒せないこと、同じ種類の敗北だ」
俺はその考えを口に出した。
「その台詞、忘れてないよ」
ユウキが剣を抱きしめ、相変わらず果てしないその空間を見つめた。声に珍しい無力感が滲んでいる。
サチの風纏う爪が二度、不安げに開閉した。
「でも今回は違うよね? 少なくとも今、はっきり分かった――ずっとここにいたってこと。私たちが間違った標的を選んだだけ」
「それって正直、もっと気が滅入るよね」
ワカナが静かに言った。
「こうなるって分かってたら、何のために観の門の従者を総動員して捜索なんかさせて、結局別のものを見つける羽目になったんだろう」
セバスティアンの触角がゆっくりと遠くへ向き、しばらく沈黙してから口を開いた。
「同じ絶望を噛み締め直すより、今手元にある材料を確認しましょう」
俺はその意味をすぐには理解できなかった。
「マスミ様」
彼が俺を見た。
「あの石碑が倒れた際、知恵の書が反応したはずでございます」
そこでようやく気づいた――ゴーレムが崩れ落ちてから、この一連の衝撃と議論のせいで、知恵の書の状態を確認するのをすっかり忘れていた。俺は胸元に目を落とした。案の定、ページはまだかすかに光っていて、静かに待っていた。まるでずっと俺が再び気づいてくれるのを待っていたかのように。
「あ、そうだ!」
ワカナも気づいた。
「もしかしたら、そこに手がかりが隠れてるかも!」
俺はページを開いた。金色の光が灯る。
『撃破:息封じの兵
経験値+533,000
ドロップ入手:伏羲の操作手引書』
「この名前……」
ワカナが浮かんだ文字を覗き込んだ。
「息封じの兵?」
チャットがほぼ即座にざわめいた。
『息封じの兵、名前ハードコアすぎる』
『「ゴーレム」より正直かっこいい』
『良太、何か言えよ、また外すなよ』
良太のコメントが一瞬遅れて届いた。先ほど指摘されたことへの気まずさが明らかに滲んでいた。
『今回は当てにいかない……』
俺にはチャットの盛り上がりに構っている時間がなかった。ページがまためくれ、見慣れた文面が現れる。
『知恵の書の力により、息封じの兵をあなたの――化身、従者、武装、どれにしますか?』
三つの選択肢がいつものように並んで浮かんでいた。俺は反射的に手を伸ばして選ぼうとしたが、指を伸ばした瞬間、今回は実際には選択の余地がないことに気づいた。
二つの選択肢が前触れもなく暗くなり、完全に消え去っていた。残ったのは「化身」だけで、かすかな光の輪を纏いながら一つだけ浮かんでいた。
「え?」
俺は固まった。
「なんで一つしか残ってないんだ?」
「どういうこと?」
ユウキが覗き込みながら、顔中に困惑を浮かべた。
「三択のはずじゃないの?」
セバスティアンの触角がぴくりと動いた。彼も何かおかしいと感じ取っていた。
嫌な予感が胸に落ち着いたが、もう後戻りはできなかった。俺は無理やり自分を奮い立たせ、残った唯一の選択肢を確定させた。
ワカナも何かを感じ取ったらしく、手を伸ばして止めようとした。
「待って、まず先に――」
もう遅かった。
光が俺の全身を即座に呑み込んだ。
次の瞬間、四肢の感覚がなくなり、風も感じず、足元の地面も感じず、自分がまだ呼吸しているのかすら分からなくなった。目の前の光景は死んだような灰色の静止画へと凍りつき、まるで誰かが一時停止のボタンを押したまま、再生を押し忘れているかのようだった。
「マスミ?」
サチの声がとても、とても遠くから聞こえてきた。俺は答えるために口を開くことすらできなかった。
「マスミ!」
ワカナの叫びにパニックの色が滲んでいた。
俺はまだ聞くことができた……そして異常なほどはっきりと聞こえた。これが今、俺と外の世界を繋ぐ唯一の感覚だった。
「あいつ……あの石碑になっちゃった!?」
ユウキの声が鋭く跳ね上がった。彼女らしくない恐怖が滲んでいる。
石碑だって!?
道理でみんなの声がこんなにはっきり聞こえるわけだ――おそらくこの石碑が音を伝えるのに異常に優れているからだろう。
同時に、配信のコメントも「聞こえて」いた。あれ……いつからこのイヤピース、テキストを自動で音声に変換するようになったんだ? どんなAIだよ? すごすぎるだろ!
俺は次々と流れ込んでくるコメントを「聞いて」いた。
『????????』
『マジで何このどんでん返し』
『いやいやいやいや』
『みんなパニックやめて何か考えて』
淳一のコメントが、彼にしては珍しく皮肉を一切滲ませず、切迫した一言だけを寄せていた。
『ワカナ、今あいつに何か生命反応みたいなのある?』
ワカナは返答に集中できず、パニックが声に滲み出ていた。
「わ、分からない!」
俺は全力でどうにか一つでも音を、動きを、何でもいいから出そうともがいたが、この命のない外殻に完全に閉じ込められていて、瞬き一つできなかった。
「マスミ! 聞こえる?」
サチの両手が俺の――いや、石碑の表面を何度も撫でていた。
今の俺には触覚がなかったが、その手が擦れる音はかすかに聞こえた。これはどんなアザラシ級の聴力なんだ。
「お願い、返事して!」
フェアリーが石碑の周りを何度も旋回していた。俺は風の音だけで彼女の正確な位置が分かった。彼女は石碑の表面に体を押し当て、何度も試みたが、まったく反応がなかった。
「駄目です、こんなものには何もできません」
その声はひどく震えていた。
アラユが鋏で石碑の表面を軽く叩き、鈍い反響を立てた。
「これ、あのゴーレムが最初に現れた時とまったく同じだ」
「じゃあマスミは今……あの石碑が前にいた状態と同じってこと……」
ワカナの声が不意に途切れた。彼女自身もその先を言い切れなかった。
サチは風纏う爪でその石碑を動かそうとした。四本の機械の腕がその縁を掴んだが、全力を込めてもぴくりとも動かせなかった。まるでこの石碑がすでに大地と完全に一体化してしまっているかのようだった。彼女は手を離して後ずさった。胸を激しく上下させ、目はすでに赤くなっていた。
ユウキが勇気の剣を抜き、その切っ先を石碑の表面の上に構えたが、振り下ろすのを躊躇っていた。
「これを切ったら、逆に彼を傷つけることになる?」
「絶対にやめて」
ワカナが鋭く遮った。彼女らしくない鋭さが声に滲んでいた。
セバスティアンは石碑を見つめたまま長い間動かず、触角を少し垂らしていた。
「マスミ様、聞こえておられますか? もし聞こえているなら、何とかしてお知らせを」
反応はなかった。
この死んだような静寂の中で、俺はかすかに時間が過ぎていくのを感じ取っていた――外のパニック、呼びかけ、触れる手、そのすべてが音という形で俺のもとに、はっきりと、そして大きく届いていた。
ワカナが不意に立ち上がった。声には漂流物にすがりつくような切迫感があった。
「待って、ドロップ! あれと一緒に手引書もあったよね?」
ユウキがすぐに察した。
「伏羲の操作手引書!」
彼女は振り返って戦場の残骸を掘り返し、埃を払うと、正体の分からない素材でできた分厚く風化した書物が現れた。縁にはまだ暗い赤色の染みがいくつか残っている。彼女はそれをひったくるように掴んだ。その動きはページが千切れそうなほど乱暴だった。
がさがさと探る音が聞こえ、それから焦ったようにページをめくる音が次々と、速く慌ただしく続いた。
「なんて書いてある?」
サチの声がほとんど懇願するように響いた。
「お願い、解決策があるって言って」
ワカナはすぐには答えず、ページをめくる音が続いた。自分自身の息もますます荒くなっていくのが混じっている。




