第210話 四体目はどこに?
その風は相変わらず上向きに吹き続けていた。一陣また一陣、混沌としながらも、どこかにパターンを感じさせる吹き方だった。
俺はまったく静止したそのゴーレムの残骸を見つめた。指先には配線を引きちぎったかすかな痛みがまだ残っている。その分節した体は地面に崩れ落ちたままで、文様の板にはもう一つも光が残っていなかった。本当に完全に死んだように見えた。
俺たちの周りには引き抜いた部品が散らばっていて、ひびの縁には何本かの切れた配線が垂れ下がったまま、その風にかすかに揺れて、互いに軽く触れ合う音を立てていた。
砂埃はまだ完全には落ち着いておらず、細かい粒子の一部はその上昇気流に支えられたまま、上がりも下がりもせず宙に留まっていた。まるで誰かが一時停止のボタンを押したかのようだった。
敵は倒した。だったら風はもう止まっていてもいいはずじゃないか?
だが今この瞬間も吹き続けているこの風が、はっきりと物語っていた――俺たちはまだ本当の意味で成功していないのだと。
そもそもこの風はどこから来ているんだ?
「まずみんなの状態を確認しよう」
ワカナの声が俺を現実に引き戻した。彼女はすでにアラユのそばにしゃがみ込み、サラダの組織で塞いだ傷を丁寧に確認していた。
「アラユ、調子はどう?」
「まだ動ける」
アラユが無理やり体を起こした。甲羅のひびがかすかに引きつり、顔が歪んだが、痛みの声は上げなかった。
サチの風纏う爪がそっと彼を支え、無理に体を起こさせないようにした。
「まだ動かないで、傷がちゃんと塞がってるか先に確認させて」
彼女の爪が移植した組織を丁寧に押してみて、縁から体液が漏れていないことを確認してからようやく力を抜いた。フェアリーが飛んできて、さらにかすかな光の層を加え、その封じをさらに補強した。
サラダは近くをゆっくりと這いながら、目には相変わらずあの呆けたような色を浮かべ、時折アラユのほうを見上げていた。まるで自分が差し出したその一部が本当に役に立ったのか確かめているかのようだった。
「あいつにそんな目で見られると、なんか居心地悪いな」
アラユが呟き、眼柄をそらしてサラダの視線から目を逸らした。
ユウキは勇気の剣を鞘に収め、俺のところに歩み寄ってきて、イヤピースの位置を直した。
「視聴者たち、俺たちが無事かどうか気にしてるはずだ」
俺も自分のイヤピースを直すと、すぐさまチャットが一気に流れ込んできた。一つまた一つとコメントが続き、みんな声を届けたい一心で投げ銭しまくっていた。
『最後のあの一撃、常軌を逸してた』
『アラユよくやった、報酬受け取りに行っておいで』
『あのリプレイもう三回見た』
『あのゴーレムが崩れ落ちた瞬間、鳥肌立った』
『四体目撃破、おめでとう!』
良太のコメントもその興奮に混じっていた。いつもの大げさな口調に、花火が三発弾ける効果音付きで。
俺は深く考えず、その場の反応をそのまま口にした。
「良太が四体目撃破おめでとうって言ってる」
セバスティアンの触角がぴくりと動いた。何か言いたそうな様子だったが、何も言わず、崩れ落ちたゴーレムを黙って見つめていた。
ワカナが先に笑った。
「良太、本当にお祝いのタイミング読むの上手いよね。さっき死にかけてた時も同じテンションだったし」
ほとんど間を置かず、また別の音声メッセージがイヤピースに届いた。その口調は鋭く、良太の興奮とは正反対だった。
『お前らの計算、間違ってるっぽいぞ。あいつ自分で「五号」って言ってたじゃん』
淳一の声だった。彼はいつも俺たちの浮かれ具合に水を差すのが好きだった。
俺は一瞬固まった。
五号?
俺は無意識のうちに、あの石碑が目覚めた瞬間のことを頭の中で再生していた――あの平坦で感情のない機械音声が、はっきりと何かを告げていた。一言一言に重みがあって、感情のかけらもなかった。
「守護者五号、全力稼働モードに移行」
その台詞を改めて口に出してみると、自分の声が勝手に遅くなっていった。まるで自分自身の記憶を再確認しているかのように、一語一語がゆっくりと出てきた。
ユウキが真っ先に眉をひそめ、それから鋭く体を起こした。手にした鞘がかすかにかちりと音を立てる。
「待って――本当にそう言ってた」
「言ってた」
サチの手がアラユの傷の上で止まり、一瞬作業することを忘れて、目を見開いた。
「でも私たち、あれを四体目だってずっと思い込んでた」
ワカナの表情も曇った。アラユの出血を止めるのに使っていた布切れを手の中で握りつぶす。
「違うの? ヒドラが三体目だったから、次のは四体目のはずじゃ……」
彼女は言葉を途中で止め、自分でも「何かおかしい」という感覚を捉え、俺たち全員の顔を見回した。まるで誰かに否定してほしいとでも言うように。
誰も否定しなかった。
セバスティアンの触角が俺たち全員の間を行き来したが、彼は口を挟まず、ただ静かに聞いていた。その顔には珍しい躊躇いが浮かんでいた。
アラユが少し体を起こし、眉をさらに深くひそめながら、巨大な鋏の片方で地面を軽く叩いた。
「じゃあ俺たち、ずっと四体目と戦ってると思い込んでたのに、実は最初からあれは五体目だったってことか?」
「じゃあ四体目はどこにいるんだ?」
ユウキの声が鋭く跳ね上がり、剣の柄を握る手に力がこもって関節が白くなった。
「俺たち、いつ四体目と戦ったんだ?」
誰も答えられなかった。
俺は頭の中で必死に記憶を辿った――一体目はジェリー、二体目は完全なる飛行者、三体目はあのヒドラ、それから……それからこの石碑が目覚めて五体目になった。
確かに間に空白がある。
「それに……もし各敵が風向きの変化を表してるなら、最初の下向きの圧力、それから乱気流、それから内向きの引力……そう、四体目は上昇気流のはずで、五体目が真空だ」
ユウキが真剣に組み立て始めた。
チャットには物知り顔で茶化してくる者たちが一気に押し寄せてきた。
『え、マジで一体飛ばしてたの?』
『これは酷い、十人もいて誰も気づかなかったのか』
『笑う、このメンバー誰も数えられないのかよ』
『じゃあ実際は五体じゃなくて四体しか倒してないってことか』
『良太、出てきて謝れ』
淳一が一言だけ落とした。口調にはわざとらしい驚きが滲んでいた。
『俺だけがマジで気づいてたってこと?』
「こいつ……」
ワカナが笑いたいのか呆れたいのか分からない様子で呟いたが、まったく言い返せなかった――淳一が完全に正しかったからだ。
良太のコメントがすぐ後に現れた。口調が興奮から一転して気まずさに変わっている。
『いや、正直そんなにちゃんと考えてなかった……』
チャットは笑いの渦に包まれ、からかいの絵文字が画面いっぱいに流れ込んできた。
俺は地面に横たわる死んだゴーレムを見つめ、それから相変わらず頑固に上向きに吹き続けるあの風を見上げた。背筋に寒気が這い上がってくる。
今目の前にあるこの風……そうだ。四体目のボスは、ずっとここにいたのだ。
サチも俺の視線を追い、かすかにはためき続ける自分の服の裾を持ち上げて、声に不安を滲ませた。
「この風……もうかなり長く吹いてるよね」
ユウキがゴーレムの残骸のところへ歩いていき、しゃがみ込んでその今は真っ暗な文様の板を丁寧に観察した。指先がそのひびの縁で止まる。
「この風、あいつが倒れてから止まる気配、一つもない」
「もしこれが四体目のボスの風なら、ずっと近くにいたってことになる。俺たちが一度もそれを本物の敵として扱わなかっただけで」
俺は相変わらず果てしないその空間を見渡した。胸の奥から込み上げてくるのは、正体不明の不条理さではなく、はっきりとした戸惑いだった。
ワカナが腕を組み、さらに眉をひそめた。
「じゃあ私たちずっと、これに吹き飛ばされて、高く巻き上げられて、また落とされてきたのに、一度もそいつと正面から向き合ったことがなかったってこと?」
「まさにそういうことのようですな」
セバスティアンが周囲を見渡しながら言った。
アラユがサチの腕から体を起こし、風の吹いてくる方向を見つめた。声に苛立ちが滲んでいる。
「じゃあ……そいつは一体どこにいるんだ?」
振り返ってみれば、俺たちは観の門の従者を総動員して捜索までさせていた。そして見つけたのは四体目の敵などではまったくなく、それを完全に飛び越して五体目を見つけてしまっていたのだ。
もしそもそも見つけられないままだったらどうなっていたんだろう。
俺は自分にそう問わずにはいられなかった。




