第198話 初期戦力評価
その冷たい機械音声は、死んだように静まり返った空間に響き渡った後も、石碑の変化を止めなかった。
『大有之天井への通行許可を提示してください』
ひびは石碑の頂上から根元まで一気に広がり、石の外殻が丸ごと音を立てて剥がれ落ちた。その下から現れたのは層状に分節した構造で、人型の体などではなく、節ごとに繋がった獣のような機構だった。百足のように、それぞれの節が太い金属の関節で連結され、表面には暗い灰色の石の質感と鈍い金属光沢が織り交ざっていた。
「な、何あれ!」
ワカナが目を見開いた。声に恐怖を隠しきれない。
その巨大な体は前半身をゆっくりと地面から持ち上げた。十数対もの短いながらも凄まじく太い脚がその重さを支え、節が一つずつ順に捻れて伸び、低い歯車の軋み音を立てる。まるで長らく眠っていた機械がゆっくりと目覚めていくかのようだった。
「みんな気をつけろ、あいつの動きのパターン、かなり不規則だ」
ユウキが勇気の剣を握り直し、ゴーレムの節の一つ一つの揺れを警戒しながら見つめた。
俺は捜索任務でずっと一緒についてきていた風霊鳥の群れに目をやり、いつも通りの習慣で指示を出した。
「歌ってくれ、強化が要る」
翡翠色の羽を持つ鳥たちがすぐに近くに寄り、嘴を開いてあの澄んだ旋律を歌い始めた――だがその鳴き声は不自然なほど弱々しく、まるで見えない何かがその音の大半を断ち切っているかのようで、途切れ途切れの断片的な音しか残らず、まとまった歌にはまったくならなかった。
「どうなってる?」
俺は眉をひそめ、周囲の空気に意識を集中させたが、あの馴染み深い強化の高まりはまったく訪れなかった。
「ここの空気が薄すぎるんだ」
ユウキがすぐに察し、声に諦めの色を滲ませた。
「音は空気を振動させて伝わるものだ。真空に近いこんな環境じゃ、あの歌がまったく届かない。だから強化の効果も働きようがない」
「これは問題だな」
俺は歯を食いしばりながら風霊鳥たちを下がらせた。不安が湧き上がってくる。いつもの強化なしで、この戦いはみんなの純粋な地力だけで戦うしかなくなる。
ゴーレムの頭――そう呼べるならの話だが――は平たく無表情な石の塊で、先ほどの石碑とまったく同じ文様が刻まれていた。今はそれが淡い青色の光を放ち、その動きに合わせて着実に脈打っている。
『照合失敗。接触中の敵性個体をスキャンします』
「動いた!」
サチが叫んだ。
ゴーレムはまっすぐこちらに突進してきた。見た目には鈍重そうな分節した体だったが、想定よりもはるかに機敏で速い動きを見せる。節の一つひとつが予測不可能なリズムで揺れ、ある時は左右に捻れ、次の瞬間には全長を一気に振り上げる。次にどの角度から攻撃が来るのか、まったく読めなかった。
「散れ!」
俺は叫び、全員が一斉に散った。
ゴーレムの太い脚の一本が地面に激しく叩きつけられ、乾いた土に深い陥没穴を穿った。砂埃があちこちに舞い上がる。
「あの力、常軌を逸してる!」
アラユが叫び、その重い一撃の衝撃波をかろうじて飛び退いてかわした。
「これは純粋なパワータイプの攻撃だ!」
ユウキが鋭く叫び、ゴーレムの動きを見つめた。
「小細工なしの、真っ向勝負の力任せだ!」
「なら正面から受けて立つのも選択肢に入るね!」
サチが表情を明るくし、翠甲羅を構えると同時に、背中の風纏う爪を広げた。
「起動したばかりでまだウォーミングアップ中だし、たぶんまだ使えない機能がたくさんあるはず!」
案の定、サチの推測通り、ゴーレムの連結した節々は素早く動く際にかすかな躊躇いとぶれを見せていた。まるでその巨体の連携をまだ完全に把握しきれていないかのようだった。
「今がチャンスだ!」
ユウキがその隙を突いて距離を詰め、ゴーレムの弱い関節の連結部分の一つに剣を強く突き立てた。
剣が命中した瞬間、火花が散り、その関節に浅い傷跡が残った。ゴーレムは金属の鋭く軋むような悲鳴を上げ、一瞬体勢を崩した。
「効いてる!」
ワカナが興奮して叫んだ。
アラユもその勢いに乗じて、紫がかった赤茶色の大きな鋏をゴーレムの別の節に強く叩きつけた。その力は実際に石の外殻にひびを入れた。
「こいつの防御、見た目ほど鉄壁じゃないぞ!」
アラユが得意げに叫んだ。
マファガイスも静かにゴーレムの側面へと回り込み、その注意が正面の攻撃に向いている隙を突いて、尾刺での一撃の機会を窺っていた。
ニャリクとフェアリーは頭上を旋回しながら、ゴーレムの全体的な動きのパターンを上から観察し、下にいるみんなに適切なタイミングでかわし方の警告を送っていた。
イヤピースの中の視聴者たちも、まるで自分たちがその戦場にいるかのように反応していた。
『このゴーレムのデザイン異様すぎる、百足の兵器って感じ』
『十人がかりで攻めてるの、絵になるな』
『ウォーミングアップ中を捉えたってこと?』
『この戦い、結構順調に進んでる』
『このまま一気に決めてほしい』
一瞬、戦況は俺たちに傾いているように見えた。十人チームの連携と数の優位に加え、ゴーレムが自分の体にまだ慣れていない様子だったことも重なり、最初の数回のやり取りでいくつか有効打を与えることができていた。
だが全員の勢いが乗ってきたちょうどその時、ゴーレムの頭に刻まれた文様が不意に、さらに鋭く密度の高い淡い青色の光を放ち始めた。
「あ――光が強くなった!」
ワカナが息を呑み、思わず後ずさった。
あの冷たい機械音声がまた響いた。今度はどこか言葉にしがたい調子の変化を帯びていた。まるで単純なプログラム命令だったものが、より深い再調整を経ているかのようだった。
『脅威度評価完了。対抗プロトコルを起動します』
ゴーレムの分節した体が不意に激しく震え、それまで少しぎこちなく躊躇いがちだった動きが、目に見える速さで滑らかで正確なものへと変わっていった。まるでこれまでの隙はすべて、俺たちの力量を測るためだけに意図的に演じられた仮の姿だったかのようだった。
「様子がおかしい!」
ユウキの表情が変わり、素早く後退した。
ゴーレムは一瞬で全身を振り回した。動きは残像がぼやけるほどで、その脚の一本がアラユの立っていた場所を強く薙ぎ払った。もし彼がすんでのところで転がってかわしていなければ、その力で吹き飛ばされていたはずだ。
「速くなったし、威力も上がってる!」
アラユが動揺しながらも叫んだ。大きな鋏の一つにはすでにはっきりとした擦り傷が見えている。
マファガイスもその隙を突いて奇襲を仕掛けようとしたが、ゴーレムの節の一つが不意に振り返ってきて激しく叩きつけられ、勢いよく吹き飛ばされて、くぐもった呻き声とともに地面に叩きつけられた。
「マファガイス!」
ユウキが叫び、助けに駆け寄ろうとしたが、抜け出す前に別の波状攻撃に押さえ込まれてしまった。
イヤピースの中のコメントも一気に警戒の波に変わった。
『やばい、弱いふりして誘い込んだってこと!?』
『この形勢逆転、早すぎる』
『マファガイス大丈夫か、今の一撃えげつなかった』
『さっきまでの優勢、完全に消し飛んだ』
『このゴーレム、本当に見た目ほど単純じゃない』
俺はまったく違う様相を見せ始めたそのゴーレムを見つめた。胸の中に寒気が湧き上がってくる。先ほどまでの見せかけの弱さは、おそらく俺たちの力量をずっと測るためのものだった。そして今、その見極めを終え、真の戦闘態勢に入ったのだ。
「みんな気をつけろ、もう手加減はしてこない!」
俺は歯を食いしばりながら叫び、知恵の書を握りしめた。戦況が一段また一段と、はるかに厳しいものへと傾いていくのを感じながら。




