第192話 昇りて落ちて
その上昇気流はますます強まり、一行の足元がかすかに震え始めた。気流が脈打つたびに、名状しがたい圧力ではなく、はっきりとした重みが辺り一帯にのしかかってくる。
「この風、一体どこから来てるんだ?」
ユウキが警戒しながら周囲を見渡したが、はっきりとした形も発生源の兆しも見つけられなかった。
「上なのか下なのかも分からない」
「両方警戒しておいたほうがいいかもな」
俺は知恵の書を握りしめ、この混沌とした気流から何か手がかりを掴もうとしたが、その力が着実に強まっていくのを感じるだけで、発生源を特定する方法はなかった。
そのとき、その気流が前触れもなく爆発するように噴き出した。足元から凄まじい力が真上へと突き上げ、一行全員を一気に空へと巻き上げる。
「わああああ――!」
ワカナの悲鳴が轟く風の音に混じり、体が勢いよく上へと吹き飛ばされた。
ユウキ、サチ、俺はほぼ同時にピクシーのタトゥーを発動させ、あの馴染み深い浮遊感がすぐさま体を安定させた。気流に巻き上げられていても、飛行能力で方向を制御できる。ニャリクは水を得た魚のようにその気流の中を動き回り、何度も宙返りをしながら興奮した声で叫んだ。
「この風、完全に把握したぜ!」
だが海民の四人は、そうはいかなかった。
「な――何が起きてる!」
アラユが気流にさらわれて完全に地面から浮き上がっていた。心底驚いた様子だった。普段なら、どれだけ強い風でもその重い体を宙に浮かせられるはずがない。紫がかった赤茶色の大きな鋏が虚しく空を掴み、何も掴めないまま全身が空中で転がっていく。いつもの落ち着きと自信は完全に消え失せていた。
プルートゥンシャの灰白色の甲羅も空へと巻き上げられていた。体を丸めて重心を安定させようとしたが、それでも激しい気流に無力に振り回されている。マファガイスも珍しく短い、くぐもったうめき声を上げ、背中の尾刺が激しく暴れ、同じく空中で姿勢を制御できずにいた。セバスティアンの赤い触角は強風の中で激しく震え、体を伸ばしてバランスを取ろうと懸命だったが、それでもどんどん高く吹き飛ばされていく。
「あの人たち、飛べないんだ!」
サチがはっとその致命的な違いに気づいて叫んだ。
「みんな、助けに行くぞ!」
俺は叫び、真っ先にアラユに向かって急降下した。
ユウキとサチもすぐさま散開し、プルートゥンシャとマファガイスへと向かった。ワカナはセバスティアンから目を離さず、必死に自分の飛行軌道を制御しようとしていた。
「マスミ様、私のことはどうかお気になさらず――」
セバスティアンが言い終える前に、その上昇気流が不意に弱まり、そして前触れもなく完全に消え去った。
「まずい、風が止まった!」
フェアリーが甲高く叫んだ。
海民の四人は一斉に気流の支えを失い、恐ろしい速さで地面へと落下し始めた。
「セバスティアン!」
ワカナが全力で彼を追って急降下したが、その距離はなかなか縮まらず、パニックで今にも泣きそうになっていた。
俺は空中で鋭く方向転換し、最も速く落下しているアラユに向かって突っ込んだ。鉤爪の手でかろうじてその巨大な鋏の一つを掴み、無理やり落下を止める。
「捕――捕まえた!」
俺は歯を食いしばりながら喘いだ。アラユの巨体の重さに腕が抜けそうになるのを感じる。
「た、助けていただき感謝いたします、マスミ様」
アラユは珍しくいつもの傲慢な態度を完全に忘れ、声に安堵の震えを滲ませた。
ユウキも間に合い、プルートゥンシャを抱え上げた。二人で協力してその重い体を安定させ、少しずつ地面へと降ろしていく。サチはマファガイスにしっかりとしがみつき、風纏う爪の四本の機械の爪を一斉に噴射させて降下を制御し、辛うじて硬い着地を免れた。
ワカナとセバスティアンの間だけが、まだ頑固な距離を残していた。
「セバスティアン、耐えて!」
ワカナが声の限りに叫び、飛行速度を限界まで押し上げながら、セバスティアンの体が乾いた泥へと墜落していくのを恐怖の目で見つめていた。
ぎりぎりのその瞬間、ニャリクが目にも留まらぬ速さで横から飛び込み、地面に叩きつけられる寸前でセバスティアンの体を受け止めた。二人は空中で何度か転がりながら、ようやく落下の勢いを殺し、地面へと降り立った。
「ハッ、間に合った!」
ニャリクが息を切らしながら、安堵の笑みを浮かべた。
「感謝する」
セバスティアンは少し乱れた触角を整えながら、声に本物の感謝を滲ませた。
「この老いぼれ、この戦場が我々にとってどれほど不利であるか、身をもって思い知りましてございます」
ワカナはようやく息をつき、着地した瞬間その場に崩れ落ちた。
「本当に肝が冷えた。もう少しで間に合わないところだった」
イヤピースの向こうから一斉にコメントの波が響き、ワカナは反射的に答えた。
「みんな心配しないで、危なかったけど間に合ったから!」
アラユが困惑した様子でワカナを見た。鋏はまだ衝撃の余韻でかすかに震えている。
「誰に向かって話してるんだ? ここには俺たちしかいないだろう」
「あ、そうだ、みんなイヤピース持ってないんだった」
ワカナはそこで、海民の五人がこの仕組みの存在自体を知らないことを思い出し、慌てて説明した。
「私が使ってる機材なんだけど。遠くの視聴者に私たちの声を届けたり、みんなのコメントを読み上げて聞かせたりできるの」
「視聴者?」
プルートゥンシャが首を傾げた。声に困惑が滲んでいる。
「つまり、他の者たちがマスミ様のこの旅をずっと見守っていたということですか?」
「話すと長いんだけど、要は、渾沌界のたくさんの人がずっと私たちのやってることを見てるってこと」
サチが笑顔で付け加え、真理の鏡からさらにいくつかイヤピースを取り出して、海民の五人に配った。
「これつけたら、みんなの話してることも聞こえるようになるよ」
セバスティアンは興味深そうにイヤピースを受け取り、慎重に装着した。装着した瞬間、賑やかな声の波が耳に流れ込んでくる。
『おっ、新キャラ五人にもついにイヤピース配布か』
『海民の戦士たちの反応かわいい、配信初体験だ』
『今のセバスティアンの表情、貴重すぎる』
『ようこそ、この変な体験に慣れてくれると嬉しい』
「こ、これはなかなか奇妙な体験でございますな」
セバスティアンは瞬きをし、触角をかすかに震わせた。まだこのまったく新しい感覚を処理しきれていない様子だった。
「会ったこともない者たちが、ずっと我々の様子を見ていたとは」
「そのうち慣れるよ。私も最初は信じられなかったし」
ワカナが笑いながら彼の肩を叩いた。
アラユはイヤピースをつけ、しばらく聞いてから眉をひそめ、不満げに口を開いた。
「なんでこの人たち、俺たちが失敗するのをそんなに楽しそうに見てるんだ? あのコメント、『海民の戦士たちって普段あんなに強そうなのに、今は逆に守られる側になってる』ってどういう意味だ!」
「ハハ、気にすんなって、こいつら言い方がちょっとストレートなだけだから」
ニャリクがアラユの肩を叩いた。口調は気楽なものだった。
マファガイスはイヤピースをつけた後、あまり多くを語らず、ただかすかに眉をひそめただけだった。見知らぬ大勢に見られるというこの状況に慣れるには、まだ少し時間が必要そうだった。
イヤピースの中のコメントがまた盛り上がった。
『マファガイスの顔、もう「これには慣れたくない」って言ってる』
『アラユの反応リアルすぎる、いいね押しとく』
『海民の五人がこのシステムを初体験してるの見てるの、なんか癒される』
『これで本当に十人配信になったな、豪華すぎる』
俺たち五人は息を整えて集まり、周囲を見渡したが、依然として敵のはっきりした姿は見つけられなかった。ただあの突風の力だけが、次の一撃を溜めているかのように、空気の中をかすかに漂っていた。
「この風のパターン、これまでとはまるで違う」
ユウキが眉をひそめた。声に重々しさが滲んでいる。
「安定した力じゃなくて、突発的に噴き出しては、また突然止まる。タイミングを読む方法がない」
「つまり、俺たちの飛行能力に頼り続けるだけじゃダメだってことだ。あの突然の落下からみんなを守る方法が要る」
俺は歯を食いしばりながら分析し、まだ明らかに動揺している海民の四人を見やった。
「今回は本当にお前たちに頼るしかなさそうだな」
アラユが珍しく真剣な口調で言い、飛べる俺たちを見つめた。いつもの傲慢さは消え、代わりに本物の誠実さが滲んでいた。
「こういう戦場じゃ、俺たち四人にできることはあまりない」
イヤピースの中のコメントがまた盛り上がった。
『この仕組みえげつない、風止んだら即自由落下じゃん』
『ニャリクの救出、めちゃくちゃかっこよかった、ギリギリだったな』
『海民の戦士たち、普段は強そうなのに今は守られる側』
『このボス、どこに隠れてるんだ、全然見つからない、緊張する』
『十人パーティーってことは全員カバーしなきゃいけないってことか、難易度倍増だな』
俺は一見静かに見えるその空間を見つめた。その水面下には不気味な気配が漂い続けている。知恵の書を強く握りしめた。
俺たちはまだ、本当の敵がどこに潜んでいるのか、まったく見当もついていなかった。




