第191話 懐かしき友
「そういえば、マスミ様は前回お会いした時よりも、ずいぶんと力をつけられたようですね」
セバスティアンが真っ先に口を開いた。長い赤い触角がかすかに揺れる。声には本物の興味が滲んでいた。
「あの一戦の後、さらに色々と手に入れられたのでしょう」
「この間でいくつか新しいものを手に入れた」
俺は微笑み、中孚堂での決戦以来手に入れた装備を紹介していった。
「例えばサチの背中にあるこれ、風纏う爪っていう、最近手に入れた新しい武装だ。四本の独立制御の機械の爪で、攻撃にも防御にも使える」
サチは背中の四本の機敏な爪を得意げに披露し、簡単な防御と攻撃の動作をいくつかやってみせた。空中に鋭い弧を描いていく。ニャリクはそれを見て目を輝かせた。
「その造り、なかなか大したもんじゃないか! ちょっと近くで見てもいいか?」
「気をつけてね、壊さないでよ」
サチは笑いながら少し前に出て、ニャリクが興奮した様子で四本の爪の周りをぐるぐる回りながら、感心したように口を鳴らすのを見ていた。
「俺自身も一つ能力を手に入れた」
俺は続けて、あの触手丸薬の効果を簡単に説明した。皮膚から刺胞のついた触手を自在に生やせて、驚くほど速く再生する。
アラユの紫がかった赤茶色の大きな鋏がかすかに震えた。声には珍しく真剣さが滲んでいる。
「触手か。うちの連合のヤドカリ族もそれ持ってるぞ。今回はちょっとこっち寄りの何かになったってことだな」
プルートゥンシャがそれを聞いて目を細めた。彼にしては珍しい仕草だ。声には面白がっている様子が滲んでいた。
「それは我々海民の生理構造にも似た部分がありますな。マスミ様とは今後、さらに語り合えることが増えるかもしれません」
「いつかみんなと情報交換できる日が来るかもな」
俺は半分冗談めかして言い、みんなが軽く笑い合った。
セバスティアンは静かに首を振り、赤い触角を垂れさせた。昔の記憶を辿るような、思索的な色が声に滲む。
「それでも、この老いぼれの心に一番深く刻まれたのは、あの承風鈴でございますな」
「その話だけど――」
俺は少し気まずそうに頭をかいた。
「あの手はもうお前には二度目は通用しないだろうな」
「あの技には、これからも本当に警戒させていただきます」
セバスティアンが軽く頷いた。長い赤い触角がその動きに合わせて揺れる。
「風霊鳥の強化を重ね、あの品の共鳴でさらに何度も倍加させ、最後に瞬間移動での急所への一撃で締めくくる――まさかとどめを刺したのがあの小さなピクシー様だったとは、この老いぼれ、思いもよりませんでした」
「それはフェアリーのおかげだ。あの作戦全体、彼女の発案だった」
俺はフェアリーに目をやった。彼女は誇らしげに胸を張り、翅を少し速く羽ばたかせた。
「なるほど」
セバスティアンがくすりと笑った。声に恨みがましさはまったくなく、ただ感嘆だけがあった。
「これほど巧妙な手であれば、この老いぼれが完膚なきまでに負けたのも道理でございますな」
「ハハ、あの鈴には二度と近づかないようにしないとな!」
ニャリクがからかうように口を挟み、みんなの間にまた笑いが広がった。
少し離れたところに立っていたマファガイスが、珍しく口を開いた。
「研究する価値のある戦術だ」
短い言葉ではあったが、本気でそう思っているのが伝わってきた。
ワカナも興味深そうに俺の腕の中の知恵の書を覗き込んだ。
「そういえば、マスミはあの雷霊鳥への変身もあるよね。みんな見たことある?」
「その能力については承知しております。直接目にしたことはございませんが、皆様が渙之泉庭からここまでどうやってたどり着かれたか、よく存じ上げております」
セバスティアンがからかうような口調で答えた。
笑いが落ち着いたところで、セバスティアンが話題を変え、口調を実務的なものへと戻した。
「マスミ様、昔の借りも清算いたしましたし、そろそろ今後の役割分担について話し合ってはいかがでしょうか」
「そうだな」
俺は頷き、急に大きくなった一行を見渡した。
「アラユとサチが組むのがよさそうだ。二人とも正面から一撃を受け止められるタイプだしな」
「私もそう思ってた!」
サチが嬉しそうにアラユに手を振った。
「一緒に戦うの楽しみにしてる!」
「フン、実際どんな働きするか見てからだな」
アラユがそっぽを向いた。相変わらず素っ気ない口調だが、耳の先がかすかに赤くなっている。横目でワカナにも警戒するような視線を送った。以前彼女に強力な酸を目にかけられたことを、まだ気にしているらしい。
「マファガイスの戦い方はまた違って、死角を突いて好機に一撃を加えるのが得意だ。ユウキの直接的なやり方とも相性がいい」
セバスティアンが付け加えた。
「正面からの衝突は好まない」
マファガイスが珍しく口を開いた。口調は簡潔で、背中の長い尾刺がかすかに揺れる。
「隙は必ず見つけられる」
ユウキが勇気の剣を握り直し、マファガイスを見つめた。声には期待が滲んでいる。
「じゃあ頼りにさせてもらう」
「ワカナはアイテムの補給を担当してもらって、俺は戦場の情報をまとめて、みんなの調整をお手伝いできます」
セバスティアンが続けた。
「いいね!」
ワカナが嬉しそうにセバスティアンに手を差し出した。
「これからよろしくね!」
「光栄に存じます」
セバスティアンがかすかに微笑み、丁寧にその手に軽く触れた。
「じゃあ俺はフェアリーと一緒に索敵と機動支援を担当するぜ!」
ニャリクが張り切って申し出た。フェアリーも同意して頷く。
「プルートゥンシャは後方を固めてもらって、必要な時にいつでも支援に回れるように」
俺が締めくくった。
「この身にふさわしい役目でございます」
プルートゥンシャが急ぐ様子もなく答えた。声には自嘲気味なユーモアが滲んでいる。
俺たちはしばらく時間をかけて一人ひとりの役割を確認し合い、一行全体の構成が徐々に形になっていった。サチとアラユが前衛の防御を担当し、ユウキとマファガイスが直接攻撃と精密な一撃を担当し、ワカナとセバスティアンが後方支援と連携調整を担当し、ニャリクとフェアリーが索敵と機動を担当し、プルートゥンシャが後方を固めていつでも支援に回る。
イヤピースの中のコメントも興奮に沸き立った。
『よし、みんなに役割ができた』
『アラユとサチのペア、意外と合ってる』
『マファガイスの暗殺者みたいな戦い方かっこよさそう』
『セバスティアン軍師ポジション、ぴったりすぎる、雰囲気完璧』
『ちゃんとした軍隊っぽくなってきた、次の戦い楽しみすぎる』
役割がおおよそ決まったところで、俺たちは隊列を整え、巽之窗の突破口を探して荒野の奥へとさらに進んでいった。
一行がこんなにも大きくなったことで、道中の雰囲気も明らかに賑やかになった。ニャリクは絶えず先へ飛んで偵察しては戻って報告し、アラユは相変わらず口が悪いながらも自然とサチの隣に並んで、周囲に気を配り続けていた。マファガイスはずっと静かに側面に控えていて、いるのを忘れそうになるほどだったが、それでもどこか安心感を与えてくれる存在だった。
しばらく歩いていると、俺はふと周囲の気流がまた変化しているのに気づいた。
それまでの内向きの引力が、今度はまったく別のものへとゆっくりと変わりつつあった。下から立ち上る気流が着実に強まり、足元でかすかに渦を巻き始めている。
「この風……また違う」
ユウキが眉をひそめ、この新しい変化を警戒しながら感じ取っていた。
「今度は下から上に吹いてる?」
ワカナが驚いた様子で言った。その気流に足取りがかすかに揺らぐ。
フェアリーは空中でホバリングしながら、慎重に気流の方向を探った。
「そうです、この風、着実に強まっていて、方向もはっきりしてます――まっすぐ上です」
そのとき、ニャリクが興奮した声を上げ、一行の最前列へと飛び出した。明るい黄色の目に意気込みが宿っている。
「これは俺の得意分野だ!」
彼は自信満々に言い、翅を速く羽ばたかせた。
「上昇気流? これ以上詳しいものはないぜ!」
「ずいぶん自信ありげだね」
サチが興味深そうに尋ね、それから何かを思い出したように、意味ありげな笑みを浮かべた。
「中孚堂でのあの時のこと、覚えてる?」
「ハハ、もちろん覚えてるさ!」
ニャリクが豪快に笑った。意気込みに満ちている。
「あの時は五分五分だったな。今回はこういう戦場でどれだけやれるか、見せてやるよ!」
「じゃあしっかり見させてもらうね」
サチが微笑みながら答え、翠甲羅を握り直した。
俺は遠くを見つめた。あの上昇気流は進むにつれてどんどん強くなっていき、その先のどこかで、何か巨大なものがその気流と同じリズムで脈打ちながら、ゆっくりと形を成しつつあるのをかすかに感じ取った。
「みんな気を引き締めろ」
俺は低く落ち着いた声で言い、知恵の書を強く握りしめた。
「どうやら四体目の相手はもうそう遠くなさそうだ」




