第190話 小さな青い丸薬
空中で形を成すことを拒み続けていたあの霞んだ姿は、俺たちが戦いの後片付けをしている間に、ついにはっきりとした輪郭を結んだ。
「あれ? ようやく完成した?」
ワカナが興味深そうに顔を寄せた。
光が消えていくと、控えめな大きさの、かすかな淡い青色の光沢を帯びた丸薬が、空中に静かに浮かんでいた。拾い上げられるのを待っている。
「丸薬?」
ユウキが眉をひそめた。声に驚きが滲んでいる。
「てっきり武器か装備の類かと思ってた」
俺は手を伸ばしてその丸薬を取り、掌に乗せた。
「丸薬……しかも青い!」
サチが少し驚いた様子だった。
「頼むから……そういう類の丸薬じゃありませんように」
ユウキがどこか含みのある重い口調で言った。
「マスミのスタミナ、すでに私たち四人が交代しても追いつかないレベルなのに……」
ワカナに至っては本当にしゃがみ込んで頭を抱えた。
「主様……どれほどの需要があろうとも」
フェアリーがごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めたような顔をした。
「たとえ引き裂かれようとも、たとえ貫かれようとも、全力でお仕えいたします!」
「みんな一体何の話をしてるんだ……」
俺は笑いながら、知恵の書のページに現れた説明文に目を向けた。
『風沢の毒ヒドラ変身丸
服用すると、使用者は自らの皮膚から刺胞のついた触手を自在に生やせるようになる
再生能力が大幅に強化され、切断された部位も数分で完全に再生する』
「こ、これはすごい!」
サチが目を見開いたが、声にはどこか安堵も滲んでいた。
「つまり、これを食べたら、私たちも同じあの触手を自分で生やせるようになるってこと?」
「しかも切れた部位が数分で生え戻る?」
ワカナも息を呑んだ。
「それって、ヒドラの能力をそのまま人間に移植するようなもんじゃない!」
ユウキはその丸薬を見つめながら、迷いを浮かべた表情をしていた。
「めちゃくちゃ強力そうだけど……実際に自分の体をああいう風に改造するのは、ちょっと考えるだけで落ち着かないな」
「それに、あの再生の仕組みがどれだけ馬鹿げてるか、俺たちさっき身をもって見たばかりだし」
サチも首を振り、半歩後ずさった。
「もし食べた後に切れた指がそのまま自分の小さな分身に育っちゃったらどうするの? ほとんどホラー映画だよ」
「そう言われると、確かにちょっと怖いかも……」
ワカナも躊躇し、伸ばしかけていた手を引っ込めた。
俺はみんなの顔にそれぞれ違う程度の躊躇いが浮かんでいるのを見ながら、丸薬を手にしたまま少し考えた。
「みんな抵抗があるなら、俺が試してみるよ」
俺は言った。
「マスミ?」
サチが心配そうに俺を見た。
「本当にいいの?」
「誰かが実際の効果を確認しないと、今後どう使えばいいかも分からないだろ」
俺は微笑み、努めて軽い口調で言った。
「それに、雷霊鳥への変身でもう色々な変化を経験してるし。もう一つくらい増えても何とかなるはずだ」
「お前、危険なものを自分で試す癖、本当にそろそろやめたほうがいいぞ」
ユウキが諦めたようにため息をついたが、それでも止めようとはしなかった。
俺は深く息を吸い込み、その丸薬を口に含んだ。喉を滑り落ちる瞬間、奇妙な冷たさが一気に広がり、それから間もなく、かすかだがはっきりとした感覚が皮膚の下でゆっくりと広がり始めた。
「ど……どんな感じ?」
ワカナが不安そうに俺を見ながら一歩下がった。まるでいつでも逃げ出す準備をしているかのようだった。
「今のところ大丈夫、まだそんなに劇的な変化はない」
俺は手首を動かしてみた。あの残る冷たさ以外、特に異常な感覚はなかった。
「触手、生やせるか試してみて?」
ユウキが興味深そうに提案した。
俺は目を閉じ、あの触手が広がって揺れていた様子を思い出しながら、その動きを頭の中で思い描き、自分の腕でも同じことが起きる様子を想像した。
腕の皮膚の下にかすかな痒みが這い上がり、それからすぐに、皮膚が細い筋に沿って実際に裂け、細く柔らかな触手がゆっくりと内側から現れた。その先端にはあの馴染みのある毛のような質感が備わっている。
「うわああ!」
ワカナが数歩飛び退いた。声が震えている。
「本当に生えた!」
「こ、この光景は……なかなかのものだね」
サチが口を手で覆った。顔は少し青ざめていたが、それでも興味を抑えきれずに身を乗り出して覗き込んでいる。
俺は腕の上でかすかに揺れるその触手を見つめた。この新しい能力を自在に操れることへの新鮮さと、言葉にしがたい違和感とが入り混じって湧き上がってくる。結局のところ、これは俺の体が本来持つべき構造ではないのだ。
「どんな感じ? 痛くない?」
ユウキが慎重に尋ねた。
「全然痛くない。むしろ腕がもう一本増えたみたいな感じだ。動きも自由に操れる」
俺はその触手を動かしてみた。軽く丸めてからゆっくりと広げると、その動きは驚くほど滑らかで自然だった。まるで最初から俺の体の一部だったかのようだ。
「再生のほうは?」
ワカナが興味深そうに尋ねてから、慌てて付け加えた。少し不安げに。
「でも本当に自分で怪我して試したりしないでよね!」
「それはまた別の機会に確かめよう。今わざわざ自分を傷つける必要はない」
俺は微笑み、その触手をゆっくりと体の中へ引き戻した。皮膚の裂け目は元通りに塞がり、跡形もなく元に戻る。
イヤピースの中の視聴者たちも盛り上がった。
『マスミ、半分ヒドラのハイブリッドになりつつある?』
『このスキル異様すぎる、見てるだけで鳥肌立つ』
『でも緊急時に腕が一本増えるのは確かに便利そう』
『マスミの従者スキル一覧、また項目増えたね』
『切断再生のほう、本当に試さないでほしい、夢に出そう』
『やばい、四女神たちはこれまでスタミナお化け相手にするだけでよかったのに、今度は触手プレイまで!』
「まあとにかく、この能力は正常に機能することが確認できた」
俺は頷いた。この新しい力について、基本的な感覚は掴めた気がする。
議論が盛り上がってきたちょうどその時、俺たちのそばに見慣れた光の裂け目が不意に開き、何人かの人影が次々と姿を現した。
「主様、海民の戦士たちをお連れしました!」
一匹のピクシーが翅を羽ばたかせながら知らせた。
「マスミ様、お久しぶりです」
まず落ち着いた礼儀正しい声が響いた。赤い触角の外交官――セバスティアンだった。ゆっくりと丁寧なお辞儀をする、その所作は相変わらず優雅で折り目正しい。
「本当にみんなじゃないか!」
ニャリクが興奮した様子で前に飛び出してきた。明るい黄色の目が喜びできらきらと輝いている。
「ここでの戦い、なかなかの見ものだったって聞いたぜ。もっと早く来て加わればよかった!」
「お前、声でかすぎ」
アラユが素っ気なく鼻を鳴らした。紫がかった赤茶色の大きな鋏を胸の前で組み、相変わらず尊大な態度だ。
プルートゥンシャは後ろのほうから急ぐ様子もなくついてきた。灰白色の甲羅が光を受けて穏やかな艶を放っている。挨拶代わりに軽く頷くだけで、それ以上は特に何も言わなかった。マファガイスも相変わらず無口なままで、背中の長い尾刺が歩みに合わせて緩やかに揺れている。少し離れた場所に立ち、静かに周囲を観察していた。
「みんな、本当に久しぶり!」
サチが嬉しそうに五人に手を振った。それからニャリクに視線を止め、複雑な笑みを浮かべる。
「前回の戦い、すごく印象に残ってるよ」
「ハハ、あの時は正々堂々俺の負けだったな!」
ニャリクは豪快に笑った。恨みがましい様子は微塵もない。
「巽之塔に動乱が起きるかもしれないという知らせが届きました。乙姫様より、直々にマスミ様のお力になるよう仰せつかっております」
セバスティアンが再び頭を下げた。口調は折り目正しく、誠実さが滲んでいる。
「みんなが加わってくれて、本当に助かる」
俺は心から感謝を伝えた。胸の中に確かな安堵が広がっていく。
「この先の道はますます厳しくなるはずだ。みんながいてくれれば、勝算はかなり上がる」
「そりゃ当然だろ!」
ニャリクが自信満々に胸を叩いた。
「言ってくれれば、俺たち五人でしっかり役に立ってみせるさ、保証する!」
イヤピースの中のコメントも興奮に沸き立った。
『海民の五人衆、勢揃い、豪華すぎる』
『セバスティア、相変わらず礼儀正しい、好感度振り切れる』
『ヤシガニ、相変わらず刺々しいけど、なんか懐かしい』
『次のボス、このメンバー見たら泣き出しそう』
『中孚堂の懐かしい面々、ついに来た、感動する』
俺は突然大きくなった一行を見渡した。これまで感じたことのない地に足のついた感覚が湧き上がってくる。ここまでの苦労のすべてが、今目の前に立つこの確かな支えへと結晶したかのようだった。
「それで、役割分担はどうする?」
ユウキが期待の色を滲ませながら俺を見た。
俺は相変わらず風に覆われた果てしない巽之窗を見つめ、知恵の書を強く握りしめながら、頭の中でおおまかな計画を組み立て始めていた。
「まずはみんなに互いの戦い方に慣れてもらって、それから状況に応じて分担しよう」
俺は言った。
「この先待ち受けているものは、たぶん一筋縄ではいかないはずだ」




