第188話 雷火の煉獄
生まれたばかりのヒドラたちは相変わらず俺たちを中心にしっかりと閉じ込めていた。触手が空中を縫うように動き、刺胞のついた先端が淡い青色に光っている。俺たちの体力と手持ちの資源が、恐ろしい速さで削られていった。
「もう保たない!」
ユウキが歯を食いしばりながら勇気の剣を握り直し、迫ってきた触手に反射的に剣を振り上げた。
「待て、切るな!」
俺は慌てて叫び、彼女の腕を掴んだ。
ユウキの一振りが空中で止まった。一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに理解し、表情が曇る。
「また同じ失敗をしかけた……」
「じゃあ一体どうすればいいの?」
ワカナが不安そうに尋ねながら、迫ってきた触手をかろうじてかわした。
「このままずっとかわし続けるわけにもいかないでしょ?」
俺は捕食者のように俺たちを取り囲むヒドラの体を見つめ、頭の中で必死に考えを巡らせた。切ったり千切ったりする手段が使えない以上、必要なのは、再生を引き起こす欠片を一切残さずに、あの体そのものを完全に破壊できる何かだ。
「電気だ」
考えがまとまる前に、その言葉が口から出ていた。
「雷なら千切らずに済む、体そのものに直接ダメージを与えられる。あの再生の仕組みを発動させずに済むはずだ」
「じゃあ私は? 私、電気なんて出せないけど」
ユウキが眉をひそめながら尋ね、鞘で薙ぎ払われた触手をかろうじて受け止めた。
「まず俺が試してみて、効くかどうか確かめる!」
説明している時間はなかった。俺は知恵の書を握りしめ、深く息を吸い込み、見慣れたページを開いた。
「雷霊鳥」
ページが眩い金色の光を放ち、肩甲骨の間から凄まじい熱が噴き出した。巨大な藍色の翼が筋肉と骨を押し分けて現れ、羽根は金属のような光沢を帯び、触れ合うたびにかすかな火花を散らす。髪は深い青の羽毛へと変わり、指先からは鉤爪が伸び、稲妻が全身を纏う。俺は重さを失ったように宙へと浮かび上がった。
「行くぞ!」
俺は叫び、最も近くにいたヒドラに詰め寄ると、鉤爪の手をその円柱状の体に強く食い込ませた。
「サンダー!」
電気が掌から迸り、その体を貫いて湿った表面を素早く伝っていく。空気中に濃く漂う湿気が完璧な伝導体として働いたのか、その電流の威力は俺が想定していたよりもずっと激しかった。ヒドラは激しく痙攣したが、手足のどれも千切れなかった。一度苦しげに震えたあと、その全身が散らばる光の粒へと溶けていき、空中へと完全に消え去った。
「効いた! 二つに分裂しなかった!」
サチが興奮して叫んだ。それでもなお風纏う爪でさらに二本の触手を食い止め続けている。
「これ、本当に効くじゃん!」
ワカナも一瞬顔を輝かせたが、その笑みはすぐに消えた。
「でも電気出せるのお前だけじゃない。他のみんなはどうすんの?」
答えている時間はなかった。俺はすでに別の迫ってくるヒドラに一撃を放ち、同じように痙攣して光に溶けさせていた。それでも五、六体のヒドラがまだ俺たちを取り囲んでいて、俺一人の雷ではとても対処しきれない。
「あいつら、まだ攻撃を強めてきてる!」
ユウキが鋭く叫び、鞘でかろうじて次の波を受け流しながら、じりじりと後退させられていた。
俺は頭上を旋回しながら何度も急降下し、指先から稲妻を繰り返し放ったが、体力が急速に削られていくのを感じた。変身も一撃も、それぞれに深刻な代償を伴う。
イヤピースの中のコメントが不安げに流れ込んできた。
『真澄一人じゃ保たない』
『数が多すぎる、みんなで協力しないと』
『ワカナ何か他の道具早く』
『みんな、頑張って』
そのとき、足元にかすかな変化を感じた。かつて足首を越えるほど溜まっていた水が、ゆっくりと引き始めている。
「水が……引いてる?」
サチが呟いた。足元に少しずつ現れる泥を見つめながら。
霧の向こうから見覚えのある姿が滲むように駆けてきた。フェアリーだ。息を切らしながら、あの栓をしっかりと両手に抱えている。その表面はかすかに光っていた。
「み、見つけました!」
彼女は迫る触手にすら目もくれず、混沌とした風を押し切りながら俺たちのもとへとまっすぐ向かってきた。
「もう抜いてあります! もうすぐ水が引くはずです!」
「フェアリー、助かった!」
俺は空中から叫び、その隙にまた一体のヒドラに雷を打ち込んだ。
秒が経つごとに、溜まっていた水は目に見えて引いていき、泥だらけの地面は少しずつ乾いていった。残っているヒドラたちの動きは明らかに鈍くなり、触手の動きも弱々しくなっていく。
「弱くなってる!」
ユウキの表情が明るくなったが、それでもまだ無闇に剣を振るうことは控えていた。
俺は再び急降下し、雷で敵を掃討し続けようとしたが、この一撃の威力が明らかに落ちているのに気づいた。湿気という伝導路がなくなったせいで、電流はヒドラをかすかに痙攣させる程度にしかならず、以前ほどの効果はまったくない。
「電気、あんまり効かなくなってきた!」
俺は眉をひそめた。声に焦りが滲む。
ワカナは何かに思い当たったらしく、慌てて真理の鏡を探り始めた。
「水がなくなって空気が乾いたなら、今度はこっちの出番だよね!」
彼女は鏡の中から小さな道具を次々と取り出した。ライター、マッチ箱、それにレトロな見た目の手持ち松明を数本、ユウキとサチに配っていく。
「乾燥した状況は火にとって最高の条件。切るんじゃなくて焼くなら、同じ問題は起きないはず!」
ワカナは最後の松明を俺の手に押し付け、自分のものにはライターで火を灯した。
「そんなものまで持ち歩いてたのか?」
ユウキが信じられないというように、それでもどこか可笑しそうに笑いながら、マッチ箱を受け取って自分の松明にすばやく火をつけた。
イヤピースの中のコメントが一気に流れ込んできた。
『あの機材ストック、また救ってくれた』
『電気の次は火とか、環境に合わせて適応してる』
『ワカナの鏡、一体どれだけ物入ってるの』
ユウキは松明を掲げ、弱っているヒドラの一体に突撃すると、その円柱状の体に炎を強く押し当てた。ヒドラは低い悲鳴を上げ、触手を激しくのたうたせたが、すでに乾ききったその体は想定よりもずっと早く燃え広がり、瞬く間に炎がほとんどの体を呑み込んで、これもまた散らばる光へと溶けて消えた。何も残らなかった。
「この環境なら本当に効く!」
ワカナも自分の松明を手に戦いに加わり、残り少ない触手を軽やかにかわしながら、別のヒドラの根元へと正確に炎を押し当てた。
風纏う爪を身につけたサチは、ワカナから渡された松明を四本の機械の爪に巻きつけ、翠甲羅で攻撃を受け止めながら、燃える爪を迫ってくるヒドラの体へと伸ばした。炎は乾いた触手を伝って広がり、一体のヒドラを黒く焦がしながら、それも激しく痙攣した末に光へと溶けて消えた。
俺は雷での攻撃を控え、上空を旋回しながら援護に回った。仲間たちが残るヒドラを一体また一体と焼き払い、光に変えていくのを見守る。かつて絶望的に見えたあの軍勢は、今や驚くほどの速さで縮んでいた。
「あと一体!」
ユウキが叫んだ。視線の先には元のヒドラがいた。その体は生まれたばかりの個体とは比べ物にならないほど巨大で、湿気のほとんどを失ってもなお、ほぼ乾ききった泥の中心に頑固に立ち続け、残った数本の触手を弱々しく揺らしていた。
「みんな、一緒に!」
俺は叫び、再び雷霊鳥へと化身して急降下した。
ユウキ、ワカナ、サチが三方向から同時に距離を詰め、炎と最後に残った雷が一斉にその巨体を打ち据える。それは甲高い、絶望的な悲鳴を上げ、触手を激しくのたうたせたが、もはや有効な反撃を組み立てる力は残っていなかった。ついに、雷と炎の合わせ技を受けたその全身が一気に崩れ落ち、空一面に散らばる光へと溶けて、この徐々に乾いていく沼の中に消えていった。
戦場は一瞬で静まり返った。残ったのは俺たち自身の荒い息遣いだけだった。
「勝った……」
ワカナが泥の中にへたり込んだ。手にした松明からはまだかすかに煙が上がっている。
「今回は本当にギリギリだった」
フェアリーが俺たちのそばに降り立ち、役目を終えたその栓を見つめながら、ほっと息をついた。
「間に合ってよかったです。そうじゃなかったら、どうなってたか分かりません」
「お前のおかげでこの戦いを乗り切れた」
俺は雷霊鳥の姿を解き、翼と鉤爪を消して、いつもの自分に戻った。声には心からの感謝が滲んでいる。
サチが疲れ切ったように弱々しく笑った。
「電気と火、意外といいコンビだったね」
イヤピースの中のコメントも興奮に沸き立った。
『電気の次に火、本当に発想の勝利だった』
『フェアリー、本当に大活躍だった』
『みんなすごかった、ついに乗り切ったね』
俺は知恵の書を握りしめ、あの見慣れたメッセージが現れるのを待った。それでもまだ、あの過酷な戦いの余韻となる恐怖は完全には消えていなかった。今回の勝利は、これまでの二戦よりもずっと危機に近かった。




