第181話 逆流の中に生まれて
鋭い痛みと痺れが全身を一度に襲った。俺はほとんど動かない四肢を無理やり支えにして立ち上がり、まだ頭上で旋回しているあの巨体を見上げた。
「みんな大丈夫か!」
俺はかすれた声で叫んだ。耳の中にはまだ低いノイズが響いている。
「な、なんとか……」
ワカナが歯を食いしばりながら立ち上がろうとしたが、体に残った電流にまたよろけてしまう。
ユウキは片膝をついていた。剣の柄を握る指がかすかに震えていたが、それでも無理やり体を起こす。
「また来るぞ!」
生き物は空中で静止したまま、喉の奥からまた低い唸り声を上げ、次の攻撃の準備を始めていた。俺たちの体にはまだあの痺れの余韻が残っていて、とても間に合いそうにない。
俺は歯を食いしばりながら叫んだ。
「サラダをここに呼べ、今すぐだ!」
指を鳴らすと、一匹のピクシーがすぐさま空中の光の裂け目へと飛び込んで消えた。数瞬後、俺たちのそばに見慣れた光が灯り、いつも観の門のどこかでのんびり日向ぼっこをしているネオテニック・フォッグシェル・サラマンダーが、何の前触れもなくこの風の吹き荒れる戦場へと降ろされた。
「グルル……」
サラダは戸惑ったように瞬きをした。湿った鱗が混沌とした風の中でかすかに震えている。自分がどこに来たのかもまだよく分かっていない様子だった。
「サラダ、急に呼んで悪いけど、代わりに一発受けてほしい――」
言い終わる前に、頭上を旋回していた生き物はすでに次の稲妻を溜め終えていた。血のように赤い目がこの新しい標的をロックオンし、顎を開いて目もくらむ閃光を放つ。
「危ない!」
俺は叫んだが、もう止める間はなかった。
稲妻は一瞬でサラダの体に直撃した。湿った鱗の上を電流が激しく走り、ぱちぱちと弾ける。彼女は甲高い悲鳴を上げ、四肢を激しく痙攣させながら、全身がその衝撃に硬直した。
サラダの湿った体は俺たちの誰よりも電気を通しやすく、彼女は今、俺たちの盾になってくれたのだ。
「サラダ!」
サチが叫んだ。
だがこれはまさに俺の想定通りだった。痙攣は長くは続かなかった。普段は穏やかなサラダの目に、誰も見たことのないような怒りの色が急に灯る。彼女は頭を大きく振り、鱗の縁から粘り気のある体液を飛び散らせ、電流によってできた火傷の痕が目に見える速さで塞がっていく。まるでその再生能力が、最初からこの手のダメージに対抗するために備わっていたかのようだった。
「怒ってる!」
ワカナが目を見開いた。
サラダは低い唸り声を上げた。これまで聞いたことのないほど怒りに満ちた声だ。四本の脚で力強く地を蹴り、まだ頭上を旋回しているその生き物に向かってまっすぐ飛びかかった。
「サラダ、待て――」
止める間もなかった。彼女はすでに宙に躍り出て、顎を大きく開き、あのドラゴンらしき生き物へとまっすぐ突っ込んでいく。
その反撃に明らかに面食らったのか、生き物の血のように赤い目が鋭く収縮し、慌てて翼を羽ばたかせて避けようとしたが、それでもサラダの突撃はその体勢を大きく崩させた。怒った様子で顎を開き、また一撃の稲妻を放つ。今度はサラダの体に正面から命中した。
サラダは空中で激しく痙攣し、その巨体はバランスを完全に失って、そのまま地面へと真っ逆さまに落ちていった。
その捨て身の突撃のおかげで、俺たちはようやくわずかな息をつく余裕を得ることができた。
「充電に時間がかかるとしても、いつまでもサラダに攻撃を肩代わりさせ続けるわけにはいかない」
俺は歯を食いしばりながら分析し、頭の中で必死にこの戦況をひっくり返せる何かを探した。
「あの電気、そもそもどこから来てるんだ」
ユウキが眉をひそめ、頭上でゆっくりと光を弱めていくその生き物を観察した。
「雷霊鳥みたいな魔力は持ってなさそうだった。この電流、生まれつきの能力とは思えない」
俺は先ほどまでの動きを頭の中で丁寧に再生した。あの稲妻は何度も高速の羽ばたきと突撃を繰り返した末に、徐々に溜まっていったものだった。そしてこの荒野の空気は最初から乾ききっていて、砂嵐を自力で巻き起こすほど乾燥している。
「あの厚い毛皮で、ずっと高速で飛び続けて、空気とこすれ合い続けてる……」
俺は呟いた。頭の中で少しずつ一つの形が見え始める。
「これって、冬にセーターで静電気が溜まるのと同じ理屈じゃないか?」
「静電気?」
ワカナが一瞬固まり、すぐに理解した。
「体が乾いた空気とこすれ合うことで、少しずつ電気が溜まってるってこと?」
「もしそうなら、なんで無限に撃ってこないのかも説明がつくな」
ユウキがその考えを引き継いだ。
「静電気が新しい摩擦で再生されるみたいに、あいつも充電し直す時間が必要ってことになる」
サチは周囲の乾ききってひび割れた地面を見渡し、ふと静かに言った。
「もしここが渙之泉庭とか中孚堂くらい湿ってたら、たぶんこの手でいじめてこられなくなるよね」
その一言は、稲妻さながらに俺の頭の中の絡まりをまっすぐ貫いた。
湿度だ。そうだ、空気さえ十分に湿っていれば、静電気はそもそも溜まりようがない。
サチの一言で、ずっと前に渙之泉庭の奥深くで手に入れた、あの栓のことを思い出した。
俺はピクシーを一匹呼び出し、観の門の保管庫からそれを取ってこさせた。
ピクシーの手から、その何の変哲もない小さな栓を受け取る。最初に手に入れた時、その効果についての説明は一切なかったが、それを元の場所から取り外した瞬間、あの水に満ち霧に覆われた渙之泉庭全体の水が、静かに引いていったのだった。
「ここで逆のことをすれば……」
俺は栓を手に、頭の中で可能性を巡らせた。もし取り外すことで水が引いたのなら、ここでどこかに設置すれば、逆に水を呼び込むこともできるんじゃないか。
だが見渡す限り、この荒野は乾ききっていて、湿り気の欠片もない。それに、この栓を実際に機能させるにはどこに置けばいいのかも、正直よく分からなかった。
「これでどうやって水を呼べば……」
俺は眉をひそめ、指先で栓を撫でながらまだ迷っていた。
そのとき、地面から這い上がってきたサラダが、まだ衝撃の余韻でかすかに脚を震わせながらも、よろよろと俺のほうへ近づいてきた。それでもまだあの生き物にもう一度突っ込もうと頑固に意気込んでいる様子だった。
「グルァ!」
彼女はよろけて、そのまま俺に正面からぶつかってきた。
その衝撃で俺は後ろによろめき、手にしていた栓が滑り落ちて地面へと転がった。
その何の変哲もない小さな栓が地面に触れた瞬間、柔らかな光を放ち始めた。
俺たちの足元の地面がじわじわと湿り気を帯びていく。最初はかすかな湿った染みだったものが、やがて地面のあらゆるひび割れから泉が湧き出すように水が溢れ出し始め、瞬く間にいくつもの水たまりを形作っていった。長い間乾ききっていたこの荒野が、これまで一度も知らなかったであろう湿り気を帯び始めている。
「水だ!」
サチが嬉しそうに叫んだ。
水は勢いよく湧き続け、やがて俺たちの周りに浅い水たまりが広がっていった。静電気を発生させるほど乾いていた空気は、いつの間にか濃い湿り気に取って代わられ、霧が立ち上って戦場全体を覆っていく。
「みんな水の中に入れ、今すぐだ!」
俺は叫び、真っ先に広がっていく水たまりへと足を踏み入れた。冷たい水が足首を越えて上がってくる感覚に、不思議な安堵を覚える。
生き物は空中に静止したまま、血のように赤い目をこの突然の湿り気に向けていた。明らかにどう対処していいか分からない様子だった。
再び顎を開き、次の稲妻を溜めようとするが、あの馴染み深いはずの電流は、どれだけ試みても正確な一撃へと凝縮してくれない。空気を満たす湿り気が静電気の蓄積を著しく遅らせていて、毛皮に走るあのかすかな藍色の光も弱々しく明滅するばかりで、以前のような強さにはとても届かなかった。
「稲妻が弱くなってる!」
水の中に立つユウキがその変化を鋭く捉えた。声には興奮が滲んでいる。
生き物はようやく一発の稲妻を放ったが、先ほど俺たち全員を痺れさせたあの一撃と比べると、明らかに弱々しいものだった。電流は水面に触れた瞬間に散り散りになり、その範囲も威力も大きく及ばず、一番近くにいたワカナがわずかに身をすくめる程度で、実質的なダメージは何もなかった。
「それに――」
サチが不意に声を上げた。再び急降下してくるその生き物の軌道を見つめながら、驚きの色を滲ませる。
「動きも遅くなってる!」
その巨体は確かに目に見えて遅くなっていた。降下する際、四肢が何らかの抵抗を受けているように見え、翼は相変わらず激しく羽ばたいているものの、以前のような稲妻じみた速さにはまったく届かない。まるで、本来なら楽々と飛べたはずのその体が、湿って重くなった空気に引きずられているかのようだった。
「湿った空気は乾いた空気より密度が高いから、機動力が落ちるのも当然だ!」
俺は水の中に足を踏ん張りながら言った。分析するうちに興奮が高まっていく。
「つまり、あいつが誇っていた速さも稲妻も、この水で完全に骨抜きにされたってことだ!」
サラダは体を起こした。鱗に残っていた火傷の痕はすでに完全に治っていて、低い唸り声を上げると、その湿った体は水たまりの中を、まるでそこに生まれてきたかのように動き回った。四肢の動きは以前よりもさらに機敏になっている。
「サラダ、ここがお前のホームらしいな」
俺はその軽やかな動きを見て、思わず笑ってしまった。
かつて圧倒的な速さと稲妻で俺たちを見下ろしていたあの生き物は、この突然水に満ちた戦場の中で、初めて不器用でもたついた無力さを見せ始めていた。
イヤピースの中のコメントも興奮に沸き立った。
『やっぱり鍵は水だったか』
『サラダの突撃かっこよすぎ、無謀だけどかっこいい』
『使い道なさそうだったあの栓、ついに出番来た』
『偽ドラゴン、一気に弱く見える』
『この下水栓での逆転劇、満点をあげたい』




