第172話 戦支度
俺たちは橋のそばに立ち、俺は背中のピクシーのタトゥーを起動させた。肩甲骨から馴染みのちくちくとした感覚が広がり、目の前の景色が一瞬で歪み、ぼやけていった――濃厚な潮の香りが花と緑の柔らかな匂いに取って代わり、優しい木造の建物と咲き乱れる花々が四方から視界を埋め尽くしていった。
俺たちは観の門に戻ってきていた。
「主様が帰ってきた!」何人かのピクシーが真っ先に俺たちに気づき、頭上を興奮したように旋回してから、知らせを広めに飛んでいった。
まもなく、フェアリーの一族が次々と俺たちの周りに集まってきて、明らかに心配そうな表情を浮かべながら、俺たちの体に残るさまざまな傷や跡を口々に確かめ合っていた。
「無事に戻ってこられてよかった」ユウキが俺の隣を歩きながら、安堵の滲む声で言った。
「まずは休んでください。部屋にはもうお湯の準備ができています。主様、何か召し上がりたいものはありますか?」フェアリーの一族が気遣わしげに世話を焼こうとしたが、ワカナは満足げな余韻を声に滲ませながら手を振った。「大丈夫、さっきちゃんとした異国のご飯食べてきたばかりだから、お腹いっぱいでぼーっとすることしかできないくらい。それより考えなきゃいけないのは、この先どうするかってことだよ」
俺は頷き、この馴染みのある落ち着いた場所を見回した。胸の中に確かな地に足のついた感覚が広がっていった。クリミアでのあの激しい戦いを経て、そろそろきちんと現状を整理すべき時だった。
「まずは炊事場の前線を確認したい」俺は皆に言った。「それと、手持ちの従者と物資も一緒に確認しておこう」
俺たちは観の門の回廊を抜け、あの馴染みのある炊事場へと戻った――高くそびえる巨大な食卓の台地、あちこちを忙しく動き回る蟻と白蟻、物を整理しようと駆け回る食料部隊たち、空気には食材と戦後の片付けの匂いが濃く漂っていた。
塩昆布が大きなお玉に寄りかかりながら急いで歩み寄ってきて、その隣をジャガイモが小走りについてきた。二人とも顔には隠しきれない心配の色が浮かんでいた。
「やっと戻ってきたか!」塩昆布は俺たちを頭からつま先まで見渡し、包帯を巻いた、今はもう治った俺の左手にしばらく視線を留めてから、ようやく安堵の息をついた。
「UFOを撃ち落として、濁世で幽霊に変装して人を驚かせるとは、なかなか濃い時間を過ごしてきたようだな!」彼は笑いながら、まるで若様の帰りを待っていた老執事のような目で俺たちを見つめた。
「話せば長くなる」俺はまったく同じ台詞をまた繰り返していることに気づき、思わず笑ってしまった。
ジャガイモが隣で豪快に笑った。「何にせよ、無事に戻ってきてくれて何よりだ。炊事場のほうは持ちこたえてる。害虫どもはもうあんたの支配下にあって、食材を食べる代わりに、うちの残飯をたくさん食べてくれるようになった。これは正直かなり助かってる」
「塩昆布じいさん、各部隊の代表を集めてもらえないか?今の戦力を正確に把握しておきたいんだ」俺は言った。
「任せろ!」塩昆布は元気いっぱいに答え、周りのピクシーと蟻たちに指示を出し始めた。まもなく、各グループの代表が集まってきた。
江戸時代の火消が恭しく一礼した。「私はもう支度を終えております。いつでもお呼びください」そう言うと、彼は踵を返し、俺の旗の下に集まったエインヘリャルの集団に加わった。
ピザが体を引きずるようにして歩み寄ってきた。体の穴はまだ完全には塞がっていなかったが、口調はいつも通り陽気だった。「僕もほぼ準備は整ってるよ、ただこの穴が完全に塞がるまでにはもうちょっと時間がかかりそう」
「焼き芋はどこだ?」俺は周りを見回したが、あの馴染みのアルミホイルに包まれた姿がどこにも見当たらなかった。
「あいつは療養のために観の門に送り返した」ジャガイモが説明した。「腹の穴、かなり深刻でな。ピザみたいにちょっとチーズを足して塞げるようなものじゃない。近いうちに、あいつを食べてやって、ちゃんとエインヘリャルにしてやったほうがいいかもしれない」
俺は頷き、心の中で静かにそのことを覚えておいた。後で様子を見に行って、時が来たらみんなを集めて彼のためにきちんとした食事会を開こうと決めた。
ユウキは少し離れて自分の装備を確認し始めた。勇気の剣を抜き、丁寧に調べていく。傷一つ、汚れ一つついていなかった。「この剣、あれだけの激戦をくぐり抜けたのに、傷一つ残ってないなんて」
サチも翠甲羅を取り出し、戦闘で残ったへこみを両面確認していった。「今回はこの二つの盾、本当に頑張ってくれたわね。かなり酷い目に遭わせちゃったけど」
俺は二つの盾を見つめた。
「ピクシー工房なら量産できるはずだ。新しいのを二つ持ってきてもらおう」
サチは首を振った。
「ううん、この二つにはもうすっかり慣れちゃったから。修理だけしてくれればいいの。新しいのだと、なんだか馴染めない気がして」
ワカナはすでに真理の鏡を熱心に漁っていて、表面に波紋が広がり、目の前にさまざまな物資のリストが展開されていった。
「前回あいつと戦った時に、在庫のほとんどを使い切っちゃったんだよね。そろそろちゃんと補充しないと」彼女は指を折りながら数えた。「香りつきキャンドルはほとんど使い切ったし、小麦粉ももうほとんどないし。包帯と医療用品はまだ十分持ってるけど」
「あんたのそのショッピングカート、本当に何でも揃ってるわね」ユウキが思わずそう言った。
「これが備えあれば憂いなしってやつよ!」ワカナは誇らしげに片方の眉を上げた。
俺は手の中の知恵の書を開いた。ページが独りでにめくれ、びっしりと詰まった記録が現れた――ベルゼブブとベリアルとの戦い、そしてクリミアでの一連の出来事を経て、俺たちの従者とエインヘリャルの数は、本当に大きく増えていた。
「この期間で、思ってた以上にずっと強くなったな」俺は並んだ名前のリストを見渡しながら、静かな感慨を覚えた。「もっとも、人数が増えた分、全員をまとめるのもだいぶ複雑になった」
「そのことなら、あまり心配しなくていい」塩昆布は昆布のような髭を撫でながら、自信のこもった声で言った。「ジャガイモと私で、あんたの配下の部隊の大まかな編成をもう考えてある。それぞれの持ち場に配属して、待機組と出動組に分けてある。必要な時に一声かければ、いつでも動ける状態になってるはずだ」
「二人とも、本当にありがとう」俺は心からそう言った。
「これが俺たちの役目だからな」ジャガイモは落ち着いた笑みを浮かべ、それから何かを思い出したように付け加えた。「あ、そうだ、渙の泉庭の資源を調査するために誰かを送り出そうと考えてる。あそこは知的生命体による管理がないせいで、無駄になってる資源がたくさんあるんだ」
「分かった、覚えておく」
俺たちはほとんど一日をかけて、炊事場で物資と人員配置を一つひとつ確認し、それから回廊を通って観の門に戻り、細かい準備を続けた。ワカナは何人かのピクシーを送り出してさまざまな材料を集めさせ、ユウキは武器工房を訪れる時間を取り、腕の立つ何人かの従者に防具作りを手伝ってもらった。
サチは翠甲羅を持って、装備の修理を心得たエインヘリャルを探し出し、へこみを一つひとつ丁寧に叩いて形を整えていった。
フェアリーは俺の隣に浮かびながら、周りの活気に満ちた、それでいて秩序立った光景を見つめ、感慨のこもった声で言った。「観の門、見るたびにどんどん整ってきてる気がする」
「みんなのおかげだよ」俺はこの馴染みのある温かな空間を見渡した。胸の中に、言葉にしがたい落ち着きが広がっていった。
夜が徐々に訪れ、その日の準備も一段落した。俺たち五人は観の門近くの広場に集まり、目の前で焚き火がぱちぱちと音を立てていた。その光がみんなの顔を照らし出していて、そこにはいくらかの疲労が見て取れたが、同時に静かな覚悟も滲んでいた。
「みんな準備はいいか?」俺は周りを見回し、一人ひとりが頷くのを見届けた。
ユウキは勇気の剣を握り、その青いかすかな光が炎に照らされて澄んだ輝きを見せていた。「いつでも動けるわ」
サチは修理を終えたばかりの翠甲羅を抱きしめ、決意のこもった声で言った。「私も準備できてる」
ワカナは柔らかく光る真理の鏡を叩いた。「補充完了、フル装備よ!」
フェアリーは俺の肩に降り立ち、軽く羽根を羽ばたかせた。「ピクシー一族はいつでも主様の呼びかけに応える準備ができてるよ」
俺は知恵の書を握りしめ、深く息を吸い込んだ。次は回廊を通って炊事場へ戻り、まだ足を踏み入れていないあの扉――巽の窓へと向かう。
「ベルゼブブの本体の行方はまだ分かっていないし、あの扉の向こうに何が待ち構えているのか、誰も知らない」俺はゆっくりと言った。声には重みが滲んでいた。
ユウキは頷き、剣の柄を握る手に力を込めた。「行きましょう」
俺はピクシーのタトゥーを起動させた。光が再び俺たち全員を包み込み、俺たちは炊事場へと瞬間移動していった。




