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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
濁世の二

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第171話 黒海のほとりでひと息


「あんた、俺たちの味方だって言ってたよな……」


俺はエンヴェルを見つめた。彼を信用するのが簡単じゃないってことは、誰の目にも明らかなはずだった。


「こいつ、あまりにも食えないやつだな」ワカナも眉をひそめて彼を見つめた。


「どっちにしても、監視なしで放っておくわけにはいかない。とりあえず観の門に連れていって『面倒を見て』もらおう」俺は指を鳴らした。


ピクシーの通り道が宙に光の裂け目を開き、そこからラトンがつまずきながら転がり出てきた。砕けたガラスの上に尻もちをつき、顔にはまだぼんやりとした、状況を呑み込みきれていない様子が浮かんでいた。


「ら、ラトン、参上しました!」彼は慌てて立ち上がった。ズボンには埃がついていたが、それでも無理やり背筋を伸ばそうとした。


エンヴェルは彼をちらりと見て、口の端に隠しきれない軽蔑を浮かべた。


「おや、こいつじゃないか!グダニスクで俺たちに銃を撃ってきた時、まさか生き残ってるとは思わなかったよ」


どうやら彼はラトンのことを知っているようだった。


ラトンは思わず首をすくめた。


エンヴェルは何気ない様子で半歩前に出た。肩をわずかに動かしただけで、生々しい戦士の圧力が容赦なくラトンにのしかかった。


「まさかこいつに俺の見張りを任せるつもりじゃないよな?」エンヴェルの口調には嘲りの色があった。


「な、変な真似はするなよ!」ラトンは虚勢を張り続けたが、声は明らかに震えていて、目は助けを求めるように俺のほうへ何度も向けられていた。


俺は二人の食料部隊と消防士をラトンの後ろに立たせた。それでようやくエンヴェルはその攻撃的な雰囲気を和らげ、それ以上何も言わずに肩をすくめた。


ラトンはようやく息をつき、額の冷や汗をこっそり拭いながら、必死に「俺に任せろ」といった態度を装って、エンヴェルを観の門のほうへと連れていった。


「ようやく片付いた」俺は彼らの背中が遠ざかっていくのを見つめながら長く息を吐いた。肩の緊張がようやく解けていくのを感じた。


「それで、これからどうする?」サチが期待のこもった目で俺を見上げた。


ワカナがすぐさま手を挙げ、興奮した様子で言った。「もちろん、みんなに約束した旅行を実行に移すに決まってるでしょ!セヴァストポリの旧市街、行くよ!」


フェアリーが俺の肩に降り立ち、珍しくくつろいだ様子で羽根を垂らしていた。「こんな風に本当に一息つけることって滅多にないよね。主様、その傷、ちゃんと治療したほうがいいよ」


彼女が手を叩くと、目の前にピクシーが一体現れ、ネオテニック・フォッグシェル・サラマンダーの肉片を運んできた。


俺は包帯を巻いた左手を見下ろし、苦笑いしながら頷いた。


「はぁ、またサラダに苦労をかけることになるな」


俺は包帯を解き、その肉片を傷口に押し当てた。サラマンダーの組織はほぼ瞬時に傷と融合していった。数秒のうちに、傷はすっかり治り、新品同様になっていた。


激しい戦闘をくぐり抜けたばかりだというのに、俺たちはそこまで消耗してはいなかった。手も治ったし、そろそろ女の子たちの「少し観光したい」という願いを叶えてやってもいい頃合いだった。


俺たちは海岸線に沿ってしばらく飛び、少し前にサチが幽霊騒動を巻き起こしたあの橋の近くへと戻ってきた。


今度は渡るのに何の苦労もなかった。すでに両岸を訪れたことがあるので、瞬間移動の条件を満たしていた。


橋を渡った後は、もう飛ぶ必要はなかった。任務を抱えているわけでも急ぐ理由があるわけでもなく、ゆっくり歩いて周りを見て回るのが自然な選択だった。


俺たちは徐々に、戦場に漂う煙とその重苦しい空気から離れていき、目の前に景色が開けていった――上へと蛇行する石畳の道、クリーム色の石造りの建物が並び、壁には蔦が這い、あちこちの小さな店から温かい黄色の灯りが漏れ、空気には見慣れないが食欲をそそるスパイスの香りが漂っていた。


「ここは戦争の影響をまったく受けてないみたいね」ユウキが周りを見回した。その表情から緊張がようやく少し抜けていた。


「戦闘は主要な戦略拠点に集中してたみたいだな。この目立たない小さな町は最悪の事態を免れたんだろう」俺はそう言いながら、漂ってくる匂いに腹の虫を鳴らした。


ワカナの鼻がひくりと動き、彼女はすぐさま匂いの元へと駆け出していった。俺たちも小走りでついていった。


そこは小さなタタール料理のレストランだった。店先には焼き台が設置されていて、羊肉の串焼きが炭火の上でジュウジュウと音を立て、脂が滴り落ちるたびに火花を散らし、クミンと焦げた肉の香ばしい香りが空気に満ちていた。


「お店の人、これください!」ワカナは言葉の壁などまったく気にせず、身振り手振りを駆使して注文した。


まもなく、俺たちのテーブルに料理が次々と運ばれてきた。


俺はさっそく焼き羊肉の串を手に取り、一口かじった。表面はパリッと香ばしく焦げていて、中はジューシーで柔らかく、噛むたびにクミンと唐辛子の風味が弾けた。


「チェブレキ!」店員が焼きたてのタタール風肉パイの皿を置いた。俺たちが外国人だと分かったのだろう、特に説明もせず、料理の名前だけを言って置いていった。


パリパリの皮の中には挽き肉と玉ねぎの具がぎっしり詰まっていた。一口かじると、灼熱の肉汁が舌を焼きそうになったが、それでも構わずすぐにもう一口かぶりついた。


「このパイ、すごく美味しい!」サチは両手でそれを抱えるように持ち、目を輝かせながら頬を膨らませていた。口いっぱいに玉ねぎと肉汁の濃厚な香りが広がっているようだった。


「これもどうぞ!」店主が湯気の立つスープの鍋を運んできた。刻んだ羊肉、ニンジン、小さな団子のような生地の欠片が入っていて、香りが濃厚に漂っていた。一口飲むと、温かさが胃から全身へと広がっていった。


ユウキは珍しく気を緩めて静かにスープをすすり、その顔にはほとんど子供のような満足げな表情が浮かんでいた。「やっと落ち着いて食事できるわね」


ワカナは串を大きく頬張りながらもごもごと言った。「この旅、意外と得した気分。魔物も倒せたし、異国のグルメも堪能できたし」


食事の途中、ワカナはふと何かを思い出したようにスマホを取り出し、振ってみせた。「そうだ、配信の反応見てみようよ。さっきの戦い、あまりにも大げさすぎたから、みんなが何て言ってるのか気になる」


彼女がコメント欄を開くと、メッセージの壁がどっと押し寄せてきた。


『UFOが撃墜されるところスクショした、こんなヤバい配信人生で初めて見た』

『この香りキャンドルボス戦のミーム何、もう色んなとこで広まってる』

『あのニンジンで一晩中笑った、まさかマフィアのボスがニンジンになるとは』

『待って、海外ニュースがもうこれ取り上げてる、謎の組織が戦地に介入したって』

『上の人、うそでしょ、これ国際的な話になってるの?』


ワカナはスープを吹き出しそうになるほど笑った。「あたしたち、本当にニュースになったんだ!」


「良太のほうはどうなった?三ヶ月分の給料失ったんだろ?」俺は先ほどのことを思い出して尋ねた。


ワカナは素早くスクロールして、見覚えのあるコメントを見つけた。


『負けたけど、幸せな負け方だった、この配信、それだけの価値はあった』

『お前大丈夫か、三ヶ月分の給料飛んだのに』

『いいんだよ、こんなものを最前列で見られる機会、一生に一度あるかないかだから』


「こいつ、意外とポジティブだな」ユウキが小さく笑った。


すぐ後に純一のコメントが表示された。


『みんな良太のこと笑うのやめて、正直あの香りキャンドル作戦、結構賢いと思うわ、ワカナ、これ本にしなよ』

『上の人、マジで言ってる?異星人モンスターを香りキャンドルで倒す攻略本なんて誰が必要とすんの』


サチはくすくす笑い、スプーンを口元で止めたまま言った。「みんなの反応、面白すぎる」


フェアリーはテーブルの上を漂いながら、興味深そうにスマホの画面を覗き込んだ。「あんたたち濁世の人間のこういうやり取り、実は結構面白いのね」


コメントを読んでいるうちに、俺はようやく肩の力を抜くことができた。一日中抱えていた緊張が、この温かく満ち足りた食事とともに、ゆっくりとほぐれていった。


食事の後、俺たちは石畳の道を歩いて海岸へ向かった。夕日はゆっくりと黒海の水平線へと沈んでいき、海面全体をオレンジと紫のグラデーションに染め上げていた。カモメが頭上を旋回しながら、長く尾を引く鳴き声を上げていた。


ワカナは平らな岩を見つけて腰を下ろし、遠くの夕焼けを見つめながら、珍しく静かにしていた。「ここ数日を経て、なんだか数歳分年を取った気がする」


「そうね」ユウキが彼女の隣に座り、感慨のこもった声で言った。「でも、少なくとも全員無事だったわ」


サチは俺の隣に寄りかかり、すっかり治った俺の手をそっと握りながら、柔らかい声で言った。「マスミ、手、もう大丈夫?」


「サラダの肉のおかげで、もうほとんど問題ない」俺は彼女に微笑みかけた。彼女の目に浮かぶ心配の色を見て、胸の中に温かいものが広がった。


フェアリーは俺たち四人の間を漂いながら、羽根を軽く羽ばたかせた。「こんな風に何も考えずに座って夕日を眺められることって、本当に珍しいよね」


潮風がその塩気を帯びた湿った匂いを顔に運んできて、遠くの岩に打ち寄せる波の音が、穏やかで落ち着いたリズムを刻んでいた。俺たち五人はただ静かに座り、燃えるような太陽が少しずつ水平線の下へと沈んでいくのを見つめていた。誰も言葉を発さなかった。


「そろそろ戻る頃合いかな」しばらくして、ワカナが静かに口を開いた。いつもの快活さは影を潜め、代わりに真剣な静けさが漂っていた。


俺は、迫りくる夜にゆっくりと呑み込まれていく海を見つめながら、そっと頷いた。


「ああ。戻る時間だ」


ベルゼブブはまだ巽の塔のどこかにいるはずだし、俺はまだ、あのもう一つのダンジョンについて、エンヴェルから話を全部聞き出さなきゃいけない。


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