第163話 風の刑
マルコは地面に横たわり喘いでいた。まるで自分の死を経験したばかりのように顔は青ざめ、胸が激しく上下し、一息一息が引き裂かれたように途切れていた。
「もう何回かやってほしい?」
フェアリーがからかうように笑いながら、羽根を軽く羽ばたかせた。その様子は、まるで小動物をもてあそんでいるかのように気軽だった。
マルコの口はチーズにぴったりと塞がれていて、一言も発せず、くぐもった曖昧な呻き声を漏らすだけだった。フェアリーは彼を突風で包み込み、渦を巻く風で空へと吊り上げた。彼の体はゆっくりと上昇し、四肢が恐怖のあまり激しくばたついた。
そして彼女は前触れもなく手を離した。マルコはパニックのまま悲鳴を上げたが、その声はチーズの下でくぐもり、恐怖に満ちた鈍い音の連続しか聞こえてこなかった。
地面から一メートルほどのところで、彼女は再び突風を起こして彼を受け止め、また空へと吊り上げ、また手を離し、それから地面のわずか三十センチ手前でもう一度受け止めた。そのタイミングは、まるですでにマスターしたゲームをこなしているかのように正確だった。
「はぁ、フェアリーが何か恐ろしいことをするんじゃないかと思ったけど、こういうことか」ワカナはほっと息をつくと配信を再開し、目の前で繰り広げられている珍妙な光景にカメラを向けた。
コメント欄はすぐさま困惑に包まれた。
『これジェットコースターみたいなもの?なんか楽しそう』
『いや待って、あの人の顔色やばすぎるでしょ、本当に大丈夫?』
『フェアリーがこんな風に遊んでていいの、ちょっと怖いんだけど』
『上の人考えすぎ、最悪ちょっと怖い思いするだけでしょ』
「それ、結構面白そうだな。俺の番はいつ来るんだ?」
マルコがフェアリーに振り回されているのを見ても、エンヴェルはまったく恐れる様子を見せず、むしろ本物の好奇心を込めて尋ねた。
「やめてくれ、フェアリーが失敗でもしたら……」俺は眉をひそめて言った。
「失敗?あたしが?マスミ様、あたしのこと見くびりすぎ」彼女はマルコをまた受け止め、そして投げた。その動作には一片のためらいもなかった。
「でもこれをやったところで、あいつは大して怖がらないと思うぞ。ジェットコースターに何回か乗るようなもんだ」エンヴェルは軽い口調でそう言った。次の番が自分に回ってきても大したことないと思っているかのような、どこか麻痺したような無関心が声に滲んでいた。
「へえ、そう?」フェアリーはそれ以上何も言わず、羽ばたきの速度を上げ、マルコをさらに何度も放り投げた。
最初、マルコの声はくぐもった恐怖の呻き声だった。
「この程度の恐怖なら本当にゲームみたいなものね」フェアリーは軽く笑うと、さらりと風速を上げ、マルコの上下運動をより速くした。
この頃には、彼はまさにフェアリーの風に上下に振られる炭酸缶そのものといった有様で、空中で絶え間なく転がり、回転していた。
マルコの声はくぐもった恐怖から、低く激しい唸り声へと変わっていった。叫びたい罵り言葉は山ほどあるはずだったが、ハルーミのチーズが完全に口を塞いでいて、歪んだ断片的な音しか出てこなかった。
「ふうん、まだ余裕がありそうね」フェアリーはすっかり乗り気になっていて、渦巻く風を絶え間なく上下に操り続けた。笑みが顔から消えることは一度もなかった。
マルコの怒りは胸の中でどんどん膨れ上がっていったが、一言も声として発することができなかった。
くぐもった呻き声、唸り声、低い声、それが延々と続き、やがて彼はすっかり力尽きたように、四肢が次第にぐったりと垂れ下がっていった。
「あれ?もう疲れたの?本当に大したことないのね」フェアリーは少しがっかりした様子だった。
彼にそれ以上何ができただろうか?マルコは残忍なマフィアのボスだったかもしれないが、つい数日前まで敵対組織に拷問され続け、俺たちがつい先ほど炎の中から引きずり出したばかりだった。もう体力なんて残っているはずがなかった。
それでもフェアリーは続けた。まるで新しいおもちゃを壊すことに夢中な、いたずら好きの子供のように、手を止めることなく、風を波のように上下させ続けた。
彼女は根っからのサディストだった。本当の苦しみとは痛みそのものではなく、人を本当に打ちのめすのは消耗そのものなのだと理解している人間だった。
四十二回目の落下で、マルコは膝から崩れ落ち、嘔吐し始めた。だが口はチーズで塞がれたままで、吐瀉物と胃酸の行き場がなかった。顔は真っ赤に染まり、むせ返りながら、一部は鼻から無理やり噴き出し、一部は意に反して押し戻され、その顔全体が窒息と苦悶に歪んでいった。
「くそ……こんな酷いことしなくてもいいだろ」俺はフェアリーを睨みつけ、思わず顔をそむけた。
小さなピクシーは純粋無垢な様子で肩をすくめてみせ、舌を出しながら、まるでアイドルが可愛いポーズを決めるかのような顔をした。この光景がどれほど不気味かまったく分かっていない様子だった。
「そんなことをしながら可愛くしようとしても、微笑ましいギャップにはならないぞ」俺は呆れて言った。
「でも楽しいんだもん」フェアリーは少し頬を膨らませ、さらに速度を上げ、風速がまた上がり、マルコをより高く飛ばした。
「ちっ、一体いつまで続ける気だ」俺がすっかり匙を投げそうになっていたその時、ワカナが隣で小さく呟いた。「この映像流したら、視聴者、あたしたちのほうがマフィアより怖いって思うんじゃない……」
『こんなの思いつくなんて、フェアリーってなかなか発想力あるね』
『上の人、それどころか、相手が人間ならもっとやりようがあるよ』
『確かに、電気つけたり水飲ませたりするだけでも拷問になるもんね。うちの嫁フェアリーは実際優しいけどな!』
『フェアリーはマスミのものだよ。上の人、人妻属性でも好きなの?』
ユウキは少し離れた場所で腕を組み、言葉にならない何かが顔に渦巻いていて、見ているうちに眉間の皺がどんどん深くなっていった。サチは顔を背け、これ以上見ていられないというように、俺の服の裾を強く握りしめていた。
コメント欄にも不安が広がり始めた。
『あの嘔吐のシーンはちょっとやりすぎな気がする』
『みんな落ち着いて、少なくとも悪人ではあるんでしょ』
『それでもこれをこんなに長く見せられるの、けっこう気まずい』
『ワカナ、カットしたほうがいいかも』
フェアリーの表情が突然険しくなった。
「マスミ、誰かがあたしの邪魔をしてる!」
「なん――」俺がそれを理解する前に、マルコは配信を見ていた全員の目の前で、顔面から地面に叩きつけられた。
ぐしゃっ!
それは本物の、残酷な激突音だった。
その重力による衝撃を受けた顔と頭蓋骨は、骨片と血、脳組織の混ざり合った塊しか残さず、周囲の地面に飛び散った。濃厚な血の臭いが瞬時に空気に満ちた。
あまりに一瞬の出来事で、誰も反応する間すらなかった。
「えっと……俺の番はやっぱり遠慮しておくよ」エンヴェルはばつが悪そうにそう言うと、先ほどまでの興味の色が顔から一瞬で消え失せ、一歩後ずさった。
配信は完全な沈黙に包まれ、それからコメント欄が一気に爆発した。
『待って待って待って今何が起きたの!!!』
『いきなりすぎる、フェアリーは絶対失敗しないって言ってなかった?』
『ワカナ今すぐ配信切って、これはさすがにグロすぎる』
『誰が邪魔してるの、この展開怖すぎる』
『うそでしょ、本当に死んじゃったじゃん』
ワカナは慌ててカメラをそらし、震える声で言った。「み、みんなごめん、配信切るね!」配信は混乱の中で途切れた。
フェアリーは宙に浮いたまま、顔を青ざめさせ、羽根をかすかに震わせながら、不安げな声で言った。「マスミ、本当にあたしのミスじゃないの。何か力が無理やり入り込んできて、あたしの風を断ち切ったんだ」
ユウキはすぐさま剣の柄を強く握りしめ、警戒しながら周囲を見回した。「誰かが物陰から手を出してきたってこと?」
サチは俺の腕を強く掴み、震える声で言った。「もしかして……誰かが今、私たちを見てるの?」
俺は、もはや人間だったとは思えない地面の血だまりを見つめた。心臓がどんどん速く打っていた。拳を握りしめ、周囲をゆっくりと見回してみたが、怪しい人影は一つも見当たらなかった。空気には血と焦げた土の匂いが濃厚に混ざり合い、息を吸うのさえ苦しくなるほどだった。
「これをやったのが誰であれ」俺は低い声で言った。かつて感じたことのないような警戒がその声には滲んでいた。「これは、見た目よりもずっと複雑な話になってるはずだ」




