↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
濁世の二

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
162/255

第162話 狡猾なエンヴェル


エンヴェルは二十代前半といったところで、若かった。肌の色はやや浅黒く、スラブ系というよりは小アジア寄りの見た目だった。頬にはまだ完全に治りきっていない火傷の跡がいくつか残っていて、その目には年齢に見合わない鋭さが宿っていた。


「今、はっきり考えられるくらいには意識があるんだよな?」俺は彼の襟首を掴んで詰め寄った。声は硬く、握る指の関節がかすかに白くなっていた。


彼は瞬きをして、素早くマルコのほうへ視線を投げた。


その視線には何か面白がるような気配があった。頭では面白いと分かっていても、これほど恐ろしいことが一気に目の前に並べられて、その困惑ははっきりと顔に表れていた。口の端が二度ほど震えてから、無理やり動きを止めた。


「とぼけるなよ。俺が飲ませたのは大抵の異常を治せる代物だ。だから今のお前は間違いなくはっきり考えられるはずだ」俺は怒りを滲ませて言い放ち、同時にピクシーに合図して拳銃を持ってこさせた。それが手に渡った瞬間、冷たい金属の感触が掌に押し付けられた。


ワカナはまだ配信を続けていて、カメラは俺たち二人にまっすぐ向けられていた。コメント欄はすぐさま盛り上がった。


『このエンヴェルって誰、めちゃくちゃボロボロじゃん』

『マスミ、今回は本当に銃構えてるの?』

『うわ、展開がとんでもないことになってきた』

『上の人落ち着いて、マスミは元々お人好しだから、本当に撃つことはないと思う』


正直、俺は今まで銃を撃ったことなんて一度もなかったが、マフィアの構成員を脅すには千の罵り言葉より銃口を突きつけるほうがずっと効くと分かっていた。


「待ってくれ……こんなことしなくていい、俺だってまだ状況を完全に理解できてないんだ」


エンヴェルの生存本能は、銃を見た瞬間すぐさま舌を動かし始めた。それでいて、その声にはパニックの色がまったくなかった。


コメント欄が再びざわついた。


『なんでこの人、全然動じてない感じなんだろう』

『確かに、目も全然パニックしてない、むしろ計算してる感じ』

『上の人も気づいた?この人、ただ者じゃなさそう』


「あのクズと、お前はどういう関係なんだ?なんでこいつを逃がした?」俺は、固まったチーズに絡め取られたまま地面に転がり、くぐもった唸り声しか上げられずにいるマルコを指さした。


エンヴェルはもう一度マルコのほうを見て、声を落ち着かせた。


「正直、あいつのことはほとんど知らない。ただ、あいつが『父』の敵だってことだけは知ってた」


「自分のボスの敵だって知ってて、それでも助けたのか?」俺は信じられない思いで彼を見つめた。


その若い男は逆に、俺のほうが世間知らずだとでも言いたげな目でこちらを見返した。


「もう見ていられなかったからだよ。マルコは、あの男に唾を吐きかけられる、この世で唯一残った人間みたいに感じたんだ」


「あんたのボスに対する忠誠心、あんまり盤石じゃなさそうだな」俺は目を細め、彼を観察した。


「俺にはあいつを潰したい理由がある。それに……」彼はこちらを見て笑った。少し鈍い相手を見るような笑みで、口の端に意味深なものが浮かんでいた。


その目つき――俺の知らない何かを、こいつは知っている。


「それに、何だ?」


ユウキが前に進み出て、剣先を彼に向けた。喉のわずか数センチ手前で切っ先が止まり、陽光を受けて冷たく光っていた。


「それを俺に向ける必要はない。この件に関しては、俺はあんたの味方だ」彼は穏やかな手つきで刃をそっと押しやった。まるでこの瞬間が来ることをすでに予期していたかのような落ち着きだった。


「俺たちの味方?あのクズが俺の命を直接脅かしたことは分かってるよな?」俺はマルコを指さした。声にはかすかな怒りの震えがあった。


「だからこそ、俺はあいつを逃がしたんだ。あんたならすぐに俺を見つけ出すだろうと分かってたからな」エンヴェルの表情には本物の狡猾さが浮かび、目の中に一瞬パニックの色が走った。だが――誰の目にも、それが演技だと分かった。


コメント欄はさらに盛り上がった。


『これ計算しすぎでしょ、わざと捕まりたかったってこと?』

『マスミを何かに利用しようとしてるんじゃ』

『この人、マルコより厄介な気がしてきた』

『ワカナ気をつけて、この人絶対何か企んでる』


「俺に見つけてほしかったってことか?」正直それは俺にとって予想外で、銃を握る手がわずかに緩んだ。


「そして実際うまくいった」エンヴェルは笑った。声には満足げな響きがあった。


「俺に何を求めてるんだ?」


「コンスタンティンに対して行動を起こすよう、あんたを説得することだ」


「あいつに対して行動を?俺の相手になんてならないだろ」俺は笑った。隠すつもりもない自信が声に滲んでいた。


「それも、あいつがあんたと同じような力を手にしない限りの話だ」


その一言は重く胸に響き、意図せず銃を握る手に力がこもった。


『待って、今のセリフ、めちゃくちゃ不穏なんだけど』

『コンスタンティンも何か神器みたいなものを狙ってるってこと?』

『この話、どんどん大きくなってきてる』


「あいつが俺と同じような力を手にする方法があるのか?」


「まだない。でも絶対に突破口を見つけると思う。なぜなら、二つ目のダンジョンが現れて、あいつはすでにそれを掌握してるからだ」


エンヴェルの口調が急に真剣なものへと変わった。焼け焦げた顔に、珍しく重々しい影が差した。


「二つ目のダンジョン……それって、巽の塔みたいな?」


「塔?俺たちのは地面に開いた巨大な穴だ」


もう一つ……巽の塔一つだけでも、俺たちはさんざん走り回らされた。俺は眉をひそめた。重苦しい予感が胸にのしかかってきた。


ワカナとサチが顔を見合わせ、二人とも不安げな表情を浮かべた。フェアリーは俺の肩でじっと座ったまま、羽根をかすかに震わせていた。


コメント欄は数秒静まり返ってから、ゆっくりと再び動き出した。


『もう一つダンジョンとか、さすがにありえなくない?』

『この世界、ダンジョンだらけなの?』

『どんどんややこしいことになってきた気がする』

『マスミなら大丈夫、ダンジョンがいくつあろうと関係ないよ』


「あんたを信用しろって言われても、どうすればいい?」俺はエンヴェルの目を見つめながら、慎重に言葉を選んだ。


「本当のことを言わせる『オレンジジュース』とかいうやつ、持ってるんじゃないのか?」


「よく分かってるな。今このタイミングで自白剤を飲ませても、秘釀蜜の効果で打ち消されるって、もう見抜いてるってわけか」俺は短く鼻で笑った。


「知ってたわけじゃない、推測だ。ただ、あんたなら秘釀蜜の効果を打ち消す方法だって他にいくらでも持ってるだろうって、それも推測してる」エンヴェルは目を閉じた。その表情は、すでにこの先どうなろうと覚悟を決めた者のように穏やかだった。


「好きにしてくれ。俺を信用できるって証明するために、有効だと思う方法を何でも使えばいい」


彼は完全な確信を込めてそう言い、わずかに顎を上げてまで、尋問を受ける覚悟を示すような姿勢を取った。


ユウキは剣を彼に向けたまま、まるで詐欺電話の犯人を見るような目つきで彼を観察していた。


コメント欄が再び盛り上がった。


『この人度胸あるな、自分から尋問してくれって言うなんて』

『何か罠かもしれない、みんな警戒して』

『上の人、考えすぎでしょ、半分焼け死にかけてる人が何の罠仕掛けるのさ』

『何であれ、まずマスミがどう対処するか見てみよう』


その時、フェアリーの声が突然背後から響いた。


「本当にこんな方法でいいの?」


続いて、マルコの苦しげな、絶望に近い震えを帯びたくぐもった呻き声が聞こえてきた。


俺は素早く振り返り、マルコを縛るチーズがさらに締め付けを強めているのを見た。顔は死人のように青白くなり、目を大きく見開いて、喉から引き裂かれるような悲鳴が漏れ出していた。


コメント欄が再び爆発した。


『待って待って待って、マルコに何が起きてるの』

『あの声、あまりにも苦しそう』

『フェアリー一体何したの、これ怖すぎる』

『雰囲気の切り替え早すぎてついていけない』


俺は突然、状況が自分の手から離れていくような感覚に襲われた。心臓が一瞬跳ねた。


「ワカナ!配信切れ!」俺は切迫した声で叫んだ。


ワカナは一瞬固まったが、すぐに慌てて画面を操作し始めた。カメラがずっとこの一部始終を撮り続けていたことに、今さら気づいたようだった。


「わ、分かった!今すぐ切る!」彼女の指が必死に画面を叩き、その顔には明らかな緊張が浮かんでいた。最後の数秒には、コメント欄が「え、これから何するの」と騒ぐ様子まで映り込んでいた。


ユウキは剣を鞘に収め、警戒のこもった目をフェアリーに向けた。

「今、一体何をしたの?」


サチが不安げに俺の袖を掴み、震える声で言った。

「マスミ、マルコが……」


俺は地面で激しく震え、あの惨めなくぐもった呻き声を上げ続けるマルコを見つめ、それから、依然として完全に落ち着き払ったエンヴェルへと視線を戻した。何とも言い表せない不安が胸に込み上げてきて、一瞬、どちらの状況を先に対処すべきか分からなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。