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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
濁世の二

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第157話 自ら始めた戦争に呑み込まれた街


サチの準備が整うと、彼女はすぐさまピクシータトゥーを起動させ、俺たち全員を対岸へと瞬間移動させた。


俺たちが現れたのは、半ば崩れかけた倉庫の中だった。屋根は大きく吹き飛ばされて穴が開き、破れたトタン板の縁からはまだ水が滴っていて、床には歪んだ棚と砕けた木箱が散乱していた。倉庫の正面の扉越しに、ドローン攻撃を受けた海峡大橋が、まだ区画ごとに海峡へと崩れ落ち続けているのが見えた。折れた橋脚から白煙が立ち上り、遠くから鉄筋の裂ける鋭い音が響いてきていた。


恐ろしい光景ではあったが、少なくとも崩れた橋そのものは、もう俺たちの問題ではなくなっていた。


「たくさんの人が死んじゃうんだよね?」サチが不安げにそう言い、服の裾を強く握りしめた。


「この侵略を始めたのはあいつら自身だ。生きるも死ぬも、全部自分たちの責任だよ」フェアリーが、まったく感情のこもらない声でそう言った。


「でも最前線にいる人たちなんて、ほとんど何も分かってない子供みたいなものなのに……」ワカナの声は低く沈み、そこには共感めいた悲しみが滲んでいた。


「どれだけ何も分かっていなくても、戦争が何を意味するかくらいは知っているはずよ。戦場に無理やり送り込まれたのだとしても、消極的な抵抗という選択肢は残されていたはずだから」ユウキが冷静に自分の考えを述べた。


「あいつらは自分の祖国を守ってるわけじゃない。戦場に足を踏み入れる前から、選択肢はいくらでもあったはずだ」俺はユウキの意見に同意しながら言った。「反戦運動、非協力運動、ハンガーストライキ、それこそ投獄されることでさえ、他人の侵略のために死ぬよりはずっと価値があったはずだ」


「でも、それでも……」サチは重い気持ちで海峡のほうを見つめていた。その目はかすかに赤くなっていた。


「近くにアンドリアス・サピエンスとピクシーを何体か配置しておく。もし味方が間に合わずに救えない人がいたら、その時は俺たちが手を貸す。ただし――」


その「ただし」が、サチの不安をさらに深めた。「ただし……何?」


「一度俺が誰かを救ったら、そいつは必ず俺の忠実な従者になってもらう」自分でも意図しないうちに、声には静かな凄みが滲んでいた。


サチは身震いしながらも頷き、俺の条件を受け入れた。両手を胸の前で強く握りしめていて、まるで百三歳まで生きるという運命が、急に贅沢すぎるものに思えてきたかのようだった。


そうして俺は、アンドリアス・サピエンスとピクシーを何体か召喚し、海峡付近に配置した。彼らは列をなして、倉庫の外に立ち込める濃い煙の中へとすぐに姿を消していった。


それから俺は再び泡泡槍を取り出した。


「エンヴェルとマルコのところまで連れていってくれ」


泡は倉庫の扉を抜けて漂っていき、俺たちはそれを追って動き出した。かなりの速さで動いていたので、あの二人はまだかなり遠くにいるということだった。俺は風靈鳥の群れを召喚し、歌でバフをかけてもらい、泡に遅れを取らないよう速度を上げた。


ワカナの配信カメラはずっと俺たちの後ろで揺れ動き、コメント欄も途切れることなく流れ続けていた。


『この光景リアルすぎる、今まで見た配信の中で一番緊迫感やばい』

『ワカナ、みんな無事でよかった、橋が崩れた時ほんとに心臓止まるかと思った』

『画面越しに煙の匂いがしてくる気がする、みんな大丈夫?』

『上の人何言ってるの、配信で匂いなんて伝わるわけないでしょ』

『気をつけて、こういう場所は本当に危険だから』


ワカナは苦笑いしながら答えた。「みんな心配しないで、マスミがついてるから、あたしたちの安全に関しては絶対大丈夫だよ!」


目の前に広がるのは見渡す限りの農地で、人の姿はほとんど見当たらなかった。畑の作物はどれも弱々しい様子で、戦争のせいで何か重要な作業の時期を逃してしまったのが明らかだった。害虫駆除だったのか、施肥だったのか、灌漑だったのか、あるいは収穫そのものだったのかもしれない。


枯れて黄ばんだ作物が畑の端に歪んだ列をなして垂れ下がり、戦車のキャタピラが刻んだ深い溝で寸断された畑もあり、掘り返された土が日に焼かれてひび割れていた。


一国の指導者が権力を握り、そして戦争を始める。戦争は食糧不足を招き、食糧不足は飢饉を招き、飢饉は幾千もの人々の命を奪う。


黙示録の四騎士は一言も語らないまま、その蹄の音はすでにこの大地を轟かせていた。


明らかに軍の拠点として接収されたらしい農家の建物がいくつか目に入った。壁には砲弾の穴がぽつぽつと開き、窓は粉々に砕けたガラスの山と化し、軒下には焦げた物干し紐がまだ垂れ下がっていた。


これほどの無駄を目にして、胸の奥に一抹の後悔が湧いた。正直、ここにゴブリンを何体か下ろして畑を立て直させてやりたい気持ちだった……


道中ずっと、道端には壊れた戦車が散らばっていて、キャタピラは千切れ、砲塔は不自然な角度で傾き、錆びた車体にはドローン攻撃の焦げ跡がまだ残っていた。


爆撃された軍用トラックが道端でひっくり返り、タイヤは燃え尽きて剥き出しのリムだけが残り、荷台には焼け焦げて原形をとどめない物資が散らばっていた。この戦争がすでに侵略した側の国土にまで押し戻されていることは明らかだった。


権力を失うことに怯えた指導者一人によって、国全体の民が、この惨状に引きずり込まれていた。


「ちっ!蠅の王をここに連れてきて解き放ってやればいいのに」ワカナが本気の怒りをにじませながら、道端の石を蹴り飛ばした。


俺は笑いながら彼女に同意した。ベルゼブブをこの場所で好き放題暴れさせたところで、百五十年生きようとする独裁者が今も引き起こしているこの惨状よりは、まだましなのかもしれない。


コメント欄もざわめき始めていた。


『この戦車の残骸怖すぎる、つい最近起きたことみたいに見える』

『マジで、ワカナあの農家の建物のほう映してもらえる、これ酷すぎる』

『こういう映像ってニュースじゃ検閲されそう、みんなを通して見られてよかった』

『上の人、言葉に気をつけて、IP特定されるよ』

『みんな敬意を持って見てね、本当に人が死んでるんだから』


俺たちはさらに泡を追い続け、風景は徐々に農地から都市部へと変わっていった。


かつては住宅街だったであろう通りには建物が立ち並んでいたが、無傷のものはほとんど見当たらなかった。外壁がすっかり崩れ落ち、中の歪んだ鉄筋や砕けた家具が剥き出しになっている建物もあり、三階の穴からソファが一つぶら下がって、風に揺れていた。焼け焦げた窓枠だけが残り、ずたずたに引き裂かれた街並みを、まるでうつろな目のように見つめている建物もあった。


アスファルトの道路には至る所に穴が空き、砕けたレンガと歪んだ看板が穴の縁に散らばっていた。焼け落ちた車が道の真ん中でひっくり返り、車体は原形をとどめないほど歪んでいた。空気には灰とタール、それに何とも言い表せない鋭い刺激臭が濃厚に漂っていて、思わず鼻をしかめてしまうほどだった。時折、野良犬が瓦礫の間をすり抜けては何かの匂いを嗅ぎ、また走り去っていった。


やがて俺たちは、猛烈な炎に包まれた石油貯蔵タンクの前で足を止めた。


その場所は明らかに空爆を受けたばかりだった。巨大なタンクには歪んだ亀裂が裂けていて、そこから絶え間なくオレンジ色の炎が噴き出し、濃い黒煙が真っすぐに、それまで澄み渡っていた空へと立ち上っていた。


爆発の熱で近くの建物の外壁が何棟も焦げ、レンガの破片があちこちに散らばり、火の粉がまだ風に乗って舞い、乾いた草地に落ちては小さな新しい炎を灯していた。


化学物質の焼ける匂いはあまりにも刺激的で、思わず二度咳き込んでしまい、その後もしばらく鼻の奥に焼けるような感覚が残った。


消防士と逃げ惑う市民たちがその一帯を埋め尽くしていた。サイレンが次々と鳴り響き、重い防護装備を身につけた消防士たちがホースを引きずりながら前進し、必死に炎に放水していた。水の勢いが炎に当たるたびに、白い水蒸気の雲が大きく巻き上がっていた。


逃げる工員たちが、パニックの中で咄嗟に掴んだものを抱えて走り抜け、崩れたコンクリートの山につまずきながら通り過ぎていった。


フェアリーが宙に浮きながらその惨状を見渡し、羽根をかすかに震わせた。「橋の時よりも、ここのほうがひどい……」


ユウキは眉をひそめ、周囲に目を走らせた。「これほど徹底的に破壊されてるなら、エンヴェルたちはこの辺りのどこかに隠れてる可能性もあるわね」


ワカナもいつものおどけた調子を消し、目の前の廃墟をゆっくりとカメラで映しながら、低い声で言った。「みんな、この先はちょっとショッキングな内容になるかもしれない。できるだけ距離を取って映すようにするね」


コメント欄は数秒静まり返ってから、ゆっくりと再び動き出した。


『もうゲームの映像みたいには見えない、これ本物の戦場だ』

『ワカナ、それでもこれを見せてくれてありがとう』

『探してる人を見つけたら、すぐにこの地獄から出てきてね』

『マスミ、これから向かう先はどこなの』


俺は前方をまっすぐに漂い続けるメッセージバブルを見つめ、煙で重たくなった空気を深く吸い込み、両の拳を握りしめた。


「進むぞ」俺はいつもの気軽さを失った声でそう言った。

「エンヴェルとマルコは、もうこの近くにいるはずだ」


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