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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
濁世の二

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第154話 誰も予想できなかった一陣の風


「やっぱり、これができるのは私しかいないみたいね!」サチが決意に満ちた様子で宣言した。


彼女は背筋を伸ばし、目には決意の炎を燃やしながら、額に「必勝」と太字で書かれた鉢巻きを結んでいた。布の端が潮風にはためき、朝の光の中でくっきりと際立っていた。


「向こうに渡ったら、すぐに瞬間移動で戻ってくるから、そうしたらみんなで一緒に渡ればいいよ!」サチは拳を握りしめ、興奮に顔を輝かせていた。まるで頭の中ですでに計画をリハーサル済みかのようだった。この向こう見ずな女の子が、あと二秒で崖から飛び出しそうな様子だというのは、俺にもすぐ分かった。


「おい……冗談はやめろ、あそこは実際の軍事最前線なんだぞ」俺は彼女を掴もうと手を伸ばした。彼女にはいつも説明のつかない幸運がまとわりついているとはいえ、その無鉄砲な意気込みを目の当たりにして、心配していないふりをするのは嘘だった。


「いや、待って、彼女なら本当にやり遂げられるかもしれない」ユウキが不意にそう言った。何かひらめいたかのように目を細め、視線をサチと遠くの橋の間で行き来させていた。


「何か考えがあるの?」ワカナがユウキに身を寄せ、すでにその顔に浮かびつつある計算を読み取ろうとした。


ユウキは物事を段階的に進めるタイプで、突然のひらめきに頼ることは滅多になかった。だから彼女がたどり着いた考えが何であれ、それはその場の思いつきではなく、しっかりと筋道立てて考え抜かれたものであるはずだった。


「それで、どうすればいいと思う?」俺はユウキを見つめたまま尋ね、彼女が計画を語り出すのを待った。


「あなたのあの隠密セット――現代の技術じゃ検知できないはずよね?」


「視覚、聴覚、嗅覚には完全に探知不可能だって断言できる」俺は頷きながら答え、以前フードを被った瞬間に感じた、あの世界の音が半分吸い取られるような不思議な感覚を思い出した。


「でも、赤外線カメラやレーダー、サーモグラフィーはどうなの?」サチが心配そうに眉を寄せて尋ねながら、鉢巻きの端を無意識に指でつまみ、布地を前後にこすっていた。


配信のコメント欄は、よりによって冗談を飛ばし始めていた。


『真っ昼間に赤外線?意味なくない?』

『みんな余計な入れ知恵するなよ、本当に見つかったらどうすんだ』

『でも見つかったらそれはそれで面白いコンテンツになるよね』

『そもそも自分の拠点をレーダーでスキャンするやつなんている?』

『上の言う通り、レーダーは防空用でしょ』

『予言しとく、サチ余裕で渡り切るわ』


「じゃあ決まりね!」みんなにからかわれても、サチはまったく気にする様子がなかった。むしろそのおかげで気が楽になったようで、顔の緊張がふっと緩み、カメラに向かってピースサインまで見せた。


フード以外のパーツはすべて量産可能だったので、俺は唯一無二の風のフードをサチに手渡した。


彼女はそれを受け取ろうと手を伸ばした時、指先がわずかに震えていた。まるで厳粛な儀式の品を受け取るかのように、両手で丁寧に包み込んだ。


残りのセットはすでに彼女の体格に合わせて選んであり、サイズもちょうど良かった。


彼女は壁伝いブーツを履き、その場にしゃがんで足裏を岩に押し当て、グリップ力を確かめた。接触した瞬間、かすかな吸着音が聞こえ、彼女は満足げに頷くと、その場でつま先立ちを二回試して、しっかり固定されているか確認した。


迷彩マントを羽織ると、覆われた部分がゆっくりと周囲に溶け込んでいき、残ったのはかすかな笑みだけだった。それは滑稽さと安心感が半々といった光景で、ワカナは我慢できずに布の端をつついてみて、微妙な色の揺らめきが走るのを見つめていた。


毒牙ガントレットをはめると、拳の関節からかすかな紫の光が立ち上り、地雷砲を腰に下げた。彼女の周囲の空気が一瞬で静まり返り、海風の轟音さえも消え失せたように感じられた。その不思議な静寂が彼女から外へ広がっていくのを、俺は確かに感じ取ることができた。


最後に、彼女は俺の風のフードを手に取った。


それは俺のサイズに合わせて作られたもので、彼女には少し大きすぎたのだろう。被った瞬間、頭の上でぐらぐらと揺れ、縁が目元まで垂れ下がって視界の半分を塞いでしまった。彼女は手を伸ばして縁を押し上げ、泣き笑いのような表情を浮かべた。


サチは片手でフードを押さえておかなければならなかった。それから覚悟を決め、深く息を吸い込んだ。胸が一度、二度と上下し、それから完全隠形を発動させた。


彼女のあらゆる痕跡が、完全に消え去った。


俺には彼女がどこにいるのか、まったく分からなかった。


もう出発したのか?どのくらい進んだのか?橋の上まで辿り着けたのか?


俺は目の前の何もない空間を見つめ続けた。無意識のうちに両手を握りしめ、呼吸は浅くなり、気づけば完全に息を止めていた。自分のわずかな動きが、彼女の居場所を悟らせてしまうんじゃないかと恐ろしかった。


「軍の情報部、俺たちの配信を見てないといいけど」俺たちの渡橋に対して特別な防御を敷かれるんじゃないかと不安で、気づけば唇を噛み、視線が橋とスマホの画面の間を落ち着きなく行き来していた。


「情報部と前線の間には、かなりのお役所仕事の壁があるから。そんなに早く反応できるはずないわ」ユウキは腕を組み、自信に満ちた様子でそう言った。まるでこの世で一番当たり前の事実であるかのように。


ワカナが横から口を挟んだ。「そうそう、軍の報告がそんなに速いわけない。情報が前線に届く頃には、サチはもう渡り終えてるって」


そう言いながら、彼女は橋のほうへ目をやった。まるで自分の予想を、自分の目で確かめたいかのように。


フェアリーが俺の肩に降り立ち、不安げに首を伸ばして橋のほうを見つめ、羽根を震わせた。「主様、私、何も気配が感じ取れないよ、本当に大丈夫なの?」その声は細く軽やかで、隠しきれない不安が滲んでいた。


俺にできるのは、あの橋の軍の配備がサチをすっかり見逃してくれることを祈るだけだった。そして、百三歳まで生きるという幸運の指輪の予言を信じるしかなかった。俺は海峡にかかる橋をじっと見つめながら、心の中で静かに秒数を数えていた。岩に打ち付ける波の音さえ、いつもより鋭く感じられ、待つ一秒一秒が永遠のように長く引き延ばされていくようだった。


数分が経った。強い突風が海峡を吹き抜け、湿った潮の匂いを俺たちの顔にまともに叩きつけ、服の裾をはためかせた。ワカナは風に乱された髪を押さえながら、眉を寄せて遠くを見つめた。髪は風に絡まっていた。


そしてその時、遠くの橋の上で、突然騒ぎが起きるのが見えた。


兵士たちが四方八方に叫びながら走り回り、ヘルメットや装備がぶつかり合ってけたたましい音を立てていた。将校らしき人物が周りの者たちを次々と掴んでは命令を怒鳴りつけていて、その声がかすかに風に乗って届いてきた。何を叫んでいるのかまでは聞き取れなかったが、その場に満ちたあからさまなパニックは、岬にいる俺たちのところまで、波紋のように広がって伝わってきた。


一体、サチは向こうで何をやらかしたんだ?


ワカナとユウキ、そして俺は互いに顔を見合わせたが、誰一人として状況を理解できなかった。俺たちにできるのは、混乱に陥っていく橋をただ見つめ続けることだけだった。あの激しい突風とともに、俺たちの心臓も同じように激しく鼓動していた。


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