第153話 封鎖された海峡大橋
俺たち四人は海の中へと足を踏み出した。周囲の景色がぼやけ、寄せては引き裂かれるように流れていき、再び焦点が合った時には、俺たちは見知らぬ浜辺に立っていた。
早朝だった。クリミアは日本より六時間遅れていて、空にはようやくかすかな薄明かりが差し始めたばかりだった。
岸辺の岩はごつごつと荒々しく、何世紀もの波の打ち付けで角が丸く削られていた。打ち寄せる波が引いていくたび、岩の隙間に白い泡の輪が残った。空気には鋭い潮の香りと、何かの荒地植物の乾いた匂いが混ざり合っていて、俺たちの知る海風とはまったく違っていた。
岬のほうへ目をやると、崩れかけた古い要塞の廃墟が崖の縁に立っていた。風化した石壁には蔦が這い、いくつかの崩れた塔の残骸が寂しげに空へ突き出していて、まるで忘れ去られた物語を語りかけているかのようだった。朝の光が風化した石を斜めに照らし、廃墟をうっすらと金色の靄で包み込んでいた。その静けさは、どこか現実離れしているように感じられた。
地形をもっとはっきり見たくて、俺たちは近くの少し高い崖の上へ飛んだ。足元の野草が風に揺れ、露の湿った匂いが立ち上ってきた。
近くで見ると、岬の古い要塞はさらに風化が進んでいた。頑固な野花が壁の隙間から顔を出し、石段の縁は窪みができるほどすり減っていて、まるで何世紀も前の衛兵たちの足音がまだそこに残っているかのようだった。
ワカナは冷たい石壁に手を伸ばし、感嘆の声を漏らした。「この場所、歴史がにじみ出てるね!」
北東のほうを見ると、本来なら何の変哲もないはずの海峡大橋には、軍の検問所がずらりと並んでいた。橋のたもとには装甲車が何列も駐車し、兵士たちがライフルを肩にかけて行き来しながら巡回し、橋の両側にはレーダーアンテナまで設置されていて、ゆっくりと回転しながら周辺の空域を捜索していた。
「コンスタンティンは軍の封鎖があるって言ってたけど、嘘じゃなかったみたいね……」ワカナは遠くの橋に目を細め、その声には不安の色が滲んでいた。
「いつか濁世の争いに関わらなきゃいけない日が来るのかもしれないけど……」フェアリーが宙に浮きながら、その小さな体を風に揺らし、眉を寄せた。
「まずはマルコとエンヴェルを見つけよう」
俺は泡泡槍を取り出し、「うーん」を二回発射した。
泡が内陸へ向かって漂っていくものと思っていたが、意外にも、それらは橋の向こう側へまっすぐ飛んでいき、朝霧を切り裂いて、検問所の列の真上を直接通過していった。
「えっと……これ、封鎖の中をそのまま突っ切れって言ってるのか?」俺は呆然としつつも呆れながら、遠ざかっていく二つの泡を見つめて言った。
「何を怖がることがあるの?そのまま上を飛んで越えればいいだけじゃない!」ワカナはほとんど跳ねるような足取りで言い、すでに体を半分崖の外へ乗り出していた。
「あの下に並んでる対空ミサイル、見えてないのか?」俺は彼女を掴んで引き戻し、橋のそばに整然と並んだ発射装置を指さした。
「ふふ、ドローン攻撃に相当びくついてるみたいね」ユウキは目を細めて橋の配備を観察しながら、専門家めいた分析口調で言った。
「もっと遠回りするのはどう?」サチが控えめに提案し、俺とユウキの間で視線を行き来させた。
ユウキは首を振った。
「対空レーダーの探知範囲は思ってるより広いの。かなり遠回りしても、完全にかわしきれるとは限らない」
「じゃあ、私がそのまま突っ切って……」サチはそう言いながら、あの厄介な能力に頼りたそうな顔をしていた――百三歳になるまで何にも殺されないという、あの能力に。両の拳をぎゅっと握り、目には意気込みが光っていた。
「それやったら明日には世界のトップニュースになるぞ」俺はすぐさまその案を却下した。
「そしてKGBが絶対に押しかけてくるね」ワカナは肩を震わせて大笑いしていた。
その時、配信に投げ銭の通知が鳴った。
チーンドリンドリン――
『お前ら、他国の軍事封鎖の突破方法をマジで配信で相談してんのかよ!』純一はわざわざ投げ銭までして俺たちに文句を言ってきた。そのメッセージには呆れが滲み出ていた。
「へえ!そういう見方はしてなかったな、これいいコンテンツになると思ってたのに」ワカナは舌を出したが、まったく悪びれる様子はなかった。
配信の視聴者数を確認すると、また新記録を更新していた。
例の良太はすでにコメント欄で賭けを開いていて、俺たちのうち何人が渡り切れるか、そして渡る過程で橋を壊してしまうかどうかに賭けていた。良太は全員無事に渡り切ることにも、橋を壊すことにも両方賭けていて、三ヶ月分の給料をつぎ込んでいた。
こういう賭けで験を担ぎたがる人間がいるのは知っている。良太は本当に、顔は怖いのに心は優しいタイプの男だった。
コメント欄がすぐに押し寄せてきた。
『良太、また破産するんじゃ』
『俺は海錨で瞬間移動して普通に勝つほうに賭けるわ』
『いや待って、ここ軍事封鎖地帯だよ、本気で突っ切るの?』
『ワカナ落ち着いて、これ冗談じゃないんだから』
ちょうどその時、純一がまたコメントを残した。
『あの馬鹿どもは無視して、また一歩の海程の錨を使えばいいだろ』
なるほどな。てっきり俺たちがケチャップまみれの大惨事になりながら橋を渡るのを一番見たがっているのは彼だと思っていたが、意外と悪い奴じゃなかったらしい。
彼の助言に従って、俺は再び一歩の海程の錨を取り出した。その本体は朝の光の下でかすかな青みを帯びて輝いていた。俺は丁寧にそれを手に持ち、掌に伝わるあの馴染みの、かすかに冷たい感触を確かめた。
配信にはがっかりの絵文字が押し寄せた。
『あーあ、良太の賭け、無駄になったな』
『じゃあ見世物はなしか』
『くそ、橋を渡りながら大暴れするところ見たかったのに』
すまないな、良太。お前の賭けは不成立だ。
俺は錨を橋の向こう側に向け、深く息を吸い込み、起動する準備をした。
何も起きなかった。
もう一度試し、錨の本体をしっかりと握りしめて、あの馴染みの力の高まりを感じ取ろうとした。
やはり何も起きない。
まさか……
俺は眉をひそめ、錨を目の高さまで持ち上げてじっくりと観察した。
ワカナが身を寄せ、俺の手の中の錨を興味深そうに覗き込んだ。ユウキも足を止め、その神器に視線を固定した。サチとフェアリーは顔を見合わせ、二人とも明らかに困惑していた。
俺は錨を見つめた。かすかな赤い光を点滅させていて、まるで充電が終わっていないモバイルバッテリーのようだった。
まさかこいつにもクールタイムがあるっていうのか?
「どうしたの?」ワカナが手を伸ばし、少し無造作に錨の本体をつついた。
「勝手につつくなよ、俺だって何が起きてるのか分からないんだから」俺は錨を彼女の指から遠ざけた。
ユウキが身を乗り出し、点滅する赤い光を観察しながら、口調を真剣なものに変えた。「その色、あまり良くない兆候ね」
「主様、これって今日は本当に陸路で渡らないといけないってことですか?」フェアリーが俺の肩に降り立った。その声には不安の糸が絡んでいた。
サチは遠くの検問所を心配そうに見つめ、無意識に服の裾をいじっていた。「じゃあ、これからどうする?」
俺は手の中で赤く点滅する錨を見つめたまま、答えを出せずにいた。ただ力なくため息をつき、目の前に検問所とレーダーが端から端まで並ぶ海峡大橋へと視線を上げるしかなかった。




