第122話 ラットの群れ
サチの手がかりが掴めた!
「居場所、分かる?」
僕はユウキの目を閉じての探索を邪魔しないように近づいたつもりだったけれど、声に滲んだ焦りまでは隠せなかった。
「すごく暗い場所。隠れる場所をあちこち変えてて、周りに敵がいる――四つ足で、毛がふさふさで、これくらいの大きさ――熊みたい?」
ユウキは眉をひそめ、声に困惑を滲ませた。
「でも、おかしいよね。ここに熊がいるはずがない」
「熊くらいの大きさなら、絶対に熊じゃないよ。ここにいる虫の大きさを考えたら分かる」
僕は神経を張り詰めさせ、頭をフル回転させた。
この台所は何もかもがスケールアップされた世界で、内部のあらゆる生物が同じ比率で巨大化している。
ここでは、僕たちが見慣れている小さな台所の生き物が、熊レベルの脅威になってしまう。
「急いで合流しよう!」
ユウキは剣を握り直し、虫の女王の冠を頭にしっかり押さえ直して、目を開けた。表情が引き締まっていた。
「うん。幸運の指輪はサチが百三歳まで生きて、布団の中で安らかに逝くって預言したけれど、今この瞬間に危険にさらされてると分かってて、一人にしておくなんてできない」
言い終えるが早いか、僕は身を翻して通路の入口へ全力で走り出していた。
ユウキと僕は揃って出口へ駆けた。
数歩走ったところで、空中からメッセージの泡がこちらにやってきた。
目の前ではじけた泡が声を解き放つ――
「マスミ!ユウキ!早く戻ってきて!」
ワカナの声だった。
もう一つの泡。
「ネズミ!熊サイズのネズミ!」
熊サイズのネズミ……
じゃあサチを取り囲んでいるのも、ネズミ?
走りながらピースを繋ぎ合わせていったけれど、繋がるほどに、状況の絵はますます悪くなっていく。
また一つ泡が来た。
「私たちが上に開けた通気口から侵入してきたの!」
非常事態だ。
通気口――僕たちが掘った換気の縦穴。
部隊のために空気を循環させようと掘らせたあの通路が、今やネズミの侵入経路になってしまっていた。
走りながら、僕は心の中で半秒だけ顔をしかめた――これは僕の責任だ。
もう一つ。
「すごい数なの――マスミ、お願いだから早く戻ってきて、私、立ち上がれないの」
ワカナがこの世で何も恐れない人間だってことを、僕は知っている。
クトゥルフが目の前に降臨してきたって、彼女ならその場でたこ焼きに加工するだろう。
ただネズミだけは――あのもふもふの可愛い生き物だけは、彼女の体の芯まで届く恐怖を引き起こす。
理屈なんて通用しない、あの恐怖だ。
僕は足を速めた。
「ワカナ、本気でネズミが怖いんだ?」
ユウキが横を走りながら、信じられないという声で言った。
「うん――おもらしレベルで」
僕は答えた。
「あー……」
彼女は二秒沈黙した。
「じゃあ、急ごう」
ペースを上げながら、僕はメッセージのアワアワ銃を構えて、たくさんの部下たちに命令を撃ち出した。
「ネズミを食い止めて――ワカナとフェアリーを守って!食料部隊は後方に下がって、ムカデとアリを前線に出して!」
泡が次から次へと飛び出し、それぞれ別の方向へ散っていった。
飛んでいく一つ一つの泡は、僕にとって「命令が間に合いますように」という賭けだった。
「持ちこたえられる?」
ユウキが心配そうに聞いた。
「正直、僕も不安……」
口から出た声は、自分が思っていたより素直だった。
カタツムリ、ヤスデ、ゴキブリ……どれもこれもネズミのご馳走だ。
食料部隊そのものも言うまでもない。
この台所の食物連鎖が外の世界と同じなら、ネズミにとっては僕の全軍が、まさにビュッフェの食卓みたいなものだ。
「ムカデなら抑えられるよ」
ユウキは走りながら、自分に言い聞かせるように言った。
「あいつには毒があるから」
「ネズミは賢い。仲間が一匹毒にやられるのを見たら、すぐに戦術を変えてくる」
「じゃあ、もっと急ぐ」
彼女はそれ以上何も言わず、歩幅をさらに大きくした。
僕も同じペースで合わせた。
僕たちは全力でアリの巣まで駆け戻った。
部屋全体が、煮立った鍋みたいに沸き返っていた。
ワカナは膝をついて両腕で頭を抱え、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
フェアリーは対照的に、まだ完全に回復していない体を奮い立たせて、風刃を次々と放ち、ネズミの群れを押し留めていた。
羽は震え、立ち姿は少し傾いている。でも、彼女の手の中の魔法は止まっていなかった。
風刃一発一発の威力は大したことなくても、それぞれがネズミの進路を正確に捉え、無理やり足を止めさせていた。
「ワカナ!」
僕は声をかけた。
僕の声を聞いた瞬間、彼女は崩れて、まっすぐ僕に向かって駆けてきた。
僕はとっさに腕を広げて受け止め、背中を叩いて落ち着かせた。
肩のあたりがすぐに濡れる――涙だ。
彼女と知り合ってからずっと、僕は彼女のためにネズミを捕まえてきた。気づけば、こうやって彼女を抱きしめる動作は、ほぼ反射になっていた。
「もう……ネズミがここまで怖いとか、青い服着せたら、あのアニメの四次元ポケット持ってる猫まんまだよ」
僕は彼女の背中を何度か軽く叩いた。
ユウキはそれを聞いて、思わず小さく吹き出した。
「確かに――別の空間からいろんな道具を取り出すところまで似てるよね……」
「最低!」
涙でぐしゃぐしゃの顔のワカナが、僕の胸を強く一発叩いた。
その一発で僕は半歩よろけた。涙顔とパンチの組み合わせに、正直、どう反応したらいいのか分からなかった。
ふう――
もし高校時代、彼女に叩きのめされた不良たちが、彼女がネズミを怖がると知っていたら、十二の高校を鉄の拳で支配したあの女王の伝説は、広まる機会さえなかったかもしれない。
「冗談はここまで」
僕は冗談めかした顔を切り上げ、ワカナをそっとユウキの側に引き渡して、視線をネズミに戻した。
「フェアリー、一旦下がって!」
僕は彼女に声をかけた。
彼女は僕に視線を向け、最後にもう一発風刃を放ってから、ようやくゆっくりと後退し始めた。
たった一人で、しかも短くない時間、戦線を支え続けていた。
「お疲れさま」
擦れ違う時、僕は静かに言った。
彼女は答えず、ただ小さく頷いた。
数は多くなかった――十六匹だけだった。
でも僕の支配下の害虫の半分以上が、すでに彼らに食われていた。
食料部隊が調理器具を構えてネズミに立ち向かい、ぎりぎりのところで踏み止まっていた。
焼きジャガイモが最前線で両腕を大きく広げて立っている。構えは崩れていないが、後ろの食料部隊何人かは、すでに数歩後退していた。
ダイコンが大きなスプーンを振って、突進してきたネズミを横に弾き飛ばした――ネズミはスプーンの側面を捉えて横に転がり、瞬時に跳ね起きて、別の角度からまた突っ込んできた。
ダイアガストロポッドのムカデが、ネズミの一匹に噛みついた。
そのネズミは今、横に転がって泡を吹きながら痙攣している。
ムカデは本当に、ネズミと真っ向から渡り合えるだけの実力を持っているみたいだ。
このまま一対一でいけば……。
ところが残りのネズミたちは、仲間が毒にやられたのを見ても怯むどころか、さらに三匹を向かわせてきた。
一匹がムカデの注意を引きつけ、その隙に他の二匹が、頭と尾にそれぞれ噛みつき、綱引きみたいに反対方向に引っ張り始めた。
ムカデは全力で体を丸めて抵抗していた。
脚を狂ったように振り回したが、両端を噛みしめている二匹のネズミを捕らえることはできず、ただ空を切るばかりだった。
ちょうどそこへ、最初に陽動役を担っていたあのネズミが飛び込んで、ムカデの中央の節に思い切り噛みついた。
このネズミたちはアリと違って――命令を出す司令部を必要としない。
一匹一匹が自分で戦況を読める歩く指揮所であり、彼らは共有された本能だけで、複雑な戦術切り替えをやってのけていた。
これはネズミの群れじゃない――ライオンの群れだ!




