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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔—風火家人

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第113話 メッセージのアワアワ銃

 

僕は倒した敵を自分の従者に変えることができる。

 

この方法を使えば、戦況を少しずつ、だが確実に僕たちに有利な方向へとひっくり返していくことができるはずだ。

 

しかし、この戦術には致命的な問題があった――最初の一匹の死体はどこから調達するのか、という点だ。

 

多くの場合、僕自身が歯を食いしばり、最も過酷な初戦を自力で突破しなければならない。

 

これまでの激戦を潜り抜けてきて、正直なところ、僕の体は少しずつ摩耗し始めているのを認めざるを得なかった。

 

もしここで僕が倒れてしまったら、一緒に巽之塔に入ってくれた仲間たちはどうなってしまうのだろう。そんな考えが脳裏をよぎる。

 

――俺はあいつらの男だ。疲れたからといって泣き言を言って後ろに下がるわけにはいかない。

 

だが、このクーリエアントが……僕に新たな選択肢を提示してくれた。

 

僕はクーリエアントを従者として復活させた。

 

知恵の書のページの間から神聖な光が溢れ出し、あのみるも無残に潰れていたアリの残骸を包み込んでいく。

 

光が収まると、さっきまで粉々に粉砕されていたはずのクーリエアントが、何事もなかったかのようにすっくと立ち上がった。

 

この一見地味で小さな奴は、生き返った瞬間からすぐに仕事を始めた。

尻をせわしなく振り始めたのだ。

 

奴は空気中に、極めて複雑な化学物質を拡散させていた。

放たれたフェロモンは無色無臭で、僕たち人間の五感で感知する方法は皆無だった。

 

しかし、その効果は本物だった。

 

すぐ近くにいた数匹の敵のアリたちが、ピタリと動きを止めた。

奴らの触角が激しく揺れる。まるで受け取ったメッセージを再確認しているかのようだった。

 

次の瞬間、奴らはくるりと向きを変え、まだこちら側に引き込まれていない背後のアリたちに向けて明確な敵意を剥き出しにした。

 

「ダメだ! 仲間討ちをさせるな。ただ動きを止めさせるだけでいい」僕は慌ててクーリエアントの行動を遮った。

 

このパッとしない小さなアリは、僕の方に向けて触角をピクリと動かした。

なぜそんな命令を下されるのか、いまひとつ理解できていない様子だった。

 

それでも奴は従順に、自分の支配下に置いたアリたちの動きを停止させた。

 

僕は額の汗を拭った。

 

目の前にいるのがどれほど不快な害虫の群れであろうとも、奴らが同じ巣の姉妹たちと噛み合い、肉を貪り合う光景を見るのは、どうしても名状しがたい寝覚めの悪さが残る。

 

「僕についてこい。移動しながら、戦場を落ち着かせることだけを考えてくれ。残りの処理は僕がやる――」

 

僕はクーリエアントを引き連れて小走りで移動を開始した。

 

奴は道中、絶え間なくフェロモンを放出し続け、僕たちに敵意を向けてくるすべてのアリの興奮を宥めていった。

 

このクーリエアントと並んで歩いていると、まるで一切の暴力を禁じる聖なる結界でも身にまとっているかのような気分だった。

 

さっきまで僕に向かって大顎を剥き出しにしていたアリたちが、僕が通り過ぎるにつれて、ゆっくりとその顎を閉じていく。

 

数匹のアリにいたっては、まるで僕に道を譲るかのように、壁際へとそそくさと身を寄せた。

 

何とも奇妙な感覚だ。ここは奴らのマイホームであるはずなのに、僕はまるで自分の家であるかのように堂々とその中を闊歩している。

 

「マスミ、そっちで何やってんの?」少し離れた場所から、ワカナが僕の新しい相棒に気づいて大声を張り上げた。

 

「クーリエアントの能力だ! アリたちの動きを大人しくさせられるんだよ!」僕は叫び返した。

 

「ずるっ! なにそれ反則じゃん!」彼女は笑い転げながら、自分の膝をパシパシと叩いた。

「あんたと付き合う時は気をつけなきゃね。そのうち周りの人間をみんな従者に変えちゃいそうだし」

 

「またわけのわからない冗談を……」

 

別の場所でそれを聞いていたユウキも、思わず吹き出していた。その笑い声は、この凄惨な戦場に一種の温もりを運び込み、重苦しい空気をいくらか和らげてくれた。

 

ポテトがその太い腕を掲げ、僕に向かって声を張り上げる。

「我が主よ! これぞまさに天の配剤にございますな!」

 

「主って呼ぶなよ……」僕は顔を少し赤くしながら、彼に向かって手を振った。

 

塩昆布はカタツムリの背の上で満足そうに頷いた。戦いの流れそのものが、完全に彼の描いた絵図通りに進んでいた。

 

数分ほど走り続けると、ついにこのクーリエアントのフェロモンが届かないエリアへと突入した。

 

相棒は相変わらず尻を振り、同胞を落ち着かせるためのフェロモンを必死に放出しようとしている。

 

しかし、周囲のアリたちは依然として僕たちに大顎を突きつけていた。すぐに襲いかかってくるわけではないが、かといって大人しく従う様子もない。

 

奴らは、左折と右折の命令を同時に下されたロボットのように、激しく困惑しているようだった。

 

この二つの矛盾する指令を処理しきれず、その場に立ち尽くして左右にグラグラと体を揺らす奴もいれば、動いては止まり、止まっては動くのを繰り返す奴もいた。

 

中にはその場でグルグルと回り始め、まるで歩き方を覚えたての子供のように足を纯らせているアリまでいた。

 

この哀れで、どこか滑稽な光景を見ていると、僕の心に少しばかりの同情が芽生えてしまった。

 

こいつらはフェロモンの指令に従うだけの生き物だ。その頭の中に完全に相反する二つの命令を叩き込まれたのだから、今頃脳ミソが焼き切れそうになっているに違いない。

 

間違いなく、別のクーリエアントのフェロモン範囲の境界線に到達したのだ。

僕のクーリエアントの命令が、敵のクーリエアントの命令と衝突している。

 

「このあたりのどこかにいるはずだ……」僕はアリの群れの向こう側へと視線を走らせ、もう一匹のクーリエアントを探し始めた。

 

僕はピクシーのタトゥーを発動させ、数メートルほど垂直に舞い上がった。

 

頭上から一気に視界が開け、その時になって初めて、自分がどれほど慌ただしいペースで突き進んできたかを実感した。

 

このアリの巣は、本当に途方もなく巨大だ……

 

この高度から見下ろすと、戦場全体がひっくり返ったチェス盤のように見えた。

 

アリたちは散らばった黒ゴマのようで、その間にフード族の鮮やかな色彩が点在しており、特に大ムカデの長く伸びた暗赤色のシルエットが際立って見えた。

 

反対側で僕が上昇していくのに気づいたワカナが、こちらに向かって手を振り、それから自分の足元を指さした。彼女は「こっちは任せて、そっちは時間をかけていいよ」と僕に伝えているようだった。

 

僕は彼女に頷いてみせ、再びターゲットの捜索へと意識を戻した。

 

見つけた!

 

アシッドスプレイヤーアントの集団の背後だ。

 

もう一匹のクーリエアントが尻を振り、フェロモンを放出していた。

 

その姿勢は僕の従者とほぼ瓜二つだったが、唯一の違いは、頭部にある触角がピクピクと動くリズムだけだった。

 

『ダイアガストロポッドの割殻大槌』

 

俺は殻を持つ生物に対抗するために作られたあの戦槌を召喚した。

 

そのまま、敵のクーリエアントの真上へと飛行する。

 

数匹の飛行アリが、妨害しようとこちらへ向かって飛んできた。

 

奴らの羽ばたきは鳥肌が立つような高周波の振動を伴っており、耳元をかすめて飛び去る際、巻き起こった風で顔全体が猛烈に痒くなった。

 

「ツイてるね!」当たりを引いたアイスの棒を見つけた時のような、ささやかな高揚感が胸に湧く。

 

critical

HP -2937

 

critical

HP -5466

 

critical

HP -3227

 

……

 

俺はハンマーを振り回し、数匹の飛行アリを粉砕した。

 

砕け散った紙のように薄い羽が空中に舞い、まるで一掴みのガラスの破片を放り投げたかのように、洞窟内の僅かな土黄色い光を反射してきらめいた。

 

「知恵の書、さっき登録し損ねたこの種族のログを頼む」

 

知恵の書がすぐに飛んできた。

 

今回、それは下に向けてスタンプを押すような真似はしなかった。

 

ページを上に向けて開き、まるでジャグリングをするサーカスのパフォーマーのように、上から落ちてくる飛行アリの肉片を器用にキャッチしていった。

 

ページがバタバタとせわしなく羽ばたく音と、紙が擦れ合う音が混ざり合い、正直言ってその光景はかなりコミカルだった。

 

僕は思わず口元を引きつらせた。

 

遠くからそれを見ていたワカナも、大声で笑っていた。

「マスミ、その本、生徒が投げつけてくる紙クズを必死にキャッチしようとしてる先生にそっくりなんだけど!」

 

「お前の例え話は本当に独特すぎるだろ……」僕は槌を振るいながら叫び返した。

 

すべての肉片を回収し終えると、

本は僕の元へと飛んできて、ページを開いた。

 

ディスパーサル・ドローン・アレート Lv 9

EXP 3200

HP 350 MP 330

反応:16

筋力:14

霊感:14

運:14

 

ドロップアイテム:

N 新巣創設用の未受精卵 49%

R ???? 25%

S ???? 15%

U ???? 9%

E ???? 2%

 

こいつ……

 

戦闘能力は皆無と言っていいレベルだな。

 

ステータスは平均的で、飛べるという点を除けば、これといって大した芸はなさそうだった。

 

こいつは放置でいい。

あの飛んでる奴らが僕にまとわりついてこない限りは、それで十分だ。

 

僕は再び、眼下にいるクーリエアントへと意識を集中させた。

 

俺は割殻大槌を固く握り締め、それからピキシー・タトゥの浮遊フィールドを解除し、重力に身を任せて真っ逆さまに落下した。

 

急降下による風圧が、僕の髪を激しく後ろへと引っ張る。

 

割殻大槌の先端を下へと向ける。

 

地上の無力なクーリエアントに、これを防ぐ術などあろうはずがなかった。

 

心臓が肋骨の裏側で激しく鼓動を打つ――この落下の無重力感は、僕を少しばかり陶酔させた。

言葉にできないスリルがある。おそらく、飛行能力が僕に与えてくれたささやかな特権なのだろう。

 

下のクーリエアントが、ようやく危機が迫っていることに気づいた。奴は必死に体を反転させ、回避を試みようとする。

 

悲しいかな、奴の肉体の駆動速度は、僕の落下速度に比べればあまりにも遅すぎた。

 

奴の複眼に、上空から迫り来る僕の影が映り込むのが見えた。二本の触角が微かに震える。まるで最後の命令を送り出そうとしているかのようだった。

 

だが、もう遅い。

 

critical

HP -9973

 

このハンマーの一撃によるダメージは、一万近くにまで達した!

 

HP -483, HP -12, HP -477, HP -396……

 

周囲のアリたちから、高低様々なダメージ数値が次々と浮かび上がっていく。

 

俺の渾身の一撃は――

ただその一匹のアリを粉砕しただけにとどまらなかった。

 

足元にあるアリの巣の床をも叩き割ったのだ。

激しく飛び散った土砂や岩石が、結果として周囲にいた無数のアリたちをも傷つけていた。

 

塵が収まった時、僕は自分の手首が強い衝撃でピリピリとしびれていることに気づいた。自重と重力をすべて乗せた一振りは、地上でただ振り回すよりも遥かに凄まじい威力を発揮したのだ。

 

「うーん……ここまでバラバラに砕け散ると、従者として復活させるのはかえって面倒なことになりそうだな」地面に四散した外殻の破片を見つめながら、僕は首を振った。

 

こいつは従者ではなく、兵装化の形に回そう。

 

知恵の書が再びページをめくると、粉砕されたクーリエアントの死体が新たな形へと収束し始めた――現れたのは、子供が遊ぶような水鉄砲……いや、シャボン玉の玩具か?

 

『メッセージのアワアワ銃』

 

一体全体、これは何なんだ?

 

僕の手の中に現れたのは、お世辞にも格好良いとは言えない、いかにも玩具らしい水鉄砲だった。本体は薄い水色で、独特のプラスチック感が漂っており、銃口はシャボン玉を吹く時に使うあの小さなリングのように細かった。

 

僕はメッセージのアワアワ銃を握り、引き金を引いてみた。

 

一粒の透明な泡が、ふわふわと流れ出ていく。

 

『一体全体、これは何なんだ?』

 

言葉と音声が、その泡の中に丸ごとパッケージされていた。

 

泡の中の文字は、まるで水中にある気泡のように、泡の緩やかな揺れに合わせてゆっくりと回転していた。

 

「これ……僕の思考を泡の中に閉じ込めたのか?」

 

しかし、この道具はいったい何の役に立つんだ?

 

「一度ワカナのところに行って相談してみるか……」僕は泡をじっと見つめながら、独り言を呟いた。

 

僕が「ワカナ」の名前を口にした瞬間、その泡は真っ直ぐ彼女のいる方向へと飛んでいった。

 

泡の移動速度は速くなかったが、その軌道は極めて安定していた。触角を揺らす数匹のアリをすり抜け、ワカナが戦っている場所へと真っ直ぐに向かっていく。

 

おっと、この機能は確かにクーリエアントの伝令能力に完璧に合致しているな。ただ、少々のふざけた要素と、子供の玩具特有のチープさがブレンドされているけれど。

 

数秒後。

 

ワカナの歓声が遠くから響き渡った。

「マスミ! それ新しい武器!?」彼女は戦場の向こうから大声で叫んだ。

 

『そうだよ! クーリエアントを兵装化して作った、メッセージのアワアワ銃だ』

僕は心の中でそう念じながら、再び引き金を引いた。

 

「ワカナ」

 

俺がそう口にした瞬間、また一粒の泡がワカナの方向へとふわふわと飛んでいった。

 

あちら側で数秒の静寂が訪れる――おそらく、彼女は泡の中にある文字を読んでいるのだろう。

 

直後、遠くから弾けたような驚きの叫び声が上がった。

「マスミ! これでサチとフェアリーを探し出せる方法が見つかったよ!」

 

彼女はさっきよりもさらに大きな、弾んだ声で叫んだ。

 

やっぱり、ワカナ用にもう一丁このバブルガンを作るべきだな。

 

彼女の言葉が耳に届いたその瞬間、僕は自分の手にあるこのアワアワ銃の本当の価値をようやく理解した。

 

サチとフェアリーの行方はいまだに掴めていない。

 

だが、この兵装があれば、これからは盲目的に運を天に任せるような真似をせずに済む。

 

僕は額の汗を拭い、手の中にある、このどこかマヌケな見た目の兵装を見つめた。

 

装備した姿は子供のおもちゃにしか見えないシロモノが――まさか、行方不明になった仲間たちと僕たちを繋ぐ、最大の鍵になろうとは。


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