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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔—風火家人

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第104話 益虫


巨大なムカデが、捕らえたばかりのヤスデを咀嚼していた。


あの大きな大顎がガチガチと噛み合い、ヤスデの体が節ごとに引き裂かれていく。赤と黄の縞模様の平べったい胴体が緩やかに弓なりになり、何百本もの鋭い爪脚が戸棚の木の足にがっしりと食い込んでいる。その姿は獰猛でありながら、不思議なほど優雅だった。


ムカデの毒液は最初の一撃でヤスデを麻痺させ、身動き一つできなくさせていた。


ヤスデの傷口から、半消化の肉汁がじわじわと滲み出ている。


クモに噛まれて内部がドロドロのスープ状になる虫とは違うが、このムカデの毒液にも体外消化の機能があるらしい。


黄緑色の液体がヤスデの傷から流れ出し、ムカデの大顎を伝って戸棚の木の足に滴り落ちる。ジュウジュウという微かな音とともに――木材がわずかに腐食して、小さな凹みができていた。


僕はその場で固まった。


食料部隊の面々が、まるで飯テロ動画を見るような顔でムカデの食事を眺めていた。


シーフード族は特にのんきなものだった。


カニは見ながらハサミで自分の殻をカチカチと叩いてリズムを刻んでいる。ハマグリは殻をほんの少し開けて、ひまわりの種でも食べながら芝居を観るような感じだ。例のずっと小さな球を吐き出していた魚まで、より見やすい角度へ移動して真剣に観賞していた。


こいつら、自分の体もあの毒液で溶けるかもしれないって分かってないのか?


足元の食料部隊を見て、大口で食事中のムカデを見て、僕の中に言いようのない違和感が広がった。


ハマグリの一匹が僕をちらりと見てから、わざとらしく烈士みたいな目で遠くの水槽を見つめた。


変なやつだけど、まあ普通の反応をしてる一人はいたか。


そいつの視線を追って、僕はようやく気がついた――水槽は一つじゃなかった。


空のものもある。さっきゴキブリと死闘を繰り広げたところみたいに。


水を張ったものもあって、中には生きた魚やハマグリが入っている。


水面がきらきらと光を反射し、料理されていない小魚が数匹、のんびりと泳ぎ回り、ハマグリが水底で気泡を吐いていた。この高さから見下ろすと、本当に小さな池みたいだった。


「ああ……知恵を得る前、水槽の中で微生物を濾過してた頃が懐かしいな!」


そのハマグリが感傷的に言った。まるでこれから自ら命を捧げる烈士のように。


殻を片方持ち上げて、涙を拭うようなしぐさまでしてみせた――涙腺なんて持ってないくせに。


「え?その頃からもう記憶あったの?」


カニの一匹が驚いて聞いた。


「あるわけないだろ!」


スモークサーモンが勢いよくツッコんだ。


「そういう言い方したほうが悲壮感出るって思ってるだけだから!」


「ちょっと!一生に一度の見せ場にまでツッコむなよ!」


ハマグリが殻の隙間から「舌」を出した。まるで顔芸をするように。


「どこが見せ場なんだよ」


カニも続けてからかった。


「もうやめてくれよ――!」


ハマグリが興奮して、殻をパカパカと開け閉めした。まるで手を叩いて文句をぶつけているみたいだ。


こいつら、ムカデを前にして全然緊張してないじゃないか。


さっきヤスデの大群と対峙してたときはあんなに真剣だったのに、今はピクニックにでも来たみたいにのんきにしている。


カタツムリの背中ではしゃいで笑い合う連中を眺めながら、僕は何も言えなくなった。


「よっし、さっさと出発しましょう!益虫様のお食事の邪魔をしてはいけません」


焼きジャガイモがカタツムリの柄眼を右へぐいっと引いた。


跨がれたカタツムリがすぐさまその場でぐるりと向きを変える。


カタツムリを乗りこなすその姿は、北米の大草原でバッファローを駆る先住民族のように、野性的で堂に入っていた。殻の上に座る姿勢は背筋がピンと伸びていて、丸っこい体なのに意外なほど安定していた。


「益虫様、か……」


僕は思わず小声で呟き、自然と畏敬の念が湧いてきた。


食料部隊がこのムカデに接する様子を見ていると、まるで山の神様が降臨したかのようだ。


「主殿は炊事場の益虫をご存知ないので?」


塩昆布が笑いながら近づいてきた。


その巻いたヒゲがゆらゆらと揺れ、全身から「後輩を諭す気満々」な雰囲気が漂っている。


「僕のいた世界にも益虫という分類はありますよ。ただ、まさかムカデがそれに入るとは思ってなかったです」


僕は素直に答えた。


元の世界では、ムカデは害虫として駆除する対象だった――噛んでくる、毒がある、見るだけで鳥肌が立つ。ここみたいに「大人」と呼んで敬うなんて、想像もしていなかった。


「んー、たまに美食家をガブッとやって大騒ぎになりますけどね。それでも害虫はなんでも食べてくれるので、みんな頭が上がらないんですよ」


老昆布が説明した。


あのヤスデを食べているムカデを指さしながら。


「ほらあれ、ヤスデ、ゴキブリ、ナメクジ、シロアリ……食料を齧ったり私たちを困らせたりするやつは全部、益虫様が片付けてくれます。食料部隊は数こそ多いですが、正直戦闘力では大して敵いません。益虫様が戸棚の周りを巡回してくれなかったら、炊事場はとっくに害虫だらけになってましたよ」


なるほど。


僕はあの巨大なムカデを改めて見た。さっきの恐怖が少し薄れた気がした。


考えてみれば――食料部隊にとって、害虫を駆除して家を守ってくれる生き物は当然「益虫」だ。基準が人間とは全然違う。


「じゃあ、益虫様を一緒に連れていく方法を考えてみましょうか」


僕は上のあの大混乱の戸棚の口を指さした。


果物族と菓子族の悲鳴がまだ断続的に降ってきている。今ここで戦力を一つでも多く連れていければ、それだけ望みが増す。


「あっちには行かないですよ。アリは一対一ではムカデに勝てないかもしれませんが、アリは決して一対一で戦わないので」


老昆布は僕の意図を読んでいたようだった。


ずる賢そうな目でこちらを見てくる。答えを知りながら生徒に言わせようとする先生みたいな目だ。なんとも芝居がかった眼差しで――もう答えは分かってるくせに、わざとこちらに言わせようとしている。


僕は笑って返した。


「でも僕たちも、一対一にはさせませんよね」


身振りを大きくして、背後に控える大勢の食料部隊と、従者にした元害虫たちを誇示した。まるで自慢のコレクションを披露する成金みたいに。


ダンゴムシ軍団、カタツムリ大隊、ゴキブリ飛行部隊……この数はアリの巣を丸ごと包囲するには十分すぎるほどだ。


「なるほど、それなら誘導する方法はいくつか考えられますね」


老昆布はカタツムリとダンゴムシを眺めた。どうやらムカデはこいつらにはあまり興味を示していないらしい。


「あの子は特にヤスデが好みのようで」


ヒゲを撫でながら笑った。


「我が主は倒した敵を部下にできるのですから、ヤスデを一、二匹出してみてください。あれを見せれば、大人しくついてきてくれるはずです」


「ニンジンとロバの関係ですね」


僕はうなずいた。


「え、主人どうして私を呼んだんですか?」


ニンジンが隣で首をかしげた。


「違う、違う!」


僕は慌てて手を振った。


「比喩だよ!僕のいた世界にロバって動物がいて、歩かせるにはロバの前にニンジンをぶら下げるんだ……」


「ああなるほど!」


ニンジンはよく分かってないような顔でうなずいた。


「でも……ニンジンがロバの前にぶら下げられるって、ちょっと怖くない?」


ビーツが傍でぼそっと呟いた。


「そうだよ、ニンジンかわいそう!」


ラディッシュが同調した。


「ちょっと待って、これただの比喩だから!」


僕は慌てて説明した。


まったく、食料部隊にこういう喩えを使うのは面倒くさい。


僕はさっそく太ったヤスデを二匹、従者に変えた。


さっき打ち倒されたヤスデたちが緑の光の中で立ち上がり、傷口はすっかり癒えて、足の節が整然と動き始めた。


こいつらをムカデの前でちらつかせてみた。


ムカデの触角がすぐさま震え、赤い目がその二匹のヤスデに釘付けになった。口の中に残っていたヤスデの残骸を最後にがりっと噛んで飲み込み、それから巨体がゆっくりとこちらへ動き始めた。


あの巨大なムカデが、こうして僕たちについてきた。


「みなさん!益虫様もついに助けに来てくださいました!」


焼きジャガイモは士気を上げる機会を絶対に逃さない。


カタツムリの背に立ち上がり、丸っこい体を目いっぱい使って手のナイフを大きく振り回す。動きはちょっとおかしいのに、その気迫だけは本物だった。


「おおおー!」


「今日こそ炊事場の害虫を全滅させるぞ!」


「我が主のために、美食家のために!」


全員が一斉に歓声を上げた。


声が戸棚の底に響き渡り、上でまだ怯えていた果物族と菓子族まで、そっと頭を出して覗き込んだ。


このジャガイモ、美食界のシーザーだ。


シーザーサラダにするのがちょうどいいな!


歓声の中、僕の頭にそんないらない考えが浮かんだ。


僕の手元には、知恵の回る孔明と、士気を鼓舞するシーザーがいる。


おかしくて笑いそうになったが、その荒唐無稽な現実が妙にリアルで。


おい――俺、今から天下統一に行くぞ!



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