第101話 隠密の地雷砲
塩昆布の言ったとおり、少し進むとすぐ、ダンゴムシの群れがこっちに向かって転がってきた。
一匹一匹が丸まって灰色の球になり、地面を高速で転がりながら土ぼこりを舞い上げている。遠くから見ると、その光景はまるで誰かがボウリングの球を一かご分こっちにぶちまけたみたいだ。
「あれ?」
俺は転がってくる球をしばらく見つめた。
「丸まるのは自分を守るためだと思ってたんだけど……」
「なんでそんな勘違いするんだ?」
横にいるダイコンが疑わしげに首をかしげた。
「だって、俺のいた世界のダンゴムシは、本当に身を守るために丸まるんだよ」
俺の元の世界では、ダンゴムシは軽く触れられただけでびっくりして縮こまる、ものすごく臆病な小さい虫だ。目の前のこいつらみたいに、丸まって攻撃してくるなんてことはない。
「へえ!じゃあうちのとは確かにちょっと違うんだな」
ダイコンが納得した様子でうなずいた。
「うちのダンゴムシは凶暴でさ、ぶつかられたら死んじまうぞ!」
ダイコンはそれ以上言い争うのをやめた。
俺たちはみんな、敵の転がり攻撃をかわす準備に集中した。
転がってくる灰色の球がどんどん近づいてきて、地面がかすかに震え出す。ニンジンのダイアガストロポッドが不安そうに触角を縮め、ビーツも緊張して殻の模様にしがみついた。
その時、ふと一つアイデアが浮かんだ。
こいつら、丸まってるってことは、前が見えないんじゃないか?
丸まったダンゴムシは、目が内側に包まれて、前の道がまったく見えないはずだ。つまり――今のこいつらは、目をつぶって突進してるのと同じだ。
手に入れたばかりの新しい武装が、さっそく役に立つ。
俺は隠密の地雷砲を召喚した。
ゴキブリの触角が二本生えたその銃が、俺の手の中でかすかに震える。銃口が開いて、準備完了だ。
俺はダンゴムシの大群が転がってくる進路に、ずらりと地雷を発射した。
カチ、カチ、カチ、カチ――
小型の爆発物が一つずつ銃口から飛び出し、地面にきれいに並んで、土に半分埋まってほとんど跡が見えなくなった。
俺は急いで隊列を左右に散らせた。
数秒もしないうちに――
ドン!ドンドンドン――!
空をつんざく地雷の爆発音が、あちこちで鳴り響いた。
ダンゴムシが吹き飛ばされて空を舞う。
丸まった灰色の体が次々と地雷を踏んで、引火すると、空中で回転し、跳ね上がる。灰色の甲殻の破片が土ぼこりと混ざってあちこちに飛び散った。中には爆発で体が開いてしまって、下にびっしり生えた脚をさらけ出し、空中でめちゃくちゃに振り回しているのもいた。
「うわ……これはやりすぎだろ!」
ビーツが呆然と見ていた。
「我が主、この武器、やばすぎますよ!」
ニンジンが思わず歓声を上げた。
俺は最初、激しい戦いになると思っていたのに、まさかこの転がってくるやつらが、ちょうど俺の新しい武器の餌食になるとは思わなかった。
何しろこいつらは丸まると速いけど、まったく曲がることも止まることもできない――一度地雷を踏んだら、よける機会すらない。
俺たちは楽々とダンゴムシの縄張りを通り抜けて、ついでに全部倒しておいた。
全部、俺の従者と武装に変わった。
灰色のダンゴムシたちが緑の光の中で立ち上がり、きちんと俺の隊列に並んだ。
特に二、三匹を武装に変えた。
『ダンゴムシの胸当で』
おお!珍しく防具タイプの武装だ。
俺はさっそくその胸当でを一つ身につけた。
着けた瞬間、安心感と守られている感覚がはっきり伝わってきた。
この胸当では質量がないみたいに軽い。
しかも着けたら、その形が――消えてしまった。
でも確かに防御力を感じる。
これはなかなかの収穫だ。
俺の隊列は速度を落とさなかっただけでなく、戦力も大幅に増えた。
「我が主の手際、本当にお見事です!」
ダイコンが心から感心していた。
「いやいや……ただ運が良かっただけだよ」
俺はちょっと照れて鼻を触った。
正直、こいつらが丸まると道が見えないってことを思いついただけで、こんなに効果があるとは思わなかった。
俺たちは前進を続けて、ほどなく、予想していた二つ目の障害が現れた。
地面いっぱいのナメクジだ。
じめじめねばねばしたこいつらが、戸棚の下へ通じる通路を占領していた。柔らかい体が地面をゆっくり這って、光る粘液の跡を何本も残し、通路全体がぬるぬるに覆われていた。
空気にはじめっとした生臭い匂いが漂っている。
「うえ……この匂い」
ラディッシュが鼻を押さえた。
俺はさっきカタツムリと戦った時のことを思い出した。
たぶん、武器で直接攻撃しても、致命傷を与えるのは難しいだろう。
ナメクジはカタツムリと同じで、柔らかい体が物理的な衝撃をほとんど吸収してしまう。普通の刀剣で斬りつけても、せいぜい浅い傷ができるくらいだ。
でも、こいつらが俺の道を塞ぐ心配はまったくしていない。
何しろ、粘液と柔らかさで勝負するなら、こっちのカタツムリだって負けてない。
それに、俺のダイアガストロポッドは雑食性だ。
「行け!ダイアガストロポッド、飯の時間だ!」
俺は号令をかけた。
大群のカタツムリが素早くナメクジに迫っていく。歯舌を伸ばして、自分たちに近い軟体生物を少しずつかじっていった。
その「ジャリジャリ」というかじる音に、俺の頭皮がぞわっとした。
ナメクジはすぐに大量の粘液を分泌して身を守った。
その粘液が泡みたいにナメクジの体から次々と湧き出して、あたり一帯をますますねばねばぬるぬるにした。
「粘液か――」
俺はそれを見て、思わず笑ってしまった。
もしゴキブリやダンゴムシでナメクジに立ち向かったら、この粘液はかなり効果的だっただろう。脚のあるやつらは一度くっつかれたら、なすすべもなくやられてしまう。
でも今、先陣を切っているのは、こいつらと同じくらいねばねばしたカタツムリだ。
カタツムリにとって、このくらいの粘液はまったく痛くもかゆくもない――もともと粘液の中で転げ回って育ってきたんだから。
「我が主、この手はすごく賢いですね!」
ニンジンが横で手を叩いた。
「ねばねばをねばねばで制すってわけだ!」
ダイコンも続いて感心した。
「攻めの効率をちょっと上げよう」
見ると、ほとんどのカタツムリがもうナメクジと組み合っている。
今必要なのは速度じゃなくて、力だ。
俺は目を閉じて、頭の中の「歌リスト」から適した曲を探した。
『アグニの火のもてなし』
俺は曲調を変えて、新しい強化効果に切り替えた。
今度の歌声はもう軽やかじゃなくて、燃えるような力強さを帯びていた。一つ一つの音が燃え盛る炎みたいに、空気の中に目に見えない熱を放った。
案の定、このアグニの火のもてなしは、味方の筋力を大幅に強化した。
筋力強化倍率 ── Level²
31 × 21 × 21 = 13671
火属性効果 ── Level³ 倍率
31 × 21 × 21 × 21 = 287,091
巨大なカタツムリがゆっくりと、でも力強くナメクジを制圧して、一口また一口とナメクジを食らっていった。
もともと柔らかくて手強かったナメクジが、筋力を強化されたダイアガストロポッドの前では、まったく抵抗できなくなっていた。カタツムリは巨大な体で相手を直接押さえ込み、歯舌でひと削りすれば、大きな肉の塊がそぎ落とされる。
「うちのカタツムリ、本当にすごいな……」
ビーツがちょっと震えながら見ていた。
「あれは我が主のダイアガストロポッドだぞ!」
ニンジンが誇らしげに胸を張った。まるで自分の手柄みたいに。
今回ばかりは、確かに少し時間を取られてしまった。
カタツムリはあまりにも遅い。ヴァユの風の香讃がないと、勝負がつくまで待つのにけっこう忍耐がいる。
俺はその場に立って、カタツムリがのろのろ食べているのを見ながら、ふと前方でまだ奮戦しているユウキのことを思い出していた。
あっちはどうなってるんだろう?
ユウキの性格なら、絶対に先頭を切って戸棚に突っ込んでいるはずだ。彼女は強いけど、相手はアリやシロアリみたいに数の多いやつらだ……早く行かないと。
俺は焦ってカタツムリを急かした。
「早く早く、食べ終わったら出発するよ!」
でもダイアガストロポッドたちは俺の催促をまったく気にせず、自分のペースでのんびりかじり続けている。
「我が主、カタツムリは急かしても速くなりませんよ……」
ダイコンが横で小声で教えてくれた。
「分かってるよ……」
俺はため息をついた。
ようやく、最後のナメクジも片付いた。俺は急いでこのナメクジたちも従者に変えて、隊列に補充した。
「あんたの話だと、次に相手するのはヤスデだよね?」
俺は塩昆布に手招きした。
塩昆布は巻いたヒゲをなでつけながら、ゆっくりと前に進み出てきた。
「そのとおり、やつらは戸棚の下に潜んでおります」
塩昆布は顔を上げて、前方の薄暗い戸棚の影を見つめた。その口調にはわずかな重々しさがあった。
「ですが我が主、ヤスデはさっきの二種類とは違います。速くて脚が多く、しかも……」
「しかも、何ですか?」
「しかも、やつらは毒ガスを出します。浴びてしまうと、しばらく麻痺するのです」
俺はごくりと喉を鳴らして、戸棚の下の影を見つめた。
できることなら、本当に回り道したい……
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