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空気を読めない男、空気を読んで最強に至る ~10年間の暗黒奴隷生活。空間を数え続けた俺は、物理的な”空気”を読み切って成り上がる~  作者: ミツキイザナ
第四章 闘技大会

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0186.準決勝

やっと自由の風vs迷い猫戦!

この話をずっと楽しみにしてました!

第四章も終盤に入ります!

ぜひ楽しんでください!!



 視点:ヴェル



 S級ミストラル率いる『三風神』が勝利した。

 

 トップファミリア『虹の都』を相手に、

 真っ向から力でねじ伏せる。

 

 特に姉貴──ゼフィールの暴れっぷりは、

 昔の記憶よりもさらに磨きがかかっていた。

 

「……すげぇな、やっぱり」


 俺は素直に感嘆の息を漏らした。

 

「ふん、まあまあじゃな!」

 

 アノンが腕を組んで強がるが、

 その目は輝いている。

 

「父上ほどではないが、あやつらもやるようじゃの」

 

「素直じゃないですね、アノンさんは」

 

 セリアがくすくすと笑う。

 

「でも、本当に凄かったです。

 魔法も、剣技も……次元が違いました」

 

「……あぁ。学ぶべきところが多い」

 

 カルドも真剣な眼差しで

 フィールドを見つめている。

 

 隣でフィアは、悔しそうに唇を噛んでいた。

 

「……僕も、負けてはいられないな」

 

 その言葉には、以前のような焦りではなく、

 前向きな闘志が宿っていた。


 

 会場の熱気が冷めやらぬ中、

 掲示板の表示が切り替わる。

 

『準決勝 最終試合』

『デルタ vs スカイハイ』

 

 予選を勝ち上がってきた『デルタ』と、

 もう一つのチーム『スカイハイ』。

 

 だが、フィールドに現れたのは、

 フードを深く被ったデルタの面々だけだった。

 

 対戦相手の姿がない。

 ざわめきが広がる中、実況の声が響いた。

 

『えー、お知らせいたします。

 対戦相手のチーム・スカイハイですが……。

 “急な体調不良”により、棄権を申し出ました!』

 

「はぁ?」

 

 会場中からブーイングが飛ぶ。

 ここまで来て棄権?

 しかも全員が急病なんてあり得るのか?

 

「……きな臭いな」

 

 シンが目を細める。

 

「デルタ……。予選の時も不気味だったが、

 裏で何かやってやがるな」

 

「脅しか、あるいは……既に潰されたか」

 

 カルドが低い声で呟く。

 

 フィールドの中央で、

 リーダーらしき男──アンタレスが、

 つまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「……興醒めだな」

 

 彼らは戦わずして、勝利を手にした。

 不戦勝。

 だが、その背中に漂う不穏な空気は、

 戦うよりも遥かに恐ろしいものを感じさせた。


『これにより、準決勝のカードが決定しました!』

 

 スクリーンに大きく表示される。

 

 

 【第一試合】

『自由の風』 vs 『迷い猫』

 

 【第二試合】

『三風神』 vs 『デルタ』


 

「決まったな」

 

 俺は拳を握りしめた。

 明日は、まよねこ達との戦いだ。

 

「……やるしかないようじゃの」

 

 アノンがニヤリと笑う。

 俺たちは席を立ち、出口へと向かった。

 通路で、まよねこ達と鉢合わせる。

 

「ヴェル殿……!」

 

 まよねこが、緊張した面持ちで立っていた。

 

「いよいよ、でござるな」

 

「あぁ。手加減なしだぞ、まよねこ」

 

「望むところでござる!

 拙者たちも、全力で挑ませて頂くでござる!」


 まよねこと俺は、ガッチリと握手を交わす。

 

「ボクも楽しみだよ。

 アノン君たちの魔法、間近で見せてもらおうか」

 

 リラが不敵に微笑む。

 

「ミキも負けないヨ。ごぼうの錆にしてやるヨ」

 

「ぼくもがんばるー!」

 

 互いに闘志を燃やし、

 明日の健闘を誓い合って、俺たちは別れた。


 ◇


「ふぅ……。今日も疲れたな」

 

 宿に戻った俺たちは、

 重い扉を開けた。

 明日に備えて、今日は早く寝て英気を──

 

「おかえりなさいませ~♡」

 

「「「「!?」」」」

 

 宿のロビー。

 

 そこの一番大きなテーブルを占拠していたのは、

 見覚えがありすぎるカラフルな集団だった。

 

 白と緑のローブ、エメラルド。

 燃えるような赤髪、ガーネット。

 ボーイッシュな黄髪、トパーズ。

 元気いっぱいな橙髪、カーネリアン。

 そして、オドオドした藍髪、ラピスラズリ。

 

 七彩の使徒が、勢揃いしていた。

 

「な、なんでまた居るんじゃ!!」

 

 アノンが叫ぶ。

 さっき負けたばかりだろうが!

 

「ふふっ♡ だって、明日は決戦でしょう?

 愛する皆様の勝利を祈って、

 前祝いをしようと思いまして♡」

 

 エメラルドが満面の笑みで手招きする。

 

「さあさあ、こちらへ!

 今日は新しいお友達もご一緒だと聞いて、

 楽しみにしておりましたのよ?」

 

 彼女の視線が、

 俺たちの後ろにいたフィアに向けられる。

 

「……な、なんだこの女たちは」

 

 フィアが後ずさりする。

 無理もない。この異様な圧は、初見殺しだ。

 

「ほら、座るのじゃフィア。

 逃げると余計に面倒じゃぞ」

 

 アノンが諦めたようにフィアの袖を引く。

 なし崩し的に、またもや飲み会が始まった。


「貴様が王子か。

 信念はあるか? 正義はあるか?」

 

 ガーネットがいきなりフィアに詰め寄る。

 

「え、あ、はい。王としての責務を……」

 

「ならばよし。語り合おうではないか」

 

 フィアはガーネットに捕まり、

 延々と帝王学と正義論を語らされることになった。

 

「あー、アタイ暇なんだけどー。

 ねぇ兄ちゃん、相変わらず良い体してんね?」

 

 トパーズは相変わらずカルドに絡んでいる。

 

「……触るな。硬いぞ」

 

「そこがいいんじゃん!」

 

 カルドは無表情で酒を啜っている。

 

「爆発の起点に使う魔術式の、

 構造なんですけれども……ここが……」

 こうで……ドカーン! ですわ!」

 

「ほう! 良い爆発じゃ!

 やはり火力こそ正義じゃな!

 しかし、妾ならここをこうで……」

 

 カーネリアンとアノンは、

 また爆発談義に花を咲かせている。

 なんやかんや楽しんでるよなアイツ。


「……というわけでさ。

 姐弟子が恐いのなんの……。

 君は最近嫌なことあった?」


「うん、ちょっとだけ……」


 シンは前回仲良くなったからなのか、

 ラピスラズリと話している。

 

 ……で、俺とセリアは行き場もなく

 結局エメラルドの席へ。

 

「……あの、エメラルドさん」


 他愛もない話の途中。 

 セリアが、ふと気になったことを尋ねた。

 

「七彩の使徒の皆さんって、

 すごい実力者ばかりですよね。

 その中で……誰が一番強いんですか?

 やっぱり、エメラルドさん?」

 

 その質問に、

 場の空気が一瞬だけ止まった。

 

 ワイワイ騒いでいた他のメンバーも、

 ピタリと動きを止めてこちらを見る。

 

 エメラルドは、

 困ったように微笑んで、首を傾げた。

 

「強さ、ですかぁ……。

 それは難しい質問ですわねぇ♡

 愛の深さなら私が一番ですけれど♡」

 

「単純な殴り合いならアタイが負けないよ!」

 トパーズが胸を張る。

 

「殲滅力ならわたくしですわ!」

 カーネリアンが手を挙げる。

 

「一対一なら私が裁く」

 ガーネットが静かに告げる。

 

「……私は……みんな、すごいと、思う……」

 ラピスラズリが小声で言う。

 

「相性がありますからねぇ。

 ジャンケンのようなものですわ」

 エメラルドが紅茶を啜りながら言う。

 

「でも……そうですねぇ。

 最も強いのは……信仰の青(サファイア)

 でも『戦いたくない相手』なら、

 ……満場一致ですよね?」

 

 エメラルドが、他の四人に視線を流す。

 全員が、嫌そうな顔をして頷いた。

 

「……誰なんですか?」

 

 俺がゴクリと唾を飲み込んで聞く。

 

知恵の紫(アメシスト)

 

 エメラルドが、ぽつりと呟いた。

 

「アメシスト……?」

 

 確か、予選には出ていなかったメンバーだ。

 以前、遺跡で偽物がいたらしいが。

 

「あの方は……なんでもありですわ♡」

 

 エメラルドがニコニコしながら言う。

 

「紫という色は、

 赤と青が混ざった色でしょう?

 情熱と冷静。攻撃と防御。

 相反する要素を同時に持っているのです」

 

「あいつ、魔法の知識が異常なんだよ」

 

 トパーズが舌を出す。

 

「アタイの七転八起ネバギバも、

 あいつの前じゃ意味が無いんだ。

 どんな魔法も『知ってる』から」

 

「正義を語る上で、

 彼女のやり方は認められん。

 だが……手強いのは事実だ」

 

 ガーネットも渋い顔をする。

 

「わたくしの爆発も、

 あの方には全部計算されちゃいますの……

 ドカーンって言ったら、

 逆にシュンってされちゃいますの……」

 

 カーネリアンが肩を落とす。

 

「……でも、優しいよ」

 

 ラピスラズリが珍しく微笑む。

 

「物理が効きにくい相手にも、

 魔法を逆手に取る相手にも、

 精神を攻める相手にも。

 ……まあ、今は“不在”ですけれど」

 

 エメラルドが意味深に笑う。

 

「もし敵に回ったら……

 一番厄介なのは間違いなく、

 紫《あの方》ですわね」

 

 七彩の使徒が揃って嫌がる相手。

 想像するだけで胃が痛くなる。

 

「……会いたくねぇな」

 

 シンが本音を漏らした。


 そして夜も更け、宴はお開きとなった。

 帰り際、エメラルドが俺の手を握った。

 

「ヴェル様ぁ♡

 やっぱり、私たちの所へ来ませんかぁ?

 毎日こんなに楽しいですわよぉ♡」

 

「い、いえ! 結構です!!

 俺たちには俺たちの道がありますから!」

 

 俺は全力で手を振りほどく。

 

「あら残念。……でも、諦めませんわ♡

 またお誘いしますね、愛しい皆様♡」

 

 投げキッスを残し、

 虹色の集団は嵐のように去っていった。

 

「……どっと疲れたな」

 

 フィアがげっそりした顔で呟く。

 

「王族のパーティより疲れる……」

 

「まあ、悪い奴らじゃなさそうだけどな」

 

 俺は苦笑する。

 敵か味方か、未だに底が知れない連中だが、

 少なくとも今は、敵意はなさそうだ。



 翌朝。

 俺たちは万全の状態で目を覚ました。

 昨夜の疲れも、酒も、きれいに抜けている。

 

「よし、行くか」

 

「おう」

 

 宿を出て、闘技場へ向かう。

 澄み渡る青空。

 決戦に相応しい天気だ。

 

「みんな、準備はいいか?」

 

 控え室で、俺は円陣を組む。

 

「いつでもいける」

 カルドが頷く。

 

「昨日の分も、暴れてやるのじゃ!」

 アノンが気合を入れる。

 

「サポートは任せてください」

 セリアが杖を握る。

 

「情報は揃ってるぜ」

 シンがニヤリと笑う。

 

「僕の力、見せてやる……と言いたいところだが」

 フィアが、ふと真面目な顔をした。

 

「……僕は、今回は出ない」

 

「えっ?」

 

 俺たちは一斉にフィアを見た。

 昨日まで、誰よりもやる気満々だったのに。

 

「ど、どうしたんじゃ急に?

 腹でも痛いのか?」

 

 アノンが心配そうに聞いたが、

 フィアは首を横に振った。

 そして、俺の目をじっと見た。

 

「ヴェル。相手は『迷い猫』だ。

 お前の友人であり、ライバルなんだろう?」

 

「……あぁ、そうだけど」

 

「なら、僕が出るのは無粋だ」

 

 フィアは静かに言った。

 

「これは、お前たちの戦いだ。

 共に苦労を分かち合った者たちの、

 因縁の決着をつける場所だ」

 

 フィアは、少し寂しそうに、

 けれど晴れやかに笑った。

 

「そこに、ぽっと出の僕が混ざって、

 水を差すわけにはいかないだろう?

 ……王族たるもの、空気くらいは読むさ」

 

「フィア……」

 

 俺は言葉を失った。

 あの頑なだった王子が。

 自分の力を示すことしか、

 考えていなかったのが。

 

 仲間の想いを、汲んでくれた。

 

「へへっ、なら俺も降りるぜ」

 

 シンが、軽い口調で手を挙げた。

 

「俺もフィアと同じ意見だ。

 それに、あっちのリーダーのまよねことの。

 あいつとヴェルの決着、邪魔したくねぇしな」

 

「シン、お前……」

 

「それに、これで4対4だ。

 数もぴったり合うだろ?

 フェアに行こうぜ、フェアに」

 

 シンがウインクをする。

 

「……ありがとう、二人とも」

 

 俺は心から礼を言った。

 

「精一杯、楽しんでこいよ」

 

 フィアが、俺の背中を叩く。

 その手は、昨日よりもずっと温かかった。

 

(成長したな……フィア)

 

 王としての器。人としての器。

 あいつは確実に、大きくなっている。


 

『準決勝 第一試合!

 自由の風 対 迷い猫!!

 先鋒、前へ!!』

 

 審判の声が響く。

 

 俺たちの先鋒は、

 昨夜の作戦会議で決まっていた。

 

「妾が行く」

 

 アノンが、小さな体で堂々と進み出る。

 対する迷い猫からは──。

 紫のローブを纏った吟遊詩人、リラ。

 

「ふん、詩人風情が。

 妾の炎で黒焦げにしてやるのじゃ」

 

 アノンが不敵に笑い、杖を構える。

 

「お手柔らかに頼むよ、お姫様。

 ボクの歌は、少し激しいかもしれないけどね」

 

 リラが竪琴を構え、涼しげに微笑む。

 魔導師アノン vs 吟遊詩人リラ。

 準決勝の幕が、切って落とされた。


 

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