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空気を読めない男、空気を読んで最強に至る ~10年間の暗黒奴隷生活。空間を数え続けた俺は、物理的な”空気”を読み切って成り上がる~  作者: ミツキイザナ
第三章 火の国フレイナス

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0116.狂ったように踊りましょう



「お前の先生……?」


 俺は思わずシンに聞き返した。

 俺たちが世話になる相手が、シンの先生?

 偶然にしては出来すぎだし、

 出来すぎてる時は大体ろくなことがない。


 シンは、いかにも“知ってました”

 という顔で肩をすくめた。


「あぁ、情報屋『共解のヤエ』。

 S級 死神姉妹を育てた元S級。

 ゼノンがお前達を任せた相手さ」


「S級を育てた? 元S級!?」


 思わず声が裏返った。

 ゼノンさんからそんなことは聞いてない。


 ……いや、あの人の場合、

 わざと教えてない可能性の方が高い。

 こういう時、絶対ニヤニヤしてる。悪い顔で。


「まっ、今はまだ時間じゃない」


 シンは俺の反応を楽しみつつさらっと流す。


「あとでまた顔を合わせることになるさ。

 時間、そろそろだろ?」


 そう言って壁の時計を指す。

 

 三時間の自由時間が終わり、

 集合する頃合いだった。


「あと、お前が探してたオクテットはここだ。

 仲間を連れてここまでまた来なよ。

 俺もヤエさんのところで待ってるからさ」


 そう言いながらシンは立ち上がった。

 なんだこの“全部見透かしてる感”は。

 ちょっとかっこいいんだけど。


「会計は俺が持つ。約束だしな?」


 シンは俺のジョッキを指でトンと弾いて言う。

 確か、別れる時にそんな話をしたな。


「金があるのはわかってる。

 だが、手持ちが多いわけじゃないんだろう?

 お前の仲間が無駄な買い物してるからな」


 俺たちの金銭状況まで把握してる。

 最早ここまで筒抜けだと怖いんだが。

 カルドの顔もわずかに驚いている。珍しい。


「へへっ、これが今の俺だ。

 ちったぁ驚いてくれたか?」


「あぁ、正直怖えよ」


 俺は素直に言った。


「でも、ちゃんとやってんだなって安心した」


「当たり前だろ?」


 シンはにっと笑う。


「お前達ばっか成長されても困る。

 対等の立場で、これからも話したいしな」


 胸がじんわり温かくなる。

 こういうところが、こいつのズルいところだ。


 カルドが少し笑って言った。


「心配するな、シン。

 ……仮にお前が四肢を欠損しても、

 俺たちは対等だ。一生変わらない」


「仮定の話がボロボロすぎねーか?」


 シンが笑う。

 優しさが不器用な言い回しは相変わらずだ。

 俺も笑った。この空気が好きだ。


 そして、シンは最後に言った。


「そうそう、俺たちの可愛い弟分。

 ラグアスも元気にやってるらしいぜ」


 少しだけ声が柔らかくなる。


「メキメキと頭角を表してるってさ」


 背中越しに手を振るシン。

 そうか、ラグアスもきちんとやってんのか。


 俺はカルドと顔を見合わせて頷く。

 

 弟分が頑張ってるなら俺たちも、

 もっと頑張って負けねえように、と。


 こうして俺たちはオクテットを出て、

 賑やかな仲間達と合流することにした。


     ◇


 集合場所にたどり着いた俺たち。

 まず目に飛び込んできたのは、キロロだった。


「ぼくね、みんなにいっぱいかってもらったの。

 ぜんぶぜんぶ、たからものなんだよ!」


 小さな腕で抱えているのは戦利品の山。

 スカーフ、帽子、ちっちゃいナイフ。

 そして――ここでも出てくるドラゴンソード。

 ドラゴンがドラゴンソード。うん、まあいいや。


「とりあえず、オクテットに向かうぞ」


 俺は声を張った。


「場所は俺とカルドが扇動する。

 さっき見てきたからな。逸れるなよ〜」


 ガヤガヤとついてくるみんな。

 修学旅行感が拭えない。

 主にドラゴンソードのせいで。


 行きと違って帰りは早道を見つけた。

 だから今は地図と違う道を通っている。

 人通りの少ない道だからサクサク歩ける。


 ……だが、ここは火の国。

 治安が四大国で一番悪い国。


 しかも、見た目だけなら

 俺たちは女子供の集団である。

 カルド以外は弱そうに見える。

 狙われる条件が揃いすぎている。


「オイ、待てよ。そこの観光客たち」


 声が飛んだ。

 物陰からゾロゾロと獣人が出てくる。

 三、四……いや、もっといる。

 リーダーっぽい奴が剣を抜いて、

 刃を舌で舐めた。趣味悪い。


「火の国のルールを教えてやるよ」

 

 笑い声が乾いている。

 そして、続けた。

 

「ルールは単純、金は置いていけ以上だ」


 俺とカルド、そしてセリアが構える。

 リラはキロロを抱き、片手にマナを込める。

 アノンは興味なさそうな顔で欠伸に近い。

 まよねこは一人でテンパっていた。

 顔が青い。手がプルプルしている。


 その中で、ミキだけがトトトトと前に出た。


「ミキが相手するヨ! 最近出番が少ないのヨ!」


 いや、そんなことはないと思うが?


「ミキ君、一人で行けるのかい?」


「余裕のよっちゃんヨ!

 余裕過ぎてアコギが出るヨ!!」


 相変わらず何言ってんだ。あくびだろ。

 だが、ミキは一歩も引かず、

 カッコつけるように言った。


「見るがいいヨ! これが新たなミキヨ!!」


 ごぼうを振り上げる。


 服装がブレザーの制服に変わった。

 そして手にあるのは、ごぼう……じゃない。


 バール?


 バールのようなもの。よく聞くアレだ。

 いや、どうみてもバールなんだけどね。


 ミキはバールのようなものを振り回し、

 獣人達へと突撃した。


「けっ、阿呆が。やっちまえ!!」


 リーダーの声で、獣人が次々に走る。

 包囲。数で潰す。典型的。


 だが――


 ブォン!とバールがうなる。

 獣人が剣を合わせた、その瞬間。


 ドゴォン!!


 爆発。

 え、爆発??


 合わせた剣ごと、獣人が壁にめり込んだ。

 衝撃で砂埃が舞い、壁の石がパラリと落ちる。


 獣人も、自由のフライハイトの面々も固まる。

 ストレイキャッツの面々は涼しい顔だ。

 慣れてるのかよ。


「脳漿炸裂バール!

 お前達、油断してると脳みそあぼーんヨ!」


 まて。

 お前の能力そんな感じなの!?

 大丈夫なの? ほら、権利的なさ!!

 ネーミングが危なすぎるぞ!!


 俺の心配なんてどこ吹く風。

 ミキは次々とバールを叩き込む。

 爆発のせいか腕力のせいか。

 ただただ、獣人は吹き飛ぶばかり。


 防いでも爆発してガードが成立しない。

 避けるしかないが、ミキの攻撃は早い。

 そしてミキは“追う”のが上手い。


 あっという間にリーダーだけが残る。


「あっ、いや、待ってくれ!

 へへ、そんな強いんだったら最初から……」


「聞く耳持たないヨ!」


 ミキは下から掬い上げるように、

 獣人リーダーを殴り上げた。

 

 すごい勢いで打ち上げられる。

 

 やなカンジ〜派とバイバイキーン派に、

 分かれるほどの吹っ飛び具合だ。


「月の向こうまでイっちゃってヨ!」


 こうして戦いは終わった。

 なんていうか、今後が不安になる。

 いや、元々不安だらけではあったが。


 皆は元ネタを知らないからキャッキャしてる。

 良いよな無知って。


「どうでもいいけどマカロン食べたいヨ〜」


 お前はもう黙っててくれ。


 こうして、俺たちはオクテットへの道を進む。

 情報屋『共解のヤエ』に会うために。


 

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