危機一髪
俺たちは一階へ降り、第二棟の校舎を出た。
目の前にある入学式が行われていた講堂を正面に見て左へ向かい、正門の方に歩いていくと、何やら言い争うような声が微かに聞こえてくる。
(なんだ? 初日から喧嘩か? やめろよなぁ。 もっと落ち着けって)
心の中で愚痴るとともに歩みを進めると、正面に人だかりが見えてきた。
どうにも野次馬根性丸出しの生徒が多いようだ。
多くの生徒が集まる第一棟と第二棟の校舎の角付近。
少し広くなっている場所には、俺と同じ新入生と思われる、まだ真新しい制服に身を包んだ数人の生徒同士が何かを言い合っているのが見えた。
俺たち四人も何事かと立ち止まり、生徒同士の言い争いの状況を見守る。
「おいおい、こりゃ……いきなり喧嘩かよ。 血の気の多い馬鹿ってのはどこにでもいるもんだな」
ヴェイグは呆れたように言っているが、顔には楽しそうだな、なんて思ってそうな笑みが薄っすら浮かんでいる。
俺はヴェイグから視線を離し、周囲へと目を向ける。
すると。
「――ッ!?」
俺は慌てて再度周囲を見渡す。
(なんだ!? 今のとんでもない悪寒は……誰かに見られてたのか?)
だが、誰も俺の方を見ていたような感じではない。
皆の視線は、今も目の前に広がる喧嘩している生徒に釘付けだ。
「おい、ライク? どうした、そんなに慌てた様子で周り見渡しやがって。 なんかあったのか?」
「……いや。 たぶん、俺の気のせいだ。 どうも見られてた気がしたんだけどな」
「見られてただぁ? ……俺は何にも感じなかったぜ? エレノアとティアはどうだ?」
俺の少し青ざめたような表情に、ヴェイグは笑みを浮かべていた顔を引き締め、比較的真面目な声音で二人へと問いかけた。
「いえ、私も特には感じませんでした。 ですので、その……やはり、ライクさんの気のせいなのでは?」
「うーん、そやなぁ。 ウチも特に変な感じとかせんかったし……エレノアちゃんの言う通り、気のせいなんちゃう?」
二人も特に感じなかったらしい。
俺だけが感じた、か。 やっぱり皆の言う通り気のせいなんだろうか。
あるいは、実は結構入学式で緊張してたとかか。 いや、緊張してて悪寒が走るほど体が弱かったりはしないはずだけど。
俺が先ほどの強烈な視線について考えていると、エレノアがぼそぼそと小声で何かを言っている。
「エ、エレノアちゃん……」
どうやら、さっきティアが言っていた"エレノアちゃん"に何か思うところがあったようだ。
無表情が崩れて照れの色が出ていることからもわかるが、エレノアはかなり照れているみたい。
顔はほんのりと赤く染まり、いかにも照れていますといった見た目。
しかし、未だエレノアの表情に見慣れていないティアは首をひねっている。
「あれ? ダメやったかなぁ。 うーん、だったら……そうや。 エレちゃんとか、どうや? こっちのほうが友達っぽくてええんちゃうかなぁ?」
ティアは顎の辺りに人差し指を当て、可愛らしく悩んでいる。
(エレちゃん……確かに友達じゃなきゃそんな風に言わないだろうけど……エレノアはどう思ってるんだ?)
ティアの言葉に、エレノアの反応が気になり、俺は軽く表情をうかがってみることにした。
「え、あの……では、エ、エレちゃん……で」
意外、と言うべきなんだろうか。
エレノアはささやく様な小さな声ではあったが、ティアの提案した"エレちゃん"呼びに喜んでいるようで、口元を微かに震わせながら応えていた。
「ふふー! じゃあ、エレちゃんやな! よろしゅうな、エレちゃん!」
ティアはエレノアの返事に体中から嬉しさを溢れさせ、顔には満面の笑みを浮かべている。
エレノアの手を両手で握り、上下に激しく揺り動かしている姿はとても可愛らしい。
リボンで纏められた髪もゆらゆらと揺れ動き、喜びをさらに強調させている。
「よ、よろしくお願いします……ティア、ちゃん」
エレノアは掴まれた手をに合わせて体を動かし、されるがままといった感じ。
表情は、より一層濃く出ている照れの色に染まっている。
されるがままのエレノアだが、ティアと同じくちゃん付けで言葉を返した。
……恥ずかしそうに俯きながらではあるけれど。
「ッ!! ええなぁ! ええなぁ!」
ティアは一層笑みを華やかなものへ変え、輝かしいばかりの表情を湛えている。
(女子同士仲のいいことで大変結構。 やっぱり女の子は笑顔が一番だよなぁ)
俺は他愛無い男独特の感想を抱きつつ、先ほどの視線について考える。
ただの悪寒で済めばいいが、もしも、なんてことがあると怖くも思う。
……あの時のように誰かを失うのは嫌だからな。
とはいえ、だ。 今は昼飯を食べに行かないといけないよな。
俺が昼飯のことに思考を巡らせようとすると、言い争っていた生徒たちが互いに一定の距離を取り始めた。
「え、おい。 まさか……」
外れてほしかった俺の想像は、見事的中。
言い争っていた生徒は皆、魔力を体から溢れさせるようにして高め始めた。
魔力を高めるのと同時に、彼らは口々に魔術の詠唱を開始する。
「おい! ま、待てって! お前ら、こんなとこで攻撃魔術なんか使ったら……ッ!!」
しかし俺の声は聞こえていない様子。
完全に頭に血が上っているんだろう。
いくら学院の制服の性能が良くても、周りへの被害を考えれば危険すぎる。
俺の抗議の声は白熱してきた彼らへの煽りの声と、無慈悲にも続けられている魔術の詠唱の声によってかき消され、他の生徒たちの声だけが周囲へと響く。
(ダメだ。 全然聞いちゃいない! 俺じゃ術式に割り込むような技術もないし阻止できないぞ!?)
どうしたらいいんだと対策を考えていると、彼らの魔術は放たれる寸前にまで迫っていた。
「我が舞は夢幻のごとく。 全てを焼き焦がす紅蓮の炎。 ――炎月輪ッ!」
「それは幻想の白き刃。 災禍より我が身を守る剣。 ――踊れ、清廉なる剣ッ!」
少し暗い赤色の髪を持つ男子生徒は火属性の攻撃魔術を行使し、彼の周りには炎で構成された円形状の刃が六つ。
刃は全て彼の周囲で浮かんでいて、今か今かと攻撃の時を待っている。
対する明るい青色の髪を持つ生徒は無属性の攻撃魔術を行使し、彼の周りには宙に浮く剣の形をした魔力が同じく六つ。
赤髪の彼と同じく、剣の形状をした魔力は周囲で踊る様に浮いている。
(クソッ、間に合わない!)
俺の心の叫びと時を同じくし、二人の生徒は魔術を放つべく声を上げた。
「ぶっ飛べ、クソ野郎ッ!」
「それはこちらの台詞だ! クソ虫がッ!」
彼らは互いに罵声を浴びせ合い、魔術を相手へと放った。
切断力を上げるかのごとく回転する円形状の炎の刃の群れと、踊るように舞い炎の刃と対峙する剣の群れ。
二人の生徒が放った魔術は未だ魔力の練り方に甘い所があるものの、新入生というにはいささか強力。
恐らく怒りで魔力を多く使用し、強引に威力を上げているのだろう。
二つの魔術は互いに、相手を構成する魔力を削り合うようにぶつかり合う。
ぶつかり合った衝撃のせいか、二つの魔術は激しく魔力の光を迸らせる。
迸る魔力は欠片となり、周囲へと飛び散る様にばら撒かれた。
周りで二人の戦いを見ていた野次馬たちは、未だ威力を持つ魔力の欠片から逃げるように距離を取り始める。
「「キャーッ!!」」
「逃げてッ!!」
野次馬たちの中にいた、女子生徒たちの叫び声が聞こえる。
何かと思い周囲を見渡せば、俺の目に飛び込んできたのは衝撃的な光景。
俺の視線の先にあったのは、二つの魔術が弾け、金色の髪をなびかせる少女のもとへと襲いかかる様に飛んでいく姿だった。
(!? あのままじゃ直撃するぞ!? このままじゃ大怪我するかもしれない!)
俺はあまりの危機的状況に置かれた少女のもとへと駆ける。
「お、おい! あ、あぶないぞッ!」
野次馬の中にいた男子生徒の声なのか、俺に向かって声が飛ぶ。
しかし、彼の言葉を聞いている余裕なんかない。
俺は守らないといけない。
少女は女子生徒の声でようやく事態を把握し、顔を恐怖の色に染めて立ち止まってしまっているんだ。
目の前で無意味に誰かが傷つくところなんか見たくない。
(クソッ! この距離じゃ間に合わないか!)
俺は心の中で悪態を吐く。
(仕方ない……)
「――我が身は一振りの刀なり」
言葉を紡いだ瞬間、俺の心臓が一際高く弾み鼓動した。
魔力を循環させることで身体能力を劇的に上昇させた俺は、彼女のもとへと加速し疾駆する。
ギリギリ二つの魔術が届く前に彼女の前へと辿りついた俺は叫ぶ。
「しゃがめッ!」
短く言うなり、彼女の姿を確認することもせず、腰にある鞘を手に持って抜刀の構えをとる。
(集中しろ。 この程度の魔術、俺に斬れないわけがない!)
軽く息を吐くと、俺は目の前に広がる二つの魔術を見据える。
「……いくぞ。 ――壱ノ太刀 桜花、弐連」
迫りくる魔術に対して放たれた俺の斬撃は、瞬時に行われた二度の抜刀により、計十二の剣気――衝撃波――となって襲いかかる。
炎の輪と魔力の剣は斬り裂かれ、二つを構成する魔力は十二の欠片となって周囲へと散った。
魔術の核となる術式ごと斬られた魔力は輝きを放ちながら花びらのように舞い散り、存在を保てなくなって儚げに消えていく。
周囲からは音が消えたように何も聞こえず、辺りには静寂が満ちる。
俺は完全に脅威が消え去ったと判断し、残心を解く。
(な、なんとかなったか……いや、ホント肝を冷やしたわ。 何してくれるんだ、全く)
周囲はあまりの光景に呆気に取られたようで、開いた口が塞がらないといった様子。
しかし、すぐに彼らは復活し、次第に周囲からは称賛の声と拍手が鳴り響く。
――よ、よかったぁ。 ありがとー!
――なんだよ今の! すげー!!
――今の見えたか!? 俺全然見えなかったぞ!?
――キャー! かっこいい!
俺の鼓膜を震わせるように様々な声が聞こえてきたが、今は少女のことが気がかり。
周囲の声に片手を上げてそっけなく返すと共に納刀する。
「あの……大丈夫ですか?」
俺は納刀し終えると、背後でへたり込んでいた少女へと声をかけ、手を差し伸べた。
彼女は少し気の抜けたような表情を一瞬浮かべ、俺の顔を手を交互に見る。
「ふぇ? あ!」
少しの間を空け、慌てたように彼女は俺の手を取った。
彼女がしっかり手を掴んだのを確認し、俺はゆっくりと彼女を立ち上がらせる。
「あ、え、っと。 は、はい。 その……危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
彼女は立ち上がると共に先ほどの俺の問いへと言葉を返した。
俺は彼女が立ち上がったと共に手を放し、軽く笑みを浮かべる。
「いや、間に合って良かったよ。 正直ギリギリだったからさ。 怪我とかしてないか?」
彼女に怪我がないかを確認しつつ、彼女の様子をうかがう。
改めて確認した彼女の顔は教室でも見た、綺麗な金色の髪を持つ少女。
(必死で気づかなかったけど、さっきのあの子か。 大きな怪我はしてないみたいだし、助けられてよかったな)
彼女は制服のスカートについた砂埃を手で払い、少し考える素振りを見せる。
「え? あ―……特に痛むところは、ないです。 ホントにありがとうございました」
自分の手や足など、彼女は制服で守られていない箇所に目を向けたが、特に痛がっているような様子はない。
だが、彼女が咄嗟に手のひらを俺の方に見えないようにしていたことに気付いた。
「手、見せてくれないか? 怪我してるんじゃない?」
「え? ……あの、その……ごめんなさい。 嘘を吐くつもりじゃ……なかったんですが」
「あはは、いいよ。 たぶん、気を遣ってくれたんだろ? むしろ気を遣わせてごめん。 見せてもらえるかな」
「あ……はい」
俺の方へ伸びた彼女の手は、案の定というか、予想通り擦りむいていて血が少し滲んでいた。
(せっかく綺麗な手なのに、これじゃあもったいない)
俺が彼女の怪我の具合を確認していると、先ほど置き去りにしてきた三人がやって来た。
「ライク、大丈夫やったん? 怪我してへん?」
ティアはいち早く俺のもとへ駆け寄り、心配そうに声を出した。
心配してくれたのはありがたいが俺は無事なんだよなぁ、などと思いつつ、ティアへと言葉を返す。
「ああ、俺は大丈夫なんだが……こっちの彼女がな」
俺は悩まし気な表情を浮かべつつ、彼女の手を指さす。
「うぅ、これは痛そうやなぁ。 んー、ウチの治癒魔術やと綺麗に治せる自信ないし……エレちゃんはどうや?」
ティアは覗き込むようにして彼女の手を確認し、自分が怪我したかのように顔を歪めた。
怪我の度合いを確認して治せそうにないと判断したようで、ティアは肩を落とす。
肩落としたティアは、隣にいたエレノアに申し訳なさそうな表情をしながら問いかける。
「はい。 私は治癒魔術はある程度使えますよ。 この程度であれば問題なく治療できるかと」
エレノアは怪我人の彼女の具合を確認し、自信たっぷりといった声音で言う。
(これは俺の出番はなさそうだな)
少しやる気になっていた心に蓋をし、俺は少し横へ避けてエレノアに場所をゆずる。
「では。 私が治療しますが……かまいませんか?」
エレノアは念のためといったように怪我人の彼女に対し問いかける。
「は、はい! その、すみませんがよろしくお願いします」
金髪の彼女は頭を少し下げ、手をエレノアに対して伸ばす。
エレノアは彼女の擦りむいた手に真っ直ぐ、真剣な眼差しを向けている。
両手で彼女の手を柔らかく握ったエレノアは、表情を変えず口を開く。
「かの者に癒しを。 ――治癒の聖光」
本来ならもう少し長い治癒魔術の詠唱を短縮し、エレノアは涼し気に紡いだ。
温かく感じられるような緑色の光は、エレノアの手と傷ついた手を包み込むように輝く。
俺が治癒魔術の光に包まれている光景を眺めていると、ヴェイグが声をかけてきた。
「おう、ライク。 お疲れさん。 にしてもすげえな、さっきのアレ。 正直、目で追うのがやっとだったぜ?」
「なんだ、やっぱり見えてたんだな。 というか、追えるだけ凄いと思うけど。 あれは俺の剣技の中でも最速なんだぞ? まぁ、九つの型の中でだけど」
正直予想していたとはいえ、ヴェイグが見えていたことに驚く。
俺の太刀筋、特にさっきの桜花は桜ノ宮一刀流の剣技の中でも最速の抜刀速度で放たれる技。
さすがに全てを見られたわけじゃないだろうけど……いや、どうなんだろう。
実は全部見えてたかもしれないな。
「へぇ、通りであんなクソ速いわけか。 こりゃあ、手合わせが楽しみで仕方ねぇな。 アハハッ!」
ヴェイグは大口を開いて楽しげに笑う。
「もう、兄さん? そんな下品な笑い方しないでください。 妹の私が恥ずかしいので」
蔑むような視線と共に、突き刺さるような言葉を放ったのはエレノア。
横目でヴェイグを確認すれば、肩を落とした姿が目に映る。
どうやらエレノアは治療が終わったようで、俺とヴェイグのいるところへやってきた。
「エレノア、ありがとな。 お疲れ様」
俺の代わりに治療を施してくれたエレノアに労いの言葉をかける。
エレノアは少し驚いたように眉を微かに動かしたが、すぐに無表情に戻し、俺の方を向いた。
「いえ、当たり前のことをしたまでです。 と言いますか、私よりライクさんの方がお疲れ様と言われるべきだと思いますよ? 本当にお疲れ様です」
すでにいつもの、と言っていいくらいに見せていた無表情を崩し、エレノアは微笑を浮かべている。
エレノアと同じく当たり前のことだと思っていた俺は、かけられた言葉に嬉しくなり笑みを零す。
「ありがと。 それで彼女は?」
「ええ、問題ありません。 完璧に治りましたよ」
「そうか……よかった」
エレノアの言葉に安堵のため息を漏らし、胸をなでおろす。
俺とエレノアが話していると、先ほど助けた彼女がやってくる。
「あ、あの……先ほどはありがとうございました。 改めてお礼申し上げます」
深々と下げられた頭に少し戸惑う。
(あの状況で助けないなんて考えなかったしなぁ。 気にしなくていいんだけど)
俺は自分の思っている通りの言葉を彼女へと返す。
「いや、俺たちは当たり前のことしただけだよ。 だから気にしないでくれ」
「ええ、ライクさんの言う通りです。 気にしなくて大丈夫ですよ」
エレノアも同じように返し、優し気な眼差しで彼女を見ている。
しかし、金髪の彼女は未だ申し訳なさそうな表情。
「でも……いえ、これ以上は困らせてしまうのでしょうね。 本当にありがとうございました」
俺たちの表情を見て考えを改めたのか、彼女は再度頭を下げた後、華やかな笑みを浮かべた。
「どういたしまして。 そう言えば自己紹介してなかったな。 俺は桜ノ宮雷紅。 隣の彼女が……」
「私はエレノア・リジェスタと言います。 こっちのだらしない人が……兄のヴェイグです」
エレノアは紹介したく無さそうに、嫌々といった様子でヴェイグを指しながら言う。
(どれだけ嫌なんだ……兄貴なんだよな? な?)
少しヴェイグを気の毒に思い見てみれば、さっき俺と話していた時の元気はどこにいったんだと言いたくなるほど悲しみに暮れていた。
ただ、自己紹介はするつもりらしく、金髪の彼女へと向き姿勢を正した。
「あー色々言われてるが……俺がエレノアの兄でヴェイグだ。 口調は癖なんで見逃してくれっとありがたい」
「ちなみにウチはティアや! ティア・クレイドルっちゅうもんなんでよろしゅうな!」
ヴェイグと違い、元気に名を名乗ったティア。
顔には笑みが浮かび、余計にヴェイグとの違いがはっきりと分かる。
(これで何度目だろうか。 ……ヴェイグ、強く生きろよ)
俺は心の中で祈りを捧げる。
「はい、皆さんありがとうございます。 私はその……名乗りたいので、少し近づいてもらっていいですか?」
俺たち四人は首をひねるが、特に拒否する理由もなく、言葉に従って彼女へと近付く。
「ありがとうございます。 それでは自己紹介をさせていただきますね」
彼女はもったいぶる様に言葉を区切り、深呼吸をする。
「私は……国王の娘で、名をシャルロット・フォン・アルファリアと言います。 お気軽にシャル、とお呼びください。 私もあのクラスに残ることに決めましたので……よろしくお願いしますね、皆さん」
笑顔を湛えた表情と共に紡がれ、鼓膜を震わせた彼女の名は、俺たちの脳をも揺さぶった。




