『死霊術のすゝめ』2
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──最後に。恐らくだが、読者の中には本書を読んで疑問に思った方がいるのではなかろうか。
何を疑問に?ということに解を与えるならば、それは「肝心の〈死霊術〉はどのように習得するのか」と言う事である。
その通り。本書はすゝめと謳っておきながら、肝心要の〈死霊術〉の習得方法については記していないのだ。
無論、著者も執筆当初は記そうと考えていた。しかし、しかしである。もしも本書によって〈死霊術〉を習得した者がいたとして、おそらくその人物は至極当然に使うだろう。使わないスキルなど宝の持ち腐れでしかないのだから。
だが使ってしまうと問題が起きる。教会にお叱りを受けるという点である。
お叱りと本書では柔らかい言葉遣いで記しているが、その実態は悲惨なものだ。背信者として本人が始末される程度ならまだましだろう。
だがそれだけでは済まない可能性もある。一族郎党がまとめて根切りされる可能性とてあるのだ。
〈死霊術〉を習得した人物の身の安全に関する可能性。また、〈死霊術〉を利用した悪事を行う可能性等を考えると、残念なことに本書にて〈死霊術〉の習得方法を記すことは叶わなかった。
また、それ以外にも問題はある。それは〈死霊術〉の習得方法が明確ではない点だ。
例えば〈俊足〉と言うスキルがある。これはひたすら走っていれば得られるスキルだ。
例えば〈跳躍〉と言うスキルがある。これはひたすら跳躍していれば得られるスキルだ。
例えば〈観察〉と言うスキルがある。これは物体をひたすら見ていると得られるスキルだ。
このように、多くのスキルは習得方法が明確に理解されている。
しかし〈死霊術〉の場合、母数の少なさ、教会による情報規制と言った理由から、詳細な習得方法がわかっていないのだ。
このあやふやな状態で方法を記すというのは、なんとも気持ちの悪いものである。そのために、本書では〈死霊術〉の習得方法を記していない。
すゝめと謳っておきながらこの惨状であること、誠に申し訳なく思う。
その代わりといっては何だが、現状判明しているスケルトン、あるいはゾンビ化した魔物についてそのステータス、スキルを本書には記している。
本書全体の約500頁ほどがこの情報によって作成されているだろう。
もし亡者と遭遇した際は、本書のことを思い出してほしい。必ず力になるはずだ。
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