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蒼翼の獣戦機トライセイバー~崩壊から始まる、希望の蒼き翼~  作者: 硫化鉄
    第六話  「それぞれの確執」

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五 不協和音。

 同日18:57。


 【Tシリーズ】パイロット達と大榊、宮司、金富は、ブリーフィングルームに集合していた。


「シミュレーションの結果は……初めてにしちゃまぁまぁってとこか」


 三人のシミュレーション結果をじっくりと見て、宮司が控えめな評価を下した。しかしその表情は満足気だ。


 【トライアイン】【トライツヴァイ】ともにステージ1クリア。一昨日まで全くの素人だった者が出す結果としては異例の好成績と言っていい。


「まぁぶっつけで実戦をこなしたパイロット達だからな。飲み込みが早いってのもあるだろうが。特に後半の【トライアイン】の成績はすごいな。スロースターターのアイン、安定のツヴァイってとこか」


 宮司の評価どおり、【トライツヴァイ】は安定して課題をクリアして行ったのに対し、【トライアイン】は前半全く振るわなかった。機動性能がそのまま攻撃にも直結する【トライアイン】は操縦者泣かせなところがある。地に足をつけて、落ち着いて対処することをそもそも想定していないからだ。だが、後半の智美は別人のような追い上げを見せていた。コツを掴んだというのもあるだろうが、檻から解き放たれた鳥のように、機体性能を引き出している。


「これなら……」


 サブパイロットは要らないですよね。勇夫はさすがにその言葉を飲み込んだ。


「【トライドライ】の方も、シミュレーションはやっておいてくれ。まだこれからも出撃はあると予想されるからな」


 華夕は反射的に一樹に目を向けた。一樹は一切表情を変えることなく、つまらなそうに宮司を見ていた。華夕の動きは一樹の視界にも見えたはずだが、見事なまでの黙殺だ。宮司の言葉にも返事をせず、ただ黙って見ている。宮司は肩をすくめて苦笑した。


「現在、【敵】の動きは確認されていません」


 大榊が話題を変えた。


「防警軍では、筑波の生産施設で戦力を増強していると見ています。いくら【Tシリーズ】と言っても、圧倒的な数の差があれば戦線を押し戻すのは難しいでしょう。ですから、早急に筑波を取り戻す必要があります」


 大榊は相変わらず感情の見えぬ抑制された表情で語った。


「そっか……。俺達ものんびりしてるヒマはないって事か……」


 勇夫が考え込む。


「確かに、昨日よりも大量にかかってこられたら、私達だけで防ぎきるのは難しいですね」


 頼造は控えめにそう言った。勇夫や智美は敢えて無視するように動かなかったが、瀬里奈が腕組みして口を開いた。


「そうですね。でも、【敵】の部隊だってそれを統率するリーダー機があるはずでしょう? それを倒せば何とかなるんじゃないかしら」

「まず指揮官機を落とせばあとは烏合の衆ってわけですね」


 すかさず金富が瀬里奈に同調した。


「さすが戦術の基本をわかっておられますね。問題は……」

「あのっ!」


 金富の言葉をさえぎって、華夕が手を上げた。大榊は金富の言葉を制し、華夕に頷いた。


「今野さん、どうぞ」

「ありがとうございます。昨日の感じ――印象なんですけど、多分、指揮官機はないと思います」


 華夕の見解は金富を驚かせ、一瞬狼狽させた。


「どういう事? 華夕ちゃん」


 瀬里奈が聞き返す。


「印象なんですけど、昨日の感じでは、どれか一機が全機を統括しているというより、短距離電波でつないだネットワーク全体で判断や行動決定をしているように見えました。瀬里奈さん達が隊列を分散させた時も、分かれた小グループはそれぞれの判断で動いているように見えましたし……。

 全部が無人機で、人が操っていないなら、思考を一機に集約するより、全体のネットワークで思考させたほうが効率的だし安定すると思うんです」


 瀬里奈は、華夕の説明に納得したようにうなずいた。


「確かに、今野さんの言うとおりですね。やはり、基本的には常に最悪の可能性に合わせて準備しておくべきでしょう。単に指揮官機を探して叩けばいいというのに比べると相当にきつい状況ですが。念のため【トライドライ】は指揮官機の存在も想定して戦況を分析把握して下さい」


 大榊が公平に判断を下した。が、一樹の返事はない。


「……はい」


 華夕が控えめに返事をした。


「真島君は協力してもらえませんか?」


 大榊は一樹に向き直った。【トライドライ】は昨日の戦闘でも戦いに参加してはいない。戦闘向きの機体でない事はわかるのだが、それ以上に一樹が非協力的であることが大きい。戦闘データも全て華夕が集めたものだ。


「ん?」


 一樹は初めて声を出し、つまらなそうに首をまわした。


「俺がどうしたって? 軍人さん」


 室内にさっと緊張が流れた。瀬里奈が何か言いかけるのを制して、金富が口を開いた。


「強制はできません! 強制は出来ませんが……。あなたは【トライドライ】のメインパイロットです。今、市民を守って戦うことが出来るのは、あなた方しかいないんです。軍としては甚だ不本意ですが……」


「へー、不本意。不本意ねぇ。それで済ませられるんだな、軍隊ってさ」


 一樹は顔色一つ変えずに言い放った。


「俺は戦うとか守るとか関係ねえし、興味もねえ。ただアレがどんなもんか、きっちり調べてるだけだ。俺んだからな。最初からそう言ってるはずだぜ。データならそのガキが取りゃいいだろ」


 一樹は椅子の背もたれに体重を預けたままの姿勢で言った。華夕の事を口に出した時ですら、一瞬華夕の方にあごを向けただけだ。


「真島……さん……。あんた……!」


 勇夫の声が怒りに震えていた。自分勝手にも程がある。が、一樹は勇夫に横目で一瞥をくれただけで声も出さない。

 空気がピリピリと硬くなり、キーンという耳鳴りがするような感覚が室内を支配していた。宮司が大きく肩をすくめ、大げさに息を吐いた。


「まぁ、いい話もある。うち所属の小隊が、例の地下施設を調べに行ってるんだが、もう成果をゲットし始めてるぞ」


 宮司はそう言って一樹の方を向いた。


「お前さんだって興味あるだろ? あそこを調べりゃ【Tシリーズ】の追加装備なんかが出てくるかも知れないからな。現在鋭意調査中だ」


 一樹はまんざらでもなさそうに、宮司に肩をすくめて見せる。


「成果ってなんなんです?」


 勇夫が対照的に身を乗り出した。


「あぁ、実はな。【Tシリーズ】に搭載されているのと同じシステムの通信ユニットが見つかったんだ。これが量産できれば、戦況が大幅に変わる事になるな」


 一樹は期待はずれという表情を浮かべたが、場の空気は明らかに変わった。通信が使えるようになることで、軍の戦力が【敵】に対抗できるようになれば、防警軍は質・量ともに圧倒的だ。


「入手した通信ユニットは分析の後、私のヘリに装備します。出撃の時にも通信でサポートできますし、【トライドライ】から逐一戦況を送ってもらい、こちらでも戦況分析を行う事が出来ます」


「それ、いいですね! 心強いです!」


 勇夫は勢い込んで言った。


「敵が動きを見せるまでに、こちらでも出来る限りの準備を整えておく。君達もシミュレーションなどで出来るだけ慣熟しておいてくれよな」


 宮司がそうまとめ、ミーティングは終了した。


「軍にも筒抜けになるからなぁ。これからは恥ずかしい事叫ばないように気をつけなきゃなぁ、速水くぅん?」


 そう耳打ちして笑いながら去っていく一樹の後姿を、勇夫はただ睨みつけるしかなかった。

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― 新着の感想 ―
真島は相変わらず態度が悪いですね〜。 (・∀・) これ、協力的になる未来はやってくるのかな? (´・ω・`)
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