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モエモン  作者: 野生
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(5)

「さてと……」

 皆人の声が低くなる。戦いは終わり、すべてのカードの効果が消え、晴々としていた顔は再び鉄の仮面に覆われる。眼から熱が失せた皆人は、無言のまま手の中にある黒山から奪い取った指輪に視線を下ろし、ぐっと力を込め指輪を握り潰した。

 鈍い音を立てて指輪が粉砕され、キラキラとした破片が手から零れ落ちる。と同時に、伊吹に倒されたキャロルの身体がブレ、0と1データの束になって消え去った。

 黒山は未だに気絶したまま動かない。同様に、剣宮もまだ眼を覚まさない。そして、九王は一切口を挿まない。

 今伊吹の前にいるのは、最大の敵・皆人だ。

 伊吹は真っ向から皆人の視線を受け止めた。だが、皆人は伊吹の顔から足元へ視線を逸らす。無言が辺りを支配する。先ほどまでの戦闘とは別の緊張感が二人の体を包みこんだ。

 その沈黙を破ったのは、皆人だった。

「……い、ぶき」

 言葉が詰まる。今の皆人は不安定だ。

 すべてに情熱を燃やしていた自分が、皆人は嫌いだった。

 傷つきたくなくて、冷たい自分を生み出した。

 冷たい自分が熱い自分を押し殺す中での生活は悪くなかった。

 それで、――十分やっていけたから。

 でも……さっきの自分はどうだろう?

 体中の血が滾った。自然と声が出た。嫌いな自分が、すごく楽しかった。

 けれど……けれどっ!

 やっぱり昔の自分に戻る気にはなれない。崩れる自分、支えが欲しい。人でない自分。それでも自我を立てた伊吹が、今の皆人にとってはとても遠かった。

 再び、皆人の唇が動いた。

「お前の答えを聞かせてくれ」

 穏やかで、それでいてとても弱弱しい口調だった。考える前に、伊吹の唇が動いた。

「そんなの、決まっているでござるよ」

 伊吹は、笑っていた。皆人はなんとなく、伊吹に心が読まれているような気がした。

「――。――――、――――――――」

「え?」

 照れくさそうに言って、伊吹は笑った。

 夕暮れが伊吹の頬を赤く染め上げ、柔らかな風がその髪を攫う。

 俺はいったいどんな顔してただろう。とにかく、無表情では絶対になかった。

 そう、思う。


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