039
青の柱に入る。見上げた楓は圧倒されていた。階段が遥か彼方まで続いている。頂上付近の最大傾斜角はどのくらいになるかわからない。いずれにしても階段を上りきるには、相当の体力と精神力が必要になるだろう。
だが、隣にいる京也の能力をもってすれば、3秒で上りきることができる。楓は決めた。
「私も連れて行ってくれないか」
楓の申し入れに京也は当惑した。
楓に協力してもらうため、スペードの件を洗いざらい話した。それは柱に入るため。楓を巻き込むつもりはなかった。
「危険な相手です」
生きて帰れないほどの。京也は後に続く言葉をしまい込む。
「能力を……」
楓が言葉を濁す。胸のペンダントを握りしめた楓が膝をつく。
「滝本京也。私はお前の盾になる。だから一緒に行かせてくれ」
「やめてください。いきなり盾とか言われても困ります」
理解に苦しむ京也を楓は見つめる。楓の目には一点の曇りもなかった。
「俺もいくぜ」
京也が振り向く。
圭介がいた。
「どうしてここに」
「俺もつきあう」
きっぱりと言いきる圭介。
京也は呆れてしまった。
どうして京也の周りは、バカな人たちばかりなんだろう。
「ふたりとも好きにしろ」
楓と圭介にこれ以上の説得は無駄だった。ふたりの行動を妨げることはできない。
あきらめた京也が、圭介と楓の手を取った。
握り返すふたりの強い意志を感じる。
京也は能力を発動させた。
「せっかちだな、京也は」
ひとりの男が青の柱に遅れて姿を見せる。
ポケットから鏡を取り出した。
「詩織。うまくいったら京也の退学の件。本当に取り消してくれるか」
「馴れ馴れしく名前で呼ばないで」
鏡の中で、生徒会長は拒絶するかのごとく手を突き出す。鏡に掌が大きく映しだされた。
「恋愛運はないな。長生きもできない。最悪の女だな、お前」
「勝手に人の手相を見ないで」
生徒会長の判断は間違ってなかった。弟を追い詰めれば必ずこの男は現れる。
「じゃあ、ちゃっちゃと片付けてくるわ」
「油断しないで」
「はい、はい」
鏡をしまいこみ、男は階段を一瞥する。
「覚醒」
男は京也を追いかけるため能力を発動させた。




