038
楠木圭介にとって能力は自慢だった。能力「テレポータ」は瞬時にどこにでもいける。便利かつ優れた能力。能力が圭介に自信を与える。クラスメートの羨望を受け、常に人気ものだった。
「森先生は紫色。情熱的な赤と冷静な青とが混じり合っている」
転校生の独り言が圭介に聞こえてきた。クラスに早く馴染むよう、担任の森が、委員長・圭介の横に机を配置した。「ミミちゃんは目が見えないの、圭介くんが友達になってあげて」森が当然のことのように言う。圭介は仕方なく立花ミミに話かけた。結果、森の予想通りに、立花ミミがクラスにとけこむのにさほど時間は必要なかった。
ミミは変わっていた。クラスメートを色で識別する。それでいて、ひとりひとりの特徴を的確に捕えていた。
「圭介くんは何色なの?」
女子の誰かがミミに質問する。
「圭介くんは灰色かな」
「えっ、金色じゃないの」
「派手な色にみえるけどな」
クラスで意見が飛ぶ。
圭介も以外だった。金とはいわないが、もっと輝くような色をイメージしていた。能力にふさわしい明るい色がよかった。
「金色をしている人。見たことある?」
ミミに質問が続いていた。
「ある」
「誰」
「秘密」
圭介は知りたかった。金色にふさわしい人物に会ってみたい衝動にかられた。
初めのうち圭介は、金色の人物に会いたくて、ミミに頻繁に話かけては一緒に登下校を繰り返した。クラスメートの冷やかしもあったが、圭介は気にしなかった。
ミミと話すのは楽しかった。おべっかは言わない。ミミは飾らず本心を話してくれる。
「どうして、そんなに金色にこだわるの」
ミミが不思議そうに尋ねる。
「なんとなく」
圭介は咄嗟にごまかす。
本当は、金色のことをうれしそうに話すミミが、気に要らなかった。
「灰色も素敵な色だよ」
「どこが」
吐き捨てる圭介に、ミミが諭すように話す。
「灰色は他の色に染まらない色。それでいて、自己をはっきり表す色」
「暗いけどな」
「そんなことない。灰色は、月夜の光を受けて銀色に輝く色」
「結局、銀どまりかよ」
「圭介くんにも、いつか月が現れる……」
ミミが死んだ時、圭介は悟った。ミミこそ月だった。ミミには、姫野のような太陽の輝きはない。けれど、暗闇に迷う人を明るく照らしてくれえる月夜の優しさがあった。
圭介はミミにもう一度会いたかった。会って気持ちを伝えたかった。
たとえ金色に輝く京也のことを好きだとしても。
圭介は月光を受け銀色に輝く、ミミを守り続けるナイトになりたかった。




