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誰よりも早く階段を上り僕は君に逢う  作者: T-99
三本の柱:青~未来編
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 3秒後の世界。

 周囲に濃い霧が立ち込める。頂上は手を繋いでいなければ、互いの存在に気が付かないほどの深い霧に覆われていた。

「これが未来なのか」

 開口一番、圭介が疑問を提起した。

 楓がしゃがみこむ。地面に手を押し当て、感触を確かめていた。

「もうすぐ霧が晴れる」

「どうしてわかるんですか」

 京也が楓に尋ねた。

「表面が乾いている。霧が断続的な証拠だろう。少し待てばいい」

 楓の言葉が終わらないうちに視界が晴れてくる。

 吸い込まれるように霧がなくなると、たたずむ男がいた。

「待ちくたびれました」

 スペードが丁寧にお辞儀をした。

 円形の柱の中央部に、入口から続く階段が口を開けている。今まで霧だと思っていたものは、空をおおい尽くす雲の群れ。気づかず進んでいれば、端から真っ逆さまに落ちていた。

「決着をつけにきた」

 京也が緑のブレスレットに手をかけた。

「話があります。滝本京也くん、それに響楓さん。たなたは?」

 スペードが圭介を侮蔑する。スペードの全身から炎が湧きあがった。

「待ちなさい。スペード」

 懐かし声が京也と圭介を貫く。

 決して聞くことができない声。

「ミミ……」

 圭介がたまらず口にした。

 忘れたことない圭介の思い人。

 立花ミミが圭介に歩み寄る。

「勘違いしています」

「どういう意味でしょう」

 炎をまとったまま、スペードがミミに問いかけた。

「ジャックとクローバーを連れてこい。それがキングの命令」

「ですから、滝本京也と響楓を連れていく。もちろん。関係のない人はダメです。扉をくぐれるのは選ばれた人だけですから」

「困った人。キングは、楠木圭介と響楓を連れてこいと言っているのです」

 スペードは瞬時ためらったが、直ぐに理解して京也に向き直った。

「部外者は、滝本京也くんあなたでしたか」

「圭介くん、いこう」

 ミミが圭介の手を取る。

「気をつけろ」

 楓が叫ぶ。

「圭介。ミミは死んだ」

「だから?」

 圭介にとって、京也の言うミミの生死は関係ない。

 目の前にミミがいる。

 触れられたミミの感触だけで十分だった。

「滝本京也はどうしましょうか」

 一応、スペードがミミにお伺いを立てた。

「殺して。その人は、わたしの京ちゃんじゃないから」

 ミミが京也に背を向けた。

 ミミの前に巨大な扉が出現する。

 ひとりでに開く扉からあふれだす光がミミを包みこむ。

 二度と離れまいと後を追う圭介。

「圭介ーーーーー」

 京也の声は、圭介には届かない。

「早く行け。扉が消える前に」

 楓は京也を急かす。

「楓さんは?」

 スペードは危険な敵。能力のない楓を置いてはいけない。

「お前の盾になる。策はある。だから私のことはいいから行け」

 扉の光が弱まっていた。

「女に恥をかかせるな」

 楓の背中が京也を後押ししていた。

「死なないで」

 扉が閉じられる寸前、京也は飛び込んだ。



「困った人だ。私の能力はお見せしたのに」 

 楓がスペードの前に立ちふさがる。ポケットに素早く手を入れ、手触りで菱形のクリスタルを探り当てる。握るとクリスタルが割れ、青い液体が楓の体を駆け巡った。

 スピードが退かそうと楓の肩に触ったが、炎は燃え移らない。楓の表面にできた青い膜が炎を遮断していた。

 唐突に、楓は後方に倒れ込む。右足を高く上げる。つま先がスペードの顎を蹴り飛ばすと、地面にスペードが沈んでいく。両手をついた楓が、孤を描きながらバク転を決めていた。

「プリズン」

 たたみかける楓が、魔法を繰り出す。

 六面体の牢獄にスペードが収監された。

「デフレート」

 牢獄から徐々に酸素がぬかれていく。

 炎が弱まり苦しみだすスペード。

 やがて完全に酸素がなくなると、スペードが息絶えた。

 立ち去ろうとする楓に、死んだはずのスペードの声が聞こえる。

「キングが目にかけるだけのことはあります。しかし、魔力が弱すぎる」

 楓は愕然とした。

 スペードが牢獄をくぐり抜け這い出してくる。

 スペードが指摘したように、楓の魔力はあまりにも非力すぎた。

 死を覚悟する楓の頭上に、無数の炎の槍が浮かび上がっていた。

 


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