涙的ななにかな件について(仮)
「ふー、それで、宮内さんの中二病が本当にいるかのどうかは正直疑問だけど、つまり、彼女の中二病がまた出るように協力をして欲しいってことか?」
もっと突っ込みたいところはないわけではなかったが、それはもう放っておくことにする。中二病の人には何を言っても仕方がないのは、この前に学んだところだ。
「そういうことだね」
良太郎が肯定し、2人が首肯する。
「で、具体的な方法があるのか? その中二病を引き出すための、っていうか何で宮内さんが普通の人になったのかはわかってるのか?」
「うーん、それが謎なんだよな。俺達には特に何か言うわけでもねえし、俺達を否定するわけでもねえ」
あ、自分が中二病だという認識はしっかりと持っているんだなと、かおるは関心した。というか、ここでは無理にキャラを出してはこないみたいだ。それは助かる。
話し方はあれだが。
「わたくしもですわ。まだ、3人で行動も共にしていますしね」
「つまり、何もわからないと?」
「そうだね。そうなるね」
おいおいおい、それではまるで八方ふさがりじゃないか、せめて、何か情報を持ってきて欲しかった。
「でもまあ、家のことが関与してるんじゃないのか? つまり将来は彼女が当主になるわけだろう? その重圧のせいとかさ」
「でも、それは全部初めから決まってた話だぜ?」
(これは、どこまで話したらいいんだ?)
かおるは、良太郎に通信で聞く。いくら友人だといっても、もしかしたらそこまで宮内家のことを知らないかもしれない。
(かおるが知っていることなら全部2人とも知っているよ)
「でも、あの一連の流れで、死の危険を体験したんだ。それにおばあちゃんも亡くなった。俺は宮内さんとそこまで深い付き合いじゃないからなんともいえないけど、それを自分の未熟さゆえだと考えるようなタイプじゃないかな?」
「確かに、それはありそうだな」
「そうですわね」
2人が頼んだパフェが、この重苦しい空気とは相反して、きらびやかに運ばれてくる。
かおるは、それが2人の前に置かれるまで待ってから話を続ける。
「だから、自分がしっかりしないといけないと思っての、中二病の封印なんじゃないのか? それか、少し休業なのかもしれない。まあ、でもこれくらいは皆わかってるんだろう?」
どうして宮内さんが真人間になってしまったのかを、かおるはつらつらと語ってみたものの、これくらいはかおるより付き合いの長い3人ならわかるはずだ。
一応聞かれたので、答えてみたが。
「そうだね。皆口にはしないけど、それが有力だね」
3人は宮内家の関係者には口にしにくいことをかおるに任せた形になっていた。
おそらく、おのおのが責任を感じているのだろう。
この一見意味のわからない相談の全貌がやっとかおるに見えてきた。
簡単な話だ。
元気がなくなってしまった宮内 正子を元気付けようということだ。あの中二病全開で日々を過ごしていたあの頃のようになってもらいたいわけだ。
まったく、遠回りすぎて面倒くさい連中だなとかおるは思った。
まあ、ある意味巻き込まれた人間であるかおるに対しては、直接的な言い方ができなかったのだろう。それはわかるが、はあ、面倒な連中だ。
かおるとて、宮内 正子がこのままなのも胸が痛い。
仕方がないか、と思い。かおるはため息をひとつ吐く。
「はあ、わかった。彼女の中二病がまた出るように協力するよ。俺がどれだけ力になれるのかはわからないけどな」
その言葉に、3人の目に期待の光が灯り始める。
ああ、これは何かデジャブだぞと思いながらも、別に悪い気がするわけではない。
「「「ありがとう」」」
「で? とりあえず、どうするんだよ?」
「それなら、作戦を考えてきたよ。これで、どうにかなることはないだろうけど、まあ助走だね」
それから、良太郎による第一の作戦を伝えられる。
- - - - -
翌日、かおるは、いつも通りに起床した。
これは平日のいつも通りというわけで、休日のかおるにしてはかなり早い。
作戦の開始は今日からだ。
リビングに下りると、ハルカが朝食を取っていた。彼女は、今日も部活である。
「あれ? 今日は早いじゃない、どうしたのよ。やっと真人間への階段を昇り始めたのかしら? そのまま、天に召されればいいのよ」
「おいおい、堕落人から真人間になり天使になるってか? それはかなりの昇進だな」
真人間か・・・、それを求められていない人間がいるとハルカに教えてやりたい。
ハルカはかおるの返しがお気に召さなかったのか、返答をしなかった。
仕方なく、かおるは一人でに喋る。
「今日は、友達と約束があるんだよ」
そのとき、ガチャっとコップが落ちる音がする。
「と・・も・・だ・・ち・・・!?」
「え? ああ、そうだけど」
「かおる、あんたついに虚言癖まで・・・」
「は? いやいやいやいや、俺にも友達くらいいるから!」
そう! いるはずだ・・・いや?、どうなんだろう?
「いいのよ! 私は気にしないから、・・・頑張ってね・・・」
そういうと、ハルカはさっさと部活に向けて出て行ってしまう。
何か涙的なものが見えた気がするが、気のせいだろう。いや、気のせいであってくれ!
「ハルカさん、いい味出してますね」
「久しぶりの登場だな」
「私、この後出番あるのかしら?」
「どうでしょうね?」(作者)
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




