飛び出せフライな件について(仮)
<良太郎の隠れ家にて>
かおるが、川瀬、篠原誘拐大作戦に赴く数分前、その作戦の打ち合わせは佳境に入っていた。
「もし、もうすでに相手がこちらの行動を読んでいるとわかれば、こちらも大胆に行く。だから、大胆に転位魔法を使う。進入を隠す必要はないからね。まず、おそらく転位魔法で飛んだ先に罠を仕掛けていると思うから、相手が仕掛けている罠を、転移魔法で何かを送り続けることで阻止する。それは手術室にあるものを適当に送ればいいよ。多分俺の予想では、五重の罠が限界なんじゃないかな。最大で八重まで重ねた例があるけど、それは本当に例外だからね。で、そこで、この俺特性の煙幕を張るんだ。」
そこで、良太郎はあるカプセルを取り出した。
「これを、転移魔法で送れば、すぐに広範囲の煙幕が出るよ。その瞬間に、俺が緊急通信で一斉にその煙幕が危険だ! 防壁を張るんだ! 的なことを言うんだ。そうすれば相手は急いで、俺の言うとおりにするよ。人っていうのは、よくわからない状況に立たされると、誰かの支持に従いたくなるものさ。」
「それで、俺が転移をして、煙の中を堂々と歩いて、特別棟に入るわけか。でも、煙りの中じゃ何もみえないんじゃないか?」
「それなら、大丈夫だよ。俺の作ったこの煙幕は、通信で使う魔法電波を通せば見えるようになってるから、そのイアホンの補助を借りて、電波を通せば、かおるだけ見えるはずだよ。」
良太郎はかおるが、さきほど渡されて、耳にしているイアホンをさして言う。
「わかった。まあ、やってみるしかないな。それで逃げるのはどうするんだ? 中に入れたとしても逃げれないといけないだろう?」
「それなら、また、その転位魔方陣を使うんだよ。転位魔方陣の転位を連続でできるように、最初に設定しておくんだ。それなら、反対側からでも再転位できるよ。」
良太郎はニッと微笑む。
「まずは、二人のいる部屋まで急いでいく。それまで、玄関では俺適当に電波を飛ばして、さも誰かが襲われているように偽装するよ。多分、かなりの人間が玄関に集合していると思うけど、流石に建物の中を空にはしないと思う。だから、中の相手はかおるにまかせるしかないね。」
「まあ、がんばるよ。」
かおるは苦笑いをする。自信はないが、仕方がない。それまでに力の制御を完璧にできるようにしておこう。
「それで、二人を誘拐できたら、屋上に上がる。もし無理そうなら、七階でもいい。でも、玄関の真上側だね。そこから、転位魔方陣に向かって飛ぶ!」
「え!?」
「大丈夫、転位魔方陣にうまく乗ることができれば、そのまま、再転位して一般病棟に入れるはずだからね。」
かおるの顔には汗が流れる。
「それ、軌道とかってうまくいきますかね?」
かおるはつい敬語になっていまった。
「それは、がんばって、漆黒の力とはでなんとかならないかな?」
かおるは、考える。そういえば、最初悪魔と話をするきっかけになったとき、炎に助けられた気がする。着地さえできれば、後は転位魔方陣まで歩いていけばいい。なんとかなるかもしれない。
ここで、できないというのも気が引けるので、自信の力が臨機応変であることを願って言う。
「なると思う。」
「なら、よかった。もしどうしても無理そうなら、もう一度玄関まで下りてくれればいいよ。それまで、なんとか俺が混乱を起こしていくから。」
かおるは頷いた。
「すみません、かおるさん。わたしの友達をよろしくお願いします。」
先ほどまで、横で話を聞いていた宮内が頭を下げる。
「いいよ。頭なんか下げなくても。」
かおるがあわてて言う。
「友達とまではまだ行かないかもだけど、俺も二人のことは知ってしまったからね。同級生を助けることくらい、なんてことないよ。」
助けるとは大げさだったかもしれない。別にとらわれの身になっているわけではなく。万が一のために誘拐しにいくんだ。かおるは心の中で、そう突っ込んだ。
宮内は頭を上げて、もう一度だけ
「ありがろうございます。」
といった。
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「じゃ、七階に行くよ。」
『建物の中は電波が悪くなるから、ここまでだと思う。後は任せるね。』
そこで、通信が途絶えた。
やはり建物にはジャミングがかかっているか、少し中に入っただけで、一瞬で切れてしまうとは・・・。
かおるは、歩みを進める。
作戦はうまくいった。変更したところで言えば、最初に転位させるものである。一般病棟でも術式を焼きつくすことができるという点から、黒炎を最初に転位させた。それにより、見事に罠を焼き尽くすことに成功したのだ。
といっても、かなり大胆な行動である。良太郎の言う通り。おそらく黒幕には特別棟に侵入したことは、ばれていると考えたほうがいいな。かおるは気を引き締める。
「なんでも、作者はこれで、やっと華の休みに入るらしいよ。」
「くそ長い休みだよな。作者、調子に乗って、更新するの忘れたりしないといいけどな」
「気をつけます。」




