焼き尽くせばいい件について(仮)
「で、その厄介な術式っていうのはどんなものなんだよ?」
かおるは、甲冑が追ってこないので、非常階段で腰を下ろして話しをする。
『まあ、簡単に言うと、ゲームみたいにクリア条件があるんだ。例えば、三十回相手を倒さないといけないとかね。これは、そう簡単に設定できる術式じゃないんだけど、多分、かなり膨大な人間と魔力を使って領域を組んだんだと思うよ。』
「それって、かなりここに力を割いてるってことじゃないか? もしかしてかなりやばい状況だったりする?」
かおるは、苦笑いを浮かべる。
『いや、相手がもし上野を想像しているとしたら、相手は漆黒の力を想像しているはずだからね。よくよく考えればこれぐらいはしてきても、当然だよ。黒幕は、上野が来るかもしれないって、周りには伝えてそのほかの人間が来ても大丈夫なようにはしているはずだからね。ちょっとこっちの考えが甘かったみたいだ。ごめん。』
「いや、俺は良太郎に頼りきりだからな。謝らなくてもいいよ。それより、どう突破すればいい? 動きはかなり早いし、俺の攻撃も鋭利なものの攻撃は効果があるけど、そのほかは効果がないみたいだ。」
かおるは、先ほどの戦闘を思い出し話す。
『鋭利な攻撃は利くってことか・・・。もしかしたら、それが、一つの条件なのかもしれない。剣とかの斬撃系の攻撃しかきかないようにされているのかもしれないね。だから、そのほかの攻撃は利かないようになっているってわけ。これは、多分建物すべてに適用されているから、いくら漆黒の力といえども、その例外ではないんだろうね。』
そうなるのか。かおるは思った。いくら偽者の力といえども、かなり強力な力であるのは、宮内と上野の戦闘で十分わかっていた。けれど、この認識魔法領域では、術者が設定したものが最も強力というわけだ。
「こんな強力なものがあるなら、もっとはやく上野にこれをやるべきだったんじゃないか? まあ、今更ではあるけどさ。」
『これは防御特化型だからね。まあ、さっき言ったみたいに大勢の能力者がいるし、それに、絶対にクリア条件が設定されないといけないんだ。だから、足止めには有効でも、相手を倒すことには向いていない。多分、対峙した甲冑もそこまで強くはなかったと思うよ。』
「そうだな。」
確かに、先ほど対峙した甲冑はすばやさこそあれども、一発の重さはキメラの非ではなかった。
『でも、問題は、術式が作用してしまうと、それが術者にばれてしまうところだね。だから、もしかしたらそこには、もうすでに何人かの人間が向かっているのかもしれない。』
「まじ?」
かおるは、急いで周りを見る。その行為になんの意味もないが。体が反射的に動いた。
『なんてね。それはないよ。だって、上野を想定しているなら、上野個人の力が強いのはわかっているはずだ。だから、罠の先で総勢何人もの人間が待ち構えているはずだよ。近衛部隊もやられた相手だからね。だから、ここで、少しでも体力を削るために、こんな厄介な術式を仕込んでいるんだよ。まあ、ただただ面倒なだけだけどね。』
「でも、それなら、それで計画通りってことでちょうどいいな。まあ、まずはあの甲冑どもをどうにはしないといけないけど。」
そう、計画では、罠の先にできるだけ人が集まってくれるほうが都合がいい。
《術式を焼けばいい。》
瞬間、かおるの中で別の声がした。ベルフェゴールだ。
「術式を焼く?」
かおるはそれを口に出す。
『術式を焼く? ・・・・それだ!』
通信をしていたので、その声が良太郎に届いていた。良太郎は名案だといわんばかりに声を張り上げる。
『確か、君の炎は相手を焼き尽くすことができるって、文献なんかではかかれているんだけど、できるのかな?』
「え? まあ、多分、キメラなんかはそれで倒したからな。対象が分かってればできると思うけど。」
『もう、いちいちクリア条件なんか探してたら面倒だから、それをしちゃおう。術式を焼くんだ、そうすれば、術式の効果はなくなる。多分、そうだね。非常階段から外を見てみてもらっていい?』
かおるは、指示に従って、外を見る。
『すると、建物を囲んで、何か線みたいなものがないかな?』
かおるは外をよくみる。すると、うっすらとではあるが、赤い線が一般病棟の外に張られているのがわかる。
「なんか、赤いのがあるぞ。」
『それだ。それを焼けば、効果が切れると思うよ。』
「あれを焼き尽くせばいんだな。」
かおるは、右手に小さな炎を宿す。それを慎重に、その赤い線のところまで飛ばす。大きな塊ではそこまで操作するには、まだなれていないが、小さなものであれば、結構自由に操れた。これはさきほどに戦いからこっそりと学んでいたことだった。
小さな黒炎が赤い線にあたる。そこで、すべてを焼き尽くすイメージをかおるがすると、見えている範囲の赤い線は一瞬でなくなった。
かおるは、本当に術式の効果がなくなったのか、甲冑を見に行く。
「おお!」
甲冑は、おそらく、効果がなくなったので、ばらばらになって地面に散らばっていた。
かおるは念にために、それを少し足で小突いてみる。
「ふー。」
何も反応はない。かおるは胸をなでおろす。
「よし。成功した。これから、第二手術式に向かうよ。」
『了解。』
「なんでも、作者は新しい小説も書き始めたらしいよ。」
「まじかよ。こっちの小説もまともに書けてるとはいえないのに、そんなことよくできるな。」
「なんでも、それは一週間に一度ほどの更新にするらしいよ。」
「馬鹿だな。それで、こっちがおろそかになったら、絶対に許さん!」
良太郎とかおるが、話しをしている。
「魔術世界の劣等種、もよろしくお願いします。こちらは、某小説をおもいっきし参考にしていますので、暖かい目で見てもらえればと思います。」
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