初めての後退な件について(仮)
あきらかに、目の前にいる甲冑の動きは、人が入っている動きではない。ふらふらとゆれていて、甲冑のきしむ音が薄暗い四階の廊下に薄気味悪く響いていた。日本版のほうは、片手に刀を、西洋風のほうは、右手に剣を、左手に盾を持っている。
「えらく、不気味なやつだな。」
『そこに誰かいるのかい?』
「誰かっていうか。敵なのは間違いないけど、人じゃないな。たぶん、何か魔力か何かで遠隔操作的なものをされている甲冑みたいなやつがいる。」
『そうか。それは多分、かおるの予想通りのものだね。宮内家の中の分家に、そういう能力に長けている家があるのを聞いたことがあったよ。』
「ってことは、これはれっきとした宮内家の警備ってことか?」
二つの甲冑はゆっくりとこちらに向かってくるだけで、まだ、攻撃の意思をかおるには向けていない。
『五分五分ってところじゃないかな。四階の第二手術室を警備するのは、当然ではあるからね。なにせ、特別棟に入るための、転移魔方陣があるわけだから。』
「そうはいっても、実際には、特別棟の玄関前に直接飛ぶっていう罠のやつだろう? わざわざそれを守ったりするなんて、無駄な労力じゃないか?」
そのとき、ふらふらと歩いていた日本式が、急にかおるの方向に向かって加速してきた。
「!?」
かおるは、自身の周りに、キメラ戦で使ったバリアを張る。
(これがあれば大丈夫なはずだ。)
日本式は刀を振りかぶり、かおるに振り下ろしていく。
ジリジリジリジリ
刀とバリアがぶつかり、そこに火花が散る。かおるは、それで、黒炎が甲冑の周りに広がり、戦闘終了と思っていたが、そうはいかなかった。そこで、動きが止まるだけで、黒炎が広がることはない。
なんでだ? かおるは少し不安になる。
『大丈夫かい?』
「ああ、特にダメージはない。でも、今までとは少し違うな。」
かおるは、右腕に鋭利な形に変形した炎を纏い。それを左から右に動かし、日本式を真っ二つにする動きをする。その炎は甲冑を真っ二つにして、かおるの目の前で日本式が崩れ落ちる。
(これは通るのか。)
『そこに警備がいる理由は、より罠であることを悟らせないためだと思うよ。まあ、俺がいる時点で無駄なあがきだけどね。』
「でも、俺はそれにまんまとはまりに行くわけだろう?」
かおるが、日本式の残骸の後ろにいる西洋風に向かっていこうとすると、目の前に再び日本式が現れた。そいつは、またかおるに刀を振り落としてくる。
増えた? かおるがそう思い。何体か新しいのが出てきたのかと、あたりを見渡すがいるのは、目の前の2体だけである。よく見ると、日本式には先ほどかおるが切り裂いた後があった。
『まあ、相手の裏をかかないとね。』
「そうだな。それよりも質問いいかな? この甲冑って、もしかして再生機能あったりする?」
かおるは再び、日本式を真っ二つにして、その勢いで、後ろの西洋風も今度は左手から出した炎の塊をぶつけた。
しかし、目の前の日本式は再び元の姿に戻る。それはかおるも予想はしていたので、特に驚きは無かったが、西洋風の姿には驚く。西洋風は、燃えるわけでも、ばらばらになるわけでもなく無傷であった。
『再生って、復元されるってことかい?』
「ああ、しかも、なぜか力が通じない。」
これはもしかしたら、かなりの強敵と合間見えてしまったのかな? かおるの額に少し、汗がにじむ。
『まさか、そんなものまで持ち出してきているなんて・・・。』
かおるは、また日本式の刀をバリアで防ぐ。今度は西洋風も参加してきて、左からも攻撃を受ける。
「知っているのか?」
そういいながら、かおるは、右手の鋭利な炎で2体を回転して同時に真っ二つにする。それから、2体から後ろに退き、少し距離をとった。戦闘で初めての後退である。
『とりあえず。非常階段まで戻ってもらってもいいかな? 多分追ってはこないと思うから。』
「わかった。」
かおるは非情階段まで、走って戻る。非情階段まで戻り、甲冑の方向を振り返ると、2体はまた元に戻っていた。しかし、良太郎の言うとおり、追っては来ない。初めに見たときと同様にゆっくりと不気味に歩いているだけだった。
「戻ったぞ。あれはどうなってるんだ?」
『そこは、認識魔法領域っていうものだね。』
「認識魔性領域?」
『厄介な術式だよ。』
良太郎が苦笑いしているのが、かおるにもわかる言い方であった。
「何か、ブックマークが増えて、作者は飛び上がらんばかりの喜びようらしいよ。」
良太郎が言う。
「でも、調子に乗ったら、すぐに減るだろうな。」
かおるが言う。
「がんばります。これからもよろしくお願いします。」




