家には帰りたくない件について(仮)
「倒したのですか?」
時刻は午前1時前
宮内は、目の前に凛として立つかおるに対していう。宮内は先ほどとはまったく雰囲気が違うなと思った。
「いや、あれくらいじゃ多分倒れないと思う。」
かおるは、特に表情を変えないでいう。本当にかおるなのか心配になるほど、違っていた。
「なら、また何か狙っているのでしょうか?」
宮内はまだ足元がおぼつかない。そんな彼女を見て、かおるは肩を支えた。
「いや、もう上野の反応は感じれないから、逃げたんだと思う。」
それを聞いて、宮内が急いでいう。
「それなら、早く追ってください! わたしのことは放っておいていいですから!」
「大丈夫だ。彼はもう力を持っていないからね。」
「力をもっていない? それはどういう意味ですか?」
かおるは一旦、宮内をその場に座らせた。そして、その肩に自分の羽織っていた上着を着せる。
「とりあえず、そのままじゃいけないと思うからさ。一旦、俺のだけど着ておいてよ。身長の関係から、下のほうも少しは隠れると思うから・・・。」
かおるは、顔を赤くして言う。
宮内がなぜそうなっているのか理解ができていなかったが、自分の状態をみて理解した。彼女の服は上野との戦闘で、かなり際どいところまで、破けてしまっていて、今にもその豊満な裸体が姿を現さんとしていた。
宮内は急いで、かおるが、肩にかけた服を着て、前のチャックを閉める。
「あの・・・、すみません。ありがとうございます・・・・。」
「あ、いや、うん。」
そのどぎまぎとしたかおるを見て、宮内は少し安心した。なんとなく彼の底の部分が変わっていない気がしたからだ。
「あの? それで、その、上野がもう力を持っていないとはどういう意味でしょうか?」
宮内は気を取り直して言う。
「あいつの力は、俺の力のまがい物なんだよ。だから、俺の力があいつの力の上位互換にあたる。こういう場合ほかの能力の場合どうなるのかはわからないけど、俺の力だと、より強いほうにその力すべての支配権が与えられる。」
「支配権?」
「うん。だから、上野が持っていた力は全部俺が支配した。つまり、あいつの意思ではもう力が使えない。というかさっき、俺が全部あいつから根こそぎ奪った。」
「そんなことが!?」
「ああ、だから、あいつは今は、なんの力も持たないやつになったってことかな。だから、無理して追わなくてもいいと思う。あいつの裏には誰かいるみたいだし。」
(宮内家の人間!?)
「だから、今は宮内さんの治療が先だね。結構無理な力を使ってしまったみたいだから、上野がうまいこととめてなかったら、本当にやばかったよね?」
「そうですね。あそこで不発に終わってなかったら、わたしは今ここにいなかったと思います。おそらく、体が持たないで崩れ落ちていたでしょう。」
「まあ、あの状況なら、その判断をしたのも仕方がないと思うから、それに関しては別に責めるつもりはないよ。そうしないといけない立場だったわけだし。」
「ありがとうございます。」
「でも、すべてを全部自分で背負い込むのは、だめなところだな。もっと周りを頼ってもいいと思うけどな。」
「はい。すみません。」
宮内は伏し目がちになる。それをみて、かおるは、一つ息をはく。
「はい! じゃあ、これで終わり。とりあえずさっきも言ったけど、宮内さんの治療をしないとね。えっと、まずは宮内家にでも行けばいいかな?」
「家ですか・・・・。」
宮内は迷っている。
「俺の隠れ家にでもきなよ。そこなら上野にも知らせてないところだから、彼の仲間が来る可能性もないと思うよ。」
その声は二人から少し離れた校舎側からした。そちらを二人とも振り向く。クレーター状になっている場所のほぼ中心にいる宮内とかおるからは見上げる位置にその声の主はいた。
「あなたは・・・!」
「宮内さんの知り合い?」
「こんな自己紹介もなんだけどさ。俺は、上野につかまっていろいろと、情報を渡しちまった情報屋だよ。」
その人物は頭をぽりぽりとして、所在なさげにたっている。




