やさしく吹く風な件について(仮)
「でも、他の土地の連中にはどう説明をするんだよ?」
上野は、かおるに聞く。
確かに、彼の言う通りだ。
かおる達は、彼らに神殺しを成し遂げた土地に、この土地の所有権を譲渡するという、うたい文句で誘ったわけだからだ。
「それは、考えてある」
かおるは、そういって微笑んだ。
この戦争での負傷者は少数だった。
死者は誰もいなく、一番の負傷を負ったのが、首謀者の稲垣かおるであるというのが結果である。
それは、江良昌樹たちいわく、唯一神からの、せめてもの慈悲だということだった。
「それじゃあ、最後にやることをしにいかないとね」
かおるが、あらかたの後片付けが終わったとき、それを協力していた八つの枢要罪に言った。
「やっぱり、最後に自分に降りかかってくる最大の難関についてもの気が付いていたんだね」
「まあ、なんとなく最後にはわかることだよ」
2人の周りには、後、江良昌樹しかない。
他の面子はそれぞれ、やることをするために、各地に飛び散っていた。
「本当にいいのかい?」
「ああ、俺しかできないなら仕方がないからだろ?」
かおるは微笑む。
「じゃあ、行こうか」
「まあ、最悪わしがなんとかしたるわ」
「江良さんが見方なんて、これほど心強いことはないですよ」
****
稲垣かおるが姿を消してから、一ヶ月ほどが経った。
彼が急に姿を消したので、彼の仲間達は彼を探した。
しかし、彼の痕跡をとうとう見つけることはできなかった。
一週間がたったとき、八つの枢要罪が姿を見せた。
「いったいどういうことなんですか?」
宮内家に来た八つの枢要罪は、正子たちにこう説明した。
「今回のことはね。実はというと、もっと他の目的もあったりしちゃたんだよねえ」
八つの枢要罪は、まだ、幼いハルカの姿をしていた。
なんでも、その姿が気に入ったらしい。
「もっと別の目的?」
「うん」
宮内家が所有する土地以外にも、霊脈の乱れにより、数奇な運命となってしまっている土地が山ほどある。
それは日本だけでなく、世界でだ。
それを正すために、人材。
それを育てる。また探すためのものでもあった。
そのために、大罪の転生者や、その力を持つものを、一つの土地に集約させたというわけだ。
混乱の中で、誰が最も強靭で、純粋に生きれるかということを・・・。
「それで、かおるさんが選ばれたのですか?」
「そういうことだね」
「待てよ」
トシコが割って入る。
「どうして、かおるが行かないといけないんだ? お前や、それこそ江良昌樹なんて化け物がいるなら、かおるが、いく必要なんかねんだろ?」
「確かに、私も江良も強いね。だけど、霊脈を本当の姿にすることができるのは、折れない心を持つ人の心を持つものでないといけない。私達は霊脈を移動させることや、強めることはできても、それだと、運命を変えることはできないんだよ」
その言葉に、その場にいた正子、トシコ、孝子、努は押し黙る。
ここで、いくら反論をしたところで意味がない。
相手は、この世界をすべる神、あれほど苦戦をした土地神レベルとは違う。
それに一番重要なことは、かおるが自分自身の意志でそれを行うことを決めたということだ。
そう、誰もが思っていた。
「でも、それなら、ハルカさんがかわいそうですわ・・・」
孝子がつぶやいた。
井上ハルカは、胸から霊脈を江良昌樹によって抜かれた。
あれは、江良昌樹が、かおるに通信をして、伝えていたことであり、霊脈を胸を抜かなければ、彼女の命が霊脈により吸い取られる恐れがあったからだ。
井上ハルカはそれから3日で目が覚めた。
そして、今彼女は一応のために、一日入院をして全身を検査してから自宅に戻った。
天邪鬼は完全に、あの後消滅した。
そして、その魂は八つの枢要罪たちが本当の意味で冥土に送った。
「まあ、彼女には本当に申し訳ないことをしたと思っているよ。だから、こうして伝えにきたんだ。だから、彼女にこのことは伝えといてほしい。直接言うのは気が引けてね」
そういうと、八つの枢要罪は悲しそうな顔をした。
彼女の心にも井上ハルカの思いがある。
だから、彼女に気持ちを一番にわかるのは、八つの枢要罪かもしれない。
「それじゃあ、私はもう行くよ。最後に、かおるからの伝言、『すぐに世界なんて救ってくるからみんな待っていてくれ、それとハルカ、帰ってきたらまず一番に手料理が食べたいな』だってさ」
***
「そんなことが」
「ああ、残念ながら、君へのメッセージはなかったよ」
「いやいや、みんなの中に俺も入ってるでしょ!」
上野は、川に大きく掛かる鉄橋の上で、風を感じていた。
横には、八つの枢要罪が来たことを報告しにきた努がいる。
「それにしても、急な話だね」
「ええ、まったく、おっかなびっくりですよ。いきなり世界だなんて」
上野は今、宮内家専属の戦闘部隊としての打診を受けていた。
彼の力は、強力だ。
マモンも今回の戦争での、その功績から、晴れて大罪越えを果たした。
なので、これからは自由に力を行使することができる。
「それにしても、努さんは、当主降りるらしいですね?」
「ん? ああ、まあね。もう正子に譲ってもいいだろうと思ってね。それぞれの家の当主も今若くなっているから、ちょうどいい機会だよ」
「それにしても、少し心もとなくないですか?」
「十年くらいは、ちゃんと補佐はするつもりだよ。表向きはそうするって話さ。正子にもいろいろな失敗なんかの経験をつんでいってほしい」
「それじゃ、あれも、彼女が?」
「それは、まだ考えどころかな、流石に川口家当主との戦いは重いからね」
あれとは、戦争を終結させるために、かおるが提案したことだ。
それは、土地を狙ったすべての土地を交えての、この地域の代表の土地を決めるというもの。
決め方は、各土地から選ばれた人間で、それぞれ、討論会、演説会、などを通して、全土地の人間の投票で決める。
そして、その中でかなりの比重を占めるのが、戦闘によるトーナメントだ。
やはり力がなければ、五つもの土地を治めることなど不可能。
各土地が、3人の人間を出し合い、まずはグループでの総当りから、行い、各グループの上位2人がトーナメント方式として決勝リーグに進む。
そこでの優勝者が、すべての土地で一番強いやつということになるわけだ。
「まあ、川口家は十中八九、彼が出てくるでしょうからね」
「ああ、私も、もちろん出るつもりだが、3人の中に当主が入っていないのはまずいからね。それが終わってから、当主を譲るつもりだけど、まあ、タイミングは計りものだね」
「大変っすねえ」
「もう、一人は君に決まりだからね」
「ええ、」
「君なら、彼ともいい勝負ができるだろうさ」
「勝つとはいってくれないんですね」
上野は意地悪い顔をする。
「はは」
努は笑った。
「いくら大罪悪魔を宿しているといっても、川口の当主はまだまだ成長段階だ。我々はもう成長に見込みが薄いからね。断言はできないよ」
「確かに、俺たちは、もう全部マックスゲージ的な感じっすからねえ」
そういい、笑う二人に風が優しく吹いた。
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
明日、最終回です!!




