終焉な件について(仮)
天邪鬼が宙を飛び、横にある民家に追突した。
それをみて、ほとんどの人物が言葉と、心で「え?」という声を漏らす。
「ふうーっと、まあこれでしまいやな」
江良昌樹は微笑む。
そして、その笑みをかおるに向けた。
「そうですね」
かおるもそれに笑みを返した。
「は?」
上野は急いで、後ろを振り返る。
先ほど、胸を突かれた井上ハルカ、気が付けば後ろからの悲鳴は消えていた。
そこには、胸からの出血などなく、すやすやと眠る一人の女の子がいる。
確かに、胸を突かれたはずだ。
周りにいる正子たちも、戸惑いを隠せない様子であった。
「い、意味がわからねえ・・・」
上野はただただ、混乱していた。
彼だけでなく、江良昌樹とかおる以外の人間は、混乱をぬぐえないだろう。
江良昌樹は、ゆっくりと、民家に向かっていく。
「勘違いしてたみたいやけどな」
民家の破片をすべて、なぎ払っていく。
「わしは、別にこいつの見方ってわけじゃないねんで?」
江良昌樹は民家の中から、ボロ雑巾となった天邪鬼を持ち上げる。
「わしもな。こいつを最終的に倒すために、本当のわしが仕えている唯一神から、こっちに送られたわけや」
江良昌樹は、天邪鬼をかおる達の前に運んできて、無造作に下ろした。
すると、そこに八つの枢要罪が、後ろから現れた。
「そういうことだね」
「マジかよ・・・」
上野は、今までのことを思い出す。
「ってことは、今までの江良昌樹の行いも、全部仕組まれたことだってのか?」
「それは少し違いかもね」
八つの枢要罪が説明する。
「彼は、私と同じように送られたけど、基本理念は違う。私が最終的に、人のフォローをする立場だったとしても、彼は天邪鬼を試すために、送られたんだよ」
「それはどういうことだ?」
「彼の正体は知っているでしょ?」
「・・・・・サタンだろ?」
上野が答える。
「そう、彼は大罪悪魔、その中で憤怒の罪を司る大悪魔サタン、すべての大罪悪魔の中で頂点に位置する悪魔、その力はすべての、大罪悪魔を足し合わせても足りない・・・」
上野たちは、良太郎の調査からそのことを知っていた。
もちろんかおるもだということだ。
だが、その内容はこうである。
神殺しとして、唯一神につかまったサタンは、その後、なんらかのことがあり、その魂が人の魂と融合した。
それにより生まれたのが、江良昌樹。
天邪鬼は、彼の本当の魂であるサタンの姿までは知ることができなかった。
だが、強力な力を持つ彼を自分の手中に上手く入れた。
それが、上野たちが知っていたことだ。
それが、まったく違うということが今ここで明かされた。
「なら、強大な力を持った天邪鬼がいったい何をするのかを、見るために、江良昌樹を送り込んだのか?」
「そういうことだね。そして、こいつは力を誤った捕らえ方をした。だから、直々に粛清することにしたんだよ」
「おいおいおい・・・・・・」
上野は、かおるを見た。
彼は先ほどから、何も言わず黙っている。
「それは・・・」
努が口を開いた。
「唯一神が、入らぬことをしなければ、こんなことにはならなかったってことかい?」
それは、今の説明を聞くと誰もが思うことだろう。
サタンと八つの枢要罪を天邪鬼に送り込むことさえしなければ、天邪鬼は要らぬ知識をつけずに、要らぬ夢などもたなかったかもしれない。
つまり、唯一神が、要らぬことをしなければ、誰も不幸にならなかったかもしれないということだ。
努たちは、相手からの返答を待つ。
「それは・・・」
「それは違うと思いますよ」
八つの枢要罪の言葉をさえぎったのは、かおるだった。
その反応と、彼の放った言葉の内容に、上野たちだけでなく、江良昌樹と八つの枢要罪も目を見開いた。
「俺が力を得たからかもしれないけど、良太郎の記憶の中にあった、隠された記憶が出現したんだ。そこには、彼らの思惑に気が付いていた良太郎がいる」
「何?! ってことはあいつは、本当の最後までしってたってことなのか?」
上野が言う。
「ああ、その記憶と、俺が肌で感じることを総合して考えると、おそらく、この土地の元の霊脈がおかしくなっていた。そのためによる自然力とかの磁場の乱れが、将来大惨事を招く恐れがあった。だから、神はその磁場の乱れを正すために、ここまで大掛かりなことをしたんだろ?」
かおるは冷静に問いかける。
「うん・・・、正直そこまでわかるなんてびっくりだよ。君の言うとおり、唯一神はここの霊脈を正したかった。だけど、この天邪鬼はそれを素直に聞く相手ではなかったし、それを逆手にとってくる恐れがあった。だから、いろいろな策をめぐらし、できるだけ穏便に事を運んだ結果がこれなわけだね」
「おいおい! かおるはそれを信じるのか? もしかしたら、お前がそう考えることも、こいつらの思い通りだってこともあるんだぜ?」
「確かにな」
かおるは、上野の言葉をあっさりと肯定した。
「でも、俺はこれから先に、ハルカに危険が及ばなければそれでいいんだよ。無責任な発言になるかもしれないけどな」
「お前・・・」
上野の肩に、手が置かれる。
その手は、努のものだった。
彼は上野に微笑む。
もともと、稲垣かおるのわがままから始まった戦争は、ここで本当の意味で終焉となった。
小説の中身で気になることがありましたら、感想でもなんでもお尋ねください。書けていない裏設定など、そこで説明したいと思います。
お読みいただきありがとうございました。




