↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き観測者  作者: 春乃陽射
目覚めより

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

鐘楼


夕暮れの道を進むと、村の鐘楼が見えた。

高い石造りの塔だ。

屋根は長い年月を経て黒ずみ、壁のあちこちに蔦が這っている。

塔の頂には小さな鐘が吊るされていた。



その下に、ひとりの老人が立っていた。

木箱を足元に置き、梯子に手をかけている。

背は曲がり、白い髪が風に揺れていた。


老人は梯子を上り、鐘のそばまで行くと、吊り下げられた縄を確かめた。

何度か引いてみて、それからゆっくりと梯子を下りた。


白き観測者が近づくと、老人は顔を上げた。


「おや」

老人は白き観測者を見つめた。

驚いた様子はなかった。ただ、少し目を細めた。


「教会からいらしたのですかな」

返事はなかった。


「そうですか」

老人はそれ以上尋ねず、木箱を持ち上げた。


「もうすぐ日が暮れます。今夜はどちらへ?」

白き観測者は動かなかった。


老人は小さく笑った。

「行く先は決まっていないようですな」

老人は鐘楼の脇にある小屋を指さした。


「よろしければ、あそこで休まれるといい。昔、鐘の修理に来た職人が使っていた小屋です。今は物置同然ですが、雨風はしのげます」

そう言って、老人は歩き始めた。

白き観測者は、その後ろを歩いた。


小屋の中には、古い机と椅子があった。壁際には使い古された道具が並び、窓辺には小さな瓶が置かれている。

老人は扉を開けたまま、室内を見回した。


「掃除をしておきましょう。長いこと使っておりませんでしたから」

老人は箒を取り出し、床を掃き始めた。

白き観測者は、小屋の入り口に立っていた。


箒が床を擦る音がする。

窓の外では、風が草を揺らしていた。



やがて老人は掃除を終えると、箒を壁に立てかけた。


「では、私はこれで」

老人は扉のところで立ち止まった。


「明日の朝、鐘が鳴ります。少し早いですが、よろしければ聞いていってください」

老人が去ったあと、小屋は静かになった。


窓から差し込む夕日が、床に長い四角形をつくっていた。


光はゆっくりと傾き、やがて壁から消えた。



夜が訪れた。

遠くで犬が鳴いた。

村の家々に灯りがともり、窓の向こうから人々の声が聞こえてきた。

食器の触れ合う音。

戸を閉める音。

子どもの笑い声。



それらは少しずつ途切れ、やがて村は静かになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。