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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第1章

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第6話: どん底からの再起! 奪われた煌めきを取り戻せ!

「あ……また笑われた……」


フードを深めにかぶり直し、伏せ目がちに街を歩く咲が、消え入るような声で呟いた。

場所は原宿の竹下通りから一本入った裏路地。いつもならお気に入りのクレープを買って、流行りの服を見てはしゃいでいるはずの場所だ。

なのに、今日の私たちはまるで逃亡者だった。


すれ違った女子高生二人が、スマホの画面と咲の顔を見比べて、クスクスと肩を揺らす。

「やばい、本物じゃん」「ドローンのおかゆの子でしょ? 顔芸マジ神なんだけど」

ヒソヒソ声のつもりらしいけれど、全部聞こえていた。耳の奥がカッと熱くなる。


「咲、前を見て歩きなさい。不審者に見えます」

葵が低く注意するけれど、その葵だって普段の知的でスマートな雰囲気はどこへやら、深帽子のつばを極限まで下げ、マスクで顔の下半分のほとんどを覆っていた。

「葵ちゃんだって顔隠してるじゃん……! うぅ、もう嫌だよ〜! ネットを開けば『#白目イエロー』『#黒歴史ブルー』がトレンドに居座り続けてるし、動画の再生数もうすぐ一千万回突破だよ!? なんでそんな時に限ってバズるのさ〜っ!」


「……自己管理の甘さが招いた因果応報です。言い訳の余地もありません」

葵の口調は冷淡だったけれど、マスクの中で歯を噛みしめているのが分かった。知性派で通してきた彼女にとって、あの変顔でうなされる動画が全国に拡散されたダメージは、私たちが思う以上に深いはずだ。


桃は私のジャージの裾をぎゅっと掴んだまま、半泣きでトボトボ歩いている。

「私……コンビニのレジで『キムチいりませんぇん』って言われちゃいました……。店員さん、親切のつもりで笑いながら言ってくれたんですけど……恥ずかしくてお釣り落としちゃいました……」

「桃……どんまい……」

翠がぽんぽんと桃の頭を叩く。翠自身も、動画で『股関節が……』と呟いて変な格好でフリーズしていたせいで、地元のバレーボール仲間から「大丈夫か?」と心配のLineが何百件も届いたらしく、完全に死んだ目をしていた。


私――煌坂茜は、自分のポケットの中で拳を強く握りしめた。


生放送で奇跡みたいなアクションライブを決めて、全国の視聴者を熱狂させたはずだった。

「これで私たちは本物のヒーローになれたんだ」って、そう思っていた。

なのに、たった一つの誤投稿動画。

熱を出してうなされていたという情けない理由で、私たちが汗と泥にまみれて築き上げてきた『煌戦隊★キラリンジャー』と『煌坂★パステリズム』の輝きは、一瞬で「お笑いネタ」として消費されてしまったのだ。


「……悔しいな」


ポツリと漏れ出た私の声に、四人が足を止めた。

裏路地の隙間から見える空は、どんよりとしたグレーの雲に覆われている。


「すっごく悔しい。自分たちの不注意だし、笑われるのも自業ズマだって分かってる。でも……このまま『面白動画の女の子たち』で終わりたくないよ。私たちは……戦士で、アイドルなんだから」


誰も何も言わなかった。

だけど、繋いだ手や、重なる視線の奥に、消えかかった火種が残っているのが分かった。

私たちはまだ、死んでいない。


---


事務所の最上階にある幹部会議室。

そこに漂う空気は、重油のように重く冷たかった。


大型モニターには、私たちの惨劇動画と、それに伴うSNSの感情分析グラフが表示されている。

「親近感」「爆笑」「ネタ」「親しみやすい」……並んでいる言葉は一見ポジティブだが、その裏にあるのは『威厳の喪失』と『ブランディングの完全崩壊』だった。


モニターの前に立つ月城玲奈さんは、いつもの白いパンツスーツを完璧に着こなし、冷徹な銀色の瞳で私たちを見下ろしていた。


「分析結果は出ました」

玲奈さんの声が、静まり返った部屋に響く。


「現在、あなたたちに対する市場の認識は『ドジで親しみやすいお笑いグループ』です。アイドルとしての神秘性も、スーパー戦隊としての圧倒的な強さや品格も、完全に失われました。今あなたたちがどれほど格好良いアクションを決めても、観客の頭には『でもあの白目の子でしょ』という雑念がよぎる。……致命的です」


「……はい」

葵が消え入りそうな声で返事をする。


「危機管理を甘く見ていた代償はあまりにも大きい。……よって、本日より『特別再教育プログラム』を開始します」


玲奈さんはバインダーを横に投げ置いた。

パン、と乾いた音が部屋に響く。


「あなたたちから奪われた『ヒロインとしての品格と強さ』を、骨の髄まで叩き直し直します。覚悟しなさい」


そこからの特訓は、これまでのフィジカルトレーニングとはまるで質の違う「地獄」だった。


指導に立ったのは、美咲あきさんと火ノ宮紅葉さん、そして愛咲美玲さん。


「立ち姿が崩れています!」

あきさんが竹尺を手に、私たちの背筋を容赦なく正していく。

「顎を引きなさい、咲さん! 肩の力を抜いて、胸の重心を3ミリ上へ! ヒロインの立ち姿とは、一朝一夕で作れるものではありません。全方位から見られているという意識を、毛穴の先まで浸透させなさい!」


「ひぃぃっ! 姿勢キープするだけで背筋がちぎれるぅぅ!」

咲が姿勢矯正用の器具を背中に装着され、滝のような汗を流しながらプルプルと震えている。


「目力だ、茜!」

紅葉さんが私の目の前に立ち、鋭い眼光で睨みつけてくる。

「視線が泳いでいる! 自分の瞳に迷いがある者に、誰が命を預けるか! ヒーローの瞳とは、どんな暗闇であっても光を見失わない強さを持たねばならない。もう一度、名乗りを上げてみろ!」


「『輝け、夢の光……煌戦隊、キラリンジャー……!』」

「声が軽い! 肚(はら)から出せ! 己の存在すべてをその言葉に込めろ!」


「はいっ!!」


さらに、美玲さんによる表情と立ち振る舞いの徹底指導。

「桃ちゃん、笑顔が逃げの笑顔になってるよ」

美玲さんが優しく、けれど絶対に妥協しない目で桃を見つめる。

「『可愛く見られたい』『失敗を隠したい』っていう笑顔は、見る人に伝わっちゃうの。私たちが届けるべきなのは、どんな困難にも負けない『希望の笑顔』だよ」


「はい……美玲さん……っ」


一時間、二時間、三時間。

体中の筋肉が叫び声を上げ、精神が削られていく。

だけど……いくら立ち姿を正しても、いくら声を張り上げても、何かが決定的に欠けていた。


型は綺麗になっているはずなのに。

あきさんの出す指示通りに身体を動かしているはずなのに。

私たちのパフォーマンスからは、かつてあったような熱気や輝きが、すっぽりと抜け落ちてしまっていたのだ。


---


「……チェンジャー同調率、24%。変身不可です」


あきさんの冷静なアナウンスが、トレーニングルームに空虚に響いた。


私の腕に装着された『キラリンチェンジャー』。

いつもなら、変身の意思とともに眩しい紅い光を放ち、私をキラリンレッドへと変貌させるはずのアイテム。

だが今のチェンジャーは、まるで電池切れのおもちゃみたいに、淡くチカチカと点滅するだけで、変身プロセスを一向に開始しようとしなかった。


「なぜ……? 動きも、名乗りも、紅葉さんに教わった通り完璧にやったのに……!」

茜はチェンジャーを握りしめ、悔しさに唇を噛んだ。


「理由は明確です」

あきさんがタブレットのデータを提示する。

「あなたたちの『自己認識』と『行動』が解離しています。『かっこよく見せなければならない』『品格を取り戻さなければならない』という恐怖と義務感だけで動いているため、心と体が噛み合っていません。それどころか……」


あきさんは一度言葉を切り、私たちを静かに見つめた。


「あなたたち自身が、自分たちの『煌めき』を信じられなくなっている。違いますか?」


胸が、ズキリと痛んだ。


図星だった。

どれだけ指導を受けて型を整えても、頭の片隅で声がするのだ。

『どうせまた笑われる』

『私たちは完璧なAIアイドルにも、本物の戦隊ヒーローにもなれなかった』

『あの動画が、私たちの本性なんだ』


そんな迷いや恐怖が、心に太い影を落としている。

影を抱えたままじゃ、光なんて放てるわけがなかった。


「今日のトレーニングはここまでとします。各自、頭を冷やしなさい」


あきさんと紅葉さん、美玲さんが部屋を出て行く。

ドアが閉まる音とともに、静寂が部屋を支配した。


夕方。茜は一人、誰もいなくなったレッスン場の大きな鏡の前に立っていた。

夕闇が差し込む部屋。鏡に映る自分の姿。

ジャージは汗で汚れ、髪は乱れ、瞳の光は泥のように濁っている。


(情けないな……)


笑おうとしてみた。

でも、口元が引きつって、変なくしゃくしゃの顔にしかならなかった。

「かっこ悪いよ、茜……」


その時、背後のドアが開き、パタパタと足音が近づいてきた。


「茜……やっぱりここにいた」


咲だった。その後ろには、葵、桃、翠の姿もある。

みんな、疲労困憊で今にも倒れそうなのに、誰も帰っていなかったのだ。


「みんな……」

「茜、一人で落ち込まないでよ」咲が床にへたり込み、体育座りをした。「私だってさ……すっごく悔しいよ。自分が間違えて生配信ボタン押さなきゃ、みんなにこんな思いさせずに済んだのに……。ごめんね、全部私のせいだ……」


「咲のせいだけじゃないわ」葵が眼鏡を外して、疲れた目を指で押さえた。「リスク管理を怠った私の責任でもあります。……それに、あの動画で醜態を晒したのは、私たち全員です」


「私……」桃が膝に顔をうずめた。「自分が情けなくて……。おうち帰ると、テレビのニュース見るのが怖くて……。私たち、もうダメなのかな……?」


部屋の中に、重い沈黙が落ちる。

窓の外では、街灯がポツポツと灯り始めていた。


その沈黙を破ったのは、翠だった。


「……ダメなわけねぇだろ」


翠が静かに立ち上がり、鏡の前に立つ茜の隣に並んだ。


「笑われたなら、笑い返せばいい。転んだなら、泥を舐めてでも立ち上がればいい。私たちは最初から完璧なヒーローじゃなかったはずだろ」


翠の言葉が、私の胸の奥に眠っていた火種を叩いた。


「そうだよ……!」

茜は振り返り、床に座り込んでいる咲と桃、葵の目をまっすぐに見つめた。


「私たちは、完璧なAIアイドルとして守られていた頃、何もできなかった。でも……泥を啜って山を走り回って、アウェーの客席の前で必死に手を伸ばして……そうやって少しずつ、自分たちの力で強くなってきたんじゃないの!?」


茜は自分の胸を強く叩いた。


「笑われたっていいじゃん! 白目むいてたっていいじゃん! それが今の私たちなんだから! でも……笑われっぱなしで『ダメでした』って諦めるのだけは、絶対嫌だ!!」


「茜……」

咲が顔を上げる。その瞳に、じわじわと涙と熱が溜まっていく。


「私たちには、まだ歌がある! アクションがある! 一緒に泥を啜った仲間がいる! だったら……もう一度ゼロから見せてやろうよ! 私たちの本当の煌めきを!!」


「……相変わらず、無茶苦茶な論理ですね」

葵がクスッと小さく笑った。メガネをかけ直す手には、もう迷いはない。

「ですが……データ上も、ここで諦めるより足掻く方が、生存確率は高くなります」


「うん……!」桃が涙を拭って立ち上がった。「私、もう逃げない……! 泥だらけでも、泥の中の桃になっても、みんなと歌いたい!」


「咲、立て!」翠が手を差し伸べる。

「うんっ!」咲がその手を強く握り返し、跳ねるように立ち上がった。「やってやる! やってやろうじゃん! 私たちの泥臭い根性、見せつけてやろうよ!」


五人の手が、中央でひとつに重なった。


洗練された美しさなんていらない。完璧なヒロインの仮面なんていらない。

泥の中から何度でも立ち上がる熱量……それこそが、私たちの『煌めき』なのだから!


---


翌朝。事務所のロビー。


気合十分で集合した私たちを待っていたのは、月城玲奈さんからの「決定」だった。


「準備はできましたね」

玲奈さんは、私たちの瞳の奥にある火を感じ取ったように、わずかに満足そうに目を細めた。


「あなたたちに、復帰の第一歩となるステージを用意しました」


「本当ですか!?」咲が身を乗り出す。「どこですか!? ドーム!? ライブハウス!?」


「いいえ」

玲奈さんが提示したホログラムの地図。そこに示された場所を見て、私たちは全員、目を丸くした。


「……東京都・〇〇区立 第一公民館……?」

葵が思わず読み上げた。


「そうです。近所の古い公民館で行われる、地域の『秋の感謝祭イベント』のステージです」


「こ、公民館……!?」

咲の声が引きつる。


「現在、あなたたちには大きなライブハウスを押さえる予算も、スポンサーの信頼もありません。チケットを売っても、見に来るのは冷やかしの野次馬だけでしょう。……だからこそ、ゼロからのスタートです」


玲奈さんの声は冷徹だったが、その裏には確固たる意図があった。


「客席にいるのは、ネットの炎上など興味もない地域のお年寄りと、小さな子供たち数十人。特撮の豪華なセットも、華やかな照明も、音響設備すらありません。あるのはパイプ椅子と、古びたマイクだけです」


玲奈さんは私たちをまっすぐに見据えた。


「カメラも、ネットの拡散も関係ない。目の前にいる数十人の人間すら笑顔にできない者に、全国のファンを魅了することなど不可能です。そこで信頼を勝ち取って来なさい。断る権利はありません」


「……行きます」

茜は即答した。


「公民館でも、どこでも! 私たちに歌わせてくれる場所があるなら……そこで全力を見せてきます!」


四人が力強く頷いた。


同日、午後二時。〇〇区立 第一公民館・多目的ホール。


パイプ椅子がパラパラと並べられた小さな講堂。

ステージの上には、使い古された黄色いマイクスタンドが一本。背景には『祝・秋の感謝祭』と書かれた手作りの垂れ幕。


客席には、お茶を飲みながら世間話をしているお年寄りが十数人と、親に連れられた小さな子供たちが数人。

そして……後方には、噂を聞きつけてカメラを構えている数人の野次馬(ネットの暇人)たちの姿もあった。


「うわ、マジでこんなところでやるんだ」「パステリズムオワコンだな」「白目やってー!」

後方から聞こえる心ない野次。


舞台袖の幕の裏で、私たちは自分たちの衣装を見つめていた。

キラリンチェンジャーは、相変わらず不完全な光しか放たない。変身はできない。キラリンジャーのバトルスーツを着ることも叶わず、私たちが着ているのは、少し古びたパステリズムの初期ステージ衣装だった。


「……変身もできない。派手な演出もない。完全に生身だね」

咲が自分の衣装の裾を握りしめる。


「ですが」葵がメガネの位置を正した。「マイクはあります。私たちの体もあります。……それで十分です」


「うん」桃が優しく笑う。「おじいちゃんやおばあちゃん、子供たち……みんなの顔、すごくよく見えるね」


「繋ぐぞ」翠が不敵に笑う。「この小さな会場から、私たちの逆転劇を始めるんだ」


茜は自分の胸に手を当てた。

心臓がトントンと力強く脈打っている。

恐怖も、迷いも、もうなかった。


「行こう、みんな!」


司会のおじさんがマイクで叫ぶ。

「――続いては、地域の特別ゲスト!『煌坂★パステリズム』のみなさんです! どうぞー!」


まばらな拍手の中、私たちは太陽の光が差し込む手作りのステージへ飛び出した!


---


「みなさん、こんにちはー!『煌坂★パステリズム』です!」


茜の元気いっぱいの挨拶が、静かな講堂に響き渡った。


最初は、お年寄りたちも「ん? 若い女の子たちが出てきたぞ」というポカンとした顔をしていた。後ろの野次馬たちはニヤニヤしながらスマホのカメラを向けている。


だけど――イントロが鳴り響いた瞬間、空気は一変した。


音響設備はチープなラジカセ。マイクも時々ノイズが混じる。

でも、私たちの声には、身体には、これまでの地獄の修行で培った「命の熱量」が宿っていた!


『輝け! 夢の光〜♪ 未来を照らす僕らの……煌めき!!』


完璧なAIアイドルの歌声じゃない。

泥を啜り、傷つき、笑われ、それでも泥の中から立ち上がった「人間」が放つ、圧倒的な歌とダンス!


咲が手作りのステージの上で、華やかに跳躍する! 姿勢矯正で鍛え上げた体幹は、狭いステージでも一切ぶれない!

葵が客席の一人ひとりの表情を観察し、お年寄りが手拍子を打ちやすいテンポへとボーカルの掛け声を合わせていく!

桃が子供たちの目の前までかがみ込み、とびきりの「希望の笑顔」とハイタッチを届ける!

翠が力強いダンスで全体のグルーヴを引っ張り、会場全体の空気を渦巻かせていく!


上手な人形じゃない。

格好つけただけのヒロインじゃない。


生身の、泥臭い、泥の中から立ち上がった私たちの姿が、そこにあった。


「がんばれー! お姉ちゃんたち、がんばれー!」


前列にいた小さな男の子が、小さな手拳を突き出して叫んだ。

それを皮切りに――


パン、パン、パパン!


お年寄りたちが、温かい笑顔で手拍子を打ち始めた。

「上手だねぇ」「元気がもらえるよ」「がんばれー!」


会場全体が、手作りのあたたかい熱狂に包まれていく。

後方でスマホを向けていた野次馬たちも、いつの間にかカメラを降ろし、あっけにとられた顔で私たちのステージに見入っていた。


これが、私たちの真骨頂。

どん底から這い上がった『煌坂★パステリズム』の、本当の煌めきだ!!


三十分のステージが終わり、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれていた。


「ありがとー! また来てねー!」

子供たちとハイタッチを交わし、私たちは汗だくのまま公民館の裏手に出た。


冷たい夕風が、火照った身体に心地いい。

空には、綺麗な茜色の夕焼けが広がっていた。


「はぁ……はぁ……疲れたぁぁぁ……!」

咲が湿ったアスファルトの上に大の字で寝転がった。

「でも……すっごく楽しく踊れたよ! 私、やっぱり歌うの大好きだ!」


「はい……」桃も目元を拭いながら笑う。「みんなの『がんばれ』って声……すごく温かかった……」


「データの集計結果が出ました」

葵がスマホの画面を見つめながら、静かに言った。

「会場の満足度、99.4%。……そして、後方の野次馬たちが投稿したSNS動画のコメント欄の風向きが変わっています。『あいつら、生身でもめちゃくちゃ上手い』『ネタだと思ってたけど、本物だ』……ポジティブな評価が急上昇しています」


「やったな」翠が不敵に笑う。


茜は自分のチェンジャーを見つめた。

不完全だったチェンジャーの奥で、ほんの小さな、けれど確かな紅い光が、静かに明滅し始めていた。


まだ、変身はできない。アイドルの輝きも、完全に戻ったわけじゃない。

でも――私たちは、自分の足で一歩を踏み出したのだ。


公民館の陰から、その光景を静かに見つめる二人影があった。

月城玲奈と、天照陽菜。


「……いい顔になりましたね、玲奈さん」

陽菜が柔らかく微笑む。


「ええ」

玲奈はバインダーを閉じ、夕空を見上げた。


「完璧な人形の仮面が剥がれ、泥の中から立ち上がった。……これでようやく、彼女たちは『人間』としてのスタートラインに立ちました」


玲奈の言葉には、確かな期待が込められていた。


「ここからが、パステリズムの……そしてキラリンジャーの本当の再建です」


---


【次回予告】


茜「公民館でのライブをきっかけに、少しずつ笑顔を取り戻してきた私たち!」

咲「でも……キラリンチェンジャーがまだ完全に起動しないよ〜! 変身できないと戦隊になれないよ〜!」

葵「同調率を100%まで引き上げるには、私たち5人の絆を、さらに『結晶化』させる必要があります」

桃「結晶化……? どうすればいいの……?」

翠「形だけの仲間じゃない。お互いの命を預け合える、本当の絆だ!」

茜「泥の中から掴み取った光を胸に……輝け! 私たちの『新・変身』!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第7話:

『絆の結晶! 再び輝け、キラリンチェンジャー!』


燃え上がれ、勇気の煌き★!

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