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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第2章

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第23話:輝きの証明! 散りゆく怨念と未来への歌!

【アバン】


ドクンッ!! ドクンッ!!


世界が、嫌な音を立てて波打っていた。


目の前で崩れかけている身の丈十メートルの巨体――『クイン=チカノコ』。

真の覚醒を果たした私たちの必殺技『キラリン・グランド・ミリオン・ブレイカー』を胸に受けて、その漆黒の甲殻はボロボロに引き裂かれていた。


なのに。

勝負は、まだ終わっていなかったのだ。


『ギシャアァァァァァァッ!! 許さない……絶対に許さないわぁぁぁっ!!』


クイン=チカノコの割れた胸の奥から、どす黒い紫色の毒気が、火口から噴き出すマグマみたいに溢れ出していた。

地面が激しく打ち震え、砕けたコンクリートの破片が重力を無視してフワフワと空中に浮き上がり始める。


「な……なに……!? 体内エネルギーが……急激に暴走しています!?」

ブルー(葵)が割れたバイザーの奥で、悲鳴に近い声を上げた。


「自爆する気だ!!」

グリーン(翠)が折れない風の刃を構え直すが、その腕がかすかに震えていた。

「自分たちの怨念の残りを全部叩きつけて……この街ごと、私たちを道連れにするつもりだぞ!」


『オレたちを……見捨てた地上の奴らも……ちやほやされるお前たちも……全部まとめて吹き飛べぇぇぇぇっ!!』


クイン=チカノコの胸元に浮かび上がった、パチモンスーツの不気味な5つの顔。

血の涙を流しながら、発狂したように叫んでいる。


その全身から溢れ出る暗黒エネルギーの塊は、すでに煌星市(きらぼしし)の中央広場全体を呑み込むほど巨大に膨れ上がっていた。

これが爆発すれば、周りのビルも、避難が遅れている街の人たちも、そして遠くで倒れている玲奈さんたちだって……木っ端微塵に吹き飛んでしまう。


「そんなの……絶対にダメえぇぇぇっ!!」


イエロー(咲)が泣きそうな顔で叫ぶ。

ピンク(桃)はシールドを握りしめたまま、必死に前に出ようとして足を滑らせた。


変身は取り戻した。絆も確かめた。

だけど……相手が命を捨てて襲いかかってくるこの土壇場で、私たちはどうすればいいんだ!?


私――レッド(茜)は、胸の前で握りしめた『キラリンセイバー』の柄に、全身の血を注ぐように力を込めた。


あきらめるな。

泥を舐めて、笑われて、それでも手をつないで立ち上がってきた私たちが……ここで負けるわけがないんだ!


---


【Aパート】


ドズズズズズズ……ッ!!


クイン=チカノコから放たれる狂気のような圧力が、私たちのスーツの防護フィールドをミシミシと押し潰していく。


『死ねぇぇぇっ! 幸福な奴らめ! 光を浴びる者どもめぇぇぇっ!』


膨れ上がる黒い球体。

その黒いエネルギーの奥から、私には『声』が聞こえていた。


ただの怪物としての咆哮じゃない。

泥ドロとした毒気の向こう側で、泣き叫んでいる無数のちっちゃな影たちの声が。


『ずるい……ずるいよ……!』

『オレたちだって……練習したんだ……! 地下の暗い場所で……何百回も……!』

『なんでオレたちの歌には誰も振り向いてくれないんだ……! なんでお前たちばかり拍手を貰えるんだ……!』


パチモンスーツの5人――カガヤキタインジャーたち、そして何百体ものチカノコたちの、悲痛な叫び。


「あ……」


桃が、小さく息をのんだ。


「この人たち……本当に……歌いたかったんだ……」


「ええ……」葵が唇を噛みしめる。「彼らの原動力は、純粋な破壊衝動ではありませんでした。『誰かに認められたい』『光の下で歌いたい』という……あまりにも不格好で、抑えきれなかった情熱の暴走です……!」


その声を聞いた瞬間、私の胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛んだ。


既視感(デジャブ)だ。


有明のステージで冷ややかな目で見られて、ネットで変顔を晒されて笑われて、「お前らなんかアイドルじゃない」って叩かれた、あの頃の私たち。

合宿の冷たい滝の中で、震えながら「諦めたくない」って泣いていた、あの時の私たち。


一緒じゃないか。


やり方が違っただけだ。

届かなくて、悔しくて、嫉妬して、暴走してしまっただけで……根っこにあるのは、私たちと同じ「輝きたい」っていう、泥臭い命の叫びだったんだ。


「茜……」


咲が、私の隣でそっと手を重ねてきた。

変身スーツ越しなのに、咲の手の温もりが、まっ直ぐ私の中に流れ込んでくる。


「私さ……あいつらのこと、安っぽい偽物だって笑っちゃった……」

咲のバイザーの奥から、綺麗な涙がこぼれ落ちていた。

「でも……ちやほやされたくて必死だったあいつら、前の私にそっくりなんだよ……。笑えるわけ、ないじゃんか……!」


「ああ」翠が不敵に、だけど寂しそうに口元を歪めた。「殴り飛ばして終わり、なんてのは……私たちのやり方じゃねぇよな」


「はい」葵が静かに頷く。「物理的な破壊では、彼らの怨念は消えません。……包み込むのです。私たちのすべてで」


「みんなの歌声を……未来へ届けるんだから!」

桃が前に出た。その手には、シールドではなく、みんなの想いをひとつに繋ぐ柔らかな桃色の光が宿っていた。


そうだ。

叩き潰して勝つんじゃない。

あいつらの泥臭い情熱も、悔しさも、全部受け止めて……私たちの歌で、光の下へ引っ張り上げてやるんだ!


「みんな……新曲、歌うよ!!」


私が叫ぶと、四人の瞳に、今までで一番温かくて、強い火が灯った。


「「「「「応っ!!!!!」」」」」


---


【Bパート】


『消えろぉぉぉぉぉっ! 怨念爆砕・カガヤキタイ・ファイナル・ディザスターーッ!!』


クイン=チカノコが、膨れ上がった漆黒の自爆エネルギーを、一気に解き放った!


ドドオォォォォォンッ!!!!!


天地を揺るがす暗黒の濁流。広場全体がブラックホールに呑み込まれるように黒く削り取られていく。


だが――。


私たちは逃げなかった。一歩も引かなかった。


五人が円陣を組み、固く手を繋ぎ合わせる。


「同調率……上昇……! 120%……150%……200%……計測不能域突破!!」

葵の叫びが響く!


「私たちの『覚悟』を……5人の絆を……ひとつに連動させます!!」


胸のチェンジャーから解き放たれたのは、破壊の光じゃない。

透き通るような、温かい五色のメロディの粒子だった!


『――輝け! 繋がる未来へ〜♪ 僕らの光で、世界を叩き開け!!』


私たちが歌い始めたのは、新曲『キラメキ・リコネクト』。


戦場に、私たちの生の声が響き渡る。

ダンスのステップを踏みながら、手を繋ぎ合い、五色の光のバリアを巨大な満月のように広げていく!


「ハぁぁぁぁぁぁっ!!」


ドガアァァァンッ!!


自爆の暗黒濁流が、私たちの歌のバリアに激しく激突した!

凄まじい衝撃。スーツの表面が削れ、火花が激しく散る。

だけど、誰も手を離さない。


「届いてぇぇぇぇっ!」

ピンク(桃)が叫ぶ!


「あんたたちの悔しさも! 歌いたかった情熱も! 全部……全部私たちが受け止めてあげるからぁぁっ!」

イエロー(咲)が声を張り上げてサビを歌う!


「逃げずに聞きやがれ! これが……本物のライブだぁぁぁっ!」

グリーン(翠)が旋風を巻き起こし、暗黒の毒気を光の粒子へ変えていく!


「計算など要りません……! 私たちの魂を……重ねます!」

ブルー(葵)が水流の旋律を奏で、怨念の濁流を優しく包み込んでいく!


五人の歌声が重なり合い、虹色の光の波となって、クイン=チカノコの暴走する暗黒エネルギーを、丸ごと包み込んでいった。


自爆の圧力が、じわじわと殺意を失っていく。

黒い毒気が、ジュウウゥゥ……と音を立てて、温かい桃色や黄色の光の粒子へと精製されていく。


『な……なに……!? 攻撃が……殺意が……消えていく……!?』


クイン=チカノコの胸元で、パチモンスーツの5人が呆然と叫ぶ。


『温かい……なんだこの歌は……!? オレたちの怨念が……溶けていく……!?』


「拒まないで!」


レッド(茜)は、バリアを押し開きながら、一直線にクイン=チカノコの胸の奥……怨念の核へと手を伸ばした。


「あんたたちも……光の下で踊りたかったんだよね!?」


---


【Cパート】


光の濁流の中で、私の意識は、クイン=チカノコの精神世界の奥深くへと潜り込んでいた。


そこは、冷たくて、暗くて、誰も来ない棄てられた地下街の片隅。


足元に座り込んでいたのは、怪物の姿じゃない。

ボロボロの、安っぽいビニール地のスーツを着た、傷だらけの5人の男たちと、無数のちっちゃなチカノコたちだった。


彼らは膝を抱え、泥にまみれた顔を伏せて、シクシクと泣いていた。


『……欲しかったんだ』


カガヤキタイ・レッドの男が、掠れた声で呟いた。


『ただ……拍手が欲しかったんだ。お前たちみたいに、綺麗衣装を着て、スポットライトを浴びて……「かっこいい」って言われたかったんだ……。でも……誰もオレたちを見てくれなかった……』


『オレたちの歌なんて……誰も聞いてくれなかったんだよぉ……っ!』


チカノコたちが、泥の中で声を上げて泣く。


私は、彼らの前に歩み寄った。

そして……躊躇うことなく、膝をついて泥の中に腰を下ろした。


「茜ちゃん!?」

精神世界についてきてくれた咲や桃たちが、驚いて声を上げる。


私は、一番前で泣いていたカガヤキタイ・レッドの手を、両手で優しく包み込んだ。


「あ……」


男が弾かれたように顔を上げた。


私の手も、泥で汚れている。

爪の中には土が入り、ジャージはボロボロだ。


「……知ってるよ」


私は、男の目を見つめて、静かに笑った。


「誰も見てくれない悔しさも。冷たい目で見られる悲しさも。……私たち、全部知ってる」


「な……なんで……お前たちみたいなトップアイドルが……!」


「トップなんかじゃないよ」

咲が横に座り込み、カガヤキタイ・イエローの背中をポンポンと優しく叩いた。

「私たちさ、有明のステージで大失敗して、ネットで変顔晒されて笑われて……山の中で正座させられて泣いてたんだよ? 泥なんか、あんたたちと同じくらい喰ってきたよ」


「え……?」男たちが目を見開く。


「綺麗に勝ってきたんじゃない」葵がメガネを直しながら呟く。「泥を啜り、嘲笑され……それでも手を繋ぎ合って、ここまで足掻いてきたのです」


「だからさ」

翠がカガヤキタイ・グリーンの肩を組み、乱暴に笑った。

「嫉妬するなら、諦めずに足掻けよ。ズルい手使って足を引っ張るんじゃなくてさ……本気で歌って、踊って、地上の私たちを倒しに来いよ!」


「はいっ!」桃が温かい笑顔を向ける。「次は……パチモンじゃなくて、ライバルとして……同じステージで歌おうよ!」


「あなたたちも……光の下で踊りたかったんだよね」


私がそう言うと、カガヤキタイ・レッドの目から、溢れ出た涙がボロボロとこぼれ落ち、泥のついた男の頬を綺麗に洗い流していった。


『……勝てねぇよ』


男は、泣き笑いのような顔で、私の手を強く握り返した。


『こんな……こんな温かい歌歌われたら……勝ち目ねぇよ……っ!』


『ありがとう……キラリンジャー……!』


チカノコたちが、一人、また一人と、温かい光の中に包まれていく。

彼らの手に握られていた不気味な黒いケミカルライトが、綺麗で鮮やかな七色の光に変わり、満天の星空みたいに夜空へ舞い上がっていった。


『次は……本気で……追いついてやるからな……!』


感謝と、爽やかな誓いの言葉を残して。

怨念の影たちは、柔らかな光の粒子となって、青空の向こうへ消え去っていったのだった。


◇


ドガアァァァン……。


静かな光の弾ける音が響き、クイン=チカノコの巨体が完全に浄化された。


崩壊した煌星市の中央広場。

紫色の黒雲は完全に吹き飛び、雲の隙間から、眩しい、祝福のような太陽の光が差し込んでいた。


「はぁ……はぁ……」


変身が解け、生身のジャージ姿に戻った私たち5人。


膝から崩れ落ちそうになるのを、お互いの肩を支え合って踏みとどまる。

全身の皮脂が抜け、疲労骨折しそうなくらい体はボロボロだったけれど。


胸の中は、澄み切った秋の空みたいに、爽やかで、温かい光で満たされていた。


---


【エピローグ】


「……見事でした」


足音が近づいてきた。


振り返ると、変身が解除されたステラセイヴァーズの先輩たち――美玲さん、紅葉さん、ひかりさん、あきさん、陽菜さん、そして月城玲奈さんが立っていた。


玲奈さんは、折れた銀色の剣をそっと鞘に収め、私たちの前に歩み寄ってきた。


その銀色の瞳には、もう冷たさなんて微塵も残っていなかった。

涙を堪えるような、だけど最高に誇らしげな微笑みが、その口元に浮かんでいた。


「敵の怨念すらも受け止め、自らの歌で浄化してみせた。……あなたたちは今日、ただの『怪人を倒すヒーロー』を超えて、人々の心に寄り添う『真の偶像(アイドル)』となりました」


玲奈さんは、自分の手元にあったバインダーをそっと閉じ、私たち5人に向かって、深く、深く頭を下げた。


「感謝します、パステリズム。あなたたちの輝きが……この街を、そして私たちを救ってくれました」


「玲奈さん……!」


美玲さんがたまらず駆け寄ってきて、私と咲を同時に抱きしめた。

「すごかったよ……! すごかったよ、茜ちゃん、咲ちゃん……っ! 私、途中で泣いちゃったよぉっ!」


「へっ……甘っちょろい倒し方だと思ったが……まあ、お前たちらしくて悪くねぇな」

紅葉さんが不器用そうにフンと鼻を鳴らす。


「最高だったぞ、妹分どもーーっ!」

ひかりさんが私の頭をクシャクシャに撫で回し、あきさんと陽菜さんも温かい拍手を送ってくれた。


見上げると、青空の向こうに、大きな綺麗な七色の虹がかかっていた。


「ねえ、茜」

咲が私の横顔を覗き込み、破顔した。

「私達……また少し、強くなれたかな?」


「うん」

私は自分の胸に手を当てた。

トクン、トクンと、力強く打つ心臓の音。


「強くなれたよ。……一人じゃなくて、みんながいたから。あいつらの声も、聞くことができたんだよ」


五人で手を取り合い、太陽の光を浴びる。

泥の中から掴み取った私たちの輝きは、もうどんな闇にも、どんな嫉妬にも、決して消されることはない。


さあ、行こう。

新しい日常へ。

歌って、踊って、誰かを笑顔にする……私たちの、最高のステージへ!


---


【次回予告】


茜「チカノコ編も無事に解決して、平和が戻った煌星市!」

咲「よーし! 心機一転、パステリズムの『ファン感謝祭イベント』を開催するぞー!」

葵「ですが……イベントの準備中に、予期せぬトラブルが発生しました」

桃「えっ……ファンのみんなに届ける『限定グッズ』が届いてない……!?」

翠「届かねぇなら自分たちで作るまでだ! 徹夜作業、開始だおらぁっ!」

茜「笑顔と感謝を届けるために! 私たちのドタバタ感謝祭、開幕!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第24話:

『感謝を込めて! ドタバタファン感謝祭と手作りの絆!』


燃え上がれ、命の火★!

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