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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第2章

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22/26

第22話:生身の覚悟! 呼び覚ませ、奇跡の真同調!

【アバン】


雨上がりのアスファルトに、どす黒い紫色の影が巨大な爪を立てていた。


「ハぁ……っ……ハぁ……っ」


私の口から漏れる息は、冷たくて、生臭い血と泥の味がした。


見上げるほどの巨体。

身の丈十メートルを超える合身怪人『クイン=チカノコ』。

カガヤキタインジャーの5人が、ドロドロとした嫉妬と怨念を丸呑みにして歪んだその姿は、まるで地獄の底から這い出してきた悪夢そのものだった。


『オホホホホ! 見なさい、この無残な姿を! 地上の光とやらは、もうどこにも見当たらないわぁ!』


頭上の冠から放たれる暗黒の波状攻撃が、また一つ、崩れかけたビルの壁面を粉々に粉砕する。

瓦礫が豪快な音を立てて路上へ降り注ぎ、逃げ惑う人々の悲鳴が、湿った空気に刺さるように響いていた。


その巨体の足元。

倒れ伏していたのは、セーラー服の魔法装束に身を包んだ『ステラセイヴァーズ』の先輩たちだった。

月城玲奈さん……セーラールナリアの銀色の剣は半ばから折れ、白い装束は煤と血で赤黒く汚れ、息も絶え絶えに瓦礫の中に膝をついている。


強いはずの先輩たちが、手も足も出ずに打ち伏せられている。


そして、私たち――煌坂★パステリズムの5人は。


ジャージの袖を捲り上げた、ただの傷だらけの生身だった。

私の左手首には、いつもそこにあった『キラリンチェンジャー』がない。

玲奈さんの手によってトランクケースへ収められ、ダイヤルロックをかけられ、事務所の奥底へ封印されてしまったからだ。


「変身能力のない、ただの落ちこぼれが……」


クイン=チカノコの胸元に浮き出た、パチモンスーツの歪んだ顔が、不快な高笑いを上げる。


『何をしに来たのぉ? 助けに来たとでも言うつもり? スーツもない、武器もない、ただの女子高生がぁっ!』


巨大な影の爪が、空を切り裂いて振り下ろされる。

その先には――倒れた玲奈さんを庇うように、恐怖で身を縮めている幼い親子がいた。


「やめろぉぉぉぉぉっ!!」


私の身体は、考えるより先に地面を蹴っていた。


---


【Aパート】


ドガアァァァンッ!!


爪が叩きつけられた直前、私は親子の前に滑り込み、落ちていた鉄パイプを両手で構えて斜めに突き出した。

衝撃。

生身の腕に、トラックに正面衝突されたような激痛が突き抜け、骨がギシギシと悲鳴を上げる。


「ぐっ……ガぁぁぁっ!?」


「茜ちゃん!!」


横から飛び出してきた桃が、私の腰を抱きかかえて後ろへ転がった。

間一髪、叩きつけられた巨爪がコンクリートを深く抉り、飛び散った岩の破片が私の頬をかすめて血が伝う。


「ハぁ……ハぁ……っ! 大丈夫……!? 怪我はない!?」

桃が涙でぐしゃぐしゃの顔で、抱きかかえた親子の無事を確認する。お母さんがガタガタと震えながら、何度も頷いた。


「逃げてください! 早く……ビルの中へ!」

桃の声に促され、親子が足をもつれさせながら走り去っていく。


『ケケケッ! 生身で身代わりとは、反吐が出るほど滑稽だわぁっ!』


クイン=チカノコが巨体を揺らし、黒いケミカルライトの光線を容赦なく掃射してきた!


「させるかよぁぁぁっ!」


翠が地を這うような低い姿勢で突進し、砕けたコンクリートの大きな塊を、足甲でサッカーボールのように蹴り飛ばした!

バコンッ! と空中で光線と岩が激突し、激しい火花が散る。


「痛ぇっ……! 骨が折れたかと思ったぜ……っ!」

翠が顔を歪めて右足を引きずるが、その瞳は鋭いナイフみたいにギラギラと煮立っていた。


「咲! 葵! 左右から注意を逸らします!」

「任せなさいってばーっ!!」


咲が、痛む膝を無視して路地の壁を跳んだ。

合宿で、修行で、何千回と繰り返してきたアクロバット。

スーツのバフなんてない。ただの体操服同然のジャージ。

だけど、咲のステップは、空中で綺麗に弧を描き、敵の顔面の真横を通って意識を惹きつける!


「こっちだよ、パチモン女王様ーっ! 私たちのステップ、指咥えて見てなよーっ!」


「計算完了……! 敵の巨体ゆえの死角は、足元から30度上空!」

葵が、割れたメガネのフレームをテープで止めた怪しい姿で、路地裏の廃棄ボンベを連続で倒し、敵の足元へ転がした!


ガラガラガラッ!


『ぬ……なにっ!? 足元が……!?』


巨体がぐらりと揺らぐ。

生身だ。何の超能力もない、ただの人間だ。

だけど、私たちは止まらない。


傷だらけの拳。血の滲む足。

お互いの呼吸、目線、走る速度、着地のタイミング。

日常のダンスレッスンで、泥まみれの山奥で、嫌になるほど叩き込んできた『5人の調和(ハーモニー)』が、生身の身体を完璧に連動させていた。


「茜……っ! 逃げなさいと言ったはずです……!」


瓦礫の中で、血を流す月城玲奈さんが、信じられないものを見るような目で私を見上げていた。


「なぜ……チェンジャーもない身体で、戻ってきたのですか……! 死にに来たのですか……!?」


玲奈さんの掠れた声。


私は、膝を折りそうになる足を強引に踏みしめ、玲奈さんに向かって振り返った。

口元の血を、ジャージの袖でゴシゴシと拭う。


「玲奈さん……」


息が荒くて、胸が破けそうだった。

だけど、言葉ははっきりと出た。


「私たちは……『煌めき』を履き違えてました。ちやほやされるのが気持ちよくて……怪人を倒すのが格好よくて……自分たちが一番輝いてるって、思い上がってました」


「茜……」


「でも……ちやほやされるために戦ってたんじゃない!」


私は自分の胸を、握りしめた生身の拳で強く叩いた。


「誰かが泣いてる時……その手を握り返したかったからだ! 泥の中でも、どん底でも、大好きなみんなと一緒に笑いたかったからだ!」


咲が、桃が、葵が、翠が、私の横に肩を並べた。

全員、ジャージは破れ、全身擦り傷だらけで、血と土でボロボロだ。

だけど――誰一人として、目を逸らしていなかった。


「チェンジャーがなくても……スーツがなくても!」

咲が、血のついた歯を見せてニッと笑う。

「私たちの手は、まだ繋がってんだよ!」


「はい……! 泥の中から掴み取ったこの絆は……どんな怨念にも、奪えやしません!」

桃が涙を拭い、強く拳を握る。


「変身能力は……私たちの『強さ』の理由ではありません。……私たちが『私達』であることこそが、強さの証明です!」

葵が言い切る。


「見せてやるよ偽物……! 泥の中でも絶対に消えねぇ……本物の『煌めき』をなぁぁぁっ!!」

翠が叫んだ。


5人の生身の叫びが、黒く濁った煌星市の空を直撃した。


玲奈さんは……月城玲奈は、目を大きく見開いていた。

その銀色の瞳から、冷たさが消え、激しい震えと熱いものが溢れ出していた。


「……あぁ」


玲奈さんは、自分の胸元に抱え込んでいた、あの金属製の重厚なトランクケースを見つめた。


「見事です……パステリズム」


---


【Bパート】


玲奈さんは、血の滲む指先で、トランクケースのダイヤルロックへ手をかけた。


「あなたたちは……自分の足で立ち上がりました。……誰に頼ることもなく、自らの魂で『光』の意味を見つけ出しました」


カチリ、カチリ、カチリ。


ダイヤルが組み合わさる、小さな音。


「プロデューサーとして……撤回します。あなたたちに、資格はある」


バチンッ!!


トランクケースのロックが外れ、重いフタが力強く押し開かれた!


その瞬間だった。


ドズオォォォォンッ!!!!!


トランクの内部から、空を裂くような、目も眩む五色の光の柱が暴れ出した!


黒く焦げて沈黙していたはずの、5つの『キラリンチェンジャー』。

コアに嵌められた【炎】【水】【雷】【花】【風】のエンブレムが、まるで脈動を取り戻した赤ん坊の心臓みたいに、ドクン! ドクン! と凄まじい熱量を放ちながら発光していた!


『なに……っ!? なんなの、その光はぁぁぁっ!?』

クイン=チカノコが庇うように腕を上げる。


「チェンジャーが……呼び応えてる……!?」

咲が目を見開く。


トランクから解き放たれた5つのチェンジャーが、意思を持っているかのように空中を舞い、一直線に私たちの左手首へと飛来した!


カチリッ! カチリッ! カチリッ! カチリッ! カチリッ!


完璧な重厚音とともに、私たちの左手にチェンジャーが自動装着される!


その瞬間、葵のバイザー……じゃなくて、タブレットの画面が、遠隔で爆発的な数値を弾き出し始めた。


「同調率……100%……150%……200%突破!?」

葵が叫ぶ。「計測不能! 封印された属性キーが……私たちの『覚悟』に反応して、限界出力をオーバーライドしています!」


胸の奥で、小さく消えかけていた火が。

一瞬で、世界を焼き尽くすほどの巨大な『炎』となって、全身の血を駆け巡った。


冷たかったチェンジャーが、肌が火傷するくらい熱い。

だけど、この熱さが……愛おしい。私達の命の音だ!


「みんな……行くよ!!」


私が叫ぶと、四人の手が重なった。


「「「「「真・煌変(まこと・こうへん)ーーーーーっ!!!!!」」」」」


カキィィィィンッ!!!!


世界が、五色の光で真っ白に染まった。


仮初のスーツじゃない。焦りで作った鎧じゃない。

泥の中から自分の足で立ち上がり、大切な日常を守ると誓った者だけに与えられる、真の覚醒を遂げた『キラリンジャー』のバトルスーツ!


胸元のエンブレムは太陽のように眩しく輝き、肩や脚には虹色の光の粒子が翼のように揺らめいていた。


「炎の情熱! キラリンレッド!」

「水の知性! キラリンブルー!」

「雷の躍動! キラリンイエロー!」

「花の愛しさ! キラリンピンク!」

「風の疾風! キラリングリーン!」


「「「「「輝け命の火! 煌戦隊★キラリンジャー!!!!!」」」」」


ドガアァァァンッ!!


背後で爆発した五色の光芒が、煌星市を覆っていた紫色の暗黒蒸気を、一瞬で半分以上吹き飛ばした!


---


【Cパート】


「バカな……バカなバカなバカなぁぁぁっ!?」


クイン=チカノコの巨体が、恐怖でカタカタと震えていた。


『変身は封印されていたはずよ!? なぜ……なぜ生身のゴミ屑どもが、またそんな光を放てるのよぁぁぁっ!』


「ゴミ屑じゃない!!」


レッド(茜)が地面を蹴った!

速い! 以前の倍以上のスピード!

『キラリンセイバー』が一閃! 燃え盛る朱色の刃が、クイン=チカノコの巨大な暗黒の爪を、根元から真っ二つに叩き斬る!


ズドォォォンッ!


「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」


「私たちの光は……誰かに与えられたものじゃない!」

イエロー(咲)が縦横無尽に街の壁を蹴り、空中から雷を纏った超高速連撃を叩き込む!

「泥を舐めて、血を吐いて、5人で手を繋いで掴み取った……本物の光なんだよーーっ!」


「悲しみも、嫉妬も、全部受け止めます!」

ピンク(桃)の『キラリンシールド』が、巨大な光の大輪となって展開する! クイン=チカノコが放った極大の暗黒光線を、正面からビクともせずに完全遮断!


「ですが……誰かを傷つける嫉妬など、正義とは呼びません!」

ブルー(葵)の『キラリンショット』から放たれた無数の水の矢が、敵の膝裏を正確に撃ち抜き、巨大な体勢を完全に崩させる!


「引導を渡してやるよ、偽物!」

グリーン(翠)が疾風となって駆け抜け、折れない『キラリンスラッシャー』で敵の胴体を真横に切り刻む!


完璧な連携。

技と技の繋がりだけじゃない。

誰かが傷つけば誰かが庇い、誰かが跳べば誰かが道を拓く。

日常の笑い合いも、すれ違いも、仲直りも、全部がひとつの美しいダンス(物語)となって、クイン=チカノコを追い詰めていく!


『許さない……許さないわぁぁぁっ!』


追い詰められたクイン=チカノコが、胸元に集束させた怨念の数々を爆発させようと、狂ったように発光し始めた。


『オレたちも……輝きたかった……! 地上で……チヤホヤされたかったんだぁぁぁっ!』


パチモンスーツの5人の顔が、血の涙を流しながら叫ぶ。


「……分かってるよ」


レッド(茜)は、剣を構え直しながら、静かに呟いた。


「辛かったよね。日陰で、誰にも見てもらえなくて、悔しかったよね。……私たちも、そうだったから」


『え……?』


「だからこそ……そんなやり方じゃ、誰も幸せになれないって教える! 私たちの最高の輝きで……あんたたちの暗闇も、全部照らしてやる!!」


五人の武器が、頭上でひとつに合体した。

赤、青、黄、ピンク、緑。

五色の属性エネルギーが螺旋を描き、ひとつの巨大な『虹色の太陽』を形成していく。


「みんな……行くよっ!!」


「「「「「必殺・真・煌連撃(しん・こうれんげき)……!!」」」」」


「「「「「キラリン・グランド・ミリオン・ブレイカーーーッ!!!!!」」」」」


ドズオォォォォンッ!!!!!


虹色の太陽が、クイン=チカノコの巨大な胸元へと一直線に激突した!


『ギシャアァァァァァァッ!? 眩しい……眩しすぎるわぁぁぁぁっ!!』


凄まじい閃光と衝撃波が、煌星市全体を包み込んでいく。

ドロドロとした怨念の甲殻が、真の光によって浄化され、次々と白い光の粒子となって崩壊していく!


---


【エピローグ】


ドガアァァァァンッ!!


盛大な爆発音が、秋の空に響き渡った。


……だが。


爆煙が晴れたあと、そこに現れたのは消滅の瞬間ではなかった。


『まだ……まだだぁぁぁっ!』


胸元を大きく破壊され、巨体をボロボロに崩しながらも、クイン=チカノコは執念だけで立ち踏みとどまっていた。


パチモンスーツの不気味な顔が、怨念の炎を最後のひとしずくまで燃やし尽くそうと、ドロドロとした暗黒のエネルギーを全身から絞り出している。


『引きズり下ろしてやる……! お前たちも……この闇の底へ……一緒に連れて行ってやるぅぅぅっ!』


最後の足掻き。死に体となった怪人の、全存在を賭けた自爆攻撃の構え!


「しつこい奴……!」グリーン(翠)が構え直す。


だけど、私たちの心には、もう一切の揺らぎも、恐怖もなかった。


「茜」


横を見ると、変身が解けかけた咲が、私の手をそっと握りしめていた。

反対側からは桃が、葵が、翠が。

五人の手が、光の中で固く、強く重なり合う。


「終わらせよう、みんな」


私は前を見据えた。


「私たちの、本当の煌めきで!」


絶望の闇を切り裂き、解放された光が、今まさに最後の決着を迎えようとしていた。


遠くで見守る月城玲奈さんの口元に、誇らしげな笑みが浮かんでいた。

戦いは、クライマックスへ――!


---


【次回予告】


茜「真の覚醒を果たした私たち! でも、執念に狂うクイン=チカノコが、最後の自爆攻撃を仕掛けてきた!?」

咲「街も、みんなの笑顔も、絶対に吹き飛ばさせないよ!」

葵「同調率、限界突破……! 5人の絆を、ひとつに連動させます!」

桃「みんなの歌声を……未来へ届けるんだから!」

翠「決着をつけようぜ! 私たちの、本当の『煌めき』で!!」

茜「さらば怨念の影! 輝け、キラリンジャー! 最終決戦、決着!!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第23話:

『輝きの証明! 散りゆく怨念と未来への歌!』


燃え上がれ、命の火★!

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