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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第1章

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第2話:個の覚醒! 砕け散るチームワーク?

昨日までの地獄のような基礎トレーニング。

全身の筋肉が軋み、湿布の匂いをプンプンさせながらも、私たち――『煌坂★パステリズム』の五人は、どこか晴れやかな気持ちで朝を迎えていた。


「ねえ茜、昨日の最後、すっごくかっこよかったよ!」

「そうかな? 自分でもよく覚えてないんだけど……ただ必死だったっていうか」


早朝五時半。ステラプリズムの事務所前に集合した私たちは、着古したジャージ姿で顔を見合わせて笑い合っていた。

一日目にして叩き込まれた、容赦のないスパルタ指導。でも、それを全員で乗り切ったんだという自負が、私たちの胸を確かに満たしていたのだ。

一人はみんなのために。みんなは一人のために。

なんだか急に、本物の戦隊ヒーローに一歩近づけたような気がしていた。


だけど。

そんな私たちの生温かい連帯感は、数分後に打ち砕かれることになる。


ガタゴトと揺れる大型マイクロバスの車内。

窓の外の風景は、都心の高層ビル群から、急速に鬱蒼とした山林へと変わっていく。


「……あの、玲奈さん?」

助手席に座る月城玲奈の背中に、恐る恐る声をかけたのは葵だった。

「どこへ向かっているんでしょうか。今日のスケジュール表には、ダンススタジオでの合同レッスンと書いてありましたが……」


玲奈は振り返りもせず、膝の上のタブレット端末に視線を落としたまま、静かに口を開いた。


「行き先は、奥多摩の山中にあるステラプリズム専用の集中強化合宿所です」

「合宿……!?」

咲が跳ね起きるようにシートから身を乗り出した。

「聞いてないよ〜! 着替えもプロテインも一泊分くらいしか持ってきてないのに!」


「荷物の心配は無用です。現地に必要なものはすべて用意してあります」

玲奈が静かにシートの背もたれに寄りかかり、薄い唇の端をわずかに上げた。その微笑みが、私には酷く不吉なものに見えた。


「勘違いしないでくださいね。あなたたちは昨日、全員で一丸となって試練を乗り越えたつもりでしょう。仲間の大切さを知り、絆を深めた……そう満足していませんか?」


「え……だって、仲間を信じて戦うのが戦隊でしょ?」

茜が首をかしげる。


「甘いです」

玲奈の声が、走るバスのエンジン音を切り裂いた。

「ただ身を寄せ合っているだけの集団は、一箇所に強い衝撃を受ければ簡単に崩壊します。個々の足腰が立っていないのに『絆』という言葉に逃げているだけです。今のあなたたちは、一匹ずつでは何もできない弱い羊が、五匹集まって震えているに過ぎない」


言葉のナイフが、私たちの胸に容赦なく刺さる。


「よって、本日の合宿メニューは決定しました」

玲奈が振り返り、私たち五人を冷徹な銀色の瞳で見つめた。


「合同訓練は即刻中止。これより、全員を完全に分離します。『バラバラ合宿』の開始です」


「「「ええぇぇぇぇぇっ!?」」」


山あいに、私たちの悲鳴が虚しく響き渡った。


---


山奥の合宿所に到着するやいなや、私たちは着替えを渡され、それぞれ別の車や徒歩で散り散りに連れ去られた。


「ちょっと! なんで私が山の中に置いていかれるのさ〜っ!?」


咲が叫んだ場所は、鬱蒼とした杉林の奥深く。川のせせらぎ……なんて優雅なものではない、轟音を立てて落ちる滝の真下だった。

水飛沫が霧となって舞い、早朝の山気も相まって凍えるほど寒い。


「騒ぐな、咲」

道着姿の火ノ宮紅葉が、腕を組んで岩の上に立っていた。その背中には、太い木刀が一本。


「え、えっ、紅葉さん……? なんで道着? ここで何するの……?」

「決まっている。滝修行だ」

「た、滝ぃぃぃ!?? 嘘でしょ、今何月だと思ってるの!? 冷たいよ! 寒いよ! なんで現役AIアイドルが滝に打たれなきゃいけないのさーっ!」


咲が頭を抱えて暴れるが、紅葉は微動だにしない。


「お前のダンスを見た。華やかだし、ステップのキレもある。だが……重心が軽すぎる。風が吹けば飛ぶような根無し草だ。敵の攻撃を受けた時、お前は踏みとどまれるか?」

「それは……ッ」

「軸がぶれるのは、体幹の弱さだけではない。心に迷いがあるからだ。『可愛く見せたい』『失敗したくない』という邪念が、お前の足を地から浮かせている」


紅葉は岩から飛び降りると、咲の首根っこを掴んで容赦なく激流の真下へと押しやった。


「ぐわぁぁぁぁっ!? 冷たっ! 痛い! 水圧で頭が割れるぅぅぅ!」

「声を出すな! 息を整えろ! 自分の中心にある一本の軸を感じろ! それが見つかるまで、そこから上がることは許さん!」


「冷た〜〜〜〜いっ! 茜ぁぁ! 葵ちゃん持ち助けてぇぇぇ!」

咲の悲鳴が、水音の中に消えていった。


◇


一方、合宿所の地下にあるトレーニングルーム。

重苦しい鉄の匂いと汗の匂いが満ちるその部屋で、桃は絶望的な顔で床に突っ伏していた。


「ひぃ……ひぃ……もう……腕が……曲がりません……」

「甘い! あと五十回! ほら、声出して!」


パイプ椅子に踏んぞり返り、激辛のキムチ鍋を食べながらメガホンで怒鳴っているのは、雷咲ひかりだった。


「ひかりさん……激辛の匂いで目が痛いですし……そもそもこのバーベル、何キロあるんですかぁ……」

「たったの四十キロだよ! 私が中学生の時に上げてたやつ!」

「私、中学生じゃないです! アイドルですぅ!」


桃の華奢な腕が、武者震いのようにガクガクと揺れている。

ベンチプレスの上に横たわり、バーベルを持ち上げようとするが、数センチ浮いたところで限界を迎えていた。


「桃さ、あんた今日の朝、なんて言った?」

ひかりがキムチ鍋のハシを止め、真顔で桃を見下ろした。

「『誰かを元気にできるアイドルになりたい』って言ったよね? 守られるだけじゃなくて、強くならなきゃって言ったよね?」


「はい……言いました……けど……」

「じゃあ上げろ! ヒーローが限界なんて顔してたら、見てる子供たちは誰を頼ればいいんだよ! 自分が傷つくのを怖がってる奴に、他人の痛みを引き受けることなんてできるか!」


ひかりの怒号が、地下室の壁に反射する。

言葉は乱暴だった。けれど、その瞳には嘘がない。ひかり自身が、気の遠くなるような努力でその身体と強さを手に入れたのだと、伝わってきた。


「わたしは……っ」

桃は歯を食いしばった。綺麗なネイルを塗った爪が、バーベルの金属面に強く食い込む。

(怖い……痛い……もう逃げたい……)

でも、頭の中に浮かんだのは、ファンミーティングで握手した小さな女の子の手の温もりだった。

「私を……応援してくれる人を……ガッカリさせたくないのぉぉぉぉっ!」


ぐぐぐ……と、ゆっくりだが確実に、バーベルが持ち上がっていく。

「そうだ! 行けぇ、桃!!」


◇


その頃、本館の一室。

静まり返った部屋で、葵はノートパソコンの画面と睨み合っていた。

隣には、冷たい紅茶を啜る美咲あき。


画面に映し出されているのは、煌坂★パステリズムの過去のライブ映像と、それに伴うファン層の感情推移データ、さらには戦術時の行動ログだった。


「……意味が分かりません、あきさん」

葵は眼鏡を押し上げ、乱れた息を整えながら問いかけた。

「なぜ私が、この膨大なデータを一人で再構築しなければならないのですか? チームの分析なら、全員で共有して……」


「葵さん」

あきは紅茶のカップをソーサーに置いた。カチャン、と短い音が響く。


「あなたはいつも『全体』を見ていますね。それはアナリストとして優秀な資質です。ですが……あなた自身はどこにいますか?」


「私……ですか?」

「ええ。あなたは仲間を活かすための計算、失敗しないためのリスクヘッジばかり考えている。まるで、自分をチームの『備品』か何かのように扱っているわ」


あきはタブレットを操作し、葵のパーソナルデータを画面に大きく表示させた。


「あなたの処理能力、状況判断力は、ステラプリズムの基準で見ても極めて高い。なのに、なぜあなたはいつも一歩引いて、茜さんや咲さんの影に隠れようとするのですか?」


「それは……私が目立つタイプではないからです。データに基づいたサポートこそが、私の役割で……」

「逃げないで」


あきの静かな、しかし拒絶を許さない声が葵の言葉を遮った。


「根性論だけでは突破できない局面が、必ず来ます。その時、チームを救うのはあなたの冷徹なまでの『知性』と、それを押し通す『個の意思』です。周囲に合わせるための計算は捨てなさい。あなた自身が、この戦術の『主役』になりなさい」


葵は画面を見つめた。

そこに映る自分の数値。

(私自身が……主役……? サポートではなく……私が、このチームを勝たせるための解を導き出す……?)


キーボードを叩く葵の指先から、迷いの余分な力が消えていった。


---


合宿所の裏手にある荒涼とした敷地。そこには、切り立った崖と、風化しかけた巨大な岩石がゴロゴロと転がっていた。


翠は一人、木刀を構えて立っていた。

対峙するのは、天照陽菜。

陽菜は武器を持たず、ただ薄手のカーディガンを羽織って、穏やかな笑みを浮かべて静かに立っている。


「来なさい、翠さん」

「……失礼します!」


翠が地を蹴った。

バレーボールのスパイクで培った爆発的な踏み込み。木刀が風を切り、陽菜の肩口へと振り下ろされる。

無駄のない、完璧な軌道。


だが――パシッ。


陽菜は最小限の動きで身体を半身にずらし、翠の手首を軽く突いた。

それだけで翠の体勢は大きく崩れ、木刀が手から滑り落ちる。


「くっ……!」

「鋭い踏み込みです。ですが……読めすぎますね」


陽菜は落ちた木刀を拾うでもなく、翠の前に静かに立った。


「あなたはいつも、他人の動きに合わせようとしています。味方が攻めやすいように、敵が動きやすいように……いわゆる『気の利くプレイヤー』です。でも、それでは『繋ぎ役』であっても『要(かなめ)』にはなれません」


「……どういうことですか、陽菜さん」

翠は地面に膝をついたまま、悔しさに唇を噛みしめた。


「最高のディフェンダーとは、受動的な存在ではないのですよ」

陽菜の瞳が、一瞬だけ鋭い光を帯びた。

「自分が場を支配し、敵の動きを誘導し、味方が最も輝く場所を強制的に作り出す。それが、真の『繋ぎ』です。あなたは自分を小さく見せすぎている。もっと欲を持ちなさい。『私がいなければ、このチームは立ち行かない』という、傲慢なほどの自負を」


翠の胸の奥で、カチリと何かが噛み合わさる音がした。

(他人に合わせるんじゃない。私が……この場をコントロールするんだ……!)


◇


そして、山頂の展望台。

吹きすさぶ強い風の中、茜は一人、月城玲奈と向かい合っていた。


他の四人がそれぞれの場所で血の滲むような試練に耐えている間、茜に与えられた課題は、ただ一つ。


「私を打ちなさい」


玲奈は竹刀を一手に持ち、眼下の景色を見つめたまま背を向けていた。完全な無防備。


「いきます……っ!」

茜は竹刀を上段に構え、全力で踏み込んだ。

初日の稽古で学んだ、全身の力を乗せた一撃。


パンッ!


打撃の直前、玲奈は振り返りもせず、背後へ竹刀を回して茜の攻撃を完璧に受け止めた。

手に強烈な痺れが走り、茜は数歩後ろへ弾き飛ばされる。


「打ち込みが軽い。怒りも、覚悟も、何も乗っていない」

玲奈の冷たい声が風に乗って届く。


「なぜですか? あなたはレッドでしょう。仲間を引っ張るリーダーでしょう。なぜ、そんなお迷い足で私の前に立っているのですか?」


「私は……!」

茜は地面を強く踏みしめた。

「私は、みんなの背中を押したいんです! 五人で一緒に、強くなりたいんです!」


「それが甘いと言うのです!」

玲奈が初めて、激しい声を張り上げた。

旋風のような踏み込み。一瞬で茜の間合いに侵入した玲奈の竹刀が、茜の胴へ容赦なく叩き込まれた。


「ガハッ……!?」

肺から空気が吐き出され、茜は膝をついた。激痛に視界が歪む。


「『みんなで』? 『一緒に』? ふざけるな!」

玲奈が上から茜を見下ろす。


「レッドとは、孤高の存在です。全員が絶望に打ちひしがれ、立ち上がれなくなった時、たった一人でも敵の前に立ち塞がり、背中で道を切り拓く者……それがレッドです! 仲間の顔色を伺い、歩調を合わせているだけのリーダーなど、戦場では真っ先に死にます!」


「うぁ……あ……っ」

「個の強さのない優しさは、ただの傷の舐め合いです。仲間を頼る前に、まずあなた自身が『絶対に折れない絶対的な一振り』になりなさい!」


玲奈の言葉が、脳内でリフレインする。

(私自身が……折れない一振りに……?)


茜は地面に爪を立てた。泥が爪の間に入るのも構わず、必死に身体を起こす。

(そうだ……私は、みんなに守られてここまで来たんじゃない。みんなと一緒に笑いたいから……一番前を走りたくて、レッドになったんだ!)


茜の瞳に、燃えるような紅い火が灯る。


「……もう一度……もう一度お願いします、玲奈さん!!」


◇


その夜。

合宿所の食堂に、五人の姿があった。


……が、そこにあったのは昨日のような賑やかな会話ではない。

全員、死体のようにテーブルに伏していた。


咲は濡れた髪にタオルを巻き、ガタガタと震えながら温かいお茶を啜っている。

桃は全身湿布だらけで、箸を持つ手すらプルプルと震えて歩き方が生まれたての小鹿だ。

葵は目が真っ赤になるまでデータを読み込み、PCの横でぐったりと頭を抱えている。

翠は腕に巻いたバンテージを痛そうにいじり、茜は声がガラガラになるまで叫び続けたせいで言葉が出ない。


お互いのボロボロすぎる惨状を視界に捉えた、その瞬間――


「「「「「……ぷっ……あはははははははっ!!」」」」」


誰かが吹き出したのを皮切りに、食堂全体が大爆笑に包まれた。


「ちょっと咲、その髪型なによ! 爆発してるじゃない!」

「葵ちゃんだってメガネ歪んでるよ! 桃ちゃんなんて歩き方が完全におばあちゃんだし!」

「ひぃぃ、笑わせないでください……腹筋が破裂しますぅ〜!」


お互いの顔を見て笑い合う。

昨日までの「みんなで仲良く乗り切ろう」という生温かい雰囲気とは、明らかに違っていた。

一人一人が自分の限界と向き合い、泥を啜り、ボロボロになりながら掴み取った「何か」。

離れていたからこそ、相手がどれほど過酷な時間を生き抜いてきたかが、言葉を交わさずとも痛いほど理解できた。


「……みんな、個の覚醒、できた?」

茜が擦り切れた声で尋ねる。


咲が拳を握りしめた。「バッチリ! 私の足、もう絶対ぶれないから!」

桃が笑った。「うん! 私、もう目は閉じないよ!」

葵が眼鏡を直した。「戦術の再定義は完了しました。明日は私に任せてください」

翠が不敵に口元を上げた。「繋ぐんじゃない。私が、場を制する」


茜は五人の顔を見渡し、力強く頷いた。

「よし。明日の試験……あいつらに、私たちの本気を見せてやろう!」


---


三日目の朝。

合宿所の大演習場。周囲を頑丈な防護壁で囲まれたその場所に、五人は立っていた。


向かい側に立つのは、月城玲奈。

そして、その背後に控えるのは、ステラプリズムが誇る最新型の自律型戦闘ドローン五機。さらには、プロテクターを完全装着した紅葉、ひかり、あき、陽菜の四人だった。


「最終試験を開始します」

玲奈がストップウォッチを掲げる。


「条件はシンプル。ドローン群を全滅させ、さらに私たちのガードを突破して、私に一撃を入れること。制限時間は五分。……覚悟はいいですね?」


「「「「「はいっ!!」」」」」


五人の声が合わさった。

だが、その陣形は初日のような「肩を寄せ合う防御陣形」ではない。

五人がそれぞれの間合いを保ち、広範囲に散らばる「拡散型陣形」だった。


「行くぞ、ドローン展開!」

紅葉の合図とともに、五機のドローンがすさまじい駆動音を立てて滑空を開始する! ターゲットは分散した五人!


「葵!」茜が叫ぶ。

「了解! パターンC、個別撃破へ移行!」


葵の瞳が光った。昨日までのように「みんな大丈夫か」と周囲をキョロキョロ見る姿はない。目の前のドローンの射撃軌道を瞬時に計算し、最適な回避行動をとる。


「右三十度、咲! 踏み込んで!」

「任せてぇぇぇっ!」


咲が地を蹴った。

滝修行で培った、ブレない体幹。ドローンのレーザー照射を最小限のステップで回避し、軸の通った完璧なハイキックをドローンの基幹パーツへ叩き込む!


バゴォンッ!


ドローン一機が激しい火花を散らして撃沈!


「次は私! 逃げない……逃げないよぉぉっ!」

桃に襲いかかる二機のドローン。桃は恐怖で泣きそうになりながらも、決して目を逸らさなかった。ひかりとの筋トレで鍛え上げた腕力で、迫るドローンの突撃を正面から受け止め、そのまま二機を激突させて破壊!


「なにっ!?」ひかりが目を見張る。「あいつ、あの短時間でパワーを実戦に落とし込んだか!?」


「甘いです!」あきが葵の間合いへ踏み込み、鋭い掌打を繰り出す。

だが、葵は動じない。

「あきさん。あなたの攻撃パターンは、すでに私のデータの中にあります!」

葵があきの攻撃を最小限の動きで受け流し、手首を捉えて体勢を崩す!


「翠、今です!」

「言われるまでもない!」


翠が躍り出た。

陽菜の教え――受動的な繋ぎではなく、場を支配する「要」。

翠は木刀を旋風のように振り回し、あきと紅葉の連携ラインを強引に分断! 敵の防衛線を意図的に崩し、中央に一本の直線(ビクトリーロード)を作り出した!


「道は開いたぞ、茜!!」


翠の叫びが演習場に轟く。


そこには、一人でじっと機会を待っていたレッド――煌坂茜がいた。


仲間が倒れても、自分が全滅させられても、最後に敵を穿つためだけに研ぎ澄まされた、圧倒的な「個」。


「おおぉぉぉぉぉぉっ!!!」


茜が地を滑るように踏み込んだ。

玲奈とのタイマンで叩き込まれた、全身全霊の一撃。

邪魔するドローンも、紅葉のカバーもすでにない。翠が開いた一直線の道を、茜という一筋の紅い閃光が駆け抜ける!


玲奈が静かに竹刀を構えた。

だが、茜の踏み込みは玲奈の予測をコンマ数秒超えていた。


「ハァァァァァッ!!」


ドガンッ!!!


空気を破裂させるような衝撃音が響いた。

茜の木刀が、玲奈の竹刀を力で弾き飛ばし、その先端が玲奈の胸元数センチのところでピタリと止まった。


風が止む。

タイマーの電子音が、静かに終わりを告げた。


---


静寂が演習場を包み込む。


茜は荒い呼吸を繰り返しながら、木刀を握りしめて立ち尽くしていた。

玲奈は、弾き飛ばされた自分の竹刀が一歩後ろの地面に転がっているのを一瞥し、それからゆっくりと茜を見つめた。


「……見事です」


玲奈の口から、小さな、けれど明確な言葉が漏れた。


「バラバラに砕かれた個が、それぞれの牙を研ぎ澄まし、再び集まった時……それはただの足し算ではない。爆発的な掛け算となる。あなたたちは今日、本当の意味で『チーム』になりました」


「玲奈さん……っ」


後ろ振り返ると、咲も、桃も、葵も、翠も、ボロボロになりながら笑っていた。

誰かに頼るためじゃなく、自分がチームを勝たせるために手に入れた強さ。

その「個の覚醒」があったからこそ、今日の勝利があったのだ。


紅葉が歩み寄り、不器用そうに頭を掻いた。

「……フン。滝修行の成果は出ていたみたいだな、咲」

「へへ〜んだ! 紅葉さん、次はもっと凄いキック見せてあげるからね!」


ひかりが桃の肩を組み、豪快に笑う。

「やるじゃん桃! 激辛筋肉の成果が出たな!」

「ひかりさんのおかげです……でもキムチ鍋はもう当分いいですぅ〜!」


あきと陽菜も、葵と翠に温かい視線を送っていた。


玲奈が手元のバインダーを閉じ、静かに宣言する。


「合宿訓練、全行程終了。あなたたち『煌坂★パステリズム』の修行生としての適性を、正式に認めます」


五人が顔を見合わせ、最高の笑顔を弾けさせた。


「「「「「やったぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」


その日の夕方。

帰りのバスに乗る前、茜は合宿所の屋上から夕焼け空を見上げていた。


「茜」

隣に並んだのは葵だった。


「今日データを見直して分かったことがあります」

「なに?」

「私たちの成長曲線は、当初の予測の三倍以上のスピードで上がっています。……これなら、本物の戦隊として立つ日も、そう遠くはありません」


「うん」

茜は空に向かって、自分の拳を強く突き上げた。


「私たち、もっと高くなれるよ。ステラプリズムの先輩たちに並ぶくらい……ううん、いつか追い抜いちゃうくらいにね!」


茜の紅い瞳に、沈みゆく夕日と、これから始まる未来の輝きが、強く、強く反射していた。


---


【次回予告】


茜「合宿を乗り切って一安心……と思ったら、今度は私たちが『ステラプリズムの格闘ライブ』に緊急参戦!?」

咲「相手はあのセーラー戦士たちだよ!? 勝てるわけないじゃん〜!」

葵「いいえ、データ上、私たちにも一筋の勝機があります。それは……」

桃「私たちの『AIアイドル』としての武器を解き放つこと……?」

翠「戦隊のアクションと、アイドルのライブの融合……これこそが私たちの真骨頂だ!」

茜「観客の歓声をエネルギーに変えて、輝け、キラリンジャー!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第3話:

『激突! 魅せるステージと戦う覚悟』


燃え上がれ、勇気の煌き★!

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