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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第2章

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19/26

第19話:地下からの怨念!? 暴走するチカノコと路上ライブ!

【アバン】


「――見て見て茜! 街頭ビジョン、また私たちが映ってるよーっ!」


煌星市(きらぼしし)の駅前大通り。

ポニーテールを上下に弾ませながら、咲が街頭ビジョンの大画面を指さして大はしゃぎしていた。


画面に映し出されているのは、先日の『一日警察署長』で強盗団を華麗に制圧した私たちの映像と、新曲発表ライブのダイジェストだ。

『今、最も街を沸かせるAIアイドル! 煌坂★パステリズム、破竹の勢い!』なんてテロップが、眩しく踊っている。


「ちょっと咲、街中で大声出さないの。バレたらどうするのさ」

私はジャージの襟を少し立てて、周りの目を気にしながら囁いた。だけど……正直に言うと、胸の奥がくすぐったくて、口元がゆるむのを抑えきれなかった。


「ふふ、大丈夫ですよ。変装用のダテメガネも完璧です」

隣で葵が満足そうにメガネのフチをつまむ。

「新曲『キラメキ・リコネクト』の動画再生数もミリオンを突破。ファン層の拡大速度は、当初の予測モデルを300%上回っています」


「街の人たちもね、みんな笑顔でポスター見てくれてるの……すごく嬉しいなぁ」

桃が桃色のマフラーに顔を埋めて、ふんわりと目を細める。

「へっ……まあ、泥啜って山でシバかれてきた甲斐はあったってことだろ」

翠がポケットに手を突っ込み、照れくさそうに明後日の方向を向いた。


有明での失敗、ネットでの大炎上、地獄の合宿、テストの赤点危機……どん底から這い上がってきた私達。

あの怖かった『真の敵』の襲来だって、全員の絆で退けたんだ。


(私達、もう大丈夫だよね。どんなことが起きても、今の5人なら乗り越えられる)


胸の中に満ちていたのは、温かい自信と、ほんの少しの慢心だった。

まさかその足元で、泥よりも深くて暗い『別の悪夢』が、静かに渦巻いているなんて思いもしないで。


その時、私たちのすぐ脇にある地下街への階段から、冷たい湿った風が吹き抜けた。


ウゥゥゥ……。


風に混ざって聞こえたのは、人の声とも獣の唸りともつかない、不気味で重苦しいデスボイスだった。


「……なに、今の音?」

咲が首をかしげる。


でも、私たちは「風の音かな?」なんて笑い合って、そのまま賑やかな街へと歩き出していったのだった。


---


【Aパート】


「……浮かれすぎです、あなたたちは」


事務所の最上階。

戻ってきた私たちを待っていたのは、氷のように冷ややかな月城玲奈さんの声だった。


「えっ……玲奈さん?」

私が呆気にとられて声を漏らすと、玲奈さんは手元の黒いバインダーをパチンと重い音を立てて閉じた。

脇には、愛咲美玲さんや火ノ宮紅葉さんたち『ステラプリズム』の先輩方が、いつになく真剣な表情で並んでいる。


「新曲の成功、一日警察署長での評価。結構なことです」

玲奈さんの銀色の瞳が、私たちを順番に射抜く。

「ですが、自分たちが『無敵のヒーロー』にでもなったつもりですか? 足元で何が起きているかも知らずに」


「あ、足元……?」

咲が戸惑ったように目を丸くする。


あきさんが操作するモニターに、監視カメラの映像が映し出された。

映っていたのは、煌星市の駅前地下街や、日当たりの悪い裏通りの路上ライブ会場だ。


画面の中で、楽しそうに歌っていたインディーズのアイドルや観客たちが、突然発生した黒いモヤに包まれ、悲鳴を上げて逃げ惑っている。

モヤの中から現れたのは……黒いタイツのような体をつつみ、手に不気味な黒いケミカルライトを握りしめた無数の影。


「これって……カゲノコ?」

翠が眉をひそめた。

「カゲノコ(下級戦闘員)の残党なら、今まで何度も蹴散らしてきただろ。なんで今さら――」


「違います」

あきさんが冷静に修正した。

「波形データが、通常のカゲノコとは異なります。彼らは異界からの純粋な破壊衝動ではなく……この街の『陰』から生まれた存在です」


「陰……ですか?」葵が身を乗り出す。


「あなたたちが太陽の光を浴びて華やかに輝けば輝くほど、その影で光を浴びられず、地下や路上に追いやられた者たちの嫉妬や嫉妬(ねたみ)……『ちやほやされたい』という卑屈な怨念が溜まっていく」


玲奈さんが冷たく言い放った。


「彼らは自らを【チカノコ】と称し、人々の歓声や応援エネルギーを奪い取り始めています。……カゲノコのような単純な暴力ではありません。ドロドロとした人間の醜い承認欲求が凝縮された、極めてたちの悪い存在です」


「チカノコ……?」

咲が思わず「プッ」と吹き出した。

「名前ダサっ! なにそれ〜、ちやほやされたいからって暴れてるの? カゲノコの色違いみたいな雑魚でしょ!」


「咲、笑い事じゃないよ……」桃が不安そうに裾を握る。


「いや、咲の言う通りだって」

私もつられて、少し軽めのトーンで笑ってしまった。

「だって私たち、あの数千のカゲノコ軍団も、あの強大な幹部も突破してきたんだよ? 地下にこもってる雑魚の群れなんて、新曲のダンスのついでにサクッと退治しちゃおうよ!」


「……浅はかですね」


玲奈さんの声のトーンが、さらに一段下がった。


「強い敵に勝ったからといって、小さな悪意を軽視する者から足元を掬われるのです。……痛い目を見なければ分からないようですね」


「玲奈、アタシたちが出ようか?」

紅葉さんが腕を組んで尋ねたが、玲奈は首を振った。


「いいえ。彼女たちに行かせなさい。……自分たちの撒き散らした『光の影』と、正面から向き合って来させます」


---


【Bパート】


煌星市・歩行者天国。

普段は若手ミュージシャンや路上アイドルが夢を追って歌っている、賑やかなストリート。


「キャーッ! なにこれ、キモいーっ!」

「ペンライトが黒く光ってる!? 助けてぇっ!」


現場へ駆けつけた私たちの目に飛び込んできたのは、地獄のような惨状……というよりは、なんとも言えない嫌な空気の光景だった。


路上で歌っていた若い女の子のグループが、腰を抜かして震えている。

その周りを、数十体の『チカノコ』たちが取り囲んでいた。


彼らは手に持った黒いケミカルライトをウネウネと不気味に振り回し、地獄の底から響くような怨嗟のデスボイスで叫んでいた。


『オレタチモ……チヤホヤサレタイ……!』

『ズルイゾ……地上ノアイドル……! オレタチニモ……カンセイヲ・ヨコセーッ!』


「うわぁ……なんか、すごくジメジメした叫び声……」

桃が思わず引いた腰で囁く。


「なによアイツら! 人の路上ライブ邪魔して、ちやほやされたいとか身勝手すぎるでしょ!」

咲が腰に手を当てて怒鳴り散らす。


「分析完了。個々の戦闘数値は極めて低いです」

葵がメガネを押し上げ、確信に満ちた声で言った。

「やはり、通常のカゲノコ以下のスペック。サクッと片付けて、事務所に戻りましょう」


「へっ、秒で終わらせてやるよ!」

翠が木刀を構える。


「行くよみんな! 新・煌変!!」


「「「「「新・煌変!!」」」」」


カチリッ!


眩い五色の光が路地を包み込み、私達は瞬時に『キラリンジャー』へと変身した!


「炎の情熱! キラリンレッド!」

「水の知性! キラリンブルー!」

「雷の躍動! キラリンイエロー!」

「花の愛しさ! キラリンピンク!」

「風の疾風! キラリングリーン!」


「「「「「煌戦隊★キラリンジャー!!!」」」」」


ドガァン! と背後で派手な爆発の演出(光の粒子)が弾ける。

いつもなら、これだけで周りの歓声が上がり、敵は怯むはずだった。


だが――。


『ウワァァァッ! ズルイ! 演出ガ派手! カッコイイ! ズルイゾーーッ!』

チカノコたちは怯むどころか、さらに黒いケミカルライトを激しく振って、ドロドロとした怨念のオーラを倍増させたのだ!


「な、なにコイツら!? 怖がるどころか嫉妬に狂ってるんだけど!?」

イエロー(咲)が引きつった声を上げる。


「構うな! 叩き潰すぞ!」


レッド(茜)が一気に踏み込み、『キラリンセイバー』を振り下ろした!


「ハァァァッ!」


一閃!

普通のカゲノコなら、これ一発で光の粒子になって消滅するはずだった。


ガキンッ!


「えっ……!?」


斬られたチカノコは、確かに吹き飛んだ。

だけど、地面をゴロゴロと転がったあと、なんと『嬉しそうに』立ち上がったのだ!


『やった……! レッドに斬られた! オレ今、カメラに映った!? 注目されたーーっ!』


「は……はいぁ!???」

レッドは思わず素の声を上げて固まった。


「なんなのコイツらーっ!? 殴られたら喜んでるんだけどーっ!?」

イエローが雷のキックで叩き落としても、チカノコたちは『ウヒョー! イエローに蹴られた! おいしい!』と身をよじって立ち上がってくる。


「気味が悪い……! ですが、攻撃の威力を上げれば……!」

ブルー(葵)が水流の矢を連射する。だが、チカノコたちは矢を受けるたびに、粘着質な黒い煙をモワモワと撒き散らし始めた。


『オレタチノ苦労モ知らずに……綺麗事ばかり歌いやがって……!』

『地下ノ冷タサヲ……知れぇぇぇっ!』


「うわっ……なんか、服に黒いススが……!?」

ピンク(桃)の綺麗なシールドが、チカノコたちの撒き散らすドロドロした怨念のススで真っ黒に汚れていく。


攻撃が効かないわけじゃない。弱いのだ。圧倒的に弱い。

だけど……いくら叩いても、いくら斬っても、「ちやほやされたい」「注目されたい」という粘着質な怨念で立ち上がってきて、泥を擦り付けてくる!


「くそっ……! 爽快感が全っ然ねぇ……っ!」

グリーン(翠)が風の刃を振り回しながら、吐き捨てるように叫んだ。


爽やかに敵を倒すはずだった私たちの連携が、チカノコたちの重苦しい『嫉妬の沼』に、じわじわと引きずり込まれ始めていた。


---


【Cパート】


「ハぁ……っ……ハぁ……っ」


戦闘開始から、わずか十分。

怪人との死闘でもないのに、私たちは全員、激しい疲労感で肩を揺らしていた。


怪我はほとんどしていない。スーツのダメージも軽微だ。

だけど……心が酷く重い。

叩くたびに『嫉妬の叫び』を聞かされ、泥のような暗い感情をぶつけられ続けて、胸の奥がドロドロに汚されていくような感覚。


これが……玲奈さんの言っていた『陰の怨念』の恐ろしさ……!


「茜……コイツら、キリがないよ……っ」

イエロー(咲)の声から、いつもの元気が完全に消えていた。


「計算外です……」ブルー(葵)が不快そうにバイザーを拭う。「彼らは物理的な破壊を求めているのではありません……私たちの『爽やかさ』や『光』を汚すことそのものが目的なのです……!」


「そんなの……悲しすぎるよぉ……」

ピンク(桃)が弱々しく呟く。


『ヒカリヲ……奪エ……! オレタチモ……地上デ……輝くんだぁぁぁっ!』


チカノコたちが、黒いケミカルライトを掲げて一斉に押し寄せてくる。

その姿は、まるで光を求めて群がる、悲しい影の蠢きのようだった。


(ダメだ……ここで私たちが嫌がって引いちゃったら……本当のヒーローじゃない!)


私は歯を食いしばり、『キラリンセイバー』を強く握り直した。


「みんな! 愚痴ってちゃダメだ!」


「茜……?」


「コイツらがどれだけジメジメしてても……どれだけ泥を投げてきても! 私たちが光を消しちゃったら、応援してくれてるみんなの笑顔まで暗くなっちゃう!」


私は四人の顔を見回した。


「泥なら、私たちだって散々喰らってきたじゃん! 白目むいて笑われて、どん底から這い上がってきたのが、私たち『パステリズム』でしょ!!」


私の叫びに、四人の瞳に再び火が灯った。


「……そうだったな。泥泥言われて、ビビってる場合じゃねぇや」

グリーン(翠)が口元を拭う。


「私たちの輝きは……こんな湿っぽい怨念ごときで曇るものですか!」

ブルー(葵)が計算尺を構え直す。


「うん! 私たちの歌で……この暗い影も、吹き飛ばしちゃおう!」

ピンク(桃)が前に出る。


「よーし! サクッと片付けて、美味しいパフェ食べに行くぞーーっ!」

イエロー(咲)が再び跳躍した!


「「「「「必殺・五色連鎖(ごしきれんさ)……!!」」」」」


チェンジャーから解き放たれた純粋な五色の光が、路上を包み込む!


「キラリン・ペンタ・ブレイカーーーッ!!!!」


轟音!!


虹色の光の龍が、押し寄せるチカノコたちの群れを一直線に貫いた!


『ギャアァァァァッ!? チヤホヤサレタカッターーーッ!!』


凄まじい叫びとともに、チカノコたちは光の粒子となって吹き飛んでいった。


……だが。


爆発が収まったあとに残ったのは、いつものような爽快な勝利感ではなかった。

路上には黒いススが残り、夕闇が重たく街を覆っていた。


「ハぁ……ハぁ……」


変身が解除され、生身に戻った私たち。


「……なんか、すごく疲れたね」

咲がトボトボと歩きながら呟いた。


「ええ……。肉体的な疲労ではなく、精神的な摩耗が激しいです」

葵も疲れ切った顔でメガネをかけ直す。


自分たちの撒き散らした『光』が、巡り巡ってこんな陰の怨念を生み出していたなんて。

勝利したはずなのに、私たちの胸には、ズシッと重い徒労感だけが残されていたのだった。


---


【エピローグ】


現場から少し離れた、ビルの屋上。


夕焼けを見つめていた月城玲奈が、静かに振り返った。

隣には、愛咲美玲と火ノ宮紅葉。


「……思い知ったようですね」


玲奈の声には、怒りではなく、深い静寂が含まれていた。


「強い敵を倒すことだけが、戦いではありません。自分たちが光を放てば放つほど、その足元には濃い影ができる。……その影の痛みにまで思いを馳せられなければ、本当の『街の守護者』とは言えないのです」


「玲奈さん……あの子たち、大丈夫でしょうか」美玲が心配そうに街を見下ろす。


「大丈夫です。あの子たちは泥を知っている。……だからこそ、影の痛みを理解できるはずです」


だが、玲奈たちの知らぬところで――。


煌星市の地下深く。人知れず広がる、棄てられた地下水路の暗がり。


そこに、逃げ延びた無数のチカノコたちが集まっていた。


『クソッ……! また負けた! 地上のキラリンジャーめ!』

『オレタチダッテ……輝きたいんだ! カッコイイ衣装を着て、歓声を浴びたいんだ!』


怨念の黒い煙が、地下水路の中で渦を巻き、ひとつに凝縮されていく。


『普通に戦っても勝てない……! だったら……!』


ひとりのチカノコが、落ちていた赤・青・黄・ピンク・緑のペンライトをかき集め、胸に掲げた。


『オレたちも……戦隊になるんだよぉぉぉっ!』


『オォォォォッ! カガヤキタイ! オレタチモカガヤキタイ!!』


黒い煙が弾け、異様な光を放ち始める。


『結成だ! 地下ドル戦隊……【カガヤキタインジャー】!!!』


ドロドロとした歪んだ承認欲求の塊が、悪質極まりない『パチモン戦隊』となって産声を上げたのだ。


その凶悪な影が地上のパステリズムへ向かって伸ばされていることを、茜たちはまだ、誰も知らなかった――。


---


【次回予告】


茜「チカノコを撃退したものの、なんだかすっきりしない私達……。そんな中、街に突然現れたのは……悪質なパチモン戦隊『カガヤキタインジャー』!?」

咲「何あの衣装〜!? 全体的に安っぽいし、決めポーズがすっごくジメジメしてるんだけど〜っ!」

葵「ですが……彼らの怨念パワーは本物です! 私たちの技が……効きません!?」

桃「嫌……嫌だよぉ! 私たちの輝きが……奪われちゃう……!」

翠「負けてたまるか……うわぁぁぁぁっ!?」

茜「絶望の敗北!? 奪われた歓声と、打ち砕かれた絆! 一体どうなっちゃうの!?」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第20話:

『「地下ドル戦隊カガヤキタインジャー」登場! キラリンジャー……敗れたり!!!!』


燃え上がれ、勇気の煌き★!

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