第17話:新曲披露! 狙われた晴れ舞台と私たちの絆!
【アバン】
「――よし! 赤点回避のギリギリ答案用紙も過去の話! 今日はいよいよ、私たちの『新曲発表お披露目ライブ』だよーーーっ!」
鏡の前で、パステルピンクとシルバーの新しい衣装を広げながら、咲が跳ねるように叫んだ。
金髪のポニーテールがぶんぶんと揺れて、キラキラしたラメのリボンが踊っている。
「咲、着替えながら跳ねないで。生地が突っ張って縫い目が痛みます」
葵が呆れ顔で注意しつつも、自分の新しい衣装……鮮やかなパステルブルーのジャケットの袖口を、少し照れくさそうに整えていた。
「だってさぁ! 16話であんな地獄のテスト合宿を乗り越えたんだよ!? 36点で踏みとどまったんだよ!? 叫びたくもなるってば〜!」
「自慢できる点数ではありませんが……まあ、こうして全員でステージの裏に立てていること自体は、評価すべきですね」
「ふふ、新しい衣装、すごく可愛い……! 胸元のリボン、五人の属性カラーになってるんだね」
桃が桃色のスカートの裾をふわりと広げて、姿見の前でくるりと回る。
「へっ、フリフリすぎてちょっと落ち着かねぇけど……踊りやすさは抜群だな」
翠が緑色のショートジャケットの襟を正しながら、不敵に口元を上げた。
私――煌坂茜は、手元の【炎】の属性キーをそっと撫でてから、新品の赤地の衣装に腕を通した。
地獄のフィジカル特訓、山奥合宿、生放送の失態、数千のカゲノコ軍団との死闘、そしてテストの赤点危機。
いろいろありすぎた。泥を啜って、白目むいて笑われて、全員でボロボロになって。
だけど、そのたびに手を取り合って立ち上がってきたからこそ、今、この胸の中に溢れている熱さは本物だって胸を張れる。
「みんな、準備できた?」
私が振り返ると、四人が最高の笑顔で頷いた。
「今日の新曲『キラメキ・リコネクト』……客席のみんなに、私たちの最高の煌めきを届けよう!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
円陣を組んで手を重ね合わせた、その直後だった。
パイプ椅子に座ってノートパソコンを開いていた葵の顔から、すっと血の気が引いた。
「……葵ちゃん? どうしたの?」
桃が不安そうに覗き込む。
葵はメガネのブリッジを押し上げ、冷たいレンズの奥で画面を見つめたまま、重い声を漏らした。
「……前言撤回です。浮かれている場合ではありません」
画面には、ライブ会場である『横浜ベイエリア・グランホール』の全体構造図と、赤く点滅する禍々しい波形が表示されていた。
「会場内部および舞台裏の数箇所に……これまでのカゲノコとは異なる、不吉な『空間歪み』の反応を検知しました。……怪しい影が、ホール内に潜入しています」
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【Aパート】
「怪しい影……!? また敵が来たの!?」
咲が思わず声を張り上げ、自分の口を両手で塞いだ。
「静かに。楽屋の外にはスタッフや観客がいます」
葵が低い声で制する。
「反応は微弱ですが、確実に存在しています。カゲノコ軍団の残党か、あるいは……先日私たちを一撃で倒した『あの男』と同種の、別の侵略者か」
「ええっ……またライブ中に邪魔されちゃうの……!?」
桃が両手を胸の前でギュッと握りしめ、顔を曇らせる。「せっかく……みんなで新しい衣装を着て、新曲を歌える晴れ舞台なのに……」
「……チェッ。どこの馬骨だか知らねぇが、間が悪いんだよ」
翠が木刀を模したダンス用小道具を肩に担ぎ、ギラリと眼光を鋭くした。
「せっかくの晴れ舞台に泥塗ろうとしてんじゃねぇよ。邪魔者は即撃破だ。私たちのステージ、指一本触れさせねぇ!」
「翠の言う通りだよ!」
茜は四人の顔をまっすぐ見つめた。
「避難誘導の準備は葵に任せる。でも……ライブは絶対に中止にしない! 最高の新曲と、最高のパフォーマンスで客席を熱狂させて、襲ってくる影なんて全部吹き飛ばしてやる!」
「……了解です。安全確保のプログラムをバックグラウンドで走らせつつ、ステージに上がります」
葵がニヤリと口元を上げた。
◇
一方、舞台袖の暗がり。
モニター群の前で腕を組み、静かに会場の監視カメラ映像を見つめる女性がいた。
白いパンツスーツに身を包んだ月城玲奈。
その両脇には、愛咲美玲、火ノ宮紅葉、雷咲ひかり、美咲あき、天照陽菜――ステラプリズムの面々が密かに控えていた。
「玲奈さん……あの子たちの晴れ舞台に、嫌な影が侵入しているみたいですね」
美玲が心配そうに囁く。
「ええ。前回の『真の敵』の出現以降、異界との境界が不安定になっています。奴らは、パステリズムの引き出す【5つの属性キー】の共鳴エネルギーを狙って集まってきている」
玲奈の声はどこまでも冷徹だったが、その手元のバインダーを握る指先には、かすかな力がこもっていた。
「玲奈、アタシたちが出撃して、客席に紛れてる影を片っ端から潰してくるか?」
ひかりが拳をボキボキと鳴らす。
「いいえ。必要ありません」
玲奈は即座に却下した。
「彼女たちはもう、守られるだけのヒロインではありません。日常のステージを守り抜きながら、襲いかかる影を叩き潰す……それくらいの芸当、今のパステリズムならやってのけます。……あき、陽菜、万が一の際の劇場バリアの展開準備だけをしておきなさい」
「了解です」あきがタブレットを操作する。
「ふふ、信じてあげましょう。あの子たちの新しい輝きを」陽菜が優しく微笑んだ。
玲奈はチラリと舞台袖の幕の隙間から、ステージ中央へ歩み出ていく五人の背中を見つめた。
「……見せてみなさい、キラリンジャー。あなたたちの絆が、いかなる影をも照らし出すことを」
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【Bパート】
『――お待たせしました! 煌坂★パステリズム、新曲発表ライブ……スタートです!!』
アナウンスとともに、雷鳴のような歓声がホール全体を揺らした。
暗転していたステージに、眩いスポットライトが照射される。
パステルカラーの新衣装に身を包んだ私たちが立ち並ぶと、客席を埋め尽くした数千人のファンから「きゃあぁぁぁっ!」「パステリズムーーっ!」と絶叫が上がった。
『輝け! 繋がる未来へ〜♪ 僕らの光で、世界を叩き開け!!』
新曲『キラメキ・リコネクト』のイントロが鳴り響く!
アップテンポで疾走感のある重低音。私たちは一瞬で笑顔を作り、完璧なフォーメーションで踊り出した。
(すごい……! お客さんの熱気が、直接皮膚に伝わってくる……!)
咲が中央で弾けるような笑顔で跳躍し、桃が可憐なウインクを飛ばし、葵と翠が寸分狂わぬキレでシンクロダンスを披露する。
だが――曲が二番に入り、サビへと差し掛かった、まさにその時だった。
ガタガタガタッ!
天井の照明キャットウォーク、そして客席の左右の暗がりから、不気味な黒い蒸気が立ち上った。
「キシャアァァァァッ!」
姿を現したのは、黒いタイツのような皮膚に赤い目を光らせた『カゲノコ』数十体。
さらに、その中央から現れたのは、巨大なカマキリのような鎌を両腕に持った、新たな影の刺客『カゲノコ・コマンダー』!
「うわっ!? 客席にバケモノが!?」
「演出……? いや、本物だぞ!?」
客席が一瞬で騒然となりかける。
「させない!!」
歌いながら、私はマイク越しに叫んだ。
「みんなー! 今日は特別に、客席参加型の『インタラクティブ・ヒーローショー』演出だよー! 席を立たないで、そのままペンライトを振って応援してねー!!」
咲が即座に言葉を繋ぐ!
「演出だから安心してね〜! 私たちの超絶アクション、特等席で楽しんじゃって〜!」
一瞬の判断。
パニックになりかけた観客が「えっ!? 演出なの!?」「すげぇ、超リアル!」と歓声に変えてペンライトを強く振り始めた。
「葵、フォーメーション・バリア!」
「了解! 新曲のダンスステップBに移行!」
葵の指示で、五人が円陣を描くように踊りながら、衣装の下のチェンジャーを素早く起動させる!
カチリッ!
【炎】【水】【雷】【花】【風】の五つの属性キーが、衣装の隙間から眩い光を放った!
「新・煌変!!」
歌の決めポーズと完全に同期させて、私たちはステージ上で『キラリンジャー』へと華麗に変身してみせた!
「うおぉぉぉっ!? 衣装が一瞬でヒーロースーツに変わった!?」「どんな仕掛けだよ、神演出すぎる!!」
客席から割れんばかりの拍手が湧き起こる!
「来いよ影の虫ケラども!」
グリーン(翠)がダンスの回転運動のまま、襲いかかってきたカゲノコ・コマンダーの鎌を、木刀小道具でガツンと受け止めた!
「私たちの晴れ舞台に……土足で踏み込んでんじゃねぇよ!」
「咲、桃! Cブロックの影を誘導して!」
「ラジャーッ! 笑顔で撃破〜っ!」
イエロー(咲)がハイフリップで客席上空を舞い、そのままカゲノコを蹴り飛ばす!
ピンク(桃)が花のバリア『キラリンシールド』を展開し、観客へ飛ばされた攻撃をすべて完璧に遮断!
「みんなの応援が、私のパワーだよっ★」
「計算通り……すべての影をステージ中央へ追い込みました!」
ブルー(葵)が水流の矢を放ち、敵の足止めを完了させる。
完璧だ。
踊りながら、歌いながら、観客を笑顔にしながら、影を追い詰めていく。
これが、私たちが泥を啜って掴み取った『アイドル×戦隊』の本当の力!
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【Cパート】
舞台袖。
画面を見つめていた火ノ宮紅葉が、感心したように口元を緩めた。
「……へっ。大したもんだ。観客をパニックにさせず、ライブの演出として昇華させながら敵を追い詰めてやがる」
「ダンスの振り付けの中に、完璧に格闘術とバリア展開が組み込まれていますね」あきがタブレットの数値をみつめながら呟く。「同調率は安定して130%をキープ。……見事です」
「あの子たち、本当に強くなったね……!」美玲が涙ぐみながら笑う。
月城玲奈は、胸の前で腕を組み、静かにステージの中央を見つめていた。
その銀色の瞳に、強い誇りが宿っている。
「……トドメを刺しなさい、キラリンジャー」
◇
ステージ中央。
追い詰められた『カゲノコ・コマンダー』が、焦りの悲鳴を上げた。
「キシャアァァッ!? な、なんだこの娘どもは!? アイドルなのか、戦士なのか!?」
「私たちは……どちらでもある!」
レッド(茜)が『キラリンセイバー』を構え、四人と背中を合わせた。
新曲『キラメキ・リコネクト』のラストサビが、ホール全体に響き渡る。
客席から振られる、赤、青、黄、ピンク、緑の数千のペンライトの光。
その光が、声援が、私たちのエネルギーとなって、チェンジャーの属性キーへと集束していく!
「みんなの笑顔が……私たちの力だ!!」
五人の武器が重なり合い、巨大な五色の光の輪が描かれる!
「必殺・煌連撃……!!」
「「「「「キラリン・リコネクト・スラッシューーーッ!!!!」」」」」
轟音!!
五色の光の刃が、ステージ中央のカゲノコ・コマンダーと無数の影を一瞬で一網打尽に引き裂いた!
ドガアァァァンッ!!
華やかな光の演出のような爆発とともに、影の刺客たちは消滅し、ホール全体にキラキラとした光の紙吹雪が舞い散った。
『――繋がる未来へ! 輝け、キラリンジャー!!』
曲のラストフレーズとともに、私たちは完璧なキメポーズを決めた。
静寂。
そして――。
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!! パステリズム!! キラリンジャー!!!」」」」」
割れんばかりの歓声と拍手が、ホール全体を揺らした。観客全員が総立ちになって、私たちに向かって手を振っている。誰一人、怪人の侵入に気づくことなく、最高のエンターテインメントとして熱狂していたのだ。
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【エピローグ】
ライブ終了後、楽屋。
「やった……やったよぉぉぉっ!」
咲がソファに倒れ込みながら大号泣していた。「新曲大成功だよ〜! アクションもバッチリ決まったよ〜!」
「ふぅ……心臓が口から飛び出るかと思いました……」桃も安堵の息を漏らし、お茶をゴクゴクと飲む。
「観客の満足度、99.8%。SNSでの反響も『演出が神がかっている』と絶賛の嵐です」葵が画面を見ながら満足そうに頷く。
「へっ……ざまあみやがれってんだ。私たちの晴れ舞台、邪魔できると思うなよ」翠が不敵に笑う。
そこへ、ドアが静かに開いた。
入ってきたのは、月城玲奈さんとステラプリズムの先輩たちだった。
「玲奈さん! 先輩たち!」私は立ち上がった。
玲奈さんは、手元のバインダーを静かに閉じると、私たち五人を順番に見つめた。
「……見事なステージでした」
玲奈さんの口から、温かい言葉がこぼれた。
「観客の笑顔を守り抜き、自分たちのパフォーマンスを一切崩さずに影を退けた。……あなたたちは今日、本当の意味で『現役AIアイドルがスーパー戦隊に出演したら?』というコンセプトの完全形を見せてくれました」
美玲さんも、紅葉さんも、ひかりさんも、あきさんも、陽菜さんも、温かい拍手を送ってくれた。
「完璧だったよ、茜ちゃん!」美玲さんが優しく抱きしめてくれる。
「合格です、パステリズム」玲奈さんがフッと微笑んだ。「ですが……これで終わりではありませんよ。あなたたちの輝きに惹かれて、これからさらに強力な敵が集まってくるでしょう。日常を守りながら戦う準備を、怠らないようにしなさい」
「「「「「はいっ!!」」」」」
五人の元気な返事が楽屋に響いた。
新衣装を身に纏い、手を取り合う私たち。
どんな影が迫ってこようと、どんな試練が待ち受けていようと。
この五人と、大好きな先輩たちがいれば、私たちはどこまでだって輝いていける。
輝け、キラリンジャー! 私たちの本当の物語は、ここからどこまでも続いていくんだ!
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【次回予告】
茜「新曲ライブも大成功して、ますます勢いに乗る私たち!」
咲「でも……次に待っていたのは、まさかの『一日警察署長』のお仕事!?」
葵「制服を着用しての防犯キャンペーンですが……そこに本物の強盗団が紛れ込みました!」
桃「ええっ!? アイドルの制服のまま戦うの……!?」
翠「警察のメンツも、私たちの威厳も、両方守ってやるよ!」
茜「歌って踊って、一日警察署長としても大暴れ!? 輝け、キラリンジャー!」
次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第18話:
『一日警察署長!? 狙われた事件と乙女のプライド!』
燃え上がれ、勇気の煌き★!




