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【変身ヒロイン×アイドル】煌坂★パステリズム(煌戦隊★キラリンジャー) 修行譚  作者: おおたこ
第1章

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第12話:絶望の暗雲! 全滅のキラリンジャーとステラセイヴァーズ!

息を吸うたびに、胸の奥が焼きごてを押し当てられたみたいに熱くて痛い。

コンクリートの破片が頬に食い込んで、ツーンとした血の匂気が鼻腔にこびりついている。


「あ……くっ……」


指先ひとつ、満足に動かせなかった。

倒れた私の目の前では、さっきまで私たちが立っていたはずのベイエリア特設ステージが、まるでダンプカーに踏みつぶされた粘土細工みたいに無残に砕け散っている。


だけど、私の目は、瓦礫の山じゃなくて、その中央に立つ「光」に釘付けになっていた。


「ハァァァァァッ!」


一閃。

空間を切り裂くような甲高い金属音とともに、紫色の不気味な衝撃波が弾け飛ぶ。

そこに立っていたのは、セーラー服を模した高潔な魔法の装束に身を包んだ、六人の『ステラセイヴァーズ』だった。


月城玲奈さん……ううん、セーラールナリアを先頭に、美玲さん、紅葉さん、ひかりさん、あきさん、陽菜さん。

私がずっと見上げてきた、本物の、完璧な戦士たち。


「すごい……っ……」

すぐ横で、顔半分を泥と擦り傷で汚した咲が、途切れ途切れの息を漏らした。

「やっぱり……先輩たちは……違うよ……っ……」


「ええ……」葵が歪んだメガネのフレームを震える指で押さえながら、掠れた声で呟く。「スーツの出力、攻撃の軌道、無駄のない相互カバー……私たちが何ヶ月訓練しても到達できなかった域です……これなら……これなら勝てる……!」


私の胸の奥に、小さく安堵の火が灯りかけた。

そうだよ。あの男がどれだけ理不尽な強さを持っていたとしても、六人全員が揃ったステラセイヴァーズなら。私たちのプロデューサーであって、最強のヒーローである玲奈さんたちがいてくれれば、きっとあの黒い悪夢を払ってくれる。


そう信じたかった。

信じて、この重たい体を預けてしまいたかった。


だが――そいつは、漆黒の外套を風になびかせながら、ただ冷ややかにせせら笑っていた。


「……ほう。少しは歯ごたえのあるゴミが混ざっていたか」


男の胸元。

そこに埋め込まれた紫色の巨大な水晶が、ドクン、と不吉な音を立てて脈打った。


その瞬間、空気が変わった。

重い。

地球の重力が十倍になったみたいに、身体全体が地面へ叩きつけられる。

安堵の火なんて、一瞬で吹き飛んだ。

胸の奥を冷たい爪で直接掴まれたような、吐き気をもよおすほどの悪意。


「みんな……下がって……!」

前線で剣を構えるルナリアさんの背中が、一瞬、確かに強張ったのを私は見た。


---


「戯れは終わりだ」


男が、右手を軽く持ち上げた。

ただそれだけだった。

なのに、男の周囲のコンクリートが、バキバキバキッと激しい音を立てて波打ち、巨大な影の尖塔となって天井を突き破る!


「来ます! 全員、迎撃配置!」

セーラーシヴァイアサン(あき)の鋭い叫び。


「させるかよぉぉぉっ!!」

セーラーエクレール(ひかり)が稲妻となって弾け飛んだ。手にした双剣から放たれる【雷】の刃が、迫りくる影の尖塔を正面から叩き割る!

「アタシたちの後輩に手を出しといて、タダで済むと思うなよッ!」


「フレイム! 結界を!」

「言われなくても! 灼熱の檻よ、悪しき波動を焼き尽くせ!!」


セーラーフレイム(紅葉)が地を蹴り、両手を広げると、男の周囲に目も眩むような紅蓮の炎の壁が立ち上った。周囲の温度を一気に引き上げる、圧倒的な熱量。

普通のエネミーなら、触れた瞬間に灰すら残さず蒸発するはずの浄化の炎だ。


「ソラリア! ウェヌリオン! 今です!」


「光の慈雨よ……闇を祓い給え!」

セーラーソラリア(陽菜)が掲げた杖から、温かくも強大な太陽の光線が放たれ、炎の檻の中へ向かって収束していく。

「愛の光よ……届いて!!」

セーラーウェヌリオン(美玲)の放つハート型の光弾が、完璧なタイミングで追撃として叩き込まれた。


炎、雷、光、愛。

四重の完璧な必殺連撃。

地面が激しく爆発し、黒煙が天を突くように上がった。


「やった……!?」

桃が胸の前で手を握りしめ、身を乗り出す。


だが、煙の向こうから聞こえてきたのは、爪でガラスを引っ掻くような、不快な笑い声だった。


「くくく……ふははははっ! 温いな。温すぎるぞ、星の戦士ども!」


ドバアァァァンッ!!


爆煙を吹き飛ばして現れたのは、傷一つ負っていない男の姿だった。

それどころか、胸の紫色の水晶から、どす黒い蒸気のような闇が、滝のように溢れ出している。


「な……なに……!?」

紅葉さんが目を見開く。


「私の結界を……直接、闇の圧力で押し潰したというのか……!?」


「計測……不可能です……!」

あきさんの声が、初めて明白な動揺で乱れていた。

「敵の生体エネルギー、限界値を突破……! 次元そのものが、あの男の存在に耐えきれず破壊され始めています!」


「ハハハハハ! 壊れろ、散れ、消え失せろ!!」


男が両腕を広げると、背後の空の亀裂から、巨大な黒い影の触手が数十本、槍のように突き出してきた!


ズササササササッ!!


「くっ……! シヴァイアサン、シールドを!」

ルナリアさんが叫び、銀の剣で迫りくる触手を切り払う。


「無理です、出力が追いつきません――きゃあああぁぁぁっ!?」


あきさんの張った水のバリアが、触手の一撃でガラスみたいに簡単に粉砕された。

そのまま胸元を強打され、あきさんの細い身体が派手に瓦礫の上を転がる!


「あきちゃん!?」

ひかりさんが助けに向かおうと脚を踏み出した瞬間、その足元から伸びた影の爪が、彼女の脚を深々と貫いた。


「ぐあぁぁぁぁっ!?」


「ひかり!!」

紅葉さんが叫び、炎を放とうとするが、男はすでに彼女の目の前に立っていた。


「遅い」


冷酷な一言。

男の拳が、紅葉さんの腹部をえぐり込むように直撃した。


ガゴンッ!!


重い衝撃音が響き、紅葉さんの口から鮮血が飛び散る。

そのまま吹き飛ばされ、崩れたビルの柱に激突して動かなくなった。


「紅葉! ひかり! あき!」

陽菜さんが悲鳴を上げ、杖を構え直すが、男の放った紫色の衝撃波が彼女を正面から呑み込んだ。


「嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!」


「陽菜さんっ!?」

美玲さんが庇おうと手を伸ばすが、影の触手が彼女の腕と脚を絡め取り、そのまま力任せに地面へ叩きつけられた!


ズドォォォォンッ!!


「……っ……ぁ……」


ほんの数十秒だった。

私たちが「絶対に勝てる」と信じた、あの完璧なステラセイヴァーズが、目の前で次々と打ち伏せられていく。


「そんな……嘘だろ……」

翠の声が震えていた。木刀を握る指が、がくがくと痙攣している。


「あの先輩たちが……手も足も出ないなんて……こんなの……どうすればいいんだよ……!?」


残されたのは、ただ一人。

銀色の髪を風になびかせ、血を流しながらも剣を構え続ける、セーラールナリア――月城玲奈さんだけだった。


---


「……ハぁ……ハぁ……っ」


ルナリアさんの白い装束は、すでに煤と血で赤黒く汚れていた。

変身の光がバシバシと激しく点滅し、限界を告げる警告音が虚しく響いている。


「……見事な強さですね」

ルナリアさんは、口元の血を手の甲で拭い、静かに男を見据えた。

その声は、震えていなかった。どんな絶望的な状況でも、彼女はプロフェッショナルであり、私たちのプロデューサーだった。


「ですが……私たちは退きません。この街を……そしてあの子たちの未来を、あなたのような悪意に渡すわけにはいかない」


「口だけは達者だな、女」

男がゆっくりと歩み寄ってくる。一歩踏み出すごとに、周囲のコンクリートが黒く腐敗していく。


「ならば、その高潔さごと打ち砕いてやろう」


「ルナリアさん!!」

私は叫ぼうとした。身体を動かそうと、地面に爪を立てた。

だけど、指一本動かない。声すら、掠れた空気になって消える。


ルナリアさんが、身体中の全エネルギーを剣に集中させる。

銀色の剣が、最後の輝きを放ち、眩しい月光の輪を描いた。


「必殺……ルナティック・グランド・フィナーレ!!」


ルナリアさんが跳躍した。

月光の刃が、一直線に男の首元へ向かって振り下ろされる。

私には、それが最後の、命を賭した一撃に見えた。


だが――。


ガキィィィィンッ!!


甲高い音が響いた。


男は、剣を避けることすらもしなかった。

ただ左手の二本の指で、ルナリアさんの渾身の刃を、あっさりと受け止めていたのだ。


「……なっ!?」

ルナリアさんの瞳が、初めて大きく見開かれた。


「概念の刃か。……薄いな」


男が指に力を込める。


パリィィィィンッ!!


銀色の剣が、まるで氷細工みたいに粉々に砕け散った。


「く……っ!?」


「消えろ」


男の右拳が、無防備になったルナリアさんの胸元を貫くように叩き込まれた。


ドカァァァァァンッ!!!!!


凄まじい爆風が巻き起こり、ルナリアさんの身体が弾丸のようなスピードで吹き飛ばされた。

何本もの鉄骨をなぎ倒し、崩壊したステージの最奥の壁に激突する。


ドサッ……。


静寂が訪れた。


バシバシバシッ! と激しい火花が弾け、ルナリアさんの魔法の装束が、粒子となって消え去っていく。

そこに横たわっていたのは、制服姿に戻り、銀色の髪を泥と血に汚した……ただの傷だらけの女性、月城玲奈さんだった。


「玲奈さん……っ!!」

美玲さんが掠れた声で叫ぼうとしたが、そのまま力尽きて意識を失った。


周囲を見渡せば――。

ウェヌリオン、フレイム、エクレール、シヴァイアサン、ソラリア、ルナリア。

6人全員が変身を剥ぎ取られ、ボロボロの制服姿で瓦礫の中に転がっている。

誰も立ち上がれない。誰も、もう動かない。


そして、私たちパステリズムの5人も。


ジャージはズタズタに引き裂かれ、全身激痛で指一本動かせない。

私の左腕に巻かれたキラリンチェンジャーを見つめた。

あんなに眩しく輝いていた【炎】の属性キーが……黒く濁り、カチリとも音を立てなくなっていた。

葵の【水】も、咲の【雷】も、桃の【花】も、翠の【風】も。

全部、光を失って、ただの灰色のプラスチックの固まりみたいになっている。


完全な壊滅。

大失格級の敗北。


ヒーロー番組なら、ここで放送が打ち切られてしまうレベルの、圧倒的で絶望的な全滅だった。


---


「……ふん。ゴミ屑どもが」


男は一瞥をくれただけで、興味を失ったように背を向けた。


「属性キーの輝きは失われたが……まあいい。回収して我が主の糧としよう」


男が指を鳴らすと、周囲の影から無数のカゲノコたちが這い出し、ピクリとも動かない私たちの元へ、そして玲奈さんたちの元へ向かって蠢き始めた。


黒い波が、静かに、確実に、私たちを浸食していく。


終わりだ。

全部、終わったんだ。


ステラセイヴァーズも倒れた。

私たちのチェンジャーも壊れた。

身体も動かない。

痛くて、寒くて、悔しくて……もう、どうしようもない。


(私……何のために修行してきたんだろう……)


涙が、泥で汚れた頬を伝って地面に落ちた。

有明で笑われて、悔しくて、みんなで手をつないで、冷たい滝に打たれて、正座して……。

「本物のヒーローになる」って、あんなに誓い合ったのに。

結局、本物の悪の前には、何一つ届かなかった。


……だけど。


泥に埋もれた私の右手。

その指先が、ほんの数ミリだけ、ピクッと動いた。


「あ……か……ね……」


すぐ隣で、顔半分を血で染めた咲が、かすかな声を漏らしていた。


咲の左手が、泥の中をゆっくりと動いて、私の手に触れる。


「咲……」

「ごめん……ね……。私……弱くて……守れなかった……」


咲の目から溢れ出た涙が、泥を濡らしていた。

自分の身体だってボロボロなのに。骨が折れてるかもしれないのに。咲は自分の心配じゃなくて、私に謝っていた。


「……バカ」


私は掠れた声で呟いた。


「なんで……謝るのよ……」


「茜ちゃん……」

反対側から、桃の手が重なってきた。

「私……怖くて……諦めそうに……なった……。でも……みんなの手の温かさ……覚えてるから……」


「フン……計算……大外れですね……」

葵が歪んだメガネを泥の中に落としながら、苦笑いのような吐息を漏らす。

「ですが……私のデータには……『諦める』という項目は……最初から……ありません……」


「当たり前だろ……」

翠が血のついた歯を見せて、不敵に笑おうとしていた。

「格好悪く……倒れたまま終わるなんて……パステリズムの……柄じゃねぇよ……」


五人の手が、泥の中で固く、強く重なり合った。


チェンジャーは光らない。

スーツも現れない。

身体は動かず、目の前には数千の黒い波が迫っている。


だけど。

私たちの胸の奥にある、あの泥臭い火だけは。

全国に恥を晒し、笑われ、泥を喰らいながらも、五人で一緒に灯してきたあの小さな火だけは……どんな闇だって、消せやしなかった。


「立ち……上がるんだ……」


私は泥を舐めながら、必死に顎を持ち上げた。


「まだ……終わって……ない……!!」


---


「……ぬ?」


立ち去ろうとしていた男が、かすかに足を止めた。


振り返った男の目に映ったのは、異様な光景だった。


全身血だらけで、変身も解除され、骨すら折れているはずの5人の少女たち。

彼女たちが、泥の中で互いの手を固く握り締め、殺気すら孕んだ強い瞳で、じっと自分を睨み返している姿を。


チェンジャーは黒く濁ったままだ。属性キーも光っていない。

物理的な力など、何も残っていないはずだった。


だが――彼女たちの瞳の奥に宿る「火」は、さっきまでよりも遥かに強く、激しく燃え上がっていた。


「……往生際が悪いな」


男は吐き捨てるように言った。


「だが、身動き一つ取れぬ貴様らに何ができる。そのまま影の糧となるがいい」


男が再び歩き出し、空間の亀裂の中へと姿を消していく。

残されたのは、無数のカゲノコたちの黒い波と、倒れ伏した11人のヒロインたち。


全滅。

完全なる敗北。


だけど、茜たちの手は、離れなかった。

泥の中で重なり合った五人の体温が、互いの命を、魂を、必死に繋ぎ止めていた。


「待ってて……玲奈さん……みんな……」


茜は掠れた声で、心の中で誓った。


「私たちは……絶対に……負けない……!」


暗雲が空を覆い尽くし、世界が完全な闇に包まれようとしていた。

絶望の底の底。

だが、その暗闇の最奥で、誰も気づかない小さな奇跡の芽が、静かに、確実に、息吹き始めようとしていた。


---


【次回予告】


茜「ステラセイヴァーズも、私たちも……全員倒されちゃった……」

咲「チェンジャーも真っ黒で……もう変身できないよぉ……!」

葵「ですが……私たちの胸の火は、まだ消えていません!」

桃「みんなの想いを……ひとつに……!」

翠「泥の中から掴み取るんだよ! 私たちの、本当の大逆転を!!」

茜「絶望を叩き割れ! 奇跡の光よ、再び煌めけ! 最終決戦、いくよ!!」


次回、煌戦隊★キラリンジャー 修行譚 第13話:

『輝け命の火! 泥の中から掴み取る大逆転!』


燃え上がれ、勇気の煌き★!

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