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闇王日記 〜闇の神様、人間の幼児になって無双する〜  作者: S


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4/15

外に

これは全て私の妄想の話です


次の日。


闇王は母乳を飲み終え、満足感に浸っていた。


しかし、あの不快感はいったい何なのだろう。


あの不快感に襲われると、アニシナが例の白い液体を飲ませてくれる。そして飲み終える頃には、不思議と不快感は消えている。


気になる。


もっと情報が必要だ。


そのためには――話せるようにならなければならない。


闇王は口を動かしてみた。


「あー……うー……」


やはり上手くいかない。


だが、練習あるのみだ。


「あー、うー、あー」


ときおり「きゃっ」と声が出る。


そんなふうに発声練習を繰り返していると、アニシナが部屋へ入ってきた。


「もしかして、言葉の練習をしてたのかな?」


アニシナは優しく笑った。


「ママって言ってみて」


本番が来た。


だが、ママとは何だ?


セフィーロもよく口にしていた言葉だ。


まあよい。


言ってみよう。


「ばば」


「惜しい!」


惜しくはない。


そもそも何が惜しいのか分からない。


アニシナはくすりと笑うと、闇王を抱き上げた。


「サーシャ、お外へ行ってみようか」


外?


闇王は首を傾げた。


アニシナは藁でできた扉の前まで歩いていく。


そして扉が開かれた瞬間――


あまりの眩しさに、闇王は思わず目を覆った。


やがてゆっくりと目を開く。


そして――驚愕した。


「……!」


青い。


空が青い。


闇王の世界には黒しか存在しなかった。


どこまでも続く黒だけだった。


なのに今、目の前には鮮やかな青が広がっている。


なんだこれは!?


アニシナに抱かれたまま辺りを見回す。


緑色の草。


色とりどりの花。


色づいた木々。


藁でできた家々。


見るものすべてが新鮮だった。


「あばー!」


私は黒い木だったぞ!


光め!


すごいではないか!


感動しているうちに、一際大きな建物の前へたどり着いた。


他の家とはまるで違う。


木造の立派な建物で、壁は朱色に塗られ、その上には鮮やかな紋様が描かれていた。


アニシナは扉をノックする。


「アガツマ様、いらっしゃいますか?」


「おお、アニシナか。入れ入れ」


扉が開いた。


中に入った闇王は再び驚く。


広い。


中央には毛皮が敷かれ、立派な椅子が置かれている。


隅には布を掛けた大きなテーブルと、多数の椅子が並んでいた。


アガツマは毛皮の上の椅子へ腰を下ろした。


「それで、今日はどうした?」


「サーシャについてお話があるんです」


アニシナは闇王を床へ座らせた。


「まず見てください」


アガツマは首を傾げる。


だがすぐに目を見開いた。


「もう首が据わっておるのか!?」


「それだけではありません」


アニシナは闇王に向かって手を差し出した。


「サーシャ、立って見せて」


「立つだと!?」


しょうがない。


闇王はアニシナの手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。


その瞬間。


アガツマの目がさらに大きく開かれる。


「立った!?」


信じられないといった表情だった。


「まだ生まれて数日だぞ!?」


「私も驚きました」


アニシナは苦笑した。


「夫はアルミス様のお使い様ではないかと言っているんです」


「ふむ……」


アガツマは顎に手を当てた。


「確かに異常な成長速度じゃな」


そして闇王を見つめる。


「歩き出すのも時間の問題かもしれん。アルミス様のお使い様……可能性はある」


少し考え込みながら続けた。


「だが無魔の子だからな」


無魔?


また知らない言葉だ。


「とはいえ、清めを受ければ変わるかもしれん」


無魔とは何なのだ?


清めとは?


知りたいことばかり増えていく。


だが今は話せない。


もどかしかった。


その後、アニシナは闇王を抱き上げ、花畑へ連れて行った。


色鮮やかな花々が風に揺れている。


「綺麗ねぇ」


そう言いながら、アニシナは闇王の手を花へ伸ばした。


だが、その花には奇妙な生き物が止まっていた。


羽をひらひらと動かしている。


やめろ!


そんな気色悪いものに触れさせるな!


「あーうー!」


闇王が暴れると、その生き物は飛び去った。


ほっとする。


「綺麗な蝶々だったのに」


蝶々というのか、あれは。


気色悪い奴だ。


その時だった。


「アニシナー!」


ハナとセフィーロがやってきた。


「今日はどうしたの?」


「サーシャをアガツマ様に見せに行ってきたの」


アニシナは嬉しそうに言う。


「この子、すごいのよ!」


そう言うと、闇王を地面へ座らせ、両手を差し出した。


やれやれ。


闇王はその手を掴み、立ち上がって見せた。


「すごい!」


ハナが声を上げる。


「普通、こんなに早く立てないのよ!」


セフィーロは目を輝かせた。


「サーシャ、すごい!」


そう言うなり抱きついてくる。


さらに腕を引っ張った。


「歩けるんじゃない?」


「こら、セフィーロ!」


ハナが慌てて止める。


しかしセフィーロは気にしない。


闇王の腕を引きながら歩かせた。


右足。


左足。


右足。


左足。


ぎこちないながらも、確かに歩いている。


「歩いた!?」


ハナとアニシナは同時に驚いた。


「やっぱりお使い様かもしれないわね」


そんな会話を聞きながら、闇王は思った。


アルミス様とは何者なのだろう。


ますます気になってきた。



それから一週間が過ぎた。


その間、闇王はひたすら言葉の練習を続けていた。


だが毎日のようにセフィーロが遊びに来る。


「サーシャー! 遊びに来たぞー!」


そのたびに連れ回される。


練習どころではない。


そしてある日。


いつものようにセフィーロがやって来た。


「サーシャ! 遊びに来たぞ!」


ついに闇王の我慢は限界を迎えた。


「セフィーロ! いい加減にしろ! お前の遊びに付き合ってられん!」


言い放った瞬間――


部屋が静まり返った。


セフィーロが固まる。


「……サーシャが喋った」


その言葉で闇王も気づいた。


私が……喋った?


「もう一回!」


「お前の遊びに付き合ってられんぞ」


「しゃべったー!」


セフィーロは全力で飛び出していった。


しばらくすると。


ドタドタドタッ!


ムスファとアニシナが駆け込んでくる。


「サーシャ!」


「ママって言ってみて!」


「パパだぞ!」


二人とも必死だった。


「パパとかママとか、いったい何なのだ?」


「会話してる!」


アニシナは飛び跳ねた。


「すごいぞー!」


ムスファは大喜びで闇王を抱き上げる。


「もっと喋ってくれ!」



結局その日。


闇王が疲れて眠るまで、延々と会話大会が続いた。


そしてその夜――


いつものようにアニシナが授乳しようとした時だった。


「痛っ!」


アニシナが思わず声を上げる。


闇王の口の中には立派な歯が生えていた。

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